【完結】孕まないから離縁?喜んで!

ユユ

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両親

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数日後、両親がフィルドナ侯爵家にやってきた。

私を見るなり抱きしめようとした母をお祖父様が制した。

「先ずは座れ」

私、お祖父様、ニコラで3人掛けソファに。父と母で対面したソファに座った。

メイド長のマリアがお茶を淹れた後、見届け人としてアルバートと一緒にマリアが端に立つ。

爺「で?用件は何だ」

父「それはお義父様が分かっておられますよね」

爺「はて。何かな」

母「お父様、エリスは私達の子です」

爺「そりゃそうだろう。そんなことを言いに来たなら今すぐ帰れ」

母「っ!」

お母様に甘いお祖父様が冷たいわ。こんなの初めて…。

父「娘を惑わし、陛下を利用し、私達の親としての権利を踏み躙っているではありませんか!」

爺「ジュエルを惑わし、エリスにお前の愚かさの代償を払わせ、親の義務と当主の義務まで放棄したクズが何を言うんだ」

父「お義父様!いくらなんでも、」

バン!!

お祖父様がテーブルを叩いた。

爺「何だと言うのだ?お前に何が出来る」

父「っ!」

爺「僅かな数分の間にお前はかなりの失言をした。

先ず、侯爵であり義父への言いがかりと無礼。そして国王陛下への不敬だ」

父「そんなつもりは、」

爺「こんなことに利用される程国王陛下は愚か者だとお前はその口で言ったのだ。“陛下を利用する”という言葉はそういうことだ。

権利というのは義務との抱き合わせだ。義務が成されていないのに権利だけ主張するのは幼児のすることだ。

儂は二つ忠告した。

あの粗末な婚姻式はおかしいからサヴォワ家を監視しろと。
そして抜き打ちで会いに行けと。

お前はその二つともやらなかっただろう」

父「監視なんて…サヴォワ家は慎ましいだけで、それに格上の伯爵家に抜き打ち訪問などできません」

爺「お前を酔わせて婚約させるサヴォワ家が慎ましい?格上?ふざけるでないわ!」

母「お父様!」

爺「マクシム。お前は儂の着古した服や下着をサイズ直しして着るか?
閨の1時間前に性交の予行練習を儂の前でさせるが文句言わないな?勿論体位も儂が決める。
翌日の朝食の場で、どう注いだのか確認するが、かまわないな?」

父「正気ですか!気持ち悪い!!」

母「お父様!馬鹿なことを言わないでください!」

爺「嫁いでからずっと、サヴォワ家でエリスがされていた仕打ちの内容だと言ってもか?」

父母「え!?」

爺「そんな訳だから、エリスは婚家で使うものはほぼ全て自分の金で買った。下着も薬もな。
奴等からは結婚指輪さえ与えてもらえず、ウエディングドレスも、ベールも義母のお古だ。
その後もドレスやナイトドレスも義母のお古だ。

閨の話もそのままだ。

夫のジョゼフは不能を隠して言いなりになり、結果、3年経った時に赤い離縁届を義母から突きつけられた。石女と呼ばれてな。

既に新たな妻が決まっているからすぐに出て行けとエリスを追い出した。サヴォワ家で買ったものは置いていけと言ってな。買ったこともないのにだぞ?

そんなクソと婚姻させたお前の元に帰るわけがないし、気にもかけない無情なお前達に頼りたくないと思うのは自然なことだろう」

父「エリス…知らなかったんだ」

母「エリス…ごめんなさい」

爺「一度でも訪ねれば簡単に発覚したはずだ。
エリスが古いドレスを着て出迎えるのだから。

マクシム。お前はどうしたらエリスをそんな目に遭わせられる?
ジュエル。お前はどうして腹を痛めて産んだ子に無関心でいられる?

私も陛下も、こんな酷い両親の元には帰せないと判断した。間違っているか?」

父「っ!!」

母「いつもエリスを思っていたわ!知らなかったのよ!エリス、許してちょうだい!」

私「戻ってもまたお父様の犠牲になるだけです。
持参金は戻ったのだから私のことは忘れてください。悪いと思うなら関わらないでください」

母「そんなことを言う子じゃなかったのに…」

ニ「叔母上。いい加減になさってください。今度はエリスを言葉で傷付けるのですか?
恐ろしい人だ。

叔父上も家長として子を守る義務があったでしょう。貴方の尻拭いで嫁がされたエリスが可哀想ですよ」

父「ニコラ殿はもうすぐ婚姻する。エリスが居辛くなるのは目に見えている。お義父様も若くない。
素直に戻って、新たな縁談を探すのがエリスの為なんだよ。

女は一人で生きていくのは大変なことなんだ」

この言葉にお祖父様は大きな溜息を吐いた。



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