【完結】冷遇された翡翠の令嬢は二度と貴方と婚約致しません!

ユユ

文字の大きさ
23 / 90
2度目

再会

しおりを挟む
「セリーナ、セリーナ」

「…はい?」

「私は誰と結婚したんだ!?」

「はぁ。ヒントは令嬢です」

「当たり前だろう、教えてくれよ」

「グウ…」






「セリーナ」

「……」

「セリーナ」

「もう!休めって言っておいて!………」

「セリーナ、もう大丈夫」

「ううっ……」

「大丈夫だ。俺が来たから大丈夫だ」

「ジュスト殿下……ごめんなさい……」

「セリーナ?」

「傷付けるつもりはなかったの…ごめんなさい」

「……」

「ごめんなさい」

「大丈夫。ここにいるから。
大好きだよ、セリーナ」

従兄にい様」







【 グリーンデサント王国
    ジュスト第一王子の視点 】


子供の頃から叔母上の肖像画を見ていた。
父上とお祖父様達と一緒に描かれた肖像画。

父上は叔母上が大好きだったようで子供の頃の話をよくしてくれた。

『本当は姉上が第一継承権を持っていたんだ。
だけど姉上は嫁ぎ先を見つけてきて“後はよろしく”ってセントフィールドの伯爵夫人になってしまった。

私に継がせるためだと思う』

『なんで父上がいたのに女性の叔母上が第一継承権者だったのですか?』

『色だよ。
昔から“翡翠の王が統べる地は緑が芽吹く”と言われている』

確かに叔母上の瞳の色は美しい翡翠だった。

『会ってみたいです』

『セントフィールドのカークファルド領に遊びに行くか? 私は連れて行ってやれないが誰か付けよう』



そして近衛騎士団長とその息子イヴァンを中心とした旅団が組まれた。

遠かったが道中も冒険みたいだったし叔母上に会えるのが楽しみだった。

カークファルド領に着くと叔父上と叔母上と従兄が迎えてくれた。
美しい翡翠の瞳。城にいる家族や城外の親類でも及ばない。

それから直ぐに従妹がいることがわかった。

『セリーナはまだ合わせられないの。
お熱があって寝ているの』

『病気?』

『疲れが溜まると出るのよ。家庭教師をつけ始めたのだけどセリーナには負担だったのね』

『小さいのですか?』

『ジュスト殿下の1歳下よ』

それから二日後、やっと会えた従妹は小さくて弱々しくて柔らかそうで危な気で可愛くて、叔母上よりも美しい翡翠の瞳で見上げた。

『だぁれ?』

『いとこといって、お兄様よ』

『にいさま?』

『そうよ』

ギュッ

小さな手が僕の手を握った。

暖かくて、柔らかくて、力加減が分からなくて、嬉しさと怖さで混乱していた。

『だっこ』

『セリーナ、シモンじゃないと抱っこは無理よ。1歳しか変わらないもの』

『あ!シーにい!』

小さな天使は僕の手を離してシモン従兄上の側に駆け寄った。

『シーにい、だっこ』

『可愛いセリーナ』

従兄は嬉しそうにセリーナを抱き上げた。セリーナも従兄上の首に腕を回して頬をくっつけた。

何故私はもっと早く生まれなかったのか。
そうしたら抱っこできたのに…。

その後もセリーナはシモン従兄上にべったりで、よく彼の膝の上に乗って愛くるしい笑顔を向けていた。

叔父上が察したのか機会をくれた。

『セリーナ、ジュスト殿下にお庭を案内して差し上げなさい』

セリーナは僕とイヴァンの手を繋ぎ、庭の散歩をする。そしてよく分からない鼻歌を歌っていた。

町に出かけたりした。セリーナと一緒なら何処へ行っても楽しかった。
二週間の滞在はあっという間だった。

セリーナは涙を浮かべていた。

『じゅー、ばん……なんで行っちゃうの?』

『ごめんね』

『帰って勉強しないと』

『ここでもできるよ?』

『『ごめんね』』

『ひぐっ』

ついに泣き出したセリーナを叔母上が抱き上げた。

これがセリーナを見た最後だった。



その後、会えることは無かった。
セリーナは長旅で熱を出しかねないとグリーンデサントに連れて来れないらしい。

自分も気軽に行ける距離ではないし王子教育も楽ではない。
王子教育を終えたら会いに行こう、そう思っていたのに、公務も徐々に任されるし、貴族との交流もしなくてはならない。

特に婚約者。

どんなに美人だ可愛いと言われた令嬢を紹介されても心が動かなかった。父上には卒業までに決めなければ父上が決めると言われた。

入学して半年が経過した頃、隣国の王女が来期から短期留学をしたいと打診があり父上が受けた。

調整が取られるうちに、王女が俺と同じクラスになれる学力が無いのに特別クラスに入れるという話を聞いた。

『父上、校長。そのようなことはなさらないでください。
王女というだけで、我が国の子息子女を蔑ろにするのですか?頑張っても定員オーバーで特別クラスに入れなかった者が可哀想です。

王女は学びに留学するのですよ?』

『特別な計らいをとお願いされておりまして、』

『校長、嫌なら来なければいいのです。これはグリーンデサントが強要したわけでも招待したわけでもありません。

留学と滞在のに、特別な計らい?
図々しい。
向こうでもで今の成績評価だったらどうするのです。授業についていけなくて大恥をかくのは王女ですよ?』

『厳しくないか』

『父上、もう既に価値がないと言っているようなものです。血しか取り柄がない者は要りません』

その後も部屋割りも変えさせた。

『父上、王族居住区に部屋を用意するのは反対です』

『嫌か』

『勉強をしに来た学生ですよ?
改装も不要です。普通の貴賓室で充分です。

それに変な噂が立ったらお互いに困ります。
どうしてもと仰るなら、王女が留学する間、寮に移り住み、全ての仕事を受けません』

『分かったから怒るな』

『王太子になる前にセントフィールドに留学します』

『まだ諦めていなかったのか』

『そのために、ずっと努力してきましたから』

『王女が帰ってからだな』

『そんなに仲を取り持ちたいのですか?』

『どの令嬢にも興味を示さないから心配でな』

『間違いなく、女性を選びますよ』


そして、今まで届いたことがなかったものが届いた。

『ジュスト殿下、カークファルド伯爵家よりお手紙です』

奪い取るように手紙を手にして封を開けた。

“お久しぶりです、ジュスト殿下

お元気でいらっしゃいますか。

こちらは変わりありません。

いつの日かお会いできることを願っております。

セリーナ”


俺は手紙を持って父上に来期の初めからセントフィールドの学園に通うと宣言した。
王女が来るので反対されたが、手紙に違和感を感じると伝えると理解してくれた。

セリーナが助けを求めている、そう感じた。



一年生の終業式を終え、支度をしてセントフィールドの王都に向かった。

到着して出迎えてくれたフレデリク王子が、セリーナが疲労で倒れて静養していると告げた。

『案内してくれ!』

急かして連れてこられたのは渡り廊下で繋がった別宮だった。

瞼を閉じるセリーナを起こした。
生きていると確かめなくてはいられなかった。

誰かと勘違いして怒ったが、俺と分かると泣き出した。

『ジュスト殿下……ごめんなさい……』

抱きしめて腕や肩を摩ると、

『傷付けるつもりはなかったの…ごめんなさい』

どういうことだ?

とにかく抱きしめ続けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

あなたの破滅のはじまり

nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。 え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか? あなたを待っているのは破滅ですよ。 ※Ep.2 追加しました。 マルグリッタの魔女の血を色濃く受け継ぐ娘ヴィヴィアン。そんなヴィヴィアンの元に隣の大陸の王ジェハスより婚姻の話が舞い込む。 子爵の五男アレクに淡い恋心を抱くも、行き違いから失恋したと思い込んでいるヴィヴィアン。アレクのことが忘れられずにいたヴィヴィアンは婚姻話を断るつもりだったが、王命により強制的に婚姻させられてしまう。 だが、ジェハス王はゴールダー家の巨万の富が目的だった。王妃として迎えられたヴィヴィアンだったが、お飾りの王妃として扱われて冷遇される。しかも、ジェハスには側妃がすでに5人もいた。

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

処理中です...