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1章.地下遊演地
13『暁の迷宮杯・前編』
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夜が明けた帝国東圏側B区…
日がある程度上ってきたにも関わらず、コルネッティはベッドの上で惰眠を貪っている。
そこへ、コルネッティの住まう部屋の呼び鈴が鳴り響く。
「(ったく…誰だよ…)」
数回目の呼び鈴の問い掛けに、ようやく眠たい体を起こしたコルネッティは、
ドアの方へフラフラと歩みを進める。
そして、ドアを開く…
「おや?アンタァは誰だい?」
「えっ!?母ちゃん…どうしているんだよ!」
予想だにしない相手に驚きを隠せないコルネッティ。
「母ちゃん?アタシャは、アンタの母親じゃぁないよ!」
「何を言ってんだよ!俺だよ、コルネッティだよ!」
「へぇ…アンタァもコルネッティっていう名前なのかい?アタシの息子とおんなじ名前だね…」
そういうとコルネッティの母は、買い物袋を片手にスタスタと部屋の中に入って行く。
そして、買い物袋をドサッと机の上に置くコルネッティの母。
「母ちゃん…病院の方は良いのかよ?」
「あぁ~最近は調子が良くなってきたからって事で、病院の先生も外出して良いって言ってくれたんだよ…これも何かの縁だし、あの子が好きなミートパイの味見をしてくれないかい?」
「あぁ!勿論だよ母ちゃん!」
「だから、アンタァの母ちゃんじゃあないっての!」
母はキッチンの方へ向かう。
ーーー
「あぁ…母ちゃんのミートパイは、帝国一だよ!」
「まったく…大袈裟だねぇ…」
母が久しぶりに作ってくれた好物を頬張るコルネッティ。
ジリリィ!至福の時間を、電話の着信を知らせる音が遮る。
コルネッティは、邪魔をされたことに苛立ちを感じつつも、席から立とうとするが…
「っ…あれ?」
コルネッティはふらつき、上半身は机の上で伏せてしまう。
「あぁ…アンタァはそこで寝ていて…結構ですよ。」
母の少し丸くなっていた背中が徐々に真っ直ぐになり、張りと若さがある声に変わり…
見た目が、スカートタイプのスーツ姿の女性へと変わる。
そして、母だった女性がコルネッティの代わりに電話に出る。
「オーナー、いつまで寝ているんですか!」
「あぁ…すまない、飲み過ぎていた。」
「またですか…」
その女性の声は、コルネッティの声色と瓜二つに変わり、地下遊演地の女性スタッフと会話を交わす。
「早く来て、今日の『暁の迷宮杯』のコース設定を指示してくださいよ。」
「あぁ?コース設定に関しては昨日、伝えてあるだろ?その通り頼むぞ。」
「えっ、聞いてませんよ。」
「何を言ってんだよ…とにかく、俺はこれから今夜の演目に少しで多くのVIPが来てくれるように、声を掛けて回るからな…」
そう吐き捨てたスーツ姿の女性は、一方的に電話を切り、部屋から退出する。
扉が完全に閉じるのと同時に、コルネッティの瞳も閉じてしまう。
ーーー
暁の迷宮杯、開幕直前の地下遊園地のエレベーター内。
南花を始めとする今宵の演者達5人が、作戦の最終確認をしている。
「私とアリサが、なるべく早く木像を回収して設定し終わるから、無理しないでね。」
南花の発言に、アリサは頷き迎合する。
「うん、2人が探索に専念出来る様に、敵は可能な限り引き付けるよ。」
3人の地下道化師の代表としてサクラが応える。
半円形の階数表示表が、B2を差し、エレベーターが止まる。
アリサがエレベーターの格子形の蛇腹状の内扉を開けると…
地下遊園地の舞台へ繋がる、重たい両開きのドアの全容が見える。
「行くよ…」
南花の短い問い掛けに、アリサ・サクラ・コマチ・アオイが頷く。
そして、南花とアリサが、両開きのドアの流線形のドアノブに手をかけ…
ほぼ同時に扉を開ける。
扉の先で、真っ先に南花の視界を捉えたの、大きな門だった…
その門は、中央、左、右と3つ鎮座しており、各門の中央には、チェスの駒を模した紋章が刻まれている。
中央の門にはビショップ、右の門にはルーク、左の門にはナイトの紋章が彫刻してある。
その3つの門は、蝋燭灯の微かな明かりによって不気味に照らされている。
少しの静寂の後、進行役の燕尾服を着た地下遊園地のスタッフが口を開く。
「今宵、お集まり頂いた皆様、大変お持たせ致しました…只今より、本日のメインの演目『暁の迷宮杯』を開演致します。」
「今宵のプレイヤーは、当地下遊園地の随一の地下道化師3人のみならず…」
オホンっと一瞬、間を置いたスタッフが続ける。
「なんと、首都機関の技術開発局の局員2人が参加する運びとなりました!」
迷宮が展開されているフロアB2より、1段上のB1にあるVIPルームにいる
ゲスト達の中には、南花とアリサに視線を向けつつ、ひそひそ話をする者もいる。
「その局員は、誰一人として犠牲にすることなく、完全勝利を達成すると豪語しています。」
進行役の男の声は、より一層、大きくなる。
「それでは…」
ギィ…ギィギィ…っと、中央のビショップの門のみが、開き出す。
南花達、プレイヤー5人は、固唾を飲み込む。
「最後までお楽しみ下さい。」
ビショップの門が完全に開き、暁の迷宮杯の開始を告げる。
日がある程度上ってきたにも関わらず、コルネッティはベッドの上で惰眠を貪っている。
そこへ、コルネッティの住まう部屋の呼び鈴が鳴り響く。
「(ったく…誰だよ…)」
数回目の呼び鈴の問い掛けに、ようやく眠たい体を起こしたコルネッティは、
ドアの方へフラフラと歩みを進める。
そして、ドアを開く…
「おや?アンタァは誰だい?」
「えっ!?母ちゃん…どうしているんだよ!」
予想だにしない相手に驚きを隠せないコルネッティ。
「母ちゃん?アタシャは、アンタの母親じゃぁないよ!」
「何を言ってんだよ!俺だよ、コルネッティだよ!」
「へぇ…アンタァもコルネッティっていう名前なのかい?アタシの息子とおんなじ名前だね…」
そういうとコルネッティの母は、買い物袋を片手にスタスタと部屋の中に入って行く。
そして、買い物袋をドサッと机の上に置くコルネッティの母。
「母ちゃん…病院の方は良いのかよ?」
「あぁ~最近は調子が良くなってきたからって事で、病院の先生も外出して良いって言ってくれたんだよ…これも何かの縁だし、あの子が好きなミートパイの味見をしてくれないかい?」
「あぁ!勿論だよ母ちゃん!」
「だから、アンタァの母ちゃんじゃあないっての!」
母はキッチンの方へ向かう。
ーーー
「あぁ…母ちゃんのミートパイは、帝国一だよ!」
「まったく…大袈裟だねぇ…」
母が久しぶりに作ってくれた好物を頬張るコルネッティ。
ジリリィ!至福の時間を、電話の着信を知らせる音が遮る。
コルネッティは、邪魔をされたことに苛立ちを感じつつも、席から立とうとするが…
「っ…あれ?」
コルネッティはふらつき、上半身は机の上で伏せてしまう。
「あぁ…アンタァはそこで寝ていて…結構ですよ。」
母の少し丸くなっていた背中が徐々に真っ直ぐになり、張りと若さがある声に変わり…
見た目が、スカートタイプのスーツ姿の女性へと変わる。
そして、母だった女性がコルネッティの代わりに電話に出る。
「オーナー、いつまで寝ているんですか!」
「あぁ…すまない、飲み過ぎていた。」
「またですか…」
その女性の声は、コルネッティの声色と瓜二つに変わり、地下遊演地の女性スタッフと会話を交わす。
「早く来て、今日の『暁の迷宮杯』のコース設定を指示してくださいよ。」
「あぁ?コース設定に関しては昨日、伝えてあるだろ?その通り頼むぞ。」
「えっ、聞いてませんよ。」
「何を言ってんだよ…とにかく、俺はこれから今夜の演目に少しで多くのVIPが来てくれるように、声を掛けて回るからな…」
そう吐き捨てたスーツ姿の女性は、一方的に電話を切り、部屋から退出する。
扉が完全に閉じるのと同時に、コルネッティの瞳も閉じてしまう。
ーーー
暁の迷宮杯、開幕直前の地下遊園地のエレベーター内。
南花を始めとする今宵の演者達5人が、作戦の最終確認をしている。
「私とアリサが、なるべく早く木像を回収して設定し終わるから、無理しないでね。」
南花の発言に、アリサは頷き迎合する。
「うん、2人が探索に専念出来る様に、敵は可能な限り引き付けるよ。」
3人の地下道化師の代表としてサクラが応える。
半円形の階数表示表が、B2を差し、エレベーターが止まる。
アリサがエレベーターの格子形の蛇腹状の内扉を開けると…
地下遊園地の舞台へ繋がる、重たい両開きのドアの全容が見える。
「行くよ…」
南花の短い問い掛けに、アリサ・サクラ・コマチ・アオイが頷く。
そして、南花とアリサが、両開きのドアの流線形のドアノブに手をかけ…
ほぼ同時に扉を開ける。
扉の先で、真っ先に南花の視界を捉えたの、大きな門だった…
その門は、中央、左、右と3つ鎮座しており、各門の中央には、チェスの駒を模した紋章が刻まれている。
中央の門にはビショップ、右の門にはルーク、左の門にはナイトの紋章が彫刻してある。
その3つの門は、蝋燭灯の微かな明かりによって不気味に照らされている。
少しの静寂の後、進行役の燕尾服を着た地下遊園地のスタッフが口を開く。
「今宵、お集まり頂いた皆様、大変お持たせ致しました…只今より、本日のメインの演目『暁の迷宮杯』を開演致します。」
「今宵のプレイヤーは、当地下遊園地の随一の地下道化師3人のみならず…」
オホンっと一瞬、間を置いたスタッフが続ける。
「なんと、首都機関の技術開発局の局員2人が参加する運びとなりました!」
迷宮が展開されているフロアB2より、1段上のB1にあるVIPルームにいる
ゲスト達の中には、南花とアリサに視線を向けつつ、ひそひそ話をする者もいる。
「その局員は、誰一人として犠牲にすることなく、完全勝利を達成すると豪語しています。」
進行役の男の声は、より一層、大きくなる。
「それでは…」
ギィ…ギィギィ…っと、中央のビショップの門のみが、開き出す。
南花達、プレイヤー5人は、固唾を飲み込む。
「最後までお楽しみ下さい。」
ビショップの門が完全に開き、暁の迷宮杯の開始を告げる。
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