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当然バレる
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王都の屋敷は初めてだった。
「ティーティア、口が開いてるわよ」
「うっ」
「ティーティアも初めてだからビックリしたんだよな」
王都の屋敷だから領地の屋敷より小さいが…
「なんでこんなに豪華なの」
まさかヤバいことしてるんじゃ…
「実はこの屋敷は王家所有の物件なの。格安で借りているのよ」
いいの?そんな好待遇。他の貴族が文句言わない!?
「最初は贈呈すると言われたんだ。間をとって格安で借りることにしたんだよ」
「そうですか」
「ユリウス、ティーティア。この屋敷の執事のマークスとメイド長のタニアよ」
「おぼっちゃま、お嬢様、よろしくお願いします」
「タニアと申します。早速ですが屋敷の中をご案内いたします。場所が分からないと不便でございますから」
「ユリウス、ティーティアはかなりの方向音痴だ。まあ、そこがまた可愛いティーティアの魅力なのだが。兄のユリウスが先に覚えてフォローしてやってくれ」
「はい 」
ユリウスが私の手をとりタニアの後に続いた。
翌朝。
「ティーティアはどうしたのですか」
「環境が変わってあまり寝れなかったようだ」
私はソファに座るお父様に抱っこしてもらってウトウトしている。
ポンポンされたら寝ちゃう……
「あら、寝ちゃったわ」
「ギリギリまで寝かせよう」
一時間後に目覚めた私は皆と遅れて朝食をとった。
「ユリウス兄様は」
「おぼっちゃまは騎士達のところでございます」
「そう。部屋に行きたいわ。貴族名鑑を持ってきてもらえるかしら」
「かしこまりました」
メイドに持ってきてもらった本を見ていくと確信できた。
ここは恋愛小説の中だ。
外国でヒットした小説が映画化し、それが乙女ゲームになった“愛の宣誓”。
「あのゲームに私は出てきてなかったような」
気にしなくていいのかな。
だけどウィルソン家の名前があるのよね。
1年後、ダリウスが学園に入学する時に留学生のマリエッタがやってくる。
桃色の髪と瞳の女は可愛く天真爛漫で学園の高位貴族を虜にしていく。
その中には第一王子もいた。
彼もマリエッタに傾倒し、終いには婚約者に勝手に解消を告げてマリエッタと結婚しようとするが極秘で訪れた教会で婚約時の宣誓書に署名をしたところ青い炎に包まれた。
炎は消えず焼け死んで鎮火した。焼死体から黒いドロっとした液体が出てきた。
神父が思わず聖水をかけると蒸発して消えた。
すると傾倒していた王子や令息達は我に返った。
何かされて魅了されていたのだろうがその証明ができない限り許さないと元婚約者の家門が訴えた。
それにより第一王子の王位継承権は剥奪。
他の令息達も後継から外された。
婿入りが決まっていた令息達は破談が決まり、廃嫡された。
その後、第一王子は身分を隠して旅に出るのだが平民の女と運命的な出会いをして愛を貫く長めの話。
「はぁ~。登場人物がマリエッタ以外全員この名鑑に載ってるよね」
ダリウスがどうなろうと構わなかったけどユリウスの家のことだしなぁ。
「ミライは何を悩んでいるのかな」
「ニ年後のマリエッタの魅了をどう防ぐか悩んでて……へ?」
振り返ると笑顔のお父様が立っていた。
今、未来って言った!?
お父様が隣の椅子に座ると私の肩に手を置き微笑んだ。
「洗いざらい話してもらおうか、ミライ」
「グッ」
どうしよう!どうしよう!私どうなっちゃうの!?
望んでこうなったわけじゃない。岡本未来の人生に不満は無かったし、それに小説の中なんて言ったら……
「真実を知りたい。その権利が私達にはあると思わないか」
そうだ……彼らはティーティアの親だ……
「私の名前はミライ・オカモト。歳は19。
人間の国で生まれ育ちましたが、この世界とはかなり違う世界です。
一ヶ月以上前に起きたらこの体になっていました」
「高熱が出て痙攣を起こしていたのに医者を呼んでいる間に治ったのは……治ったのではなくてその時にティーティアは死んでしまったのか」
「分かりません。ですが彼女の記憶は全てあるようです。単に彼女の体が見せているのかもしれませんが、彼女の魂と融合したと感じています」
「ユリウスを義兄として迎えたのは?」
「見過ごせなかったからです。
彼は不義の子ではありません。よく見ればわかるのに色如きに惑わされ兄弟達から虐げられていました。
例え不義の子だとしても子に罪はありません。咎められるべきは親の方です。
あの兄弟のやっていたことはなんの正当性もない弱い者虐めでした。
懲らしめようと思ってやりましたが懲りてないようでしたので」
「君は詰めが甘い。ティーティアじゃないと簡単に分かってしまう。しかも寝ぼけて自分の名前はミライだから間違えるなと怒っていた」
「すみません」
「何故強いんだ?」
「剣の選手だったからです。
フェンシングという細い剣の競技です。
人を傷付けるためのものではありません。
その他に剣舞というものを習っていました」
「剣舞か…異国の芸人が王宮で演じたことがある。
さて、ミライ。これからどうしたい」
「どうと言われても10歳の体ですし、やれることはメイドか店の下働きか、数年したら兵士も可能かもしれませんがそれは茨の道でしょう」
「そうではない。ヴェリテ伯爵令嬢としてだ。まあ、まだ早いな。まだ8年はあるからゆっくり考えてくれ」
「夫人には」
「まだ言わないでおく。気が付いているとは思うが口にしないということはティーティアの魂を失ったと認めたくないのであろう」
「分かりました。
それともう一つ、信じがたいと思いますがこの世界は小説の世界なのです。貴族名鑑を見たら貴族の登場人物が全員載っていました」
小説の話をしたら父伯爵は溜息をついた。
「つまり、悪魔付きなのか魔女なの欲深い何かなのかは分からないがマリエッタという女が第一王子と高位貴族の令息を虜にして失脚させるというのだな」
「はい。ですが私の行動が少しずつ物語を変えてしまっているはずでどう影響するかは分かりません」
「我々は…ヴェリテ家は?」
「登場しないので分かりませんがウィルソン家のダリウスは当事者となります」
「死んだマリエッタに聖水をかけたのだな」
「はい。マリエッタから出てきた黒いドロっとしたものにかけたら消えました」
「分かった。そろそろ支度をしよう」
「はい。伯爵様」
「パパでいい」
「はい、パパ」
「ティーティア、口が開いてるわよ」
「うっ」
「ティーティアも初めてだからビックリしたんだよな」
王都の屋敷だから領地の屋敷より小さいが…
「なんでこんなに豪華なの」
まさかヤバいことしてるんじゃ…
「実はこの屋敷は王家所有の物件なの。格安で借りているのよ」
いいの?そんな好待遇。他の貴族が文句言わない!?
「最初は贈呈すると言われたんだ。間をとって格安で借りることにしたんだよ」
「そうですか」
「ユリウス、ティーティア。この屋敷の執事のマークスとメイド長のタニアよ」
「おぼっちゃま、お嬢様、よろしくお願いします」
「タニアと申します。早速ですが屋敷の中をご案内いたします。場所が分からないと不便でございますから」
「ユリウス、ティーティアはかなりの方向音痴だ。まあ、そこがまた可愛いティーティアの魅力なのだが。兄のユリウスが先に覚えてフォローしてやってくれ」
「はい 」
ユリウスが私の手をとりタニアの後に続いた。
翌朝。
「ティーティアはどうしたのですか」
「環境が変わってあまり寝れなかったようだ」
私はソファに座るお父様に抱っこしてもらってウトウトしている。
ポンポンされたら寝ちゃう……
「あら、寝ちゃったわ」
「ギリギリまで寝かせよう」
一時間後に目覚めた私は皆と遅れて朝食をとった。
「ユリウス兄様は」
「おぼっちゃまは騎士達のところでございます」
「そう。部屋に行きたいわ。貴族名鑑を持ってきてもらえるかしら」
「かしこまりました」
メイドに持ってきてもらった本を見ていくと確信できた。
ここは恋愛小説の中だ。
外国でヒットした小説が映画化し、それが乙女ゲームになった“愛の宣誓”。
「あのゲームに私は出てきてなかったような」
気にしなくていいのかな。
だけどウィルソン家の名前があるのよね。
1年後、ダリウスが学園に入学する時に留学生のマリエッタがやってくる。
桃色の髪と瞳の女は可愛く天真爛漫で学園の高位貴族を虜にしていく。
その中には第一王子もいた。
彼もマリエッタに傾倒し、終いには婚約者に勝手に解消を告げてマリエッタと結婚しようとするが極秘で訪れた教会で婚約時の宣誓書に署名をしたところ青い炎に包まれた。
炎は消えず焼け死んで鎮火した。焼死体から黒いドロっとした液体が出てきた。
神父が思わず聖水をかけると蒸発して消えた。
すると傾倒していた王子や令息達は我に返った。
何かされて魅了されていたのだろうがその証明ができない限り許さないと元婚約者の家門が訴えた。
それにより第一王子の王位継承権は剥奪。
他の令息達も後継から外された。
婿入りが決まっていた令息達は破談が決まり、廃嫡された。
その後、第一王子は身分を隠して旅に出るのだが平民の女と運命的な出会いをして愛を貫く長めの話。
「はぁ~。登場人物がマリエッタ以外全員この名鑑に載ってるよね」
ダリウスがどうなろうと構わなかったけどユリウスの家のことだしなぁ。
「ミライは何を悩んでいるのかな」
「ニ年後のマリエッタの魅了をどう防ぐか悩んでて……へ?」
振り返ると笑顔のお父様が立っていた。
今、未来って言った!?
お父様が隣の椅子に座ると私の肩に手を置き微笑んだ。
「洗いざらい話してもらおうか、ミライ」
「グッ」
どうしよう!どうしよう!私どうなっちゃうの!?
望んでこうなったわけじゃない。岡本未来の人生に不満は無かったし、それに小説の中なんて言ったら……
「真実を知りたい。その権利が私達にはあると思わないか」
そうだ……彼らはティーティアの親だ……
「私の名前はミライ・オカモト。歳は19。
人間の国で生まれ育ちましたが、この世界とはかなり違う世界です。
一ヶ月以上前に起きたらこの体になっていました」
「高熱が出て痙攣を起こしていたのに医者を呼んでいる間に治ったのは……治ったのではなくてその時にティーティアは死んでしまったのか」
「分かりません。ですが彼女の記憶は全てあるようです。単に彼女の体が見せているのかもしれませんが、彼女の魂と融合したと感じています」
「ユリウスを義兄として迎えたのは?」
「見過ごせなかったからです。
彼は不義の子ではありません。よく見ればわかるのに色如きに惑わされ兄弟達から虐げられていました。
例え不義の子だとしても子に罪はありません。咎められるべきは親の方です。
あの兄弟のやっていたことはなんの正当性もない弱い者虐めでした。
懲らしめようと思ってやりましたが懲りてないようでしたので」
「君は詰めが甘い。ティーティアじゃないと簡単に分かってしまう。しかも寝ぼけて自分の名前はミライだから間違えるなと怒っていた」
「すみません」
「何故強いんだ?」
「剣の選手だったからです。
フェンシングという細い剣の競技です。
人を傷付けるためのものではありません。
その他に剣舞というものを習っていました」
「剣舞か…異国の芸人が王宮で演じたことがある。
さて、ミライ。これからどうしたい」
「どうと言われても10歳の体ですし、やれることはメイドか店の下働きか、数年したら兵士も可能かもしれませんがそれは茨の道でしょう」
「そうではない。ヴェリテ伯爵令嬢としてだ。まあ、まだ早いな。まだ8年はあるからゆっくり考えてくれ」
「夫人には」
「まだ言わないでおく。気が付いているとは思うが口にしないということはティーティアの魂を失ったと認めたくないのであろう」
「分かりました。
それともう一つ、信じがたいと思いますがこの世界は小説の世界なのです。貴族名鑑を見たら貴族の登場人物が全員載っていました」
小説の話をしたら父伯爵は溜息をついた。
「つまり、悪魔付きなのか魔女なの欲深い何かなのかは分からないがマリエッタという女が第一王子と高位貴族の令息を虜にして失脚させるというのだな」
「はい。ですが私の行動が少しずつ物語を変えてしまっているはずでどう影響するかは分かりません」
「我々は…ヴェリテ家は?」
「登場しないので分かりませんがウィルソン家のダリウスは当事者となります」
「死んだマリエッタに聖水をかけたのだな」
「はい。マリエッタから出てきた黒いドロっとしたものにかけたら消えました」
「分かった。そろそろ支度をしよう」
「はい。伯爵様」
「パパでいい」
「はい、パパ」
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