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ランドールの後悔
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【 ランドールの視点 】
翌日、10時頃 宿の従業員がエメール侯爵令息が来ていると報せに来た。
父上とロビーを降りていくとエリカも一緒だった。
アリエスは連れてきていないようだった。
「フェルス伯爵、お久しぶりです」
「エメール侯爵令息、お久しぶりです。
こちらは息子のランドールと申します」
「お見かけしたことがありますよ。
それで、何用でしょう」
「私どもはエリカに話があってこちらまで参りました」
「どうぞ、話してください」
「エリカと我々の3人で話をしたいのです」
「それは許可できません」
「失礼ですが、エリカとは他人ではありませんか」
「エリカはエメール侯爵家が保護しているレディーです。絶対に彼女を1人にしませんよ」
「仕方ありませんね。このままお話ししましょう。
エリカ、フェルス家に戻って来なさい」
「嫌です」
「アリエスはランドールの子だろう」
「違います」
「ランドールに似ているから間違いない」
「フェルス家にアリエスを望む権利はございません」
「エリカ。戻って来てくれ。先日母上の侍女から避妊薬の件を聞き出した。悪かった。意地を張らずに戻って来てくれ」
「絶対に嫌です」
「どうしてだ」
「価値がないからです。
婚約を無理矢理解消させて口説いて結婚したくせに3年子ができなかったからと、行き場のない私を捨てるクズ男。
執拗にいびり、避妊薬を飲ませ続けた頭のおかしな母親。
卑怯な息子の犯罪紛いの非道を知っていて3年の条件を付け、頭のおかしな妻が醜い醜態を晒しても無関心をきめこむ名ばかり当主の父親。
そこに戻れと?何の拷問ですか」
「なっ!」
「エリカ!」
「無理矢理連れ戻したら犯罪ですからね。
恨みを持った人間を側に置くことがどんなことか身をもって分からせましょうか?」
「ならばアリエスだけ返してもらおう」
「エリカ、君らしくないぞ。どうしてしまったんだ」
「お陰様で無力な女でいるのを止めました。
それにアリエスはフェルス家と血の繋がりがあろうとも私だけの子です。何故なら、フェルス家は自ら親権を放棄したからです」
「何を言っているんだ」
「婚姻中の妊娠でも、離縁した時点で胎児を放棄したとみなすと法律で定められています。産んだ母親だけが親権を持つのです。
普通はもう少し様子を見て医師の診察を受けさせるらしいですね。ですが一刻も早く私を追い出したかったフェルス家は、それをすることもなく私を平民におとしました。
明確な意思表示です。誰に泣き付いてもどうにもなりませんよ。
私を殺しても親権はフェルス家に移りません。もう私の死後のアリエスの受け入れ先は決まっていますから無駄ですよ」
「考え直してくれ。あの2人は追い出すから」
「あの2人?夫人と新しい妻ですか?
私には関係ありません。伯爵夫妻とランドールとその妻と子がフェルス家の籍から抜けるなら、私とアリエスが戻ってもいいですよ?
まあ、その後解体しますけど」
「フェルス伯爵。
エリカに非は1つもありませんが、あなた方にはあります。嫁と胎の子を捨てたことは覆りません。
エリカとアリエスを守るためならエメール家は何でもやりますよ。
二度とエリカとアリエスの前に現れないでください。
エリカ、行こう」
「はい、リュカ様」
エリカは侯爵令息に手を繋がれ去っていった。
私と父上はフェルス邸に戻るまで無言だった。
フェルス邸に戻り、エリカと結婚したときの肖像画を眺めていた。
金色の髪 私と同じ濃い青の瞳 小さな手。
パパと呼ばれているのは私のはずだった。
母上を呼んで父上が事の顛末を話した。
「エリカがランドールの息子を産んでいた!?」
「そうだ。最後の避妊に失敗したらしい。ランドールの幼少期によく似ていた」
「連れ帰らなかったのですか!」
「確認したが、追い出した時点で胎児に関する権利を放棄したことになっている」
「放棄などしていません!」
「妊婦を追い出した時点で放棄になると法律が定めているんだ」
「そんな!うちの唯一の跡取りになる孫なのですよ!」
「おまえが画策して男児を産める嫁を追い出して、息子に似ない女児しか産まない女を連れて来たのだろう」
「っ!」
「エメール侯爵家がエリカを守っていて手が出せん。
さっさとキシリナにランドールに似た男児を産ませろ!」
それ以来フェルス家はおかしくなった。
父上は母上とキシリナに私に似た男児を産めと毎日催促するし、母上は追い出されるのを恐れて男児が産まれる迷信を信じて馬鹿みたいなことをして祈っている。
そして私は、
ギシッギシッギシッギシッ
「エリカっ!エリカっ!愛してるよ」
「ううっ…」
「エリカ、今度は私に似た女の子を産んでくれ」
「ううっ…」
「エリカ!!」
キシリナをエリカに見立てて抱くようになり、その間中キシリナは泣いているがどうでもいい。
その後キシリナはまた妊娠して女児を産み、母上とキシリナと娘3人をまとめて実家へ帰した。
離縁後、父上は後妻を娶り私も三度目の結婚をした。
翌日、10時頃 宿の従業員がエメール侯爵令息が来ていると報せに来た。
父上とロビーを降りていくとエリカも一緒だった。
アリエスは連れてきていないようだった。
「フェルス伯爵、お久しぶりです」
「エメール侯爵令息、お久しぶりです。
こちらは息子のランドールと申します」
「お見かけしたことがありますよ。
それで、何用でしょう」
「私どもはエリカに話があってこちらまで参りました」
「どうぞ、話してください」
「エリカと我々の3人で話をしたいのです」
「それは許可できません」
「失礼ですが、エリカとは他人ではありませんか」
「エリカはエメール侯爵家が保護しているレディーです。絶対に彼女を1人にしませんよ」
「仕方ありませんね。このままお話ししましょう。
エリカ、フェルス家に戻って来なさい」
「嫌です」
「アリエスはランドールの子だろう」
「違います」
「ランドールに似ているから間違いない」
「フェルス家にアリエスを望む権利はございません」
「エリカ。戻って来てくれ。先日母上の侍女から避妊薬の件を聞き出した。悪かった。意地を張らずに戻って来てくれ」
「絶対に嫌です」
「どうしてだ」
「価値がないからです。
婚約を無理矢理解消させて口説いて結婚したくせに3年子ができなかったからと、行き場のない私を捨てるクズ男。
執拗にいびり、避妊薬を飲ませ続けた頭のおかしな母親。
卑怯な息子の犯罪紛いの非道を知っていて3年の条件を付け、頭のおかしな妻が醜い醜態を晒しても無関心をきめこむ名ばかり当主の父親。
そこに戻れと?何の拷問ですか」
「なっ!」
「エリカ!」
「無理矢理連れ戻したら犯罪ですからね。
恨みを持った人間を側に置くことがどんなことか身をもって分からせましょうか?」
「ならばアリエスだけ返してもらおう」
「エリカ、君らしくないぞ。どうしてしまったんだ」
「お陰様で無力な女でいるのを止めました。
それにアリエスはフェルス家と血の繋がりがあろうとも私だけの子です。何故なら、フェルス家は自ら親権を放棄したからです」
「何を言っているんだ」
「婚姻中の妊娠でも、離縁した時点で胎児を放棄したとみなすと法律で定められています。産んだ母親だけが親権を持つのです。
普通はもう少し様子を見て医師の診察を受けさせるらしいですね。ですが一刻も早く私を追い出したかったフェルス家は、それをすることもなく私を平民におとしました。
明確な意思表示です。誰に泣き付いてもどうにもなりませんよ。
私を殺しても親権はフェルス家に移りません。もう私の死後のアリエスの受け入れ先は決まっていますから無駄ですよ」
「考え直してくれ。あの2人は追い出すから」
「あの2人?夫人と新しい妻ですか?
私には関係ありません。伯爵夫妻とランドールとその妻と子がフェルス家の籍から抜けるなら、私とアリエスが戻ってもいいですよ?
まあ、その後解体しますけど」
「フェルス伯爵。
エリカに非は1つもありませんが、あなた方にはあります。嫁と胎の子を捨てたことは覆りません。
エリカとアリエスを守るためならエメール家は何でもやりますよ。
二度とエリカとアリエスの前に現れないでください。
エリカ、行こう」
「はい、リュカ様」
エリカは侯爵令息に手を繋がれ去っていった。
私と父上はフェルス邸に戻るまで無言だった。
フェルス邸に戻り、エリカと結婚したときの肖像画を眺めていた。
金色の髪 私と同じ濃い青の瞳 小さな手。
パパと呼ばれているのは私のはずだった。
母上を呼んで父上が事の顛末を話した。
「エリカがランドールの息子を産んでいた!?」
「そうだ。最後の避妊に失敗したらしい。ランドールの幼少期によく似ていた」
「連れ帰らなかったのですか!」
「確認したが、追い出した時点で胎児に関する権利を放棄したことになっている」
「放棄などしていません!」
「妊婦を追い出した時点で放棄になると法律が定めているんだ」
「そんな!うちの唯一の跡取りになる孫なのですよ!」
「おまえが画策して男児を産める嫁を追い出して、息子に似ない女児しか産まない女を連れて来たのだろう」
「っ!」
「エメール侯爵家がエリカを守っていて手が出せん。
さっさとキシリナにランドールに似た男児を産ませろ!」
それ以来フェルス家はおかしくなった。
父上は母上とキシリナに私に似た男児を産めと毎日催促するし、母上は追い出されるのを恐れて男児が産まれる迷信を信じて馬鹿みたいなことをして祈っている。
そして私は、
ギシッギシッギシッギシッ
「エリカっ!エリカっ!愛してるよ」
「ううっ…」
「エリカ、今度は私に似た女の子を産んでくれ」
「ううっ…」
「エリカ!!」
キシリナをエリカに見立てて抱くようになり、その間中キシリナは泣いているがどうでもいい。
その後キシリナはまた妊娠して女児を産み、母上とキシリナと娘3人をまとめて実家へ帰した。
離縁後、父上は後妻を娶り私も三度目の結婚をした。
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