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バラされるレオナール
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シンシアが伯爵家に冤罪を掛けようとするなら仕方がない。
「父がいないと話せません」
「伯爵が戻り次第ここに連れて来させよう」
「門番に屋敷に入れずにこっちに来させるようにさせてください。シンシアに気付かれないように」
「遣いを出そう」
「お願いします」
夫人も交えて父の到着を待ちながら話をしていた。
「公爵家はレイナ嬢を指名していたのですね」
「そうですのよ。前に友人の家の茶会に出ていたレイナさんを見かけたレオナールが一目惚れをして、婚約できる日を待ち構えていたの。
日付けが変わりそうになって伯爵家に行こうとするから皆で止めたのよ。
夜中に求婚したら100%断られるって」
「母上!」
「承諾の返事をもらえるまで眠れなかったのよ。貰ったら大喜びした後に倒れ込むように寝てしまったわ」
「母上っ!」
「なのにこの子ったら、いざレイナさんが目の前に座ったら緊張して…。
レイナさんが帰った後は落ち込んだりニヤニヤしたり大変よ」
「母上!止めてください!」
「分かりますよ。こんなに可愛いレイナ嬢を婚約者に迎えられたらそうなります」
「殿下、レイナはもう私の部屋で暮らしています。譲れません」
ちょっと!誤解が生じるじゃないの!
「レオナール様!おかしな言い回しは止めてください!」
「レイナ、浮気は許さない」
「は?何言っちゃってるんですか!」
「失礼します。シャルム伯爵が到着なさいました」
「お通しして」
ちょっと!このままじゃ醜聞になっちゃう!
「これだけははっきりさせておきますが、私とレオナール様は清い婚約関係ですから!」
「当然だ」
「お父様」
「エルネスト殿下にご挨拶を申し上げます」
「シャルム伯爵、こんなかたちで呼び出して申し訳ない。大事な話がある」
殿下は見舞いに行った先でシンシアに何と言われたのかを父に話した。
「まさか、チャンスを無にするとは…」
「シンシアの話は事実ではないのですね」
「監禁はしていますが経緯と理由が違います。理由は危険だからです」
父はシンシアが私にした事を話した。
「というわけで、病気ということにして婚約者候補から除いていただこうかと思ったのです。
急だと変に思われますので1ヶ月程療養の実績を作ろうとしたのです」
「王子が来たから部屋から出してもらえたということか。
伯爵、シンシアをここに連れてくるか、レイナ嬢を伯爵家に連れて行きたいのですが」
「レイナは駄目です!」
「…シンシアを連れてこよう」
父がシンシアを迎えに行き、連れてきたが伯爵家の騎士に羽交締めにされていた。
「エルネスト様!」
「レオナール殿、椅子を借りるよ」
そう言って父はシンシアを椅子に座らせて縄で椅子の背もたれに縛りつけさせた。
「見てください!私はこうやっていつも虐待を受けて…」
騒ぐシンシアに向かって殿下は手を挙げた。
制されたシンシアは黙った。
「シンシア・シャルム。
君は勘違いをしていないか?
今回私の婚約者候補として王家から申し込みをしたのは、私が選んだわけではない。
今回のどの候補も愛していない。
君は私が助けて当然という言動をとっているが何故だ。
婚約者に決まって王子妃教育を終えた状態ならまだ分かる。候補のひとりという立場で何故王族に助けてもらえると思うのだ」
「エルネスト様?」
「其方に関して言えば、王家は伯爵家を評価して申し込んだだけ。其方を選んだわけではない。
扱いは当主が決めることだ。君は傷も無ければ痣も無い、肌艶は良く髪も手入れされ、痩せてもいない。叫んで主張できるほど元気で強い。何の問題もない。
君を外に出せない瑕疵があるということだ。
聞いたぞ。睡眠薬の件と毒蛇の件」
「そ、それは誤解てす」
「睡眠薬の時はレイナか湯に入った時は正常で、少し場を離れたら湯に沈んでいた。湯を吐かせた後もそのまま眠り続け、朝も何度も起こしたが全く起きず昼前にようやく起きた。
メイドの証言だ。途中私も何度か様子を見に行き起こそうとしたが起きなかった。
お前の持っていた睡眠薬を使ったならあの状態は納得だ」
「あれはお母様から眠れない時に貰った薬の残りです!」
「ひと包みではあんなにならない。2包み以上入れたはずだ。
それにお前は認めたではないか。毒蛇も一緒にやったと」
「あれは怖くて」
「親が怖くて殺人未遂2件を認めるわけがないだろう!」
「シンシア、いずれにしても婚約者候補の申し入れは取り消す」
「えっ」
「この手の問題は王族は受け入れない。
薬や毒について王族はとても敏感だ。
何かあった時、真っ先に其方を疑うし、安心して過ごすことができない。
それに私に嘘を述べて逃げようとした。
しかも王宮で保護しろだと!?
王族を騙し誘拐犯になれと言ったのだ。
もう父親の優しい処罰では済まない。
陛下と相談してまた戻ってくる。
伯爵、シンシアと伯爵邸に戻っていてくれ」
「かしこまりました」
「そんな!」
「父がいないと話せません」
「伯爵が戻り次第ここに連れて来させよう」
「門番に屋敷に入れずにこっちに来させるようにさせてください。シンシアに気付かれないように」
「遣いを出そう」
「お願いします」
夫人も交えて父の到着を待ちながら話をしていた。
「公爵家はレイナ嬢を指名していたのですね」
「そうですのよ。前に友人の家の茶会に出ていたレイナさんを見かけたレオナールが一目惚れをして、婚約できる日を待ち構えていたの。
日付けが変わりそうになって伯爵家に行こうとするから皆で止めたのよ。
夜中に求婚したら100%断られるって」
「母上!」
「承諾の返事をもらえるまで眠れなかったのよ。貰ったら大喜びした後に倒れ込むように寝てしまったわ」
「母上っ!」
「なのにこの子ったら、いざレイナさんが目の前に座ったら緊張して…。
レイナさんが帰った後は落ち込んだりニヤニヤしたり大変よ」
「母上!止めてください!」
「分かりますよ。こんなに可愛いレイナ嬢を婚約者に迎えられたらそうなります」
「殿下、レイナはもう私の部屋で暮らしています。譲れません」
ちょっと!誤解が生じるじゃないの!
「レオナール様!おかしな言い回しは止めてください!」
「レイナ、浮気は許さない」
「は?何言っちゃってるんですか!」
「失礼します。シャルム伯爵が到着なさいました」
「お通しして」
ちょっと!このままじゃ醜聞になっちゃう!
「これだけははっきりさせておきますが、私とレオナール様は清い婚約関係ですから!」
「当然だ」
「お父様」
「エルネスト殿下にご挨拶を申し上げます」
「シャルム伯爵、こんなかたちで呼び出して申し訳ない。大事な話がある」
殿下は見舞いに行った先でシンシアに何と言われたのかを父に話した。
「まさか、チャンスを無にするとは…」
「シンシアの話は事実ではないのですね」
「監禁はしていますが経緯と理由が違います。理由は危険だからです」
父はシンシアが私にした事を話した。
「というわけで、病気ということにして婚約者候補から除いていただこうかと思ったのです。
急だと変に思われますので1ヶ月程療養の実績を作ろうとしたのです」
「王子が来たから部屋から出してもらえたということか。
伯爵、シンシアをここに連れてくるか、レイナ嬢を伯爵家に連れて行きたいのですが」
「レイナは駄目です!」
「…シンシアを連れてこよう」
父がシンシアを迎えに行き、連れてきたが伯爵家の騎士に羽交締めにされていた。
「エルネスト様!」
「レオナール殿、椅子を借りるよ」
そう言って父はシンシアを椅子に座らせて縄で椅子の背もたれに縛りつけさせた。
「見てください!私はこうやっていつも虐待を受けて…」
騒ぐシンシアに向かって殿下は手を挙げた。
制されたシンシアは黙った。
「シンシア・シャルム。
君は勘違いをしていないか?
今回私の婚約者候補として王家から申し込みをしたのは、私が選んだわけではない。
今回のどの候補も愛していない。
君は私が助けて当然という言動をとっているが何故だ。
婚約者に決まって王子妃教育を終えた状態ならまだ分かる。候補のひとりという立場で何故王族に助けてもらえると思うのだ」
「エルネスト様?」
「其方に関して言えば、王家は伯爵家を評価して申し込んだだけ。其方を選んだわけではない。
扱いは当主が決めることだ。君は傷も無ければ痣も無い、肌艶は良く髪も手入れされ、痩せてもいない。叫んで主張できるほど元気で強い。何の問題もない。
君を外に出せない瑕疵があるということだ。
聞いたぞ。睡眠薬の件と毒蛇の件」
「そ、それは誤解てす」
「睡眠薬の時はレイナか湯に入った時は正常で、少し場を離れたら湯に沈んでいた。湯を吐かせた後もそのまま眠り続け、朝も何度も起こしたが全く起きず昼前にようやく起きた。
メイドの証言だ。途中私も何度か様子を見に行き起こそうとしたが起きなかった。
お前の持っていた睡眠薬を使ったならあの状態は納得だ」
「あれはお母様から眠れない時に貰った薬の残りです!」
「ひと包みではあんなにならない。2包み以上入れたはずだ。
それにお前は認めたではないか。毒蛇も一緒にやったと」
「あれは怖くて」
「親が怖くて殺人未遂2件を認めるわけがないだろう!」
「シンシア、いずれにしても婚約者候補の申し入れは取り消す」
「えっ」
「この手の問題は王族は受け入れない。
薬や毒について王族はとても敏感だ。
何かあった時、真っ先に其方を疑うし、安心して過ごすことができない。
それに私に嘘を述べて逃げようとした。
しかも王宮で保護しろだと!?
王族を騙し誘拐犯になれと言ったのだ。
もう父親の優しい処罰では済まない。
陛下と相談してまた戻ってくる。
伯爵、シンシアと伯爵邸に戻っていてくれ」
「かしこまりました」
「そんな!」
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