笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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続編:シャルルと王女

品定め

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この王女は何言ってるんだ?

「やめるのなら今のうちです」

「仰っている意味がわかりません」

「父王と謁見した後にやっぱり止めますとは言えなくなりますし、謁見中なら尚更言えないでしょう。ですから今のうちです」

はぁ…本当勘弁してくれ。

「パリサ様、この縁談がヘインズ家に来た時点で僕に拒否権は微塵もないのです。アベル国王陛下の最愛の娘 第四王女パリサ様がお相手なのですよ?」

王女の表情がこわばった。

「どうやら王女殿下はご自身の影響力について把握なさっていないようですね。既に引き返せないんです。
もしそれが許されたとして今嫌だと言って国に戻ったらどうなると思いますか?“やっぱり違った”と捨てられた男、“もう飽きた”と捨てられた男、様々な言葉が僕に降りかかるんです。
貴女は商品リストから婿を選んだんです。商品の絵を見て指をさし“国王陛下おとうさま、私コレがいい”って仰ったんです。その後も会いにも来ることなく納品を待った、そうですよね?」

「ううっ…」

「事実を教えただけで泣かれては困ります。泣いただろうとわかる顔で謁見に同行されたら僕はどうなりますか?貴女は一国の王女ですし夫となる者を選び婚姻を控えた立派な大人です。国王陛下に溺愛される王女こどものままではなく、本物の大人になってもらわねば困ります。些細なことで涙を見せず王族として毅然となさってください」

「ごめんなさい」

「お迎えや道中、到着後のお心遣いには感謝を申し上げます。
さあ、ご自身の部屋に戻ってお顔を整えてください」

王女を追い出し窓辺に座った。
外の花を見るとクリスティーナの瞳の色と同じ色の花が見えた。

クリスティーナ

王女にあそこまでいうつもりはなかった。ただいつものように微笑んで“大丈夫です”と言おうと思ったのに。
クリスティーナは辛い環境にいても涙など見せず凛としていた。ずっと…僕のせいで。何度泣きたかっただろうか、いや、誰にも見えないところで泣いていたのだろう。
時が巻き戻るのなら、全力で君を愛して大事にしたい。君をいろいろな場所へ連れて行って笑顔を見たい。君の商売にも同行して理解を深めたい。

「クリスティーナ」

手紙は読んでくれただろうか。
気持ちはまだクリスティーナに染まっている。その僕がジオ公子を受け入れろだなんて書くのは胸が苦しかった。だけど僕にできる最後の償いは、それしかなかった。
ジオ公子は次期公爵で歳上だ。いくら公子がクリスティーナを愛していてもずっと待つことはできないだろう。公子が諦めて他の令嬢を選んだ時、クリスティーナは傷付き立ち直れないかもしれない。だから背中を押したつもりだ。
…読まずに捨てられているかもしれない。

紐を引いて呼び鈴を鳴らした。

「お呼びでしょうか」

「礼拝室に行きたいのだが」

「この後、ご予定がございますが」

「礼拝室から直接向かえないのか?」

「ではご案内いたします」

メイドに案内され礼拝室に入った。
願うのはクリスティーナの幸せのみ。

神様、彼女は素晴らしい人です。僕が傷付けてしまった分、彼女に祝福をお与えください。どうか、クリスティーナとクリスティーナを取りまく者達が幸せでありますように。

10分ほど祈ると、時間だと言われた。
連れて行かれた先は謁見の間ではなくサロンだった。

膝を付き頭を下げて指示を待つ。

「シャルル殿、遠い国からの婿入りに感謝する。席に着きたまえ」

立ち上がり、名を名乗り挨拶をして座った。

「ここにいる8人の紹介をしよう。私はアベル、妻のアステラ、第二王子のローランと第四王女パリサはアステラが産んだ。王太子ゼブランを産んだ二番目の妻テサ。第三王子ジェルヴェを産んだのは三番目の妻イリーナ。出席していないジェルヴェは17歳になったのだが、生まれたときから病弱で今はもう学園に通うのも難しい。シャルル殿は他国から来ているので念のため会わせるまで1週間は置きたい」

病気を持っている恐れがあるということか。3日間の休息は気遣いではなく隔離だったのだろうな。でもパリサ王女は会いに来ていたが、数分言葉を交わすだけなら問題ないということか?

「第一王女マリア、第二王女ユリーシア、第三王女ラナは他国の王族に嫁いでいるのでここには居ない。
さて、シャルル殿。君はパリサの婿になるということで間違いないかな?」

「間違いございません」

「ベスパスは一夫一妻制だ。不貞についても許されない」

え?妻が3人もいて?
うっかり陛下の3人の妻に視線を向けてしまった。

「んん゛国王の座についた者は例外だ。確実に世継ぎを作らなくてはならない。3人王子が生まれるまで止めることは許されないのだ」

「もちろん不貞はいたしません」

クリスティーナ以外の女に興味はない。

「君の場合は相手が王族パリサだから、相手次第では極刑もあり得るぞ」

国王陛下は品定めの最中に威圧感を出した。
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