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貴族法の適用
しおりを挟むお祖父様はお母様に尋ねた。
爺「ジュエル。お前が婚姻する時に財産放棄書を書かせたのを覚えているか」
母「はい。お父様」
爺「一つはフィルドナ侯爵家の財産、もう一つは儂個人の財産に対する放棄書だ。
他の親族にも、儂の個人資産については放棄させた。
儂の財産は全てエリスが相続する。
つまり、エリスはローランド子爵家よりも金持ちになる。
死ぬ前にエリスが困らないよう全てを整える。だから心配しているフリは続けなくていい」
母「フリだなんて!」
父「女の幸せは結婚して子を産んで、」
爺「ふざけた事をぬかすな!!戯け者が!!
女の幸せ?だったら酔ったお前の後始末を娘にさせないで、爵位を返上してでも契約を不履行に持っていけばよかっただろう!そしてジュエルを侯爵家へ戻し、エリスを侯爵家へ託せばいい話だ!
本気で守る気などないし、本気で幸せを願ってもないクセに、一人前のフリなどするな!!お前に女の幸せを語る資格などあるわけないだろう!!」
父母「っ!!」
ニ「次期フィルドナ侯爵の私がエリスの面倒を見ます。もう怖くてお二人に任せられませんよ」
私「お父様、お母様。デービッドがいるから問題ないですよね?
まだ異議を唱えるなら裁判を起こして子爵家から籍を抜きます。
経緯が公になればローランド子爵は喰い物にされますよ?酔わせれば契約書に署名してしまうのですから。
それに世の女性からは白い目で見られるでしょうね」
父「脅しているのか?いつからそんな娘に、」
私「三年間のお陰です。
閨の1時間前に、私は服を着たままベッドに身を預け、脚を開き、そこにジョゼフが覆い被さり腰を振るのですよ?義母の前で。毎回毎回。
ある時は立って向きあってヤレ、ある時は四つん這いになってヤレ、ある時は脚の上げ方が悪い、ある時はもっと脚を広げろ、ある時は喘ぎ方の指導、ある時は吐精の際にジョゼフにかける言葉を決められ、ある時は庭でヤレと。
翌朝、食事をとっていると、奥に出したのか、“奥に注いでください”と言ったのか、締め上げて搾り取ったか、量は……食事の最中に使用人達の前でですよ?
結婚前のままでいられるとお思いですか?
私は心を持った人間なのが分かりませんか?」
父母「……」
私「まだ苦しめ足りないのですか?」
父母「エリス」
私「もし私が子爵家に戻り、また結婚を決められたら自害しますよ」
爺「そんなことはさせん!」
私「ううっ…」
爺「決めてきた時点でローランド子爵家を没落させてみせる」
ニ「お祖父様の代で潰せなかったら私の代でローランド子爵家を潰してみせましょう。
世間から何と言われようとかまわない。エリスを守れたら悪魔と呼ばれたっていいのです」
爺「マクシム。お前にないのはこれだ。
どんな事をしてもエリスを守るという覚悟だ。
すぐに帰ってデービッドによく説明をしておけ。継ぐはずの子爵家が無くなるかもしれないとな」
その後も、二時間かけて話し合ったが父が譲らなかった。
爺「そうか。では、先ず一つ。ジュエル。お前は勘当だ。家族としては二度と侯爵家の敷地に入ることを許さない。
従って、ローランド子爵家との縁も切る」
母「お父様!」
爺「エリス。選ぶがよい。
エリス・ローランドとして此奴らに振り回される不安を抱え続けるか、エリス・フィルドナとしてこの二人と決別するか」
父「そんなこと、許さない!」
爺「貴族法では許されている。
婚姻し、生家を出て、心身ともに独立した20歳以上の者は、生家に問題があり、受け入れ先が了承していれば養子という形で移籍することができる。
本人の意思でな。
これは昔、自分のことしか考えなかった当主達が子を無責任に嫁がせ、縁談を繰り返し、疲弊した子の気が触れたりしたことが相次いだ時代に制定された。
前提の条件は満たしておる。
そして養育権が儂に移っているということは生家に問題ありと国が認めているのだ。
フィルドナ家はエリスを受け入れるし、後ろ盾にもなる。
さあ、エリス。どうしたい?望みを叶えよう。
このままがいいならこのまま。ローランドに帰りたければ荷物を纏めさせるぞ」
私「エリス・フィルドナとして生きていきます」
父母「エリス!!」
爺「分かった」
父「ですが、ニコラ殿が」
爺「ニコラは跡継ぎだが、今は息子夫婦の伯爵家の籍に属している。決めるのは儂1人だ」
二「私も意義はありません。エリス・フィルドナを歓迎します」
爺「さあ、問題は解決した。
当家から去ってもらおう」
父「私は署名しませんから」
爺「生家に問題がある故の措置なのに、何故生家の同意が必要なのだ?
今回の移籍は儂とエリスの署名、そして陛下の署名をいただけば終わりだ。
生家には結果だけ通知が行く。
さあ、早く出て行け」
父「エリス!後悔するぞ!」
母「エリス!」
爺「摘み出してもかまわんが?」
こうして私はエリス・フィルドナとなった。
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