【完結】生まれ変わった男装美少女は命を奪った者達に復讐をする

ユユ

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炎の魔法使い

決闘(ロイク)

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夕食をとりに鷹の間を訪れたライダーはノアの顔を見るなり険しい顔で近付き、膝をついてノアの前髪を上げた。

左の生え際が腫れていた。ノアの雪のような白肌に全く処置をしなかった殴打痕は痛々しく鮮やかな色になっていた。

「誰にやられた」

「明日片付けるから大丈夫」

「全然大丈夫じゃない!」

「とんでもないお貴族様がいたんだよ。
明日の夕方に説明するから」

「まさか、態と殴られたのか」

「じゃないと僕を殴らないだろう」

「ノア!」

「怒らないで。痛いんだから」

「ノア……」

「明日の午後3時に第三演習場に手の空いた平民騎士を集めてくれる?決闘があるんだ」

「はぁ!?」

「国王は宰相経由で声をかけるからさ。
僕を殴った奴は代わりの騎士がやっつける」

「私に任せてください!」

「ダメだよ。エイダンが勝っても意味はない。

私の側にいるんだろう。明日待ってる」




翌日の10時。ノアとロイクはルーフバルコニーにいた。

「おっ!だいぶできてるな」

「イメージ通りにな」

「その手つき止めろ」

「早く大人になれるといいな」

「いいか、形状をほぼ変えるな。延長させるんだ。先は鋭く磨き上げた剣だ」

「やってみる」




昼食前に食堂や掲示板に張り紙をした。

“午後3時より第三演習場にて決闘を行う

ビクトール・パルトネルvsロイク

二戦目は別の者が決闘を行う

見学自由。平民優先”




「ノア、あれは何だ」

ノアは張り紙の件について午後イチに国王陛下に呼ばれた。迎えに来たのは宰相だった。

「陛下、宰相。勝手していますが理由はこれです」

ノアは前髪を手で持ち上げると二人は顔を顰めた。

「誰がノアにこんな真似を!!」

「陛下、落ち着いてください。パルトネル公爵令息に決まっているじゃないですか」

「そ、そうか。そうだったな」

殴打痕の酷さに決闘の件を吹き飛ばした国王にノアは微笑んだ。

「心配してくださりありがとうございます。
自身がコネ採用で閑職ついているくせに平民を虐めていたので懲らしめます。

僕を性奴隷にしたいそうです。命をかけるらしいですよ。ハハッ」

「ノア、貴方は……」

「ロイクはいい奴でしたよ宰相閣下」

「ノアは他の者がいないと口調が変わりますね」

「あ、

それより見に来てくださいね!」

「第二戦とは?」

「ビクトールの寄生虫に胸ぐらを掴まれて持ち上げられて地面に落とされたので、僕が相手をしてあげます」

「誰なんだ」

「知りません」

「はぁ…、3時だな」

「はい!」

「ライダー公爵達も連れて行こう」

「あっ!」

「忘れていたか」

「すみません。
では、勝利で歓迎します」

「調子がいいやつめ」

「じゃあ、これからロイクの微調整をするので戻りますね!」


元気に去って行くノアを見送る国王は宰相にビクトールの縁故採用を決めた奴を探せと命じた。




決闘前に到着したライダー公爵は城の雰囲気が普段と違うことに気が付いた。

「何かあったのか」

「実はパルトネル公爵家の次男がノアを殴って、ノアが選んだ平民の雑用騎士と次男を決闘させると言うのです」

「は?」

「父上のお気持ちはよく分かります。私もそう思いますから。ですがあんな華奢な子供を殴って大痣とコブをつくらせたのです。
見た時は殺しに行こうかと思いました。

雑用騎士のロイクに聞いたら、ずっと次男にロイクが嫌がらせを受けていたようで」

「それでノア殿が間に入ったのか」

「煽って態と殴らせたそうです」

「無茶なことをする」

メイドが二人の荷物を受け取り運んでいく。

「父上、兄上。決闘が歓迎の催しになるから見に来て欲しいと言っています」

「何時からだ」

「もうすぐ始まります」

「急ぐぞ!何処でやるんだ!!」





午後3時。

ノアもロイクも既に待ち、観客も大勢見に来ていた。

門を潜ったビクトール達は観客の数に驚いた。

しかも国王までいたので動揺していた。

「おい、早くしろよ。王様を待たせるな」

「クソガキが!!」


ノアは宰相に合図を送ると、宰相が大声を出した。

「ただいまよりビクトール・パルトネルとロイクの決闘を行う!

パルトネルが勝利した場合はロイクを奴隷扱いに!ロイクが勝利した場合は命だ!
剣と魔法を使い、戦えなくなれば敗北とする!

決闘中の死傷は罪に問わないが反則や、審判の制止後の攻撃は反則とし、罪に問う!

双方中央へ!審判ソーサ団長!」


ビクトールとロイクは中央に歩み、向き合うと剣を抜いた。

ロイクは足を大きく広げ腰を落とした。

「ハハッ!なんだそのポーズは!それでも騎士か!」

「ビクトール!煩いぞ!

魔法と剣だけ。静止後の攻撃は反則だ!

よし、始め!!」


凍結フリージング!」

早速ビクトールがロイクの足元を地面から足首まで凍らせた。

氷剣アイスソード!」

ロイクは剣を振りかぶった。

「馬鹿だな!届くわけ…」

ビクトールはそのままでもギリギリ届かない距離にいたが三歩下がった。

ザシュッ!

「ぐわっ」

観客も審判のソーサ団長も信じがたい光景を目にして唖然とした。

会場は静まり返り、ビクトールの呻き声だけが微かに響く。

剣が凍り、振り下ろすと剣先がキラキラと伸びて届くはずのない距離にいたビクドールを斬ったからだ。

ビクトールの魔法が解けたロイクは歩き出した。

倒れたビクトールの元まで行くと剣を振り上げた。

「こ、降参…」

「そこまで!!」

ロイクはビクトールを見下ろし剣を振り上げたままだ。

「わ、悪かった…もうからまない」

「ロイク、どうする。勝ったから命をもらえるぞ」

ロイクは剣を静かに下ろし三歩下がった。

「不用です」

「勝者ロイク!!」

会場は割れんばかりの歓喜の声に包まれた。

ロイクはノアの元まで歩いてくると嬉しそうに微笑み跪き頭を下げた。
ノアも嬉しそうにロイクの頭を撫でた。

「よくやった。戦士ロイク」

「我が主人ノアに忠誠を」

「期間限定で受け取ろう」


その間にビクトールが担架で運ばれた。









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