【完結】転生令嬢は遠慮いたしません!

ユユ

文字の大きさ
24 / 38

ベレニスとジョルジーヌ 4

しおりを挟む
【 ジョルジーヌの視点 】


それからニヶ月が経ち、私達は王都での就職を諦めてどの土地に行くか調べていた。

そこにティーティア様から手紙が届いた。

『ジョルジーヌ、何て?』

『明後日の朝、馬車の迎えを出すから乗って王都のある場所に来て欲しいと書いてあるわ』

『朝なんて珍しいわね』

『帰りは本屋に寄って観光案内を見てみない?』

『栄えてる所なら求人あるかもしれないものね』






当日、

「はぁ。ティーティア様ともお別れね」

「あんなに素敵な令嬢はいないのに」

「残念だけど。お別れの贈り物も後で考えましょう」



到着すると御者が店を指差した。

小さそうな店舗で看板がまだ出ていない。
ノックをすると中からティーティア様が出ていらした。

「さあ、入ってください!」

中に入るととても品のある内装の小さなお店だった。

「ここ、私の店なのです。商品はこれから並べます。こっちの部屋は商談室、奥は水廻りです」

手を引かれて奥に行くと、奥も改装されてとても綺麗だった。

「二階も見てください」

二階の部屋も改装したてで品のあるお洒落な部屋だった。かなり詳しく説明するので疑問を投げかけた。

「それはね、一階から三階まで私が全て考えたからです。この収納もドレッサーもベッドも。ガラスのショーケースや棚、トイレや浴室。大抵の物が特注になりました」

「もの凄い大金をかけたのですね」

「それがかかっていないのです。
改装を請け負った商会長さんが、真似させてくれたら無料にすると提案なさったので受けました。店を除いて許可を出したので無料なのです。

トイレなんか陛下や宰相閣下達が欲しがるので売りました。トイレを作らせた所で委託販売をしてもらいます」

ベレニスも瞳を輝かせてベッドの下の引き出しを開けていた。


一階に戻り、商談室に座った。

「素敵な椅子……」

「それも特注ですのよ。

話は変わりますが職は決まりましたか」

「いえ。王都を離れ人気の観光地へ行って職を探そうかと」

「あの、これは強制ではありません。行きたい場所があるなら自由に行く権利があります。分かりますか」

「「 はい 」」

「この店はこれからオープンですが、いつまで続くのか分かりません。売れるのか、売れないのか。

しかも客層は平民から貴族まで。
どちらのお客様にも対応してもらわねばなりません。貴族の家名を覚え、読み書きをして、計算をして、包装もします。

いずれ要望の聞き取りや提案、在庫管理や工場との連絡、クレーム応対もやってもらわねばなりません。

ある程度できないと店に立てませんし、かなり大変です。特に貴族のお客様相手は。

求人を出す予定です。それでもやれそうなら応募してください。

審査次第ですが、希望者は住み込みも可能です。家賃や諸費用は徴収しません。
備品や制服は支給します。不足している家具も食器類も店側で用意します。

お給料は二週間分を一度に翌週末支払います。教育にかかる費用も店側が負担します。

住み込みの従業員がお財布を出すのは、服、装飾品、化粧品、医療、趣味、交友、食品などの個人的な部分に関してだけです。

5日後に求人を出しますので熟考してください。5日後からは早い者勝ちで相応しい人に採用の返事を出します。

今日の用事は以上です。
質問はありますか」

「ティーティア様、私達は元娼婦です。
貴族のお客様が中心です。私は専属でしたが、お茶出しなどの雑用もしておりましたので顔は知られております。

揉め事を招きそうなのに声をかけてくださるのですか?」

「しばらくは何度かあると思います。
ですがこの店は国王陛下の勧めでオープンさせます。大きく構えていればいいのです。
“それが何か?”と言ってやるのです。
“貴方が前職をバラすなら私もバラしますよ?”と言っておけばいいでしょう。

“伯爵家以下なら、この店は伯爵家の店ですよ、名前を控えますね”と言って名前を尋ねてもいいです。

侯爵家以上やしつこい場合は別途考えます。

注意をしても店のルールを守れなければ追い出して構いません」


ベレニスを見ると頷いていた。

「ティーティア様、私とベレニスは応募いたします」

「分かりました。後日連絡しますわ」

「よろしくお願いします」

「宿に戻られるなら馬車を出しますがどうなさいますか」

「行きたい所がありますのでここで失礼します」



ベレニスと広場のベンチに座りしばらく考え事をしていた。

私達に務まるのだろうか。ティーティア様にご迷惑がかかるのではないだろうか。

「ジョルジーヌ、私、あの部屋で暮らせるならお勉強頑張るわ。

もし、店が立ち行かなくなっても私達の立派な職歴になるし、これから勉強することは私達の武器となると思わない?

それにティーティア様とまた関われるわ」

「そうね」

「娼館では着飾っていたけど、次は制服だし、地味になるように変装してもいいと思うの。髪色を変えるとか、眼鏡をかけるとか」

「買いに行こうか」

「行こう!」





四日後、宿に手紙が届いた。

“来週から採用いたします。
月曜の9時に迎えの馬車を向かわせます。
宿を引払い荷物を馬車に乗せてください。

店に立てるように朝9時から夕方の5時まで研修を行います。
その間は伯爵邸で寝泊まりしてもらいます。

その期間は試用期間となります”


「試用期間だと7割のお給料が出るのよね」

「勉強させてもらうのにいいのかしら」

「何がなんでも覚えなくちゃ!」




月曜日、伯爵邸に着くと研修についての説明があった。

「こちらはマナーと読み書き計算の先生です。
午前中毎日教えてもらいます。

午後は外出もあります。
知り合いの商会長が推す方が接客や梱包や在庫管理、帳簿、銀行の手続きや発送業務、など教えてくださいます。

あと貴族の名前を覚えてもらったり商品の提案ができるまでになってもらいます」
 
「ありがとうございます」

「一生懸命頑張ります」



その日の夜、ベレニスは気疲れしたのか早く眠ってしまった。
伯爵邸の人は誰一人蔑む者がいない。
感情を出さないように徹底しているのか。

期待を裏切れば悪意を向けられるだろう。
そう思っていたけど、失敗しても何も言われることはなかった。
気遣いさえ感じる。ここは天国なのかもしれないと本気で思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜

腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。 「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。 エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

これが普通なら、獣人と結婚したくないわ~王女様は復讐を始める~

黒鴉そら
ファンタジー
「私には心から愛するテレサがいる。君のような偽りの愛とは違う、魂で繋がった番なのだ。君との婚約は破棄させていただこう!」 自身の成人を祝う誕生パーティーで婚約破棄を申し出た王子と婚約者と番と、それを見ていた第三者である他国の姫のお話。 全然関係ない第三者がおこなっていく復讐? そこまでざまぁ要素は強くないです。 最後まで書いているので更新をお待ちください。6話で完結の短編です。

処理中です...