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二章-首都の御三家-
18『モトサカ珈琲店』
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着物と袴姿の源しずくの後ろを歩く、テフナと葵が目的地に着いた時には、黄昏時となっていた…
「着きました…」
そう呟いたしずくの前には、レンガ造りの2階建ての建物があり…一階部分の看板には純喫茶『モトサカ珈琲店』と書かれている。
「ここが首都のモトサカ珈琲店かぁ…」
テフナが少しだけ明るいトーンで話す。
「首都のってどういう意味なの?」
葵が問い掛ける。
「えっと…モトサカ珈琲店は、源家の資金援助の元で全国的にも複数のお店があってね…私の赤坂村にある店舗が元祖で本店なんだよね。」
そう自慢気に答えたテフナに対して、冷めた視線を向けたしずくが最初に店内へと入っていく…
「ただいま帰りました…」
しずくがそう告げた店内は、クラシックのレコードが掛かっており…アンティーク調の装飾も相まって落ち着いた雰囲気になっている。
客の出入りの激しい時間を過ぎたこともあり、客席はすべて空いている。
「ちょっと…しずく、学校の訓練から帰って来るにしては遅いじゃない。」
ダウナーの口調の主は、店のカウンター側の椅子に腰かけて、煙草を吸っている。
「はい…お母様、その帰り道の途中でお客人と会ったので…」
しずくは、唯一店内にいる高そうな洋服を着た女性を母と呼ぶ。
「えっ、お客様?…って、テフナちゃんじゃないの!久し振りね。」
母と呼ばれた女性は、テフナの顔を見るや否や、ダウナー調だった口調が明るくなる。
「はい、お久しぶりです…キョウカ様。」
テフナとも面識のある女性の名前は、【源キョウカ】である。
「もう、様なんてやめてって言ったの覚えていないの?」
娘のしずくとは違いに、テフナに対しては明るく接する。
「そうですが…キョウカさんは源家の生まれの方なので…つい」
一回り以上、年上である上に、テフナの源坂家にとって本家出身に当たる相手に対して気を遣う。
「お父様は、いつも通りに地下でしょうか?」
しずくは、実の母に対してどこか距離を置いている。
「そうね…テフナちゃん、もうお客さんも、もう来ないだろし…余り物で良ければ、この栗羊羮を食べて頂戴…えっと、貴方は?」
娘に対しては短く返事をし、テフナともう一人の客人である葵の方を見る。
「初めまして、空軍管轄の藤原研究所に所属する葵と申します、宜しくお願いします。」
葵は、日頃の感じからは想像出来ない位に丁寧な返しをする。
「まぁ、藤原研究所の方なの…こちらこそ宜しくね。」
藤原という単語を聞いたキョウカは、口角が上がる。
「普段なら…値引きしてでも売り切るのに…」
ぼそりっとテフナにだけ聞こえる程度のボリュームでしずくがぼやく。
「それじゃあ、失礼します。」
テフナが若干、引き気味に本来の目的の相手がいる地下へと急ぐ。
「テフナ姉さんと葵さん…行きましょう。」
しずくもテフナに歩調を合わせる。
「後から、珈琲を持っていくわね…」
そう返したキョウカは、カウンターに立ち、珈琲と菓子の準備を進める。
ーーー
地下への階段を降りた先にある木製の扉を、しずくがノックする。
しかし、部屋の中からは返事が帰って来ない…
「はぁ…入りますよ、お父様。」
いつものことかっと言わんばかりに、ため息を漏らしたしずくが扉を開ける。
しずくに続いて入ったテフナの瞳には、工房や作業室と呼ぶべき空間が広がっている…
その作業室の一角には、射撃場があり…そこに中年の細身の男性が立っていた…
「あぁ…しずく、気が付かなかったよ…それに、テフナちゃんじゃないか、久しぶりだね。」
自身の娘、来客のテフナの順番で見た男性は、手にしていた拳銃を射撃の準備を行う為の台座の上に置いて歩み寄って来る…
「はい、お久しぶりです…西陽おじさん。」
テフナは、自身の父親の弟に当たる男性である【源 西陽】へと礼儀正しく一礼する。
「初めまして、私は藤原研究所に所属する葵と申します。」
西陽に対しても礼儀正しく挨拶する。
「あぁ、きみが、あの戦マキナって呼ばれる存在だね…宜しくね。」
西陽は、初対面とは思えない程に葵に近付く。
「あの、ちょっと近いです。」
葵の焦る声に対して、西陽は謝り数歩下がる。
「座ってゆっくりとテフナちゃんの近況について、聞かせてくれないかい。」
そう告げて、西陽が指差した先にあるテーブルには…黒ユリの様に黄色のリボンとラインが印象的な黒いセーラー服にタイツ姿の見知らぬ女性が既に座っている。
「あっ!【イナミさん】今日も来ていたんですね!」
しずくが今まで一番明るい声で喜ぶ。
「うん、今日も話し相手になって欲しいな…」
イナミと呼ばれた女性は穏やかに微笑んでいるものの…隣の椅子に座った、しずくの長い黒髪とは比較にならない深く黒い雰囲気を放っている。
「全くイナミちゃんは、どこから家に入って来ているんだか…」
西陽もやれやれと言った表情を見せながらも了承している。
「えっ?だから言っているじゃないですか…地下から入って来ているって…」
イナミはおどけた表情を見せる。
「初めまして、私は源坂テフナです。」
テフナは、突然現れたイナミに対して驚きながらも案内された席に座る。
「私は葵って言います…宜しくお願いします。」
困惑気味に挨拶をした葵を…イナミがじっと見つめて来る。
「まぁ…良いか…私も赤坂村での顛末を聞かせて欲しいな。」
何かを勝手に納得したイナミが、テフナに話すように促す。
「着きました…」
そう呟いたしずくの前には、レンガ造りの2階建ての建物があり…一階部分の看板には純喫茶『モトサカ珈琲店』と書かれている。
「ここが首都のモトサカ珈琲店かぁ…」
テフナが少しだけ明るいトーンで話す。
「首都のってどういう意味なの?」
葵が問い掛ける。
「えっと…モトサカ珈琲店は、源家の資金援助の元で全国的にも複数のお店があってね…私の赤坂村にある店舗が元祖で本店なんだよね。」
そう自慢気に答えたテフナに対して、冷めた視線を向けたしずくが最初に店内へと入っていく…
「ただいま帰りました…」
しずくがそう告げた店内は、クラシックのレコードが掛かっており…アンティーク調の装飾も相まって落ち着いた雰囲気になっている。
客の出入りの激しい時間を過ぎたこともあり、客席はすべて空いている。
「ちょっと…しずく、学校の訓練から帰って来るにしては遅いじゃない。」
ダウナーの口調の主は、店のカウンター側の椅子に腰かけて、煙草を吸っている。
「はい…お母様、その帰り道の途中でお客人と会ったので…」
しずくは、唯一店内にいる高そうな洋服を着た女性を母と呼ぶ。
「えっ、お客様?…って、テフナちゃんじゃないの!久し振りね。」
母と呼ばれた女性は、テフナの顔を見るや否や、ダウナー調だった口調が明るくなる。
「はい、お久しぶりです…キョウカ様。」
テフナとも面識のある女性の名前は、【源キョウカ】である。
「もう、様なんてやめてって言ったの覚えていないの?」
娘のしずくとは違いに、テフナに対しては明るく接する。
「そうですが…キョウカさんは源家の生まれの方なので…つい」
一回り以上、年上である上に、テフナの源坂家にとって本家出身に当たる相手に対して気を遣う。
「お父様は、いつも通りに地下でしょうか?」
しずくは、実の母に対してどこか距離を置いている。
「そうね…テフナちゃん、もうお客さんも、もう来ないだろし…余り物で良ければ、この栗羊羮を食べて頂戴…えっと、貴方は?」
娘に対しては短く返事をし、テフナともう一人の客人である葵の方を見る。
「初めまして、空軍管轄の藤原研究所に所属する葵と申します、宜しくお願いします。」
葵は、日頃の感じからは想像出来ない位に丁寧な返しをする。
「まぁ、藤原研究所の方なの…こちらこそ宜しくね。」
藤原という単語を聞いたキョウカは、口角が上がる。
「普段なら…値引きしてでも売り切るのに…」
ぼそりっとテフナにだけ聞こえる程度のボリュームでしずくがぼやく。
「それじゃあ、失礼します。」
テフナが若干、引き気味に本来の目的の相手がいる地下へと急ぐ。
「テフナ姉さんと葵さん…行きましょう。」
しずくもテフナに歩調を合わせる。
「後から、珈琲を持っていくわね…」
そう返したキョウカは、カウンターに立ち、珈琲と菓子の準備を進める。
ーーー
地下への階段を降りた先にある木製の扉を、しずくがノックする。
しかし、部屋の中からは返事が帰って来ない…
「はぁ…入りますよ、お父様。」
いつものことかっと言わんばかりに、ため息を漏らしたしずくが扉を開ける。
しずくに続いて入ったテフナの瞳には、工房や作業室と呼ぶべき空間が広がっている…
その作業室の一角には、射撃場があり…そこに中年の細身の男性が立っていた…
「あぁ…しずく、気が付かなかったよ…それに、テフナちゃんじゃないか、久しぶりだね。」
自身の娘、来客のテフナの順番で見た男性は、手にしていた拳銃を射撃の準備を行う為の台座の上に置いて歩み寄って来る…
「はい、お久しぶりです…西陽おじさん。」
テフナは、自身の父親の弟に当たる男性である【源 西陽】へと礼儀正しく一礼する。
「初めまして、私は藤原研究所に所属する葵と申します。」
西陽に対しても礼儀正しく挨拶する。
「あぁ、きみが、あの戦マキナって呼ばれる存在だね…宜しくね。」
西陽は、初対面とは思えない程に葵に近付く。
「あの、ちょっと近いです。」
葵の焦る声に対して、西陽は謝り数歩下がる。
「座ってゆっくりとテフナちゃんの近況について、聞かせてくれないかい。」
そう告げて、西陽が指差した先にあるテーブルには…黒ユリの様に黄色のリボンとラインが印象的な黒いセーラー服にタイツ姿の見知らぬ女性が既に座っている。
「あっ!【イナミさん】今日も来ていたんですね!」
しずくが今まで一番明るい声で喜ぶ。
「うん、今日も話し相手になって欲しいな…」
イナミと呼ばれた女性は穏やかに微笑んでいるものの…隣の椅子に座った、しずくの長い黒髪とは比較にならない深く黒い雰囲気を放っている。
「全くイナミちゃんは、どこから家に入って来ているんだか…」
西陽もやれやれと言った表情を見せながらも了承している。
「えっ?だから言っているじゃないですか…地下から入って来ているって…」
イナミはおどけた表情を見せる。
「初めまして、私は源坂テフナです。」
テフナは、突然現れたイナミに対して驚きながらも案内された席に座る。
「私は葵って言います…宜しくお願いします。」
困惑気味に挨拶をした葵を…イナミがじっと見つめて来る。
「まぁ…良いか…私も赤坂村での顛末を聞かせて欲しいな。」
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