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婚約破棄
【 ロジェの視点 】
嫌な予感しかしない。
父上が領地に俺を呼び戻した。
到着すると兄上が険しい顔をして俺を出迎えた…というより、罪人を捕まえて連行しているといった方が正しい表現だろう。
連れてこられたのは三階の空き部屋だった。
椅子とテーブルだけが置かれ、そこにメイドが飲み物を置いて退室した。
母上は呼ばないのか。
「先にお前の口から事実確認をしたい。フォンヌ公爵家の次女リリー公女と関係を持ったのは本当か」
「……そのようです」
「説明をしろ」
「パーティでリリー公女が酔ったので部屋に連れて行って欲しいと頼まれました。
連れて行ってベッドに座らせました。テーブルの上の飲み物を取ってくれと言われて取ろうとしたら同じ色の飲み物が2種類ありました。甘い方が飲みたいから飲んで確かめてくれと言われ一口。
両方飲んでみて甘い方を渡しました。ですが彼女はグラスを落としてドレスを濡らしてしまったのです。メイドを呼ぼうとしましたが、棚の布を取ってと言われ取って渡しました。
その後の記憶が無く、起きたらリリー公女と裸で寝ていました。既に窓からは陽の光が漏れていて、シーツに少量の血が。
どういうことか分からず公女に聞くと、情熱的な夜を過ごしたと」
「全く記憶が無いのか」
「……公女との記憶ではなく、ユリナとの交わりの記憶が断片的に残っていて、よく分かりません。とにかく避妊薬を使うようにお願いしました」
「その後は?」
「何度か会いたいと手紙が届きましたが、断りの返事を出しました」
「いつの話だ」
「2ヶ月以上前です」
「そんな大事なことを何故報告しないんだ!」
「どうしても納得がいかなくて、調査を依頼しました。俺がユリナ以外の女に手を出すなんて考えられないのです」
そこで兄が、
「昨年 夜会で聞いたことがあります。柑橘系の皮のような渋味のある味の幻覚剤があると。
それを飲むと、飲んだ者の欲望が幻覚となって現れるそうです。数時間経つと効果が切れるそうで、罰ゲームで男だけの酒の場で飲ませて欲望を曝け出させて遊んでいると聞きました」
「柑橘系のジュースで、一つは普通で一つは渋めでした」
「はぁ…盛られたのだな。
だとすると、お前はユリナにしたい願望をリリー公女にしたということだろう。
参ったな。
よく聞け。リシュー子爵家とゲルズベル伯爵家が激怒していて、婚約破棄を告げてきた」
「ユリナが知ったということですか」
「問題のパーティでお前が公女と消えた後に戻らなかったことを出席者の多くが知っていて、更に公女があちこちで言いふらしているらしい。
先日 公女がリシュー邸に出向いてユリナに身を引くよう迫ったようだ。
ユリナではお前に相応しくないとか、事業のことで恩を売って婚約したのだろうとか、ロジェの子を婚外子にしたくないだろうとか言ったようだ。
ユリナは“エンヴェル侯爵が決めること”だと追い返したらしいが、元々はロジェが既成事実で成した婚約だ。それなのに身分の高い令嬢と一夜を過ごして子を成すなど許せない、事業に関しての契約も全て引き上げて婚約も解消ではなく破棄にする、ユリナは気付いているから二度と近寄るなと子爵の手紙には書いてあった」
「妊娠!?」
「公女のことを彼女は何て?」
「ユリナには会っていません」
「は?」
「裏を掴んでからと思いまして」
「まさか、パーティ後に一度も会っていないのか!」
「はい」
「悪手だよ、パーティの翌日にはロジェの口から説明しないと」
「ならば破棄は頷けるな。
今から幻覚剤のことを伝えても信じてはもらえないだろう」
「ユリナと別れるなんて嫌です!」
「面会の申し入れをしてみるが、断られたら我々は忙しくなるからお前にかまっていられない」
「え?」
「ロジェとユリナの婚約の条件は、ロジェがユリナを愛していて誠実であることだった。
別の女と寝て 会って説明責任も果たさず、不貞相手が孕んでいると直談判に行ってしまった以上 不誠実極まりないということになる。
既成事実後の誠意と信頼のために あの技術とデザインの権利は譲渡ではなく貸し出しになったんだ。破ればユリナが教えてくれた研磨方法とデザインを使わないと約束をしているんだ。
店頭の全てのエンヴェルカットの宝石を下げて、昔ながらのカットにし直すしかないし、貴族達からの受注分をキャンセルにしなくてはならない。詫びに回らねばならないだろう」
「王族からの受注も問題だ。
このキャンセルで多くの客が他の店に流れるだろう。原石を卸すだけになるかもしれない。
それに加えて貴族令嬢の純潔を奪った慰謝料と既に式の招待状が送られた段階の慰謝料は相当額だ。
没落することはないが エンヴェルは大打撃だ。その対応で私達は精一杯だろう。
公女との話し合いもしなくてはならない」
「申し訳ございません」
その後 すぐに、ユリナに会いたいと手紙を出すが子爵が断ってしまう。
なんとかするために 父上と一緒にゲルズベル領のリシュー邸に向かった。
到着したが全く歓迎などされていない。
応接間に通してもらうとゲルズベル伯爵とアランまでいた。アランは家族の仇を見たような顔をした。
嫌な予感しかしない。
父上が領地に俺を呼び戻した。
到着すると兄上が険しい顔をして俺を出迎えた…というより、罪人を捕まえて連行しているといった方が正しい表現だろう。
連れてこられたのは三階の空き部屋だった。
椅子とテーブルだけが置かれ、そこにメイドが飲み物を置いて退室した。
母上は呼ばないのか。
「先にお前の口から事実確認をしたい。フォンヌ公爵家の次女リリー公女と関係を持ったのは本当か」
「……そのようです」
「説明をしろ」
「パーティでリリー公女が酔ったので部屋に連れて行って欲しいと頼まれました。
連れて行ってベッドに座らせました。テーブルの上の飲み物を取ってくれと言われて取ろうとしたら同じ色の飲み物が2種類ありました。甘い方が飲みたいから飲んで確かめてくれと言われ一口。
両方飲んでみて甘い方を渡しました。ですが彼女はグラスを落としてドレスを濡らしてしまったのです。メイドを呼ぼうとしましたが、棚の布を取ってと言われ取って渡しました。
その後の記憶が無く、起きたらリリー公女と裸で寝ていました。既に窓からは陽の光が漏れていて、シーツに少量の血が。
どういうことか分からず公女に聞くと、情熱的な夜を過ごしたと」
「全く記憶が無いのか」
「……公女との記憶ではなく、ユリナとの交わりの記憶が断片的に残っていて、よく分かりません。とにかく避妊薬を使うようにお願いしました」
「その後は?」
「何度か会いたいと手紙が届きましたが、断りの返事を出しました」
「いつの話だ」
「2ヶ月以上前です」
「そんな大事なことを何故報告しないんだ!」
「どうしても納得がいかなくて、調査を依頼しました。俺がユリナ以外の女に手を出すなんて考えられないのです」
そこで兄が、
「昨年 夜会で聞いたことがあります。柑橘系の皮のような渋味のある味の幻覚剤があると。
それを飲むと、飲んだ者の欲望が幻覚となって現れるそうです。数時間経つと効果が切れるそうで、罰ゲームで男だけの酒の場で飲ませて欲望を曝け出させて遊んでいると聞きました」
「柑橘系のジュースで、一つは普通で一つは渋めでした」
「はぁ…盛られたのだな。
だとすると、お前はユリナにしたい願望をリリー公女にしたということだろう。
参ったな。
よく聞け。リシュー子爵家とゲルズベル伯爵家が激怒していて、婚約破棄を告げてきた」
「ユリナが知ったということですか」
「問題のパーティでお前が公女と消えた後に戻らなかったことを出席者の多くが知っていて、更に公女があちこちで言いふらしているらしい。
先日 公女がリシュー邸に出向いてユリナに身を引くよう迫ったようだ。
ユリナではお前に相応しくないとか、事業のことで恩を売って婚約したのだろうとか、ロジェの子を婚外子にしたくないだろうとか言ったようだ。
ユリナは“エンヴェル侯爵が決めること”だと追い返したらしいが、元々はロジェが既成事実で成した婚約だ。それなのに身分の高い令嬢と一夜を過ごして子を成すなど許せない、事業に関しての契約も全て引き上げて婚約も解消ではなく破棄にする、ユリナは気付いているから二度と近寄るなと子爵の手紙には書いてあった」
「妊娠!?」
「公女のことを彼女は何て?」
「ユリナには会っていません」
「は?」
「裏を掴んでからと思いまして」
「まさか、パーティ後に一度も会っていないのか!」
「はい」
「悪手だよ、パーティの翌日にはロジェの口から説明しないと」
「ならば破棄は頷けるな。
今から幻覚剤のことを伝えても信じてはもらえないだろう」
「ユリナと別れるなんて嫌です!」
「面会の申し入れをしてみるが、断られたら我々は忙しくなるからお前にかまっていられない」
「え?」
「ロジェとユリナの婚約の条件は、ロジェがユリナを愛していて誠実であることだった。
別の女と寝て 会って説明責任も果たさず、不貞相手が孕んでいると直談判に行ってしまった以上 不誠実極まりないということになる。
既成事実後の誠意と信頼のために あの技術とデザインの権利は譲渡ではなく貸し出しになったんだ。破ればユリナが教えてくれた研磨方法とデザインを使わないと約束をしているんだ。
店頭の全てのエンヴェルカットの宝石を下げて、昔ながらのカットにし直すしかないし、貴族達からの受注分をキャンセルにしなくてはならない。詫びに回らねばならないだろう」
「王族からの受注も問題だ。
このキャンセルで多くの客が他の店に流れるだろう。原石を卸すだけになるかもしれない。
それに加えて貴族令嬢の純潔を奪った慰謝料と既に式の招待状が送られた段階の慰謝料は相当額だ。
没落することはないが エンヴェルは大打撃だ。その対応で私達は精一杯だろう。
公女との話し合いもしなくてはならない」
「申し訳ございません」
その後 すぐに、ユリナに会いたいと手紙を出すが子爵が断ってしまう。
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