【完結】悪魔に祈るとき

ユユ

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ヘンリー 第一候補だった令嬢

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【 第一王子ヘンリーの視点 】


今年の初めに婚約者を選ぶ茶会があった。
どの令嬢も審査に通っているから3人選べと言われた。

コーネリア・フレンデェ。厳格な公爵家の令嬢で皆からすれば最有力候補だろう。

マリア・レニエ。財力のある侯爵家の令嬢で多趣味で話題が豊富だった。

そしてリヴィア・ネルハデス。平凡な伯爵家の令嬢だった。彼女は育ちのせいか歪みのない性格をしていた。そして頬を染めて可愛かった。

普段、令嬢達に頬を染められ続けて辟易していたのに、彼女の好意に胸が高まった。

この3人を婚約者候補に残すよう伝えた数日後、一番最初に返答があったのがリディア嬢だった。なのに……

「ヘンリー、もう1人選んでもらえるかしら」

「誰か問題がありましたか?」

「リヴィア・ネルハデスは断ってきたわ」

「は?」

「王子妃は務まらないそうよ」

両思いだと思ったのは私の勘違い?
頬を染めて瞳を輝かせていたのに?

「伯爵か夫人が反対を?」

「本人の意向ですって」

「……分かりました」


その後リヴィア嬢と伯爵が毒を盛られていたと知らされた。選ばれなかったハリソン侯爵令嬢と夫人が関与しているらしい。

「そうですか。早期解決して良かったです」

「いや、まだだ。令嬢が侯爵も疑っているので特務部でも調査することになった。
平凡な令嬢だと思っていたのにとても賢く所作も美しい。勿体無いことをした」

「父上」

父上に勿体無いなどと言わせるなんて。
彼女はそんな風には見えなかったのに。


結局その後、ハリソン侯爵もグルだったことが分かった。

「カシャ家の令息がネルハデス家に縁談の申し入れをしていたらしい」

「ルネが!?」

ハリソン侯爵の息のかかった者が代わりに断りの返事を出していたことを聞いた。

改めて縁談話になったようだが正式に断ったと聞いた。


そして学園が始まった。
リヴィア嬢は最下位クラスで使う階段も違うから偶然などなく、食堂も見渡したが見つけられなかった。

彼女が最下位クラスだなんて信じられない。理由を校長に訪ねてみた。

「リヴィア・ネルハデス嬢が最下位クラスの実力なのは間違いないのでしょうか」

「そうではありませんが、結果は結果ですので仕方ありません」

口外しないと約束をして何が起きたのか聞いた。

「途中まで正解しているのです。そして合格ラインを越えると、解答欄をひとつずらして記入してありました。

ズレてなければ1位だったかもしれません」

「つまり全教科、合格ラインを越えるとズレていたということですか!?」

「はい。筆記は入学ラインギリギリの合格でした。
ただ面接の評価がとても高くて、一つクラスを上げることも可能でしたが、最下位クラスを希望していると判断しました。恐らく、面接も本気で挑んではいなかったように思います」

彼女はかなり優秀だ。そしてAクラスになりたくなかったということだ。それは私と顔を合わせたくないからか、ルネと顔を合わせたくないからか。どちらもか。


乗馬クラスで一緒になるリヴィア嬢を遠くから観察している。

トップ争いができる彼女も、ここではかなり苦戦していた。

そもそも何故、馬に乗れもしないのに選んだのだろう。厩舎で令嬢なら特に嫌がる馬糞の片付けも率先してやっていた。
クラスメイトの令息と友人になったのか、楽しそうに話しながら作業をしている。

常にゴーグルをしているが笑顔なのは確かだ。
話しかけたらどうなるのだろう。


そして何故、近衛騎士の其方が学園ここにいる?

どうやら最下位クラスの担任でもあるようで、常にリヴィア嬢を視界に入れている。
私の為かと思ったら彼女のために任命されたようだ。


ある日、事件が起きた。

教師に扮している近衛騎士が 納屋から令嬢を抱えて出てきた。令嬢の髪は乱れ服は汚れていた。
騎士に抱きついているのはリヴィア嬢だと分かった。
彼の指示で納屋から運び出された令息2人は全身汚れていた。

翌日、朝のホームルームで2人が退学になったことを知った。


城に帰って父上に聞いてみた。
悪戯心でリヴィア嬢のゴーグルを2人がかりで取ろうとしたが激しい抵抗に遭い、エスカレートして怪我を負わせたという。

現場に近衛騎士の彼が駆けつけて令息達を滅多蹴りしたそうだ。

「手加減はしたらしい。
カルフォン卿が本気で蹴ったら死ぬからな」

父上が苦笑いしていた。


カルフォン卿は女子供でも容赦しない男だと騎士団の中で有名だ。私も彼は怖いと思う。
だけどリヴィア嬢にとって彼は頼りになる教師だった。
2人の話を聞いていると仲がいいなと感じた。彼も楽しそうにしていた。


そして今日、コーネリア嬢と交流のティータイムにリヴィア嬢が現れた。

髪を編み込み、ライラック色のドレスを纏った彼女はとても気品があった。以前の茶会や乗馬クラスで会う彼女とは違って見えた。

愚かなメイドを無視して挨拶を交わす。
茶会の時の所作とレベルが違う。短期間でここまでになったのか、茶会が演技だったのか。
伯爵家自体は平凡だが悪くはない。派閥に傾倒せず財力も普通。
だが彼女自身の価値が違ってきてしまった。
トップ争いができる学力、手を抜いても高得点だった面接、高貴な令嬢と言っても過言ではないほどの所作と装い。

そして……



「は? 帰った!?」

「はい、殿下」

侍従に探しに行かせても見つからず、カルフォン卿を探せと頼んで連れてきてもらったらリヴィアの姿はなかった。

「カルフォン卿、私は“後で”と言ったと思うが」

「今回は国王陛下の依頼を受けて登城なさいました。その中で、そういった交流は無しという条件が付けられております。
ハリソン侯爵家の事件もございますので、誤解を生まないようにと配慮した結果でございます。
ひとまず役目は果たしましたのでお引き止めはできませんでした。
また、任務とはいえ、教師は仮の姿で実際は近衛騎士だった私に怒っておられたようで、どうにもなりませんでした」

「分かった。ありがとう、カルフォン卿」



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