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炎の魔法使い
ノアの世話役
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翌日、ピニーとサニー以外の者は人払いをされて国王陛下が南の塔で安静にしているノアに会いに来た。
「こればかりは…薬湯と対処法しかないと聞いている。顔色が悪いな」
「すみません。陛下」
「謝ることはない。これがなければ私もこの世にはおらんのだからな。女子たちが毎月苦しみ孕んでは苦しみ、男は無力だ。
これは祝いの品だ」
「祝いですか」
「子が授かる体になったのはめでたい事だ。おめでとう」
「ありがとうございます」
「堂々としなさい。誇るべき事だ。
まだ男装をするのか?」
「戦地では特に女は標的です。
私は防げますが周りにいる者が巻き添いになります。それは避けなければなりません」
「そうだな。本当に申し訳ない」
本当はノアは男女のことも月のモノのことも知っていた。知らない振りをしたのだ。
早くに親が亡くなりひとりで男として生きていたら知らないであろうと思ったからだ。
「二人から聞いたが、確かに今後其方を女としてサポートする者が必要だ。しかも戦地に連れて行ける者だ。探してみよう」
「お願いします」
昨日とは違いエイダンが大人しい。
「近衛の仕事に行ってきます。欲しい物ややって欲しいことがあれば遠慮なく言ってください」
まぁ、助かる。
ロイクは王宮騎士団が少し鍛えてくれるらしくしばらく訓練の日々を送るようだ。
「はぁ。男に生まれたかった」
4日目に痛みは大分落ち着いてきたが動けば痛くなる。
次は宰相が見舞いに来た。
「ノア」
「マクセル」
「食べたい物は特に無いと聞いたが、菓子を持ってきた」
「ありがとうございます」
ノアがソファに座ったのでマクセルも隣に座り、ノアの頭を優しく撫で、殴打痕の確認をした。
「大分治ったな」
「内出血はもう少しで綺麗になります」
「お前を殴った馬鹿とその馬鹿を採用した男はクビにした。公爵の息子は廃嫡となるはずだ」
「ううっ……」
ノアの瞳からポロポロと涙が溢れでた。
マクセルはノアを抱き寄せて優しく身体を摩り手を握った。
「怖かったか」
「わからない」
ノアは何故涙が出てくるのか分からなかった。殴られるのが怖く無いと言えば嘘だし痛かった。でもそれで涙が出るわけではないのは分かっていた。
マクセルはノアの頭に唇を付けた。
「可愛いノア」
初潮という出来事により心配して気にかけてくれる人達がいると知ったことで、ノアは張り詰めていたものが切れてしまったのだ。
30分程泣いてそのまま眠ってしまった。
細くて小さな身体を抱きしめながらマクセルもまた辛かった。
こんな少女を戦地へ送るのかと。
深い眠りについたことを確認した後、抱き上げてベッドの中央に寝かせ毛布をかけた。
「私のノア」
額に唇を付けて国王の元へ向かった。
国王と宰相は何名か候補を挙げていた。
その数名を呼び直々に面談をした。
生い立ちや能力、考え方の確認をして帰した。
「決まりだな」
「決まりですね」
翌日の昼前に国王と宰相と一人の男が南の塔を訪れた。
ピニーから演技不要の連絡をもらっていた。
応接間に行くと一人の男を紹介された。
「ノア。彼の名はガブリエル・ミシュラート。子爵家の次男だ。近衛騎士団に所属していて戦えるし魔法も使えるが彼の仕事は衛生兵だ。
兄弟は、長男、長女、次女、ガブリエル、三女、四女、五女という構成で、母親は3人だ。死別したり別れたり。
彼は二人の姉と三人の妹に挟まれているので姉達にこき使われながら妹達の面倒を見てきた」
「ガブリエル、自己紹介をしてくれ」
「ガブリエルとお呼びください。24歳でノア様のお力になれます。心配せず頼ってください。
私は異性を恋愛対象として見ません。ライダー隊長やロイク卿を含む同年代にも興味がありません。子供にも興味がありません。
つまり私はノア様にも隊のお二人にも無害です」
「最前線へ行くのですよ」
「承知しております。私も第三演習場で決闘を見学させていただきました。
ノア様の近くにいれば安心できますし、戦えますので大丈夫です」
「ミシュラート卿。今のノアは素だが、通常は口調も態度も違う。他の二人は知らないから君も同じように接することになるから驚かないでくれ」
「かしこまりました」
「ノア。彼を加えるかどうか数日中に教えてくれ」
「お願いします」
「では、肝心のことを話してもいいか?」
「はい」
「ガブリエル。ノアは男装をした少女だ。
生き抜くために男装をしていた。今後も戦地に行くので続ける。
そして女性特有のものもある。痛みが少し強いようなので頼む」
「お任せください。実家から良い煎じ薬を取り寄せます。かなり楽になりますよ」
「売っているものか?」
「三番目の義母が作っています。受け継がれた秘伝の調合らしくて。加減が難しいとか。
姉も妹もそれで楽になっています。酷い日は身体を休めた方がいいと思います。多分2、3日ですよね。
身体を休める機会をもらっていると考えて、暖かくしてゆっくり過ごしましょう。
それともう一つ。
私は体内の水分を凍らせることができます」
「凄い特技ですね。よろしくお願いします」
「他の二人はこちらに移り住んでいるのですよね。私も移ります」
「陛下、マクセル、ガブリエル。ありがとうございます」
彼らが去ってしばらくしてから宰相を思い出した。
「マクセルに知らせちゃったじゃない!」
違和感なく自然にいたからうっかりしていた。
「こればかりは…薬湯と対処法しかないと聞いている。顔色が悪いな」
「すみません。陛下」
「謝ることはない。これがなければ私もこの世にはおらんのだからな。女子たちが毎月苦しみ孕んでは苦しみ、男は無力だ。
これは祝いの品だ」
「祝いですか」
「子が授かる体になったのはめでたい事だ。おめでとう」
「ありがとうございます」
「堂々としなさい。誇るべき事だ。
まだ男装をするのか?」
「戦地では特に女は標的です。
私は防げますが周りにいる者が巻き添いになります。それは避けなければなりません」
「そうだな。本当に申し訳ない」
本当はノアは男女のことも月のモノのことも知っていた。知らない振りをしたのだ。
早くに親が亡くなりひとりで男として生きていたら知らないであろうと思ったからだ。
「二人から聞いたが、確かに今後其方を女としてサポートする者が必要だ。しかも戦地に連れて行ける者だ。探してみよう」
「お願いします」
昨日とは違いエイダンが大人しい。
「近衛の仕事に行ってきます。欲しい物ややって欲しいことがあれば遠慮なく言ってください」
まぁ、助かる。
ロイクは王宮騎士団が少し鍛えてくれるらしくしばらく訓練の日々を送るようだ。
「はぁ。男に生まれたかった」
4日目に痛みは大分落ち着いてきたが動けば痛くなる。
次は宰相が見舞いに来た。
「ノア」
「マクセル」
「食べたい物は特に無いと聞いたが、菓子を持ってきた」
「ありがとうございます」
ノアがソファに座ったのでマクセルも隣に座り、ノアの頭を優しく撫で、殴打痕の確認をした。
「大分治ったな」
「内出血はもう少しで綺麗になります」
「お前を殴った馬鹿とその馬鹿を採用した男はクビにした。公爵の息子は廃嫡となるはずだ」
「ううっ……」
ノアの瞳からポロポロと涙が溢れでた。
マクセルはノアを抱き寄せて優しく身体を摩り手を握った。
「怖かったか」
「わからない」
ノアは何故涙が出てくるのか分からなかった。殴られるのが怖く無いと言えば嘘だし痛かった。でもそれで涙が出るわけではないのは分かっていた。
マクセルはノアの頭に唇を付けた。
「可愛いノア」
初潮という出来事により心配して気にかけてくれる人達がいると知ったことで、ノアは張り詰めていたものが切れてしまったのだ。
30分程泣いてそのまま眠ってしまった。
細くて小さな身体を抱きしめながらマクセルもまた辛かった。
こんな少女を戦地へ送るのかと。
深い眠りについたことを確認した後、抱き上げてベッドの中央に寝かせ毛布をかけた。
「私のノア」
額に唇を付けて国王の元へ向かった。
国王と宰相は何名か候補を挙げていた。
その数名を呼び直々に面談をした。
生い立ちや能力、考え方の確認をして帰した。
「決まりだな」
「決まりですね」
翌日の昼前に国王と宰相と一人の男が南の塔を訪れた。
ピニーから演技不要の連絡をもらっていた。
応接間に行くと一人の男を紹介された。
「ノア。彼の名はガブリエル・ミシュラート。子爵家の次男だ。近衛騎士団に所属していて戦えるし魔法も使えるが彼の仕事は衛生兵だ。
兄弟は、長男、長女、次女、ガブリエル、三女、四女、五女という構成で、母親は3人だ。死別したり別れたり。
彼は二人の姉と三人の妹に挟まれているので姉達にこき使われながら妹達の面倒を見てきた」
「ガブリエル、自己紹介をしてくれ」
「ガブリエルとお呼びください。24歳でノア様のお力になれます。心配せず頼ってください。
私は異性を恋愛対象として見ません。ライダー隊長やロイク卿を含む同年代にも興味がありません。子供にも興味がありません。
つまり私はノア様にも隊のお二人にも無害です」
「最前線へ行くのですよ」
「承知しております。私も第三演習場で決闘を見学させていただきました。
ノア様の近くにいれば安心できますし、戦えますので大丈夫です」
「ミシュラート卿。今のノアは素だが、通常は口調も態度も違う。他の二人は知らないから君も同じように接することになるから驚かないでくれ」
「かしこまりました」
「ノア。彼を加えるかどうか数日中に教えてくれ」
「お願いします」
「では、肝心のことを話してもいいか?」
「はい」
「ガブリエル。ノアは男装をした少女だ。
生き抜くために男装をしていた。今後も戦地に行くので続ける。
そして女性特有のものもある。痛みが少し強いようなので頼む」
「お任せください。実家から良い煎じ薬を取り寄せます。かなり楽になりますよ」
「売っているものか?」
「三番目の義母が作っています。受け継がれた秘伝の調合らしくて。加減が難しいとか。
姉も妹もそれで楽になっています。酷い日は身体を休めた方がいいと思います。多分2、3日ですよね。
身体を休める機会をもらっていると考えて、暖かくしてゆっくり過ごしましょう。
それともう一つ。
私は体内の水分を凍らせることができます」
「凄い特技ですね。よろしくお願いします」
「他の二人はこちらに移り住んでいるのですよね。私も移ります」
「陛下、マクセル、ガブリエル。ありがとうございます」
彼らが去ってしばらくしてから宰相を思い出した。
「マクセルに知らせちゃったじゃない!」
違和感なく自然にいたからうっかりしていた。
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