【完結】冷遇された翡翠の令嬢は二度と貴方と婚約致しません!

ユユ

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巻き戻り前[ 婚約とデビュー ]

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学園に通う半年前、レイノルズ家から縁談の申し入れがあった。

茶会で何度か見かけた美男子だった。

彼は既に婚約者がいる令嬢からも言い寄られて辟易していた。

申し入れの2週間前の王宮の茶会でも見かけた。
私はメリーアンと庭園の目立たないベンチに座って景色を眺めていた。

たくさん人が集まる場所が苦手だった私は避難していた。

そこにレイノルズ伯爵令息が通りかかった。

「レミ様ぁ~!」

「レミ様ぁ~!」

数人の令嬢の声が近付いてきた。

令息は辺りを見渡した。

逃れたいのかなと思い、私は背後の垣根を指差した。

「(どうぞ隠れて)」

「………」

迷った様子だったが身を潜めた。

令嬢達が近付くと、私は靴を脱いで足を投げ出した。

「(お、お嬢様!?)」

「(しーっ!)」

3人の令嬢が通りかかると私に尋ねた。

「ここを誰か通りませんでした?」

「あっちから向こうへ走って行きました。
プラチナブロンドの男性でした。顔は見ませんでしたのでどなたかは存じません」

令嬢は私の足元を見ると礼を言って立ち去ろうとしたが一緒にいた令嬢が私を疑った。

「嘘を言ってレミ様を独り占めする気では?」

「馬鹿ね。足元をご覧なさい。
殿方の前で靴を脱いで足を投げ出すなんて恥ずかしい真似ができるはずがありませんわ」

「確かに。私なら屋敷から出たくなくなりますわ」

「貴女、恥じらいを忘れては駄目よ」

「靴擦れで痛くて。ご忠告痛み入ります」

「お大事に。

さあ、あちらに行きましょう」



令嬢達が去ったと思ったら、令息が側に立っていた。

「……感謝する」

「どういたしまして」

「私はレミ・レイノルズ。貴女は」

「セリーナ・カークファルドと申します」

また別の令嬢達が近付いて来ると彼は去った。


そして釣書が届くことになる。



あんなに人気の美男子と婚約したらどんな目に遭うか。

断り続けたがレイノルズ伯爵夫妻から何度も手紙や訪問を受けた。

夫妻の方が乗り気のようだった。


ある日の訪問は両親も兄も不在だった。
今思えば狙って訪問したのかもしれない。

「あの、ご子息はこの縁談についてなんと仰っておりますか」

「レミは助けていただいて感謝しております。いいきっかけだと思いませんこと?」

「正直申しまして、ご子息は人気があり過ぎて、とても私には」

「そんなこと仰らないで。カークファルド家は素敵な家門です。跡継ぎのご子息を支えたいとは思いませんか?」

「どういうことでしょう」

「カークファルド家の事業の一つの家具や馬車です。使用する高級木材を親族になる次期カークファルド伯爵令息に割り引いて納品させましょう」

「政略結婚ということですか」

「私達はセリーナ嬢を気に入って縁談を申し入れているだけで、これは副産物です」

私はこの時、縁談を受けることで優しい兄様の役に立つならと思ってしまった。

「よろしくお願いします」




私が返事をしてしまったので、その後は当主同士の話し合いになった。

その後の顔合わせに会った彼は普通の貴族だった。
いわゆる、感情の分からない笑みと当たり障りのない会話。だけど優しくしてもらえたと思う。


基本は領地にいたので大した交流は無かったけど、婚約披露や王宮主催の茶会にパートナーとして伴った。

変わりだしたのは入学してすぐだった。
彼は一つ上の学年で生徒会の補助員をしていた。
何かを決めたりするのではなく、決まったことに対する活動の人手不足を補う係だ。

そこで彼は入学式の手伝いをしていた。
多分この時に彼は新入生のキャシリー・ゴーダーと出会ったのだろう。


彼女はすぐに様々な噂をもたらした。主に令息との噂だ。庶子の彼女は異性と距離をとるということがなく、気さくに誰にでも話しかけてスキンシップを取る。

良くて家名のさん付け。人によっては名前の呼び捨てだ。高位貴族でも婚約者持ちでもお構い無し。腕に絡みついたり平気でする。

周囲が注意しても、その程度で騒ぐ方がおかしいと呆れる。彼女(平民時代)の基準だと、浮気と騒いで相手を責めるのは体の関係が有るか否か。

腕くらいで問題になるならダンスは卑猥な行為じゃないかと言ったらしい。

そして極め付けは、

『これって弱い者虐めと同じですよね。

婚約者云々の話なら、婚約した者同士の問題で、何か嫌なことがあるなら契約した相手に言うべきことです。

もし男子生徒が迷惑しているという話なら男子生徒本人が私に嫌だと告げるべきことです。

しかも身分を振りかざしたり、複数で囲んだり、人としてどうなんですかね。卑怯じゃないですか?』

と、王子殿下の婚約である公爵令嬢に言ったことだ。一番高貴な女子生徒がそう返されては他の女子生徒はものを申せない。

しかも学年が一つ上だった王子に彼女は接触していない段階だったため、公爵令嬢は逆に王子殿下から苦言をもらうことになってしまった。


暫くするとデビュータントがあった。初夏の時点で16歳になっている男女の成人祝いのパーティだった。

彼は迎えには来てくれたしエスコートもしてくれたが違和感があった。それがなんなのか分からない。

しかし、ファーストダンスの後にレミ様の元にやってきて腕を絡めた彼女に満面の笑みを浮かべてダンスを踊りに行ってしまった。

他の人ともダンスは踊るものだが、あんな笑顔を見たことがなかった。

違和感はこれだと思った。

レミ様は彼女に想いを寄せていて、私のことが煩わしのかもしれない。

何度も望まれた婚約だけど、それはレイノルズ伯爵夫妻の意思であってレミ様のでは無かったのかもしれない。

私だって政略結婚のつもりで受けた。

愛人や妾を囲う貴族など珍しくはない。
結婚までに覚悟を決めなければならないと思った。
ただ、レミ様が彼女と結婚したいなら後を濁さずに身を引くつもりだった。
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