1 / 90
巻き戻り
しおりを挟む
パチッ
あの世……じゃない
周りを見渡すと、そこは生まれ育った実家の私室だった。
体も痛くない。苦しくもない。
手を見ると綺麗な手だった。
おかしい。私の手は荒れて爪もガタガタだったのに。
立ち上がり、姿見の前に立った。
そこには若い頃の自分が映っていた。
「おはようございます、セリーナ様」
「メリー!メリーアン!」
「うあっ、どうなさったのですか!?」
私は専属メイドに抱きついて声を上げて泣いた。
メリーアンは困惑しつつも抱きしめて背中を摩ってくれた。
落ち着くとメリーアンは持ってきていたお湯でホットタオルを作ってくれた。
「落ち着きましたか?」
「気持ちいいわ。ありがとう」
開けた窓から風が入り、日差しが眩しく、鳥の囀りも聞こえる。
夢じゃない。
「どうなさったのですか」
「とても恐ろしい夢を見たの。
婚約者に蔑ろにされ、結婚しても冷遇され、孕まず、愛人が子を3人産み、カークファルド伯爵家は困窮し、私は首を吊ったの」
「セリーナ様、夢です。もう覚めましたから大丈夫です。それにお嬢様には婚約者はおりません。学園は半年後ですわ」
つまり、15歳なのね。
「カークファルド家が困窮ってどうしてですか?」
「大規模な天災の年が続いて、備えが殆ど無かったから他領や隣国に頼るしかないのに値が釣り上がり、かなりの借金を背負うことになったの。
同時に馬車のキャンセルや納品延期が続いて高級木材の過剰在庫ができてしまった。
私の病の治療費を実家に請求したの。
不妊や体調不良にかかる治療費を言われるがままにね。
そのお金は殆ど愛人が使ってしまったわ」
「大丈夫ですよ、お嬢様。
その婚約者は架空の方ですか?実在しますか?」
「実在するわ」
「どなたですか」
「レイノルズ伯爵家のレミ様よ」
「お茶会で何度かお見かけした美男子ですね」
ホワイトブロンドの髪にパールブルーの瞳の評判の美男子だ。
「愛人は男爵家の庶子で丁度今頃、母親が亡くなって父親のゴーダー男爵に引き取られたの。ストロベリーゴールドの髪に青い瞳。
とても愛らしい方で、無邪気なキャシリー様に夢中だったわ」
「お嬢様はどうお考えですか?」
「夢であって欲しいけど」
「でしたら、キャシリー・ゴーダーが存在するか調べてみましょう」
「存在しなかったら?」
「夢として忘れましょう」
「そうね」
「存在したらどうなさいますか」
「全てを未然に防いであの二人に復讐するわ」
「関わらない方がよろしいのでは?」
「何故あんな美男子がカークファルドとの縁に拘ったと思う?
私の血よ。母は大国グリーンデサントの王女。その娘である私にレイノルズの子を産ませて縁を繋ぎたかったの。
だから、あんなに愛していたキャシリー様を妻にしなかった」
「お嬢様、先にお食事にしましょう。
その後で未来のお嬢様に起きたことを教えてください」
「そうね」
身支度を整えて一階のダイニングに行くと微笑み合う父と母がいた。そして優しい兄シモン。
「セリーナ?」
ポタポタと涙が零れた。
駆けつけたお兄様が抱きしめてくれた。
「どうしたんだ。具合が悪いのか?」
「まあ、大変だわ!」
「ジョナサン、医者を、」
「違う!違うの!
夢を……怖い夢を見たの」
「どんな夢だったの?」
「プラチナブロンドの人とは婚約したくない」
「具体的ね」
お父様が私の涙を拭うと、真剣な顔をした。
「もっと具体的なことがあるなら聞こう。
まずは食事だ。食べて力をつけないとな」
「はい」
「無理して食べなくていいわ。今は好きなものを好きなだけ食べなさい」
「もしかして、部屋でも泣いていたんだろう。瞼が腫れている」
「……」
「さあ、話は後だ」
そして朝食後、リビングで家族と執事のジョナサンとメリーアンだけに未来の話をした。
あの世……じゃない
周りを見渡すと、そこは生まれ育った実家の私室だった。
体も痛くない。苦しくもない。
手を見ると綺麗な手だった。
おかしい。私の手は荒れて爪もガタガタだったのに。
立ち上がり、姿見の前に立った。
そこには若い頃の自分が映っていた。
「おはようございます、セリーナ様」
「メリー!メリーアン!」
「うあっ、どうなさったのですか!?」
私は専属メイドに抱きついて声を上げて泣いた。
メリーアンは困惑しつつも抱きしめて背中を摩ってくれた。
落ち着くとメリーアンは持ってきていたお湯でホットタオルを作ってくれた。
「落ち着きましたか?」
「気持ちいいわ。ありがとう」
開けた窓から風が入り、日差しが眩しく、鳥の囀りも聞こえる。
夢じゃない。
「どうなさったのですか」
「とても恐ろしい夢を見たの。
婚約者に蔑ろにされ、結婚しても冷遇され、孕まず、愛人が子を3人産み、カークファルド伯爵家は困窮し、私は首を吊ったの」
「セリーナ様、夢です。もう覚めましたから大丈夫です。それにお嬢様には婚約者はおりません。学園は半年後ですわ」
つまり、15歳なのね。
「カークファルド家が困窮ってどうしてですか?」
「大規模な天災の年が続いて、備えが殆ど無かったから他領や隣国に頼るしかないのに値が釣り上がり、かなりの借金を背負うことになったの。
同時に馬車のキャンセルや納品延期が続いて高級木材の過剰在庫ができてしまった。
私の病の治療費を実家に請求したの。
不妊や体調不良にかかる治療費を言われるがままにね。
そのお金は殆ど愛人が使ってしまったわ」
「大丈夫ですよ、お嬢様。
その婚約者は架空の方ですか?実在しますか?」
「実在するわ」
「どなたですか」
「レイノルズ伯爵家のレミ様よ」
「お茶会で何度かお見かけした美男子ですね」
ホワイトブロンドの髪にパールブルーの瞳の評判の美男子だ。
「愛人は男爵家の庶子で丁度今頃、母親が亡くなって父親のゴーダー男爵に引き取られたの。ストロベリーゴールドの髪に青い瞳。
とても愛らしい方で、無邪気なキャシリー様に夢中だったわ」
「お嬢様はどうお考えですか?」
「夢であって欲しいけど」
「でしたら、キャシリー・ゴーダーが存在するか調べてみましょう」
「存在しなかったら?」
「夢として忘れましょう」
「そうね」
「存在したらどうなさいますか」
「全てを未然に防いであの二人に復讐するわ」
「関わらない方がよろしいのでは?」
「何故あんな美男子がカークファルドとの縁に拘ったと思う?
私の血よ。母は大国グリーンデサントの王女。その娘である私にレイノルズの子を産ませて縁を繋ぎたかったの。
だから、あんなに愛していたキャシリー様を妻にしなかった」
「お嬢様、先にお食事にしましょう。
その後で未来のお嬢様に起きたことを教えてください」
「そうね」
身支度を整えて一階のダイニングに行くと微笑み合う父と母がいた。そして優しい兄シモン。
「セリーナ?」
ポタポタと涙が零れた。
駆けつけたお兄様が抱きしめてくれた。
「どうしたんだ。具合が悪いのか?」
「まあ、大変だわ!」
「ジョナサン、医者を、」
「違う!違うの!
夢を……怖い夢を見たの」
「どんな夢だったの?」
「プラチナブロンドの人とは婚約したくない」
「具体的ね」
お父様が私の涙を拭うと、真剣な顔をした。
「もっと具体的なことがあるなら聞こう。
まずは食事だ。食べて力をつけないとな」
「はい」
「無理して食べなくていいわ。今は好きなものを好きなだけ食べなさい」
「もしかして、部屋でも泣いていたんだろう。瞼が腫れている」
「……」
「さあ、話は後だ」
そして朝食後、リビングで家族と執事のジョナサンとメリーアンだけに未来の話をした。
573
あなたにおすすめの小説
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
あなたの破滅のはじまり
nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。
え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか?
あなたを待っているのは破滅ですよ。
※Ep.2 追加しました。
マルグリッタの魔女の血を色濃く受け継ぐ娘ヴィヴィアン。そんなヴィヴィアンの元に隣の大陸の王ジェハスより婚姻の話が舞い込む。
子爵の五男アレクに淡い恋心を抱くも、行き違いから失恋したと思い込んでいるヴィヴィアン。アレクのことが忘れられずにいたヴィヴィアンは婚姻話を断るつもりだったが、王命により強制的に婚姻させられてしまう。
だが、ジェハス王はゴールダー家の巨万の富が目的だった。王妃として迎えられたヴィヴィアンだったが、お飾りの王妃として扱われて冷遇される。しかも、ジェハスには側妃がすでに5人もいた。
【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした
凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】
いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。
婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。
貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。
例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。
私は貴方が生きてさえいれば
それで良いと思っていたのです──。
【早速のホトラン入りありがとうございます!】
※作者の脳内異世界のお話です。
※小説家になろうにも同時掲載しています。
※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)
【完結】私が誰だか、分かってますか?
美麗
恋愛
アスターテ皇国
時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった
出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。
皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。
そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。
以降の子は妾妃との娘のみであった。
表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。
ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。
残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。
また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。
そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか…
17話完結予定です。
完結まで書き終わっております。
よろしくお願いいたします。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる