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3章.無神格と魔女の血
30『偽りの瓦解』
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一発の銃声が、黄昏時の古びたレンガ倉庫内に響き渡る。
銃口から煙を上げるのは、パネトーネが手にする回転式拳銃ではなく…
レンガ倉庫へ向かう道中の坂道で、柘榴を拾うために脇道に逸れた
パネトーネの取り巻きの女生徒が、引き金を引いていた。
「はぁ?…ッウ!」
回転式拳銃を持つ、右手に銃弾が掠めたパネトーネは…
キョトンした顔を見せたかと思いきや、遅れて襲われた痛みに怯む。
次の瞬間、アリサの周囲に飛散していた複数の柘榴が、大量の煙幕を吐き出す…
そして、一同の視界が奪われる。
充満する煙のなか、残る取り巻き達が放つ銃声と短い悲鳴が、南花の耳に届く。
煙幕が霧散し、再び視界が晴れると、そこには帝国憲兵が佇んでいて
パネトーネ側の面子が全て意識を失い、地面に伏している。
「流石に、あれ以上は看過出来ないと思い介入させてもらいました…」
一番近くに座り込む南花に歩み寄ったアハトは、ハンカチを取り出す。
「南花さん、宜しければお使い下さい。」
「アハトさん、あの時に入れ替わっていたんですね…助かりました。」
感謝を告げた南花が、アハトの善意を受け取ろうとすると…
眼前の帝国憲兵の目元だけを隠した仮面に、薄氷の様な亀裂が入り…
瓦解していく。
そして、僅かに上がった口角だけでなく、微笑む女性の目元が露になる。
「あっ…しまった…」
微笑みから焦りの表情に変わってしまった女性の目元は、帝国憲兵としての口調に反して、新雪の様に冷たくも柔らかな雰囲気を放っている。
「【八型憲兵さん】、彼女達を制圧する際に銃弾が掠めていたみたいね?そして、貴方は、誰なのかしら?」
アリサが神妙な面持ちで、問い掛ける。
「…その質問には、無論お答えすることは出来ませんよ、アリサさん。」
いつもの帝国憲兵としての口調で応えるが…
「その目元…その声…【ユキノ】姉さん?なんでしょ?」
チョーカーによる痛みから解放された、サクラが信じがたい現実に釘付けになる。
「はぁ…やっぱりな…アハトとの初対面の時に、感じた匂い…小さい頃に身近にあったものと同じだった訳か…」
同じくチョーカーの痛みが解消された、コマチは合点を得る。
「どういうことなの?」
状況に追い付けていない南花が疑問を発する。
「南花さん…私達3人が、まだ出身の村にいた、小さい頃に、一緒に遊んでいたお姉さんがいたんだけど…私達と同じく孤児になった一人で…」
アオイが驚きを感じつつも、南花の質問に応える。
「行方不明になっていた【冬野ユキノ】さんと、アハトさんが似ているということなんです。」
「…そうですよ。御夏さんの言う通り、そっくりさんなだけです…」
アオイの言葉を拾い、八型憲兵が口を開く。
「お三方と同様、あの【無神格】が集う村の出身と言うならば、その【ユキノ】さんと言われる方は、魔術が扱えない可能性が高いはずです…」
「それに対して、私は魔術が扱える【四神格】の持ち主である時点で別人じゃないでしょうか?」
目の前の八型憲兵は、冷静にユキノと言われる人物とは、別人であることを示唆する。
「いいえ…それだけでは、同一人物の可能性を払拭出来ないはずよ。何故なら、兄さんによれば、帝国憲兵達が有する神格は…」
今まで静観していたアリサが、西圏側の第四騎士団の団長であるダージリンから聞いた機密の断片を語ろうとするが…
一発の銃声がレンガ倉庫内に響き、その言葉を遮る。
南花達が、銃声が聞こえた倉庫の入り口付近に、視線を向けると…
アハトと同じスカートタイプのスーツと目元を仮面で隠した、小柄の女性が立っている。
「あぁ~もう…アハトちゃんは何をやっているんだか…」
それまでの空気を、弾丸で絶ちきった主の声はフラットである。
そして、言葉を紡いでいたアリサに、真っ先に歩み寄ると…
「お前、少し黙れよ…じゃないと、唯一の肉親が、肉片になるぞ…」
アリサの耳元で、警告を低い声でささやく。
「アハトちゃん、アタシの予備を付けなよ。」
フラットな声に戻った小柄な女性が、アハトに新しい仮面を手渡す。
「えっと…貴方は?」
南花が躊躇いながら、小柄な女性の名前を聞く。
「あぁ、ごめんね!名乗るのが遅れちゃったね!私は、【六型憲兵】と言って、機動力を増幅する魔術が得意です。宜しくね!」
六型憲兵が敢えて陽気な口調で自己紹介をしていると…
「おい、ゼクス…気安く身辺に関する情報を与えるな…」
ゼクスとは打って代わって、落ち着いた口調で、同じくスーツ姿、目元を仮面で隠した大男が倉庫の入り口から入ってくる…
その大男は、倉庫の周辺を監視していたであろう、意識を失ったパネトーネの取り巻きの一人を、右肩に大きなカバンかの様に担いでいる。
「もう、相変わらず【九型憲兵】は堅物なんだから。因みに、彼の特徴は…」
「おい!言っているそばから、やめろ!」
巨石の様な雰囲気の九型憲兵を、まぁまぁ…っと小動物の様な見た目の六型憲兵がなだめる。
そうこうしていると…街中で数発の銃声が聞こえたという通報を聞き付けた、東圏側の一般兵士達が、雪崩れ込んで来る…
そして、各々が事情を聴取されるなか…帝国憲兵達は、手短に報告する…
「今日、見たことは深追いしないでね?それじゃ…」
六型憲兵は、アリサを改めて注する。
そして、去っていく八型憲兵に、アオイが呼びかける。
「ねぇ!本当はユキノ姉さんなんでしょ?ねぇ…ってば…」
しかし、八型憲兵は振り向くこともせずに、他の2人の憲兵と共に闇夜に消えて行く…
銃口から煙を上げるのは、パネトーネが手にする回転式拳銃ではなく…
レンガ倉庫へ向かう道中の坂道で、柘榴を拾うために脇道に逸れた
パネトーネの取り巻きの女生徒が、引き金を引いていた。
「はぁ?…ッウ!」
回転式拳銃を持つ、右手に銃弾が掠めたパネトーネは…
キョトンした顔を見せたかと思いきや、遅れて襲われた痛みに怯む。
次の瞬間、アリサの周囲に飛散していた複数の柘榴が、大量の煙幕を吐き出す…
そして、一同の視界が奪われる。
充満する煙のなか、残る取り巻き達が放つ銃声と短い悲鳴が、南花の耳に届く。
煙幕が霧散し、再び視界が晴れると、そこには帝国憲兵が佇んでいて
パネトーネ側の面子が全て意識を失い、地面に伏している。
「流石に、あれ以上は看過出来ないと思い介入させてもらいました…」
一番近くに座り込む南花に歩み寄ったアハトは、ハンカチを取り出す。
「南花さん、宜しければお使い下さい。」
「アハトさん、あの時に入れ替わっていたんですね…助かりました。」
感謝を告げた南花が、アハトの善意を受け取ろうとすると…
眼前の帝国憲兵の目元だけを隠した仮面に、薄氷の様な亀裂が入り…
瓦解していく。
そして、僅かに上がった口角だけでなく、微笑む女性の目元が露になる。
「あっ…しまった…」
微笑みから焦りの表情に変わってしまった女性の目元は、帝国憲兵としての口調に反して、新雪の様に冷たくも柔らかな雰囲気を放っている。
「【八型憲兵さん】、彼女達を制圧する際に銃弾が掠めていたみたいね?そして、貴方は、誰なのかしら?」
アリサが神妙な面持ちで、問い掛ける。
「…その質問には、無論お答えすることは出来ませんよ、アリサさん。」
いつもの帝国憲兵としての口調で応えるが…
「その目元…その声…【ユキノ】姉さん?なんでしょ?」
チョーカーによる痛みから解放された、サクラが信じがたい現実に釘付けになる。
「はぁ…やっぱりな…アハトとの初対面の時に、感じた匂い…小さい頃に身近にあったものと同じだった訳か…」
同じくチョーカーの痛みが解消された、コマチは合点を得る。
「どういうことなの?」
状況に追い付けていない南花が疑問を発する。
「南花さん…私達3人が、まだ出身の村にいた、小さい頃に、一緒に遊んでいたお姉さんがいたんだけど…私達と同じく孤児になった一人で…」
アオイが驚きを感じつつも、南花の質問に応える。
「行方不明になっていた【冬野ユキノ】さんと、アハトさんが似ているということなんです。」
「…そうですよ。御夏さんの言う通り、そっくりさんなだけです…」
アオイの言葉を拾い、八型憲兵が口を開く。
「お三方と同様、あの【無神格】が集う村の出身と言うならば、その【ユキノ】さんと言われる方は、魔術が扱えない可能性が高いはずです…」
「それに対して、私は魔術が扱える【四神格】の持ち主である時点で別人じゃないでしょうか?」
目の前の八型憲兵は、冷静にユキノと言われる人物とは、別人であることを示唆する。
「いいえ…それだけでは、同一人物の可能性を払拭出来ないはずよ。何故なら、兄さんによれば、帝国憲兵達が有する神格は…」
今まで静観していたアリサが、西圏側の第四騎士団の団長であるダージリンから聞いた機密の断片を語ろうとするが…
一発の銃声がレンガ倉庫内に響き、その言葉を遮る。
南花達が、銃声が聞こえた倉庫の入り口付近に、視線を向けると…
アハトと同じスカートタイプのスーツと目元を仮面で隠した、小柄の女性が立っている。
「あぁ~もう…アハトちゃんは何をやっているんだか…」
それまでの空気を、弾丸で絶ちきった主の声はフラットである。
そして、言葉を紡いでいたアリサに、真っ先に歩み寄ると…
「お前、少し黙れよ…じゃないと、唯一の肉親が、肉片になるぞ…」
アリサの耳元で、警告を低い声でささやく。
「アハトちゃん、アタシの予備を付けなよ。」
フラットな声に戻った小柄な女性が、アハトに新しい仮面を手渡す。
「えっと…貴方は?」
南花が躊躇いながら、小柄な女性の名前を聞く。
「あぁ、ごめんね!名乗るのが遅れちゃったね!私は、【六型憲兵】と言って、機動力を増幅する魔術が得意です。宜しくね!」
六型憲兵が敢えて陽気な口調で自己紹介をしていると…
「おい、ゼクス…気安く身辺に関する情報を与えるな…」
ゼクスとは打って代わって、落ち着いた口調で、同じくスーツ姿、目元を仮面で隠した大男が倉庫の入り口から入ってくる…
その大男は、倉庫の周辺を監視していたであろう、意識を失ったパネトーネの取り巻きの一人を、右肩に大きなカバンかの様に担いでいる。
「もう、相変わらず【九型憲兵】は堅物なんだから。因みに、彼の特徴は…」
「おい!言っているそばから、やめろ!」
巨石の様な雰囲気の九型憲兵を、まぁまぁ…っと小動物の様な見た目の六型憲兵がなだめる。
そうこうしていると…街中で数発の銃声が聞こえたという通報を聞き付けた、東圏側の一般兵士達が、雪崩れ込んで来る…
そして、各々が事情を聴取されるなか…帝国憲兵達は、手短に報告する…
「今日、見たことは深追いしないでね?それじゃ…」
六型憲兵は、アリサを改めて注する。
そして、去っていく八型憲兵に、アオイが呼びかける。
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