【完結】転生令嬢は遠慮いたしません!

ユユ

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二人の子供達(長男、次男)

次男、ストラ・ヴェリテの視点

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割と何でもこなしてしまう兄上にコンプレックスがあった。

何処かヴェリテ家と繋がりたい貴族の令嬢と縁を結ぶために婿養子になるのだと思っていた。

適正?そんなこと言い出さないでもらいたい。どうせ僕は選ばれない。


父は王兄で王位継承を持っている。
婿入りを選ばなければ国王確実だったらしい。
当時10歳の母に惚れ込んで王女との婚約を解消し、ひたすら母に寄り添い続け母の平民の友人の仇を討ったことがきっかけで急展開したそうだ。

今でも父は母を溺愛し、何にしても母優先。母の希望を叶えるために動く。

領地経営を任された父は自ら足を運び状況を把握、一つずつ改善していった。
虐待や横領を許さず、町長だったとしても厳しく処罰した。

そして領民全員の名簿を作り管理をした。

建物の改修、設備や備品の点検補助、業務の効率化、指示系統・責任の所在を明確化、予算の見直しなど下地を作った。

特に母が気にかけたのは貧困、病、教育だ。

まずは手をつけやすい孤児院から衣食住の改善をした。
先に孤児院の職員にマナーを身につけさせて孤児達の手本となるようにした。

次に教師を募集した。
読み書き計算の教師、自然に生えている食べられる草やキノコや木の実を選別でき、魚を釣ったり解体調理できる教師を雇い孤児全員に教えた。

裁縫や編物や刺繍を教える教師を女の子に。工具の扱いや図面の見方、馬術剣術を教える教師を男の子に付けた。

診療所の規模を大きくして、病気、怪我、介護に分けて入院できるようにした。
母子家庭の母親を中心に何名か看護助手として雇った。

医療は病気や怪我は領民は無料。介護は実費で預かった。

学校は10歳未満の初等学校をニつ、10以上13歳以下の中等学校を一つ、14歳以上の専科を建てた。

初等学校はマナーと読み書き計算、日常の危険。
中等学校は語学、歴史、数学、薬草学、基礎法学。

専科は経営科(文官志望)、騎士科(剣術馬術)、縫製科、

初等学校の費用は領主持ちで昼食も無料。

中等学校は入学試験がある。試験に受かれば全て無料で通えるが、定期テストで基準に満たなければ次の試験で満たすまで有料になる。

専科は入学時と進級時の試験で各科上位5名は無料。
学費自体は安く設定してある。

全ての費用は母の経営する店の売り上げから出ている。

そして貧しくて困窮している家庭の調査を行い立て直す後押しをした。
食事にも事欠く場合は子供を孤児院へ。大人には仕事を斡旋。病気や怪我なら病院へ入れていった。

借金によるものなら用途を明確にして原因を取り去り仕事を斡旋する。

やむを得ない事情でない場合、退領も行った。
例えば怠けやギャンブルや異性への貢物、薬物やアルコール依存だ。

薬物やアルコール依存は治療後更生の見込みがなければ他所の領地へ移り住むか支援を受けられなくてもそのまま残るか選ぶことができるが、いずれにしても領法により子供とは引き離す。

残って問題を起こしたり薬物に手を出せば投獄が待っている。

領民に対しかなり手厚い支援をするが、その代わり努力する気のない者や法に触れる者には厳しく対処した。

退領や投獄も掲示板に張り出し、何故そうなったか詳しく領民に知らせた。
そうする事で抑止力になった。

金は有限だ。誰でも受け入れるわけにはいかない。
移住希望者に対し厳しい審査を徹底した。家族でも審査を通らないと移住できないし、勝手に住みつけば投獄される。

それには賛否両論あったが、傷病者を受け入れて全てを母が負担することはできないし、運営しきれなくなったら有料にするしかなくなる。

厳しい選択だが、ヴェリテ家が守るべきは元々いた領民だ。


自領と比べられ、立場が危うい他所の領主がヴェリテ家に嫌がらせをしようとした時は父が叩きのめした。

父は王宮で王族の教育を受けながら各部署長と交流し多くの情報を仕入れていた。それを元にダメ押しの調査をしてから王宮に投書をしたようだ。

調査が入った先の領主は多額の罰金を背負ったり世代交代をさせて貴族社会から追い出された。

父も母も優秀だった。

妹のシェイナはちょっと怖い。
無邪気で歳が離れている分とても可愛い。
祖父母も父も母もシェイナをほとんど怒らない。怒るのは兄のフィロだ。膝の上に乗せて懇々と言い聞かせている。

母の言うことしか聞かないミスラは恐ろしい生き物だ。

獣の匂いもせず風呂好きで、散歩嫌いの大きなミスラは本当に犬なのだろうか。

母が子供の頃に殺し屋が塀を越えたら建物の中にいて見えないはずのミスラが急に立ち上がり走っているって攻撃したと聞いた。一人は噛み殺し、一人は母が止めたので生きてはいたがその後死んだようだ。

『ミスラはティアに対する殺意に反応するんだ』

『父上はミスラが怖くないのですか?』

『気まぐれに私の言うことも聞いてくれるぞ。大人しいし、ティアの最強の護衛だ。怖いわけがない』

母は愛玩犬のように可愛がりミスラの望むままに一緒に寝ている。

ある時、皆で他領との境にある農園に果物狩りに来ていた。シェイナはどんどん奥に進みもぎ取っていた。果樹園の入り口にいたミスラが突然猛スピードで走って行った。シェイナが進んで行った方へ。

『ギャアアアアア』

『助けてくれ-!!』

父と護衛が走って行き、母は兄に僕の側に居ろと言って走って行った。

笛がなり、僕達についていた護衛が“制圧したようです”と言った。

何が起きたのか兄が見に行くと言うのでついて行くと口の周りの毛を赤く染めたミスラがお座りしていて、血のついたナイフを持ったシェイナがミスラの側にいた。

男二人が麻袋をとナイフを持っていて、麻袋には果物が入っていた。

母がシェイナからナイフを取り上げて、兄が抱っこした。

話を聞くと男二人は不法侵をして盗みをはたらいていた。シェイナに見つかり拐おうとしたらしい。

一人は頭を噛み砕かれ、もう一人は腕が取れ首からも血を流していた。首はシェイナが刺したようだ。

『シェイナ、危ないだろう』

『この人、ミスラを刺そうとしたの!』

母はミスラを抱きしめ褒めているし、父は死体の足にロープを巻くと馬に引かせた。

『父上、どうなさるのですか』

『隣の領地から来ているらしいから返す』

馬で領境まで引きずって向こうの領地へ投棄した。


シェイナは全く怯えておらず、兄の腕の中で静観している。

いつから抵抗なく人を殺せるようになったのか、それとも持って生まれたものなのか。まだこれから7歳になるところだと言うのに。

僕以外、シェイナの様子に疑問を抱く者はいないのだろうか。


シェイナは気配がしないことが多い。
突然ミスラと現れる。僕の心臓が何度止まりかけたことか。

わざとそうしているのか聞いたことがあるが、質問の意図がよく分かっていなかった。

どうやら平凡に生まれてきたのは僕だけのようだ。


子ミスラは“シヴァ”と名付けられた。
母とシェイナは僕達がよく分からない会話をして盛り上がる。名付けもそうだった。




結局、進学した兄は宰相の娘に惚れられて、なにやら掛けに負けたらしく婚約した。
いいのか?それで。

『婿入りだから、後は頼む』

もう継ぐしかないらしい。

シェイナに将来について聞いたら

『何もしない』

『は?』

『兄様が働いて、私の面倒をみて』

『嫁に行かないのか』

『予定ないもん』

『その歳じゃな。でもいずれは』

『シェイナを追い出したいんだ…グスン』

まずい!シェイナが泣くと両親ふたりが騒ぐ!

『好きなだけいてくれ』

『ストラ兄様は優しいな』

早まったか?

『シェイナがヴェリテを継ぐか?』

『それはない』

まあ、年頃になったら出会いがあるだろうし、こっそり見合いさせるのもありだな。


両親に、シェイナが継がないと言っていると伝えたら僕が跡継ぎに決まった。
学生の間は好きなことを学んで構わないらしいのでギリギリまで楽しもうと思う。









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