笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

文字の大きさ
45 / 215

領内視察

しおりを挟む
翌日は絹糸を作るための蚕を育てる養蚕場、さらに製糸工場へ行った。

ありがたい蚕なのだけど正直苦手だ。
養蚕場の人達は本当にすごい。だってほとんど女性だから。

「あらあら、お嬢様。克服なさったのですか」

「まだなの。アイダ達はすごいわね」

「慣れたらなんてことはありませんよ。
この子達の世話をするだけで安定した生活を送れますし、無理な労働はしなくていいですから。
病気になっても無料で医者に診ていただけるだなんて、夢のようです」

「無料!?」

ヒューゴ様は驚いていた。

「ヒューゴ様。セルヴィーは特別な産業をしているのです。何故あのような素晴らしい絹糸が生産できるのか秘密を守ってもらわなくてはなりませんし、この幼虫達を持ち出されてもいけません。
厳しい管理下に置かれる従業員に対し、それなりの待遇を与えるのは当然です。

労働時間の短縮と休憩時間の確保、昼食の提供、休日の確保をしています。
改革をしてからは従業員は辞める者は出ていませんし、新規採用は厳しい審査があります。健康診断もあり、家族も受けさせます」

「家族も?」

「はい。治療目的の労働者を防ぐためです。何故なら家族も医者にかかることは無料だからです。もちろん人数制限もあります。十人 二十人と連れてこられても困りますから。
採用後に妊娠して出産した場合は追加ということで認められます。

そして勤続2年を超えると家を貸し与えられます。
家は買い取りも可能です。
退職金もありますし、給金も増やしました。
まあ、皆さんベテランですが、カウントは新契約からですので5年前に退職金を払って一度リセットしています。
20年以上勤めてくれているベテランさんも、新しい契約条件の方がいいからと、快く署名してくれました。

今日はヒューゴ様も騎士の皆様も一緒に賄い昼食を食べましょうね」


そして昼食の時間には、テーブルの上に賄い食が並べられた。

「お、お嬢様、これはヒューゴ様がいるからこんなに豪勢なのですか?」

ロック卿が目を輝かせた。

「いつもの通りよ」

パンも余るほどあるし、野菜料理2種、鶏肉と野菜のミルクスープ、肉料理。

「う、美味い」

「良かったわ」

「転職したい」

「自由はほぼありませんよ?」

「え?」

「どういうことだ?」

ヒューゴ様が前のめりになって聞いてきた。

「労働時間が終わると手荷物検査と全身検査を受けます。
町から出るためには申請をして許可が必要です。
結婚相手は調査を入れますし、餌を育てる係と幼虫を育てる係は原則接触禁止です。
まだ起きてはいませんが、セルヴィー家の求めに応じて家屋の捜査が入ることも了承しなくてはなりません。情報漏洩を少しでも防ぐためです。

体に付けるものも制限されます。そのせいで幼虫が死んでしまったり製品に影響を及ぼしてはならないからです。人間には害ではなくても虫には害の場合もありますし、糸に香りが付いたり変色したりさせては意味がありませんから。
実際に規格外商品は、以前にそのような意図しない事故から生まれました。糸が変色してしまったのです。しかも綺麗に染まりませんでした。
その糸を使って大きなクッションを作りました」

「捨てなかったのか?」

「手触りはそれほど悪くなかったので、私が布にしてと頼みました。今では羽毛の方でも、規格外を廃棄しません。
ちなみに、その大きなクッションはティアラのベッドになっています」

「あれか!」

「はい」


昼食を食べた後は実際に布を作っている様子を見てもらいながら、私自身も観察した。お兄様から改善点があったら教えてと言われたからだ。

見学が終わると屋敷に戻った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「10歳の頃の想いなど熱病と同じ」と婚約者は言いました──さようなら【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王太子フリードリヒの婚約者として、幼い頃から王妃教育を受けてきたアメリア・エレファウント公爵令嬢。 誰もが羨む未来を約束された彼女の世界は、ある日突然1人の少女の登場によって揺らぎ始める。 無邪気な笑顔で距離を(意図的に)間違える編入生ベルティーユは、男爵の庶子で平民出身。 ベルティーユに出会ってから、悪い方へ変わっていくフリードリヒ。 「ベルが可哀想だろ」「たかがダンスくらい」と話が通じない。 アメリアの積み上げてきた7年の努力と誇りが崩れていく。 そしてフリードリヒを見限り、婚約解消を口にするが話は進まず、学園の卒業パーティーで断罪されてしまう……?! ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています

愛する女性を側室に望むのなら、いっそ私との婚約は解消してほしいのですが?

四折 柊
恋愛
公爵令嬢ジョゼフィーヌには好きな人がいた。その人は隣国の王子様リック。ジョゼフィーヌはリックと結婚したくて努力をしてきた。そして十六歳になり立派な淑女になれたと自信を得たジョゼフィーヌは、リックにプロポーズをしようとした。ところが彼に婚約者がいたことが発覚し悲しみに暮れる。今まで確認しなかった自分も悪いが、なぜかリックも家族もそのことを教えてくれなかった。そんなときジョゼフィーヌに婚約の打診が来た。その相手は自国のアルバン王太子殿下。断りたいが王命が下り仕方なく受け入れた。それなのに、ある日夜会でアルバンが可憐な令嬢に一目惚れをした。その後、アルバンはその令嬢を側室にしたいと望んだので、お互いのために婚約を解消したいと申し出たが拒絶されて……。ジョゼフィーヌの未来はどうなるのか?!

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【3月中ーー完結!!】 私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 二十年の裏切りの果て、その事実だけを抱え、離縁状を置いて家を出た。 そこで待っていたのは、凍てつく絶望――。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と縋られても、 死の淵を彷徨った私には、裏切ったあなたを許す力など残っていない。 「でも、子供たちの心だけは、 必ず取り戻す」 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔い、歪な愛でもいいと手を伸ばした彼女が辿り着いた先。 それは、「歪で、完全な幸福」か、それとも――。 これは、"石"に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

あなたの片想いを聞いてしまった夜

柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」 公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。 政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。 しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。 「好きな人がいる。……片想いなんだ」 名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

処理中です...