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増える家族 S
しおりを挟む専属メイドのルイーズから、早産のきっかけ話をしていた3人が解雇されたことを聞かされた。
「若旦那様は絶対に不貞はしていない、夜這いがあっても追い出したとおっしゃっております」
「ルイーズは信じられる?」
「あの剣幕からすると冤罪かと思います。全く間髪入れずに怒りを露わになさっておりましたので」
ポロポロと涙が溢れて来た。
「若旦那様をお呼びしますね」
そう言って、ルイーズはエリアス様を連れて来てしまった。
エ「シャルロット」
私「っ」
エ「こんなに泣いて」
私「っ」
エ「他の女なんかに手を付けるわけがないじゃないか」
私「っ……よ…え…」
ル「“妖艶な女が言い寄ったのだろう”と仰っております」
エ「あのな。乳とケツがでかいだけで何になる。
妖艶?何の魅力も感じない。本当に魅力的だったらとっくに良縁に恵まれて嫁いでいるはずだろう」
私「っ……だっ……き…め」
ル「“だって、生娘からも言い寄られたんだろう”と仰っております」
エ「生娘が夜這いをかけるときは妾や金目的か、そうでなければ生娘を演じているんだよ。
俺は王子じゃない。子爵家の既婚者だ。しかも王命婚姻だ。本当に生娘だったとしても責任を取って娶るなんてことにはならない。
生娘が夜這いに来たらドン引きだ。
始めからそんな調子じゃ、後々アバズレになるしかないだろう。絶対に他の貴族や好みの使用人に誘いをかけるようになる」
私「っ……じゃ…つ……い」
ル「“じゃあ摘み食いだけしてるかも”と仰っております」
エ「すごいな。何で分かるんだよ」
ル「お褒めいただきありがとうございます」
エ「そんな事をしたいなら とっくにヤってる」
私「……ほ…」
エ「本当だ。寧ろあれだけ毎夜愛でていたのに疑われるなんて。いくら俺が悪かったからといって、週1回なんて条件を受け入れるんじゃなかった」
私「……ご…め…」
エ「早く泣き止んでくれ。息子の名前を決めないと陛下に叱られる」
泣き止んだ後、出産以来会っていなかった息子に会った。目はパッチリと開き動いていた。
「やっぱりエリアス様似ですね」
「次はシャルロットに似た子を産んでくれないか」
「次?」
「できれば もうひとり欲しい。シャルロットが良ければ」
「直ぐですか?」
「俺達は別れない。だから急ぐ必要はない。
もう王命婚姻は終わった。これからは恋愛婚だ。
改めて式をして誓いをたてよう」
「それは…もう十分です」
「俺は誓いをたてたが、シャルロットに誓ってもらえていない。だから俺のために式をしてシャルロットに誓いをたてて欲しい」
「……」
「何かあったら俺に直接ぶつけてくれ」
「浮気されたくない」
「しない。容疑のかかった女のいる屋敷はもちろん、誘いがあった場所全てにシャルロットを連れて紹介して回ることにした。だから早く回復してくれ」
3ヶ月後にもう一度式を挙げた。
そして1年後、エリアス様と一緒に誘惑のあった出張先に連れて行かれ、問題の女性の前でイチャつき、夜には私を愛でて声を響かせた。
翌朝の恥ずかしかったことといったら…。
「俺はシャルロットの尻に敷かれているんだ。彼女が寝所に来ないだけで辛くなるし、部屋に立て篭もられた時もハシゴで外から侵入しようとしたし、同じ王都内でも実家に帰られると気が気じゃなくて毎日押し掛けてしまうし、許して欲しくて土下座をしたこともあるんだ。
毎夜愛でても足りないのにお預けを食らったときは 泣き落としを使おうと思ったこともある。
愛しているのに浮気などするわけが無い。
だから二度と夜這いはかけないでくれ」
これを晩餐の場で言うものだから相手の女性は真っ赤になって退席したり泣き出したり。
だけど
「エリアス様」
「脱がせてくれるのか」
ボタンを外しながら
「大好きです」
「……ボタンがとか言わないよな」
「エリアス様が大好きです」
「シャルロット!」
「くっ、苦しいっ」
「やっと気持ちが通じた!」
「でも浮気したらコレをはめますね」
アレの根本に装置する金の枷を見せた。それは通常の時の太さから少し小さく作ったもので、ずらすこともできない。勃起したらとんでもないことになる男にとっては恐ろしい拷問器具だった。
「ど、どうやって外すんだ」
「装着は簡単なんですけど、外すのは手間らしいです。少しでも鬱血したら無理らしいですよ。
一応装飾品に見えるよう金の腕輪のように作らせました。家紋も彫ってあって、私の瞳の色の宝石も付けました。素敵ですよね」
「なんて物を考えるんだ…」
「ルイーズと乳母に相談をして意見を出し合っているうちにコレに辿り着きました」
「た、確かに素晴らしい。使う機会は無いがな」
「鬱血したら腐り落ちるのを待つか、金を高熱で溶かすしか無さそうだと職人さんが説明してくださいました」
「もし何か聞いても冤罪だから、装着する前に無実を証明する機会をくれ。頼む!」
「ふふっ」
6年後、2人目が9ヶ月に入った頃に陣痛が来て早く産まれた。悪阻が酷く栄養が取れなかったからか、小さかった。五体満足ではあるが、風邪などをうつすと命に関わるので隔離された。
1年後、ようやく屋敷内でのお披露目が叶ったのは双子の兄妹だった。2人とも瞳の色はエリアス似だったが後はシャルロット似だった。
「僕と似てない」
そう言いながらベビーベッドを覗くのは長男ニコラだ。
「瞳は一緒よ」
「……」
「父上は僕より母上似のこの子達の方が可愛いみたいだ」
「そんなことないわ」
実際はそんなことはあった。
特に双子の妹ミリアンが可愛くて仕方がないエリアスは、ミリアンのための財産を移したり、まだ生まれて1年しか経っていないのに、ハイクオリティの宝石を使った様々なものを作らせようとしていた。他にも敷地内を走らせるミリアン用の小さな馬車を特注依頼し、ロバを調教させていた。
シャルロットは平等にとエリアスに頼んだ。
「無理に決まっているだろう。シャルロットにそっくりの女の子だぞ?」
「だけどまだ、ニコラにはその気持ちは理解できません。父親を巡ってライバルになってしまいます。
知らないところでミリアンが危険な目に遭う可能性もあります。子供の嫉妬はつい手が出てしまいますから」
弟や妹が生まれて疎外感を感じた上の子が、赤ちゃんにクッションを押し付けたり、幼い頃に階段から突き落としたり川に落としたりして攻撃してしまう場合があるらしい。事例を乳母が教えてくれた。
エリアスは3人平等を心掛け、ニコラには二人だけで話しをする時間を定期的にとった。
シャルロットは必ず寝る前に、ニコラに絵本を一冊読み聞かせた。
成長するに連れてニコラの心も育ち、双子に嫉妬をすることはなくなった。
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