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メイドその2
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瞳孔が歪んだもう1人のメイドを連れてお散歩をすることにした。メイドの提案だ。きっと何かやるつもりだろう。
先を歩くメイドの背を見ながら考え事をしていた。
前回のことを参考にすると婚約者候補への教育の内容が難しくなってくる頃だ。
多分この時点で指導側は候補者達の未来が見えていただろう。後はヘンリー王子殿下と王妃様のお気持ちで決まるのだろう。
そんなことを考えながらメイドの誘導に任せていた。
ついさっき、王子宮の敷地に入ったのは知っている。護衛には少し距離をあけるようお願いしておいた。
ここは普通入り込まない。計算されて造られた庭園から少し外れて見所のない場所だから。この先はすぐ王子宮の庭に繋がっている。脱出ルートのひとつにもなる場所だ。
この場所を知っているのはある意味優秀だ。
すぐに話し声が聞こえてきた。
「コーネリア嬢は兄君のエスコートで出席するのだね?」
「はい。殿下」
コーネリア様との交流日なのね。
これを見せて私が妬くのを期待しているのか、立ち入ったことを咎められるのを期待しているのか。
会いたくはないが、王子殿下に気付いてもらわないとならないだろう。
パキッ
「誰だ!」
態と小枝を踏んでみた。気付いてもらえてよかった。
「申し訳ございません!
ネルハデス伯爵令嬢が王子殿下にお会いしたいとずっと仰っておりまして、王子殿下は本日、婚約者候補のご令嬢とお約束があると申し上げたのですが、令嬢がどうしてもこちらに行きたいと仰って」
メイドが膝を付いて謝りだした。
「リヴィア嬢……」
「ヘンリー王子殿下にリヴィア・ネルハデスがご挨拶を申し上げます」
「会話をするのは久しぶりだな。
彼女はコーネリア・フレンデェ。公爵家の令嬢で婚約者候補だ」
「コーネリア・フレンデェと申します」
「リヴィア・ネルハデスと申します。フレンデェ公爵令嬢にご挨拶を申し上げます」
メイドが跪いたまま “え?” っという顔をしている。
「それで、君が私に会いたいと?」
「ありえませんわ」
「仰ったではありませんか!」
「はぁ。なかなか失礼なメイドね。
メイドのベスさん。私は貴女の勧めた通りに散歩に来て、案内通りにここに立ち入っただけよ?
貴女は王子殿下の細かな予定をどう知ったの?
丸一日、交流があるわけじゃないのに的確にこの僅かな時間を狙えた訳を知りたいのだけど。
私が無理に此処に来させたのよね?どちらにせよ案内したのは貴女よ。王子殿下の予定を話してしまうなんて随分と口が軽いのね。私は外部の人間なのに」
「そ、それは貴女が脅したから」
「そもそも私が会いたがるわけがないの」
「え?」
「私は婚約者候補でも何でもない。他人なの」
「は!?」
「確にリヴィア嬢がこんな風に強引に会いにくるはずがない。私は彼女に振られたのだから」
「 !! 」
王子殿下がメイドの側に立った。
「リヴィア嬢は打診を断った。だから婚約者候補ではないんだよ」
「そんな…」
「このような抜け道を教えてしまうなんて。
そもそも何故貴女が知っているの?」
「 !! 」
「失礼します。ヘンリー王子殿下。
本日、リヴィア嬢は国王陛下の招待で登城なさいました。現在、陛下の依頼で王子妃内定という設定にして異物の炙り出しを行っております。この異物のように」
「炙り出しが成功しましたので失礼致します」
「この女はこちらで取り調べて報告書は王子殿下にも回るようにいたします」
「頼むよ。
リヴィア嬢、後でね」
「……」
庭園に戻り近くのガゼボに座った。
「はぁ」
ヘンリー王子殿下の瞳孔は正常だった。
だけど昔の王子殿下だって最初は問題は無かった。徐々に異変が現れたのだ。魅了だったかもしれない。だけど魅了ではなく本当に恋をしてあんなことをしたのかもしれない。
「リヴィア嬢」
まだ私には鮮明だ。
うわの空の殿下
交流の場にやって来ては、お茶を一気に飲み干して帰ってしまう殿下
冷たい視線を送る殿下
怒鳴る殿下
「リヴィア嬢」
サラと仲睦まじく過ごす殿下
事実無根を咎める殿下
サラと対の衣装を着てエスコートする殿下
サラの肩を抱き寄せながら、私に大勢の前で婚約破棄を言い渡した殿下
「リヴィア嬢」
幽閉を命じた殿下
監禁の様子を見に来た殿下
「リヴィア!」
カルフォン卿が跪き私の顔を両手で挟んでいた。
「嫌だ」
この人も何者なのかわからない。
「具体が悪いのか?」
思っていたよりも私はショックだったようだ。
彼が近衛騎士だったことが。
単なる教師でなかったことが。
名前さえ違ったことが。
「帰ります」
「リヴィア嬢、ちゃんと答えてくれないか」
「誰に?アンドレ先生に? それともカルフォン卿?」
学園なんて通うんじゃなかった。
「怒っているのか」
いっそ遠くの国で平民として自由に生きようか。
それでもまた酷い目に遭うのか。
「リヴィア」
魂など消滅させてくれたら良かったのに。
「帰ります」
「ちゃんと話してくれないと分からない」
「話さなきゃならないのは私だけ?」
「こっちが本来の姿で、教師は任務だ。
君を見守るよう隊長から任命されたんだ」
「アンドレ先生がいい」
「職業が違うだけで中身は一緒だ。
……いや、悪かった。
すまなかった。だからそんな顔をするな」
代わりのメイドが来たので部屋に戻り着替えて屋敷に戻った。
先を歩くメイドの背を見ながら考え事をしていた。
前回のことを参考にすると婚約者候補への教育の内容が難しくなってくる頃だ。
多分この時点で指導側は候補者達の未来が見えていただろう。後はヘンリー王子殿下と王妃様のお気持ちで決まるのだろう。
そんなことを考えながらメイドの誘導に任せていた。
ついさっき、王子宮の敷地に入ったのは知っている。護衛には少し距離をあけるようお願いしておいた。
ここは普通入り込まない。計算されて造られた庭園から少し外れて見所のない場所だから。この先はすぐ王子宮の庭に繋がっている。脱出ルートのひとつにもなる場所だ。
この場所を知っているのはある意味優秀だ。
すぐに話し声が聞こえてきた。
「コーネリア嬢は兄君のエスコートで出席するのだね?」
「はい。殿下」
コーネリア様との交流日なのね。
これを見せて私が妬くのを期待しているのか、立ち入ったことを咎められるのを期待しているのか。
会いたくはないが、王子殿下に気付いてもらわないとならないだろう。
パキッ
「誰だ!」
態と小枝を踏んでみた。気付いてもらえてよかった。
「申し訳ございません!
ネルハデス伯爵令嬢が王子殿下にお会いしたいとずっと仰っておりまして、王子殿下は本日、婚約者候補のご令嬢とお約束があると申し上げたのですが、令嬢がどうしてもこちらに行きたいと仰って」
メイドが膝を付いて謝りだした。
「リヴィア嬢……」
「ヘンリー王子殿下にリヴィア・ネルハデスがご挨拶を申し上げます」
「会話をするのは久しぶりだな。
彼女はコーネリア・フレンデェ。公爵家の令嬢で婚約者候補だ」
「コーネリア・フレンデェと申します」
「リヴィア・ネルハデスと申します。フレンデェ公爵令嬢にご挨拶を申し上げます」
メイドが跪いたまま “え?” っという顔をしている。
「それで、君が私に会いたいと?」
「ありえませんわ」
「仰ったではありませんか!」
「はぁ。なかなか失礼なメイドね。
メイドのベスさん。私は貴女の勧めた通りに散歩に来て、案内通りにここに立ち入っただけよ?
貴女は王子殿下の細かな予定をどう知ったの?
丸一日、交流があるわけじゃないのに的確にこの僅かな時間を狙えた訳を知りたいのだけど。
私が無理に此処に来させたのよね?どちらにせよ案内したのは貴女よ。王子殿下の予定を話してしまうなんて随分と口が軽いのね。私は外部の人間なのに」
「そ、それは貴女が脅したから」
「そもそも私が会いたがるわけがないの」
「え?」
「私は婚約者候補でも何でもない。他人なの」
「は!?」
「確にリヴィア嬢がこんな風に強引に会いにくるはずがない。私は彼女に振られたのだから」
「 !! 」
王子殿下がメイドの側に立った。
「リヴィア嬢は打診を断った。だから婚約者候補ではないんだよ」
「そんな…」
「このような抜け道を教えてしまうなんて。
そもそも何故貴女が知っているの?」
「 !! 」
「失礼します。ヘンリー王子殿下。
本日、リヴィア嬢は国王陛下の招待で登城なさいました。現在、陛下の依頼で王子妃内定という設定にして異物の炙り出しを行っております。この異物のように」
「炙り出しが成功しましたので失礼致します」
「この女はこちらで取り調べて報告書は王子殿下にも回るようにいたします」
「頼むよ。
リヴィア嬢、後でね」
「……」
庭園に戻り近くのガゼボに座った。
「はぁ」
ヘンリー王子殿下の瞳孔は正常だった。
だけど昔の王子殿下だって最初は問題は無かった。徐々に異変が現れたのだ。魅了だったかもしれない。だけど魅了ではなく本当に恋をしてあんなことをしたのかもしれない。
「リヴィア嬢」
まだ私には鮮明だ。
うわの空の殿下
交流の場にやって来ては、お茶を一気に飲み干して帰ってしまう殿下
冷たい視線を送る殿下
怒鳴る殿下
「リヴィア嬢」
サラと仲睦まじく過ごす殿下
事実無根を咎める殿下
サラと対の衣装を着てエスコートする殿下
サラの肩を抱き寄せながら、私に大勢の前で婚約破棄を言い渡した殿下
「リヴィア嬢」
幽閉を命じた殿下
監禁の様子を見に来た殿下
「リヴィア!」
カルフォン卿が跪き私の顔を両手で挟んでいた。
「嫌だ」
この人も何者なのかわからない。
「具体が悪いのか?」
思っていたよりも私はショックだったようだ。
彼が近衛騎士だったことが。
単なる教師でなかったことが。
名前さえ違ったことが。
「帰ります」
「リヴィア嬢、ちゃんと答えてくれないか」
「誰に?アンドレ先生に? それともカルフォン卿?」
学園なんて通うんじゃなかった。
「怒っているのか」
いっそ遠くの国で平民として自由に生きようか。
それでもまた酷い目に遭うのか。
「リヴィア」
魂など消滅させてくれたら良かったのに。
「帰ります」
「ちゃんと話してくれないと分からない」
「話さなきゃならないのは私だけ?」
「こっちが本来の姿で、教師は任務だ。
君を見守るよう隊長から任命されたんだ」
「アンドレ先生がいい」
「職業が違うだけで中身は一緒だ。
……いや、悪かった。
すまなかった。だからそんな顔をするな」
代わりのメイドが来たので部屋に戻り着替えて屋敷に戻った。
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