【完結】冷遇された翡翠の令嬢は二度と貴方と婚約致しません!

ユユ

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パチッ

あの世……じゃない


周りを見渡すと、そこは生まれ育った実家の私室だった。

体も痛くない。苦しくもない。
手を見ると綺麗な手だった。

おかしい。私の手は荒れて爪もガタガタだったのに。

立ち上がり、姿見の前に立った。
そこには若い頃の自分が映っていた。

「おはようございます、セリーナ様」

「メリー!メリーアン!」

「うあっ、どうなさったのですか!?」

私は専属メイドに抱きついて声を上げて泣いた。
メリーアンは困惑しつつも抱きしめて背中を摩ってくれた。


落ち着くとメリーアンは持ってきていたお湯でホットタオルを作ってくれた。

「落ち着きましたか?」

「気持ちいいわ。ありがとう」

開けた窓から風が入り、日差しが眩しく、鳥の囀りも聞こえる。

夢じゃない。

「どうなさったのですか」

「とても恐ろしい夢を見たの。

婚約者に蔑ろにされ、結婚しても冷遇され、孕まず、愛人が子を3人産み、カークファルド伯爵家は困窮し、私は首を吊ったの」

「セリーナ様、夢です。もう覚めましたから大丈夫です。それにお嬢様には婚約者はおりません。学園は半年後ですわ」

つまり、15歳なのね。

「カークファルド家が困窮ってどうしてですか?」

「大規模な天災の年が続いて、備えが殆ど無かったから他領や隣国に頼るしかないのに値が釣り上がり、かなりの借金を背負うことになったの。

同時に馬車のキャンセルや納品延期が続いて高級木材の過剰在庫ができてしまった。

私の病の治療費を実家に請求したの。
不妊や体調不良にかかる治療費を言われるがままにね。
そのお金は殆ど愛人が使ってしまったわ」

「大丈夫ですよ、お嬢様。
その婚約者は架空の方ですか?実在しますか?」

「実在するわ」

「どなたですか」

「レイノルズ伯爵家のレミ様よ」

「お茶会で何度かお見かけした美男子ですね」

ホワイトブロンドの髪にパールブルーの瞳の評判の美男子だ。

「愛人は男爵家の庶子で丁度今頃、母親が亡くなって父親のゴーダー男爵に引き取られたの。ストロベリーゴールドの髪に青い瞳。
とても愛らしい方で、無邪気なキャシリー様に夢中だったわ」

「お嬢様はどうお考えですか?」

「夢であって欲しいけど」

「でしたら、キャシリー・ゴーダーが存在するか調べてみましょう」

「存在しなかったら?」

「夢として忘れましょう」

「そうね」

「存在したらどうなさいますか」

「全てを未然に防いであの二人に復讐するわ」

「関わらない方がよろしいのでは?」

「何故あんな美男子がカークファルドとの縁に拘ったと思う?

私の血よ。母は大国グリーンデサントの王女。その娘である私にレイノルズの子を産ませて縁を繋ぎたかったの。

だから、あんなに愛していたキャシリー様を妻にしなかった」


「お嬢様、先にお食事にしましょう。
その後で未来のお嬢様に起きたことを教えてください」

「そうね」


身支度を整えて一階のダイニングに行くと微笑み合う父と母がいた。そして優しい兄シモン。

「セリーナ?」

ポタポタと涙が零れた。

駆けつけたお兄様が抱きしめてくれた。

「どうしたんだ。具合が悪いのか?」

「まあ、大変だわ!」

「ジョナサン、医者を、」

「違う!違うの!
夢を……怖い夢を見たの」

「どんな夢だったの?」

「プラチナブロンドの人とは婚約したくない」

「具体的ね」

お父様が私の涙を拭うと、真剣な顔をした。

「もっと具体的なことがあるなら聞こう。
まずは食事だ。食べて力をつけないとな」

「はい」

「無理して食べなくていいわ。今は好きなものを好きなだけ食べなさい」

「もしかして、部屋でも泣いていたんだろう。瞼が腫れている」

「……」

「さあ、話は後だ」





そして朝食後、リビングで家族と執事のジョナサンとメリーアンだけに未来の話をした。






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