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二章-首都の御三家-
19『新たな目的地』
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「…そっか…それは大変な思いをしたね…」
イナミと呼ばれている黒いセーラー服姿の女性は、大袈裟と言っていいほどに泣きながら…栗羊羮を食べている。
「(それ…私の分のはずなんだけどな…)」
赤坂村について語ったテフナは、自分の分のお茶菓子が食べられている様を、ただ見つめることしか出来ない…
「流石、和菓子の本番の栗羊羮おいし…おほん、それよりも…大体の状態は分かったよ。」
テフナの分の珈琲による苦味で口直しをしたイナミが続ける。
「その雷クモをより多く討伐する為にも…長崎へ行くことをオススメするかな…」
そう切り出したイナミの視線が、西陽の視線と重なる。
「な…長崎かぁ…確かに雷クモが初めて発見された地域があって…未だに潜伏している数も多いとは言われてはいるけども…でも、あそこは…」
言葉を続けようとする西陽に対して、イナミが咳払いをして何かを促す。
「まぁ…危険な地域だけど、長崎で討伐任務に就くのもベッコウ師として良い経験にはなると思うよ。」
しばらくの間、考える素振りを見せた西陽は、イナミの提言に対して賛同する。
「そうですか…西陽おじさんとイナミさんも助言ありがとうございます。」
テフナは2人に対して軽く頭を下げる。
「テフナ、私も付いていくよ。」
テフナの長崎行きを肯定した葵が、言葉を続ける。
「それで…急に現れたイナミさんは、何者なんですか?」
葵の視線がテフナから謎のイナミへと向く。
「う~ん…何者かって聞かれると困るなぁ…」
イナミが敢えてとぼけていると…
「イナミさんは、私の訓練学校にある地下資料室で仕事をされている司書です。」
しずくが会話の中へ参加してくる。
「まぁ…そんな感じかな…しずくちゃんが同級生に地下資料室の掃除当番を、押し付けられてばかりの状態を見兼ねて声を掛けたのが、よく話すようになったきっかけだったね。」
イナミの言葉に対して、しずくが嬉しそうに頷く。
「父である私としても、同級生とはなかなか馴染めないでいる娘にとって話し相手が出来たのは有難いよ。」
西陽もイナミとしずくとの関係を肯定する。
「そう言えば…西陽おじさん、拳銃の開発の進捗は捗っていますか?」
そう切り出したテフナは、地下室の一角に置かれている一丁の拳銃へ視線を向ける。
「あぁ、まぁ…順調とは言えないかな…でも、いつか必ず『ミナカ式C型拳銃』に引けを取らない銃を完成させるよ…あはは…」
痛い所を突かれた西陽は、苦笑するしかない…
そうこうしていると…地下室の壁に飾られた時計が夜の8時を報せる。
「ベッコウ師とはいえ年頃の女の子なのだから…テフナちゃんと葵さんはそろそろ帰った方がいいよ。」
西陽に優しく諭されたテフナと葵は、二つ返事で応じる。
「よし、私も帰るかな…またね。」
そう短く別れの挨拶をしたイナミは、立ち上がると…地下室に置かれている冷蔵箱の下部の扉を開けると…頭から突っ込んでいく…
「あれ…おかしいな…これで帰れたはず…うぇあ!冷た!」
じたばたするイナミの首筋に氷が溶けた冷たい水が落ちる。
「(何を見せられているんだろう…)」
その場にいる全員が同じ感想を抱く。
「あっ!行けそう!…またね!」
改めて別れの挨拶をしたイナミは、スッと居なくなる。
「(いや…どういう原理なのよ…)」
葵が心の中でツッコミを入れる。
「それじゃあ…私達も帰ります。」
地下室の扉を開けるテフナと葵を、西陽としずくが見届ける。
そして、別れを告げる重たいドアの音が、地下室に響く…
「あの、お父様…テフナ姉さんを長崎へ行かせて、本当に宜しいのでしょうか?」
しずくが神妙な面持ちで切り出す。
「あぁ…良いんだよ…兄さんを失墜させ…」
その後は独り言の様に小さくなり、隣にいるしずくでさえも聞き取れなくなっていく…
イナミと呼ばれている黒いセーラー服姿の女性は、大袈裟と言っていいほどに泣きながら…栗羊羮を食べている。
「(それ…私の分のはずなんだけどな…)」
赤坂村について語ったテフナは、自分の分のお茶菓子が食べられている様を、ただ見つめることしか出来ない…
「流石、和菓子の本番の栗羊羮おいし…おほん、それよりも…大体の状態は分かったよ。」
テフナの分の珈琲による苦味で口直しをしたイナミが続ける。
「その雷クモをより多く討伐する為にも…長崎へ行くことをオススメするかな…」
そう切り出したイナミの視線が、西陽の視線と重なる。
「な…長崎かぁ…確かに雷クモが初めて発見された地域があって…未だに潜伏している数も多いとは言われてはいるけども…でも、あそこは…」
言葉を続けようとする西陽に対して、イナミが咳払いをして何かを促す。
「まぁ…危険な地域だけど、長崎で討伐任務に就くのもベッコウ師として良い経験にはなると思うよ。」
しばらくの間、考える素振りを見せた西陽は、イナミの提言に対して賛同する。
「そうですか…西陽おじさんとイナミさんも助言ありがとうございます。」
テフナは2人に対して軽く頭を下げる。
「テフナ、私も付いていくよ。」
テフナの長崎行きを肯定した葵が、言葉を続ける。
「それで…急に現れたイナミさんは、何者なんですか?」
葵の視線がテフナから謎のイナミへと向く。
「う~ん…何者かって聞かれると困るなぁ…」
イナミが敢えてとぼけていると…
「イナミさんは、私の訓練学校にある地下資料室で仕事をされている司書です。」
しずくが会話の中へ参加してくる。
「まぁ…そんな感じかな…しずくちゃんが同級生に地下資料室の掃除当番を、押し付けられてばかりの状態を見兼ねて声を掛けたのが、よく話すようになったきっかけだったね。」
イナミの言葉に対して、しずくが嬉しそうに頷く。
「父である私としても、同級生とはなかなか馴染めないでいる娘にとって話し相手が出来たのは有難いよ。」
西陽もイナミとしずくとの関係を肯定する。
「そう言えば…西陽おじさん、拳銃の開発の進捗は捗っていますか?」
そう切り出したテフナは、地下室の一角に置かれている一丁の拳銃へ視線を向ける。
「あぁ、まぁ…順調とは言えないかな…でも、いつか必ず『ミナカ式C型拳銃』に引けを取らない銃を完成させるよ…あはは…」
痛い所を突かれた西陽は、苦笑するしかない…
そうこうしていると…地下室の壁に飾られた時計が夜の8時を報せる。
「ベッコウ師とはいえ年頃の女の子なのだから…テフナちゃんと葵さんはそろそろ帰った方がいいよ。」
西陽に優しく諭されたテフナと葵は、二つ返事で応じる。
「よし、私も帰るかな…またね。」
そう短く別れの挨拶をしたイナミは、立ち上がると…地下室に置かれている冷蔵箱の下部の扉を開けると…頭から突っ込んでいく…
「あれ…おかしいな…これで帰れたはず…うぇあ!冷た!」
じたばたするイナミの首筋に氷が溶けた冷たい水が落ちる。
「(何を見せられているんだろう…)」
その場にいる全員が同じ感想を抱く。
「あっ!行けそう!…またね!」
改めて別れの挨拶をしたイナミは、スッと居なくなる。
「(いや…どういう原理なのよ…)」
葵が心の中でツッコミを入れる。
「それじゃあ…私達も帰ります。」
地下室の扉を開けるテフナと葵を、西陽としずくが見届ける。
そして、別れを告げる重たいドアの音が、地下室に響く…
「あの、お父様…テフナ姉さんを長崎へ行かせて、本当に宜しいのでしょうか?」
しずくが神妙な面持ちで切り出す。
「あぁ…良いんだよ…兄さんを失墜させ…」
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