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晩餐
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晩餐の席には、宰相をはじめとする王の側近と、王族が集まった。
アーサー国王、ロザリーナ王妃、リオナード王太子、エリーズ王太子妃、ユーグ第二王子、ヴィクトリア第四王女、マリアナ第五王女。
第一、第二、第三王女は嫁いでいない。
「クリステル王女。其方の決断は簡単なものではなかった。14歳で独り他国へ嫁がねばならなかった。プリュム王国にも多大な迷惑をかけた。
よって、グリフ王国にて手厚く歓迎する」
「感謝いたします」
「イザーク、妻を席に案内して差し上げろ」
「はい、陛下。
姫、席はこちらだ」
「なんだ イザーク。妻なのだから名前で呼んだらどうだ。婚姻式はいつにするか決めたのか?」
「婚姻式はプリュムの王城であげて参りました。こちらで式を挙げるのなら、クリステルが成人してから彼女と決めます」
「そうか」
食事をしながら いろいろと質問をされ答えていたが、プリュムでは感じたことのない視線に戸惑った。
王妃の見定めるような目
リオナード王太子のねっとりした目
ヴィクトリア王女の無関心な目
ユーグ王子とマリアナ王女の好奇の目
そしてエリーズ王太子妃の敵意ある目
「クリステル、具合が悪いのか?」
「大丈夫です。少し緊張しているみたいです」
スッと将軍が私の額に触れた。
「熱はないな。食欲が無いなら、今は無理に食べることはない。後でさっぱりとしたものを部屋に運ばせよう」
「まあ、仲のよろしいこと。
従属国からの献上品がお気に召されたようですわね」
あからさまに王太子妃が見下してきた。
どうしようかと悩む間もなく将軍が反論した。
「エリーズ王太子妃殿下。プリュムはうちとサボデュールの戦いの被害国だ。無理に協力させたのであって感謝をすることがあっても そのような物言いは相応しくない」
「それを従属させたと言うのではありませんの?」
「はぁ…そんなことでは先が思いやられる。
サボデュールの他に敵国を作るつもりか?
外交や政治のことに立ち入るのは止めてもらおう」
「私は王太子妃なのですよ」
「だからですよ。単なる貴族令嬢のままなら首を落としてしまえばいい。貴女は王太子妃。その発言が国の意向と捉えられてしまえばどうなることか。
それとも、王太子妃はアーサー国王陛下よりも偉くなったのか?」
「なっ!そんな大袈裟な!」
「大袈裟ではない。
クリステルは 陛下の申し出を受けて嫁いできてくれたプリュム王国の若き王女だ。
つまりこれはグリフとプリュムの友好でもある。
勝手に国土に立ち入り戦争に使ってしまったグリフに非があると理解できなければ単なる野蛮族だ。
従属国ということにしたのは、サボデュール対策だ。逆恨みをしたり利用させないためだ。
実質は戦争前と何も変わらない。
それに貴女は何歳になったんだ?
国のためにと独り重責を背負い14歳で他国に嫁いだ未成年に向かって侮辱したのだぞ。心が無いのか」
「わ、私は、」
「止めろ、エリーズ。品の欠片も無い。
下賎な貴族令嬢が牽制しあう茶会とは違うんだ。
そろそろ王族籍に入っていることを悟ったらどうだ」
「リオナード様っ」
「がっかりするよ」
「っ!!」
「エリーズ。これは国王である私がイザークに命じた結果だ。国王としてクリステル王女とガルム王に正式な謝罪をした。それを無にするとはな。
部屋に戻っていいぞ。教養が足りていないようだから直ぐに厳しい妃教育を受けさせてやる」
「そんな、陛下」
「クリステル王女。其方がエリーズの立場なら今どう答えねばならないだろうか」
「……」
「申して欲しい」
「失言を認め謝罪をします。陛下にも謝罪を申し上げ、再度妃教育を受ける機会を得えてくださったことに感謝を申し上げ 退席します」
「早まったな。王太子妃はプリュム王国の王女に打診をすれば良かった。其方の姉王女ならリオナードと歳頃が合っただろう」
「わ、私はデリー公爵家の出身だということをお忘れですか!」
「だから信用してリオナードと結婚させてやっただろう。まさかまだ食い下がって恥の上塗りに精を出すとは嘆かわしい」
「陛下っ」
「お黙りなさい。他国の王女よりグリフのデリー公爵令嬢が勝るといいたいの?」
ここで王妃が威圧した。
「エリーズ!王妃も他国の王女だぞ!」
「っ! 私は、」
「黙れと言っているのが分からないの? デリー家に返品しても構わないのよ」
陛下は手を挙げて兵士を近寄らせ命じた。
「この愚か者を反省部屋に連れて行け。2週間 反省部屋から出すことも外部との接触も許すな」
「かしこまりました」
「陛下っ!リオナード様っ!」
王太子妃が連れて行かれると陛下が謝罪し、王太子も謝罪した。
「はぁ。公爵領で甘やかされたお嬢様と、国のために身を捧げるよう教育された王女とでは比較にならないわね。
クリステル王女、歓迎の晩餐なのに気を悪くさせてしまったわね」
王妃は溜息を吐いた。
「皆様のお心遣いに感謝いたします」
その後は和やかに過ごせたと思う。
アーサー国王、ロザリーナ王妃、リオナード王太子、エリーズ王太子妃、ユーグ第二王子、ヴィクトリア第四王女、マリアナ第五王女。
第一、第二、第三王女は嫁いでいない。
「クリステル王女。其方の決断は簡単なものではなかった。14歳で独り他国へ嫁がねばならなかった。プリュム王国にも多大な迷惑をかけた。
よって、グリフ王国にて手厚く歓迎する」
「感謝いたします」
「イザーク、妻を席に案内して差し上げろ」
「はい、陛下。
姫、席はこちらだ」
「なんだ イザーク。妻なのだから名前で呼んだらどうだ。婚姻式はいつにするか決めたのか?」
「婚姻式はプリュムの王城であげて参りました。こちらで式を挙げるのなら、クリステルが成人してから彼女と決めます」
「そうか」
食事をしながら いろいろと質問をされ答えていたが、プリュムでは感じたことのない視線に戸惑った。
王妃の見定めるような目
リオナード王太子のねっとりした目
ヴィクトリア王女の無関心な目
ユーグ王子とマリアナ王女の好奇の目
そしてエリーズ王太子妃の敵意ある目
「クリステル、具合が悪いのか?」
「大丈夫です。少し緊張しているみたいです」
スッと将軍が私の額に触れた。
「熱はないな。食欲が無いなら、今は無理に食べることはない。後でさっぱりとしたものを部屋に運ばせよう」
「まあ、仲のよろしいこと。
従属国からの献上品がお気に召されたようですわね」
あからさまに王太子妃が見下してきた。
どうしようかと悩む間もなく将軍が反論した。
「エリーズ王太子妃殿下。プリュムはうちとサボデュールの戦いの被害国だ。無理に協力させたのであって感謝をすることがあっても そのような物言いは相応しくない」
「それを従属させたと言うのではありませんの?」
「はぁ…そんなことでは先が思いやられる。
サボデュールの他に敵国を作るつもりか?
外交や政治のことに立ち入るのは止めてもらおう」
「私は王太子妃なのですよ」
「だからですよ。単なる貴族令嬢のままなら首を落としてしまえばいい。貴女は王太子妃。その発言が国の意向と捉えられてしまえばどうなることか。
それとも、王太子妃はアーサー国王陛下よりも偉くなったのか?」
「なっ!そんな大袈裟な!」
「大袈裟ではない。
クリステルは 陛下の申し出を受けて嫁いできてくれたプリュム王国の若き王女だ。
つまりこれはグリフとプリュムの友好でもある。
勝手に国土に立ち入り戦争に使ってしまったグリフに非があると理解できなければ単なる野蛮族だ。
従属国ということにしたのは、サボデュール対策だ。逆恨みをしたり利用させないためだ。
実質は戦争前と何も変わらない。
それに貴女は何歳になったんだ?
国のためにと独り重責を背負い14歳で他国に嫁いだ未成年に向かって侮辱したのだぞ。心が無いのか」
「わ、私は、」
「止めろ、エリーズ。品の欠片も無い。
下賎な貴族令嬢が牽制しあう茶会とは違うんだ。
そろそろ王族籍に入っていることを悟ったらどうだ」
「リオナード様っ」
「がっかりするよ」
「っ!!」
「エリーズ。これは国王である私がイザークに命じた結果だ。国王としてクリステル王女とガルム王に正式な謝罪をした。それを無にするとはな。
部屋に戻っていいぞ。教養が足りていないようだから直ぐに厳しい妃教育を受けさせてやる」
「そんな、陛下」
「クリステル王女。其方がエリーズの立場なら今どう答えねばならないだろうか」
「……」
「申して欲しい」
「失言を認め謝罪をします。陛下にも謝罪を申し上げ、再度妃教育を受ける機会を得えてくださったことに感謝を申し上げ 退席します」
「早まったな。王太子妃はプリュム王国の王女に打診をすれば良かった。其方の姉王女ならリオナードと歳頃が合っただろう」
「わ、私はデリー公爵家の出身だということをお忘れですか!」
「だから信用してリオナードと結婚させてやっただろう。まさかまだ食い下がって恥の上塗りに精を出すとは嘆かわしい」
「陛下っ」
「お黙りなさい。他国の王女よりグリフのデリー公爵令嬢が勝るといいたいの?」
ここで王妃が威圧した。
「エリーズ!王妃も他国の王女だぞ!」
「っ! 私は、」
「黙れと言っているのが分からないの? デリー家に返品しても構わないのよ」
陛下は手を挙げて兵士を近寄らせ命じた。
「この愚か者を反省部屋に連れて行け。2週間 反省部屋から出すことも外部との接触も許すな」
「かしこまりました」
「陛下っ!リオナード様っ!」
王太子妃が連れて行かれると陛下が謝罪し、王太子も謝罪した。
「はぁ。公爵領で甘やかされたお嬢様と、国のために身を捧げるよう教育された王女とでは比較にならないわね。
クリステル王女、歓迎の晩餐なのに気を悪くさせてしまったわね」
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その後は和やかに過ごせたと思う。
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