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第一話『憧れ作家先生との出会い。』
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『やっぱりお前に桜子は渡せねえ』
『黒木君?!』
『白森、すまねぇ』
黒木くんは私を腕の中に引き寄せる。
ドキン!
うそ!黒木君の腕の中がこんなに気持ちいなんて!
王子様みたい!
『でも、桜子!僕たちのことは、、、?』
黒木君の幼馴染で、私の現在進行形恋人が、苦しそうな表情をした。
『ごめんね、白森君!でも私は、黒木君とともに生きていくって決めたの!』
そう言って、私たちは夕日に向かって駆け出した。
『うふふ』『あははは』
『桜子ーーーーー!!!』
*************************
「ウフフ、アハハハ、、、サクラコォ、、、。きっと大丈夫、これからは君がいるから、、、、」
つらつらと調子のいい文章が書かれた小説。
『ドキドキ!王子様二人に迫られています!第五巻』
俺は声に出して文章を読む。
無意識に小説を持つ手に力が入ると、ページからべりっと音がした。
「くそぉ」
うめき声をあげて小説を、体育館裏の芝生の上にべしっと投げ捨てた。
「なんで黒木なんかに負けんだよ白森!」
頭をガシガシかきむしる。
「てか、桜子の奴!それ完全に浮気じゃねえか!」
俺がこんなクソしょうもない、乙女向けの小説にイライラしているのには理由がある。
俺『橘和樹』は今日、付き合っていた恋人に振られた。
振られたといっても、この小説のようにもう一人の男、『俺の幼馴染』に奪われたのだ。
この小説は第一巻から読んでいるが、どうも自分たちの様子と似ている気がする。
まず一人目のヒーロー、『白森』。
俺のように、色素の薄い美形で勉強も運動もなんでもそつなくこなすモテモテキャラ。
そして二人目、『黒木』。
俺の幼馴染『河村俊』のように、目つきのきつい黒髪で、ヤンキーのように見えるが不器用な優しさを持っている。僕らと同じように、一人目のヒーロー、白森の幼馴染だ。
そして、最も重要な存在のヒロイン、『桜子』。
平凡な顔つきのかわいらしい女の子。
彼女は俺の元恋人『沢北真琴』にどことなく似ている。
ストーリーも妙に見たことのある展開ばかりだ。
遊園地に三人で出かけたとき、俺が桜子を観覧車に引っ張り込んで、耳元で「好きだ」と呟いたこと。
俊と俺が、桜子をかけてタイマンしたこと。
全校放送で、桜子を口説き倒したこと。
今日みたいに、俊に恋人を奪われたこと。
「、、、、」
あれ、、、なんか正確すぎやしないか?
似ているというより、むしろ全く同じじゃん。
俺はなんだか悪寒がして、恋愛小説を指でもう少し遠くに押した。
「気味悪りぃ。あああ!クソォ!」
自分たちと似ている文章を読むとますますイライラしてくる。
「なんで俺みたいなのが振られんだよ!成績は学年トップ!運動神経抜群!できないことはほとんどない!イケメン!悪いとこひとっつもない!」
そう言いながら頭をかきむしる。
不意に、背後から落ち葉の踏みしめる音がした。
俺は慌てて振り返る。
校舎に続く小道に人影がある。
み、見られた、、、、。
「橘先輩、、、」
そう言って近づいてくる小柄な男。
俺はこいつのことを知っている。
こいつは俺の二つ年下、つまり高校一年だ。
真面目な顔つきに、四角メガネ。
制服は着崩さない。
それに目の下のクマが消えることはないことから、毎晩必死に勉学に励んでいるように見えるが、実は学年最下位の座に居座っている。
そんなこんなで、悪い噂を耳にする。
夜の商売?危険な遊び?
『渡辺颯太』、この学園の謎めいた存在だ。
俺はすっと背筋を伸ばした。
「渡辺くんだよね?どうしたの?」
スッといつもの王子スマイルを浮かべると、渡部は表情を変えぬまま首をかしげる。
「それは、少し無理があるのでは?」
「なんのことかな?」
俺はもう慣れてしまった演技を続行する。
渡辺は俺の顔を猫のようなまんまるい瞳で眺めると、ポケットに手を突っ込んだ。
そして、小さなメモパットを取り出し、何かをつらつらと書き付け始めた。
、、、、これは、少しやばいのでは?
俺は動揺を見せまいと、笑顔を続行する。
「渡辺くん、何を書いてるの?」
返事はない。
ただただカリカリとペン先を動かしている。
俺は渡辺くんの方に手を置いた。
「まさか、僕のこと書いてないよね?」
王子スマイルのまま詰め寄る。
すると、渡辺は「よし」と声を漏らすと、俺に視線を向けた。
「大丈夫っすよ。バラさないんで」
「そっか、よかった」
俺が安堵で胸をなでおろす。
すると、渡辺くんが首を傾げた。
「何をばらさないのがよかったんすか?」
「え」
俺の表情が引きつる。
「それじゃあ」
そう言い残し渡辺の背中が遠ざかってゆく。
片手には何かしらメモっていたメモパッド。
まさか、今の言わされた?
だんだんんと怒りが湧き上がってくる。
俺はぐっと拳を握りしめた。
「なんじゃ!あの男は!」
あれから数日。
俺は今日も通常運行。
しかし、どうしても幼馴染と元恋人との空間にいるのが居心地悪い。
二人はあれからも俺のそばにいる。
毎朝一緒に登校して、昼食を食べて。
でも、砕けた感じはなく、二人が俺を気遣うような素振りを見せる。
俊は唯一俺の昔の姿を知る幼馴染で親友で、素直に話せるやつだったのに、苦笑をして話しかけてくる。
正直それが胸クソ悪い。
それに、できればもう真琴とは話したくない。
確かに俺と二人は親友で、いつも一緒だったけれど、浮気されて振られた状況下で、また普通に過ごそうとしているのは、無神経すぎる。
少しでいいから一人にしてほしい。
見せつけて欲しくない。
教室に入った瞬間、周りに女子生徒たちが集まってくる。
四方八方から「おはよう」と挨拶をする声が聞こえる。
これが俺の日常。
好きな子に好きになってもらおうと必死になり、勉学にも運動にも力を入れた。
小学校の頃のような地味な見た目もやめ、髪を薄茶色に染めた。
俺は周りに集まる生徒たちに聞こえないよう、小さなため息をついた。
数日後の放課後。
俺は久しぶりに、弾む足取りで駅に向かった。
目深に帽子をかぶり、黒いマスクをつけている。
顔をさらして出かけるときのように時のように、革ジャンにジーンズのような格好はやめ、ジャージ姿だ。
今日は誰にも見つかってはいけない。
なぜなら、、、。
「サイン会!サイン会!」
俺は弾む小声でそう唱えながら道のりを急いだ。
そう、今日は『なわたウタ』先生のサイン会なのである。
『なわたウタ』先生とは、昨日俺が地面に投げ散らかした恋純小説を書いた作家である。
今日が初めての参加。
こんなところを誰かに見られるわけにはいかない。
必死に変装した姿が今の服装だ。
昨日のようにイライラして、クソしょうもない小説なんて言っていたのは、別に小説が嫌いだからではない。
ただ、あんな展開になったのに腹が立っただけだ。
俺が彼女に振られる前日に発売され、まるで振られることを予測されたような気がしたのだ。
長々語っていたが、つまりは俺が『なわたウタ』先生の大ファンであるということだ。
俺は胸を躍らせながら電車に乗り込み、握手会場へと向かった。
握手会の会場は、楽しげな話し声で溢れかえっている。
俺は居心地の悪さを感じて、腕をさすった。
お、女しかいねぇ。
右を向いても左を向いても乙女だらけ。
まあ、小説があの内容じゃな。
前列に並ぶ女子たちが、チラチラと俺の様子を伺ってはクスクス笑っている。
俺は久々に見る乙女たちのその反応に、うろたえる。
イケメンを隠しちまうと、こんな反応されんのか?
なんか、胸がいてぇ!
学校の愉快な仲間たち(男)、俺ばっかり注目されちゃってごめんねぇ。
そんなことを考えていると、前方から数人の話す声が耳に入ってきた。
「ねぇ、私ますますファンになっちゃった!」
「猫系男子!」
「わかる!」
「猫耳つけたい!」
「わかる!」
握手会室から出てくる女性たちは、そんなことをきゃっきゃ言い合いながら、俺の横を通り過ぎてゆく。
猫系、、男子?
列に並び始めてもう三十分が経過している。
俺は耳にさしたイアホンで、アイドル系アニメの主題歌を聞いている。
大声で歌いたい衝動にかられるが、必死に抑えた。
もうすでに、前方は残り数人になっている。
鼓動がだんだんと早まっていく。
残り三人。
残り二人。
残り一人。
「次の方どうぞ」
そう言って受付の女性が俺を手招く。
俺は緊張で湿った掌をズボンで拭った。
マスクを外しポケットに突っ込んで、帽子を脱ぐ。
そして、一歩前に出た。
女性に続いて、角を曲がり衝立の前に立つ。
俺は大きく息を吸う。
そして、奥へを進んだ。
「、、、、、」
「、、、、、」
俺はパチクリと瞬きをする。
相手も、目を見開いたまま固まっている。
「どうされました?」
付き添いの女性が首をかしげる。
俺はフラフラとよろめいた。
「ちょ、お客さん!」
男性が手を差し伸べるが俺は「結構です」というように手を挙げた。
しばらくの沈黙。
俺がひたいに手を当てたまま唸っていると、俺が数日前から出会うのを楽しみにしていた『なわたウタ』先生が口を開いた。
「、、、橘先輩、なぜここにっ」
「渡辺くんこそ、、、」
握手会が終わり、書店が通常通りのさざめきを取り戻した。
俺は今、商店前の公園のベンチに腰掛けている。
隣には、渡辺も座っている。
「あの、先輩」
渡辺の声がホールに響く。
「、、、なに?」
俺は、王子スマイルも忘れて頭を抱えている。
「実は俺『なわたウタ』なんです」
「、、、それはもうわかった」
俺はフゥッと深いため息をつく。
「まさか俺の愛読書書いてるのが学校のやつだったとはな」
「愛読書?」
「、、、まさか俺の『たまに読む』本書いてるのが学校のやつだったとはな」
そう言って頭をガシガシかきむしる。
「俺、ほんのチョビィーットだけ、作家先生と恋が始まるかもなんて期待も抱いてたんだ」
「、、、俺?」
「それでなんだ!同じ学校のやつで、男で!『ワタナベソウタ』で『なわたウタ』ってなんだよ!ああああ!」
「先輩」
渡辺はそう呼びかけると、俺の顔を覗き込んだ。
「だいぶ、感じが違いますけど」
「あ?」
「普段の一人称は『僕』なのに『俺』とか使って、なんか口調もヤンキーっぽいっすよ」
そう聞いてくる渡辺を横目に見ながら、ベンチの背もたれに背中を預け、足を組む。
「もう、隠すのもめんどくせぇ。これが本当の俺だ」
「本当の俺?」
「いつものあれは演技ってこと」
そう言うと、渡辺は興味深そうに俺の顔をまじまじと眺めた。
「あの先輩」
「なに」
「実は、『おじせま』のスピンオフを書こうと思ってんすけど」
「おじせま?」
「『ドキドキ!王子に迫られています!』の略っす」
「ダセエ。誰も使ってねえのがその証拠」
「別にいいじゃないっすか。そんなことは置いといて」
そう言いながらため息をつく渡辺。
「スピンオフを書きたいんっすけど、これ使っていすか?」
「これ?」
俺が聞くと、渡辺はポケットから引っ張り出したメモパットの一ページを見せてくる。
・学園の王子→実は性悪
・乙女系小説読む
・隠れオタク
・隠れヤンキー口調
これ、、、まさか昨日書いてた、、、、。
「これ、白森でも使おうかと思って」
「、、、、、」
「先輩?」
俺は勢いよく、メモパッドを渡辺の手から奪い取ると、その一ページをベリっと半分に破る。
「うわ、何すんですか」
「うるせぇ!」
俺はほんの少しだけ不満そうに目を細める渡部に向かって叫ぶ。
「これまんま俺じゃねえか!」
「え、性悪の自覚あったんすか」
「黙れ!なんか似てると思ったら、やっぱ白森俺かよ!」
「やっぱり?なんでそう思ったんすか」
「モテモテなとことか!全てハイスペックなとことか!あと」
「、、、すんません、メモパッド返してください。『ナルシスト』を書き加えなくちゃ」
「この野郎!」
俺は飄々と話す渡辺を睨む。
「テメェ、勝手に俺ら使いやがって!俺らにプライバシーはねえのか!」
「確かに最初は、橘って名前使おうとしたっすけど、本人だってわかんないように、ちゃんと白森にしたじゃないっすか」
「橘って名前使おうとしたって言ったな?お前小説家の才能ねえだろ!」
「ファンがあんなに来るくらいは人気あるっすけど」
「人気あるからって才能があるとは限らねえぞ!」
「あるでしょ。実際先輩だってそうじゃないっすか」
「は?」
渡辺は眉根にしわを寄せたまま、立つ俺を見上げる。
「先輩だっていつも努力してたの知ってます。勉強も運動も。才能あるからあんなにモテるんすよ」
俺は渡辺をじっと眺める。
「、、、まさか、ずっと観察してたのか?」
「はい」
なんでもないことのように頷く渡辺。
俺は頬をひくつかせる。
「知ってるだろうけど、白森は一番人気のないキャラなんすよ。だから、なんかこう、、、いい部分を探してあげようかと」
「は?俺はいい部分ばっかじゃねえか」
俺の言葉に、渡辺が呆れたようにため息をつく。
「ほら、第五巻で白森振られたじゃないっすか」
「、、、」
「あれは、白森が何でもかんでも完璧にこなす、ロボットみたいなやつで、なんだかつまらないって言う意見が多かったからなんすよ」
ロボット、、、?
「最初は、先輩観察してたら、もうあのまま二人でハッピーエンドにしようと思ったんすけど、沢北先輩の反応見てやめたんです」
「え?」
俺はぽかんと渡辺を眺める。
「真琴の反応って、、、?」
そう聞くと、渡辺は肩を上下させて言う。
「なんと言うか、つまんなさそうな顔っすかね」
急に足から力が抜けたように、俺は地面にヘタリ込んだ。
「つまんなそう、、、」
「はい」
一生懸命、真琴に好かれようと努力した。
運動でも勉学でもトップを取って、自分を磨いた。
今までは苦手だった愛想笑いも練習した。
話し方も変えた。
でも、それが全部逆効果だったってこと?
でも、今元に戻れって言われたら、絶対できない、、。
俺はズボンを両手で握りしめる。
渡辺は、ベンチから立ち上がると俺の隣にしゃがみんこんだ。
「んな顔しないでください。また俺にネタくれるつもりっすか」
そんなことを言われても怒鳴らない俺。
「っ」
髪で隠れた瞳から、生暖かいものがこぼれ落ちる。
「くそぉ、、、こんないい男振るとか、、、どうなってんだよ、、、」
そう言うと、頭を撫でる柔かい感触がした。
渡辺は、何も言わずにいつもの飄々とした表情で俺の頭を撫でている。
俺はその手を振り払わずに、涙をこぼした。
「俺、、、超ダセェ」
サイン会からの帰り道。
夕日の中、並んだ二人の影が伸びている。
俺はぐぐっと腕を伸ばして背伸びをした。
「いやぁ、でも驚いたわ。まさか男があんな小説書いてるって思わねえもんなぁ」
「まぁ、今日来てくれたファンの人たちも俺見て、びっくりしてたっすからね」
俺と渡辺は二人して駅に向かっている。
「お前、学校では相当ヤベェやつって思われてるらしいじゃねえか」
「さすが学園の王子様っすね。俺のこと知ってたんすか。やっぱそう言うの、友達と言う名の情報網がいるからっすか?」
「、、、おうよ」
「今のはなんの間っすか」
そう言いながら、無表情のまま詰め寄ってくる渡辺。
こわっ。
「あ、もしかして友達いないんすか」
「い、いるし!」
「河村先輩だけ?」
「君はエスパーですか?」
「あ、認めましたね」
俺はバツが悪くなり首に手をかける。
「学校の奴らはすげえ構ってくんだけどよ、なんか一方的なんだ。俊は昔の俺も知ってるし腐れ縁みたいなもんだから仲いいんだけどさ、あいつ以外の男には嫌われてる気がしてさ」
そんなことをぶちまける俺。
なんで俺こんなベラベラ喋ってんだ、、、。
渡辺は空を見上げた。
「まあ、あんなモテたら、恨まれたりもしますよ」
「でも、白森は友達めっちゃいたじゃねえか」
「あれは、美化してるんで」
そこまで行った渡辺は、視線を背ける。
「先輩の言った通り、俺も友達いないんすよね。なんでかわかんないっすけど」
「そりゃ怖えからだろ」
即座にそういう俺。
「怖い?」
「だってさ、いっつもかっつも無表情でさ、なんか暗いし、学校遅れてくるし、頭悪ぃし」
「まじすか」
結構ひどいことをズケズケ言ったはずなのに、表情の変わらない渡辺。
すると、急にポケットから携帯を取り出した。
反応する前にパシャっと携帯から音が聞こえると、渡辺はすごい勢いで、携帯に文字を打ち出した。
「、、、おい、今写真撮った?」
「なんのことっすか」
俺は渡辺の携帯を覗き込んだ。
そこには俺の写真に合わせて、一言。
『振られたイケメンの末路』
「てめえええ!」
俺は渡辺の携帯を奪い取って、文字と写真を消す。
「ああ、、、さっきも人のもん勝手に破ったっすよね。バチ当たるっすよ。あ、もう当たったか」
「うるせえ!急に何してんだ!」
俺がそう叫ぶと、渡辺は俺の手にあるスマホに手を伸ばした。
「ちょっとイラっときたんで、学校の掲示板に目真っ赤になってる先輩の写真でも載せてやろうかと」
「はぁ?!怒ってたのかよ!お前やっぱ怖いわ!」
スマホをポケットに突っ込み、また歩き出す渡辺。
「冗談っすよ。そんなことしたら、設定が台無しになっちゃいますし」
「、、、お前スピンオフやめるよな?」
「、、、」
「いや、まじで」
俺がギャーギャー一方的に騒ぐ姿が、影を作る。
渡辺はそんな俺を、横目でじっと眺めていた。
『黒木君?!』
『白森、すまねぇ』
黒木くんは私を腕の中に引き寄せる。
ドキン!
うそ!黒木君の腕の中がこんなに気持ちいなんて!
王子様みたい!
『でも、桜子!僕たちのことは、、、?』
黒木君の幼馴染で、私の現在進行形恋人が、苦しそうな表情をした。
『ごめんね、白森君!でも私は、黒木君とともに生きていくって決めたの!』
そう言って、私たちは夕日に向かって駆け出した。
『うふふ』『あははは』
『桜子ーーーーー!!!』
*************************
「ウフフ、アハハハ、、、サクラコォ、、、。きっと大丈夫、これからは君がいるから、、、、」
つらつらと調子のいい文章が書かれた小説。
『ドキドキ!王子様二人に迫られています!第五巻』
俺は声に出して文章を読む。
無意識に小説を持つ手に力が入ると、ページからべりっと音がした。
「くそぉ」
うめき声をあげて小説を、体育館裏の芝生の上にべしっと投げ捨てた。
「なんで黒木なんかに負けんだよ白森!」
頭をガシガシかきむしる。
「てか、桜子の奴!それ完全に浮気じゃねえか!」
俺がこんなクソしょうもない、乙女向けの小説にイライラしているのには理由がある。
俺『橘和樹』は今日、付き合っていた恋人に振られた。
振られたといっても、この小説のようにもう一人の男、『俺の幼馴染』に奪われたのだ。
この小説は第一巻から読んでいるが、どうも自分たちの様子と似ている気がする。
まず一人目のヒーロー、『白森』。
俺のように、色素の薄い美形で勉強も運動もなんでもそつなくこなすモテモテキャラ。
そして二人目、『黒木』。
俺の幼馴染『河村俊』のように、目つきのきつい黒髪で、ヤンキーのように見えるが不器用な優しさを持っている。僕らと同じように、一人目のヒーロー、白森の幼馴染だ。
そして、最も重要な存在のヒロイン、『桜子』。
平凡な顔つきのかわいらしい女の子。
彼女は俺の元恋人『沢北真琴』にどことなく似ている。
ストーリーも妙に見たことのある展開ばかりだ。
遊園地に三人で出かけたとき、俺が桜子を観覧車に引っ張り込んで、耳元で「好きだ」と呟いたこと。
俊と俺が、桜子をかけてタイマンしたこと。
全校放送で、桜子を口説き倒したこと。
今日みたいに、俊に恋人を奪われたこと。
「、、、、」
あれ、、、なんか正確すぎやしないか?
似ているというより、むしろ全く同じじゃん。
俺はなんだか悪寒がして、恋愛小説を指でもう少し遠くに押した。
「気味悪りぃ。あああ!クソォ!」
自分たちと似ている文章を読むとますますイライラしてくる。
「なんで俺みたいなのが振られんだよ!成績は学年トップ!運動神経抜群!できないことはほとんどない!イケメン!悪いとこひとっつもない!」
そう言いながら頭をかきむしる。
不意に、背後から落ち葉の踏みしめる音がした。
俺は慌てて振り返る。
校舎に続く小道に人影がある。
み、見られた、、、、。
「橘先輩、、、」
そう言って近づいてくる小柄な男。
俺はこいつのことを知っている。
こいつは俺の二つ年下、つまり高校一年だ。
真面目な顔つきに、四角メガネ。
制服は着崩さない。
それに目の下のクマが消えることはないことから、毎晩必死に勉学に励んでいるように見えるが、実は学年最下位の座に居座っている。
そんなこんなで、悪い噂を耳にする。
夜の商売?危険な遊び?
『渡辺颯太』、この学園の謎めいた存在だ。
俺はすっと背筋を伸ばした。
「渡辺くんだよね?どうしたの?」
スッといつもの王子スマイルを浮かべると、渡部は表情を変えぬまま首をかしげる。
「それは、少し無理があるのでは?」
「なんのことかな?」
俺はもう慣れてしまった演技を続行する。
渡辺は俺の顔を猫のようなまんまるい瞳で眺めると、ポケットに手を突っ込んだ。
そして、小さなメモパットを取り出し、何かをつらつらと書き付け始めた。
、、、、これは、少しやばいのでは?
俺は動揺を見せまいと、笑顔を続行する。
「渡辺くん、何を書いてるの?」
返事はない。
ただただカリカリとペン先を動かしている。
俺は渡辺くんの方に手を置いた。
「まさか、僕のこと書いてないよね?」
王子スマイルのまま詰め寄る。
すると、渡辺は「よし」と声を漏らすと、俺に視線を向けた。
「大丈夫っすよ。バラさないんで」
「そっか、よかった」
俺が安堵で胸をなでおろす。
すると、渡辺くんが首を傾げた。
「何をばらさないのがよかったんすか?」
「え」
俺の表情が引きつる。
「それじゃあ」
そう言い残し渡辺の背中が遠ざかってゆく。
片手には何かしらメモっていたメモパッド。
まさか、今の言わされた?
だんだんんと怒りが湧き上がってくる。
俺はぐっと拳を握りしめた。
「なんじゃ!あの男は!」
あれから数日。
俺は今日も通常運行。
しかし、どうしても幼馴染と元恋人との空間にいるのが居心地悪い。
二人はあれからも俺のそばにいる。
毎朝一緒に登校して、昼食を食べて。
でも、砕けた感じはなく、二人が俺を気遣うような素振りを見せる。
俊は唯一俺の昔の姿を知る幼馴染で親友で、素直に話せるやつだったのに、苦笑をして話しかけてくる。
正直それが胸クソ悪い。
それに、できればもう真琴とは話したくない。
確かに俺と二人は親友で、いつも一緒だったけれど、浮気されて振られた状況下で、また普通に過ごそうとしているのは、無神経すぎる。
少しでいいから一人にしてほしい。
見せつけて欲しくない。
教室に入った瞬間、周りに女子生徒たちが集まってくる。
四方八方から「おはよう」と挨拶をする声が聞こえる。
これが俺の日常。
好きな子に好きになってもらおうと必死になり、勉学にも運動にも力を入れた。
小学校の頃のような地味な見た目もやめ、髪を薄茶色に染めた。
俺は周りに集まる生徒たちに聞こえないよう、小さなため息をついた。
数日後の放課後。
俺は久しぶりに、弾む足取りで駅に向かった。
目深に帽子をかぶり、黒いマスクをつけている。
顔をさらして出かけるときのように時のように、革ジャンにジーンズのような格好はやめ、ジャージ姿だ。
今日は誰にも見つかってはいけない。
なぜなら、、、。
「サイン会!サイン会!」
俺は弾む小声でそう唱えながら道のりを急いだ。
そう、今日は『なわたウタ』先生のサイン会なのである。
『なわたウタ』先生とは、昨日俺が地面に投げ散らかした恋純小説を書いた作家である。
今日が初めての参加。
こんなところを誰かに見られるわけにはいかない。
必死に変装した姿が今の服装だ。
昨日のようにイライラして、クソしょうもない小説なんて言っていたのは、別に小説が嫌いだからではない。
ただ、あんな展開になったのに腹が立っただけだ。
俺が彼女に振られる前日に発売され、まるで振られることを予測されたような気がしたのだ。
長々語っていたが、つまりは俺が『なわたウタ』先生の大ファンであるということだ。
俺は胸を躍らせながら電車に乗り込み、握手会場へと向かった。
握手会の会場は、楽しげな話し声で溢れかえっている。
俺は居心地の悪さを感じて、腕をさすった。
お、女しかいねぇ。
右を向いても左を向いても乙女だらけ。
まあ、小説があの内容じゃな。
前列に並ぶ女子たちが、チラチラと俺の様子を伺ってはクスクス笑っている。
俺は久々に見る乙女たちのその反応に、うろたえる。
イケメンを隠しちまうと、こんな反応されんのか?
なんか、胸がいてぇ!
学校の愉快な仲間たち(男)、俺ばっかり注目されちゃってごめんねぇ。
そんなことを考えていると、前方から数人の話す声が耳に入ってきた。
「ねぇ、私ますますファンになっちゃった!」
「猫系男子!」
「わかる!」
「猫耳つけたい!」
「わかる!」
握手会室から出てくる女性たちは、そんなことをきゃっきゃ言い合いながら、俺の横を通り過ぎてゆく。
猫系、、男子?
列に並び始めてもう三十分が経過している。
俺は耳にさしたイアホンで、アイドル系アニメの主題歌を聞いている。
大声で歌いたい衝動にかられるが、必死に抑えた。
もうすでに、前方は残り数人になっている。
鼓動がだんだんと早まっていく。
残り三人。
残り二人。
残り一人。
「次の方どうぞ」
そう言って受付の女性が俺を手招く。
俺は緊張で湿った掌をズボンで拭った。
マスクを外しポケットに突っ込んで、帽子を脱ぐ。
そして、一歩前に出た。
女性に続いて、角を曲がり衝立の前に立つ。
俺は大きく息を吸う。
そして、奥へを進んだ。
「、、、、、」
「、、、、、」
俺はパチクリと瞬きをする。
相手も、目を見開いたまま固まっている。
「どうされました?」
付き添いの女性が首をかしげる。
俺はフラフラとよろめいた。
「ちょ、お客さん!」
男性が手を差し伸べるが俺は「結構です」というように手を挙げた。
しばらくの沈黙。
俺がひたいに手を当てたまま唸っていると、俺が数日前から出会うのを楽しみにしていた『なわたウタ』先生が口を開いた。
「、、、橘先輩、なぜここにっ」
「渡辺くんこそ、、、」
握手会が終わり、書店が通常通りのさざめきを取り戻した。
俺は今、商店前の公園のベンチに腰掛けている。
隣には、渡辺も座っている。
「あの、先輩」
渡辺の声がホールに響く。
「、、、なに?」
俺は、王子スマイルも忘れて頭を抱えている。
「実は俺『なわたウタ』なんです」
「、、、それはもうわかった」
俺はフゥッと深いため息をつく。
「まさか俺の愛読書書いてるのが学校のやつだったとはな」
「愛読書?」
「、、、まさか俺の『たまに読む』本書いてるのが学校のやつだったとはな」
そう言って頭をガシガシかきむしる。
「俺、ほんのチョビィーットだけ、作家先生と恋が始まるかもなんて期待も抱いてたんだ」
「、、、俺?」
「それでなんだ!同じ学校のやつで、男で!『ワタナベソウタ』で『なわたウタ』ってなんだよ!ああああ!」
「先輩」
渡辺はそう呼びかけると、俺の顔を覗き込んだ。
「だいぶ、感じが違いますけど」
「あ?」
「普段の一人称は『僕』なのに『俺』とか使って、なんか口調もヤンキーっぽいっすよ」
そう聞いてくる渡辺を横目に見ながら、ベンチの背もたれに背中を預け、足を組む。
「もう、隠すのもめんどくせぇ。これが本当の俺だ」
「本当の俺?」
「いつものあれは演技ってこと」
そう言うと、渡辺は興味深そうに俺の顔をまじまじと眺めた。
「あの先輩」
「なに」
「実は、『おじせま』のスピンオフを書こうと思ってんすけど」
「おじせま?」
「『ドキドキ!王子に迫られています!』の略っす」
「ダセエ。誰も使ってねえのがその証拠」
「別にいいじゃないっすか。そんなことは置いといて」
そう言いながらため息をつく渡辺。
「スピンオフを書きたいんっすけど、これ使っていすか?」
「これ?」
俺が聞くと、渡辺はポケットから引っ張り出したメモパットの一ページを見せてくる。
・学園の王子→実は性悪
・乙女系小説読む
・隠れオタク
・隠れヤンキー口調
これ、、、まさか昨日書いてた、、、、。
「これ、白森でも使おうかと思って」
「、、、、、」
「先輩?」
俺は勢いよく、メモパッドを渡辺の手から奪い取ると、その一ページをベリっと半分に破る。
「うわ、何すんですか」
「うるせぇ!」
俺はほんの少しだけ不満そうに目を細める渡部に向かって叫ぶ。
「これまんま俺じゃねえか!」
「え、性悪の自覚あったんすか」
「黙れ!なんか似てると思ったら、やっぱ白森俺かよ!」
「やっぱり?なんでそう思ったんすか」
「モテモテなとことか!全てハイスペックなとことか!あと」
「、、、すんません、メモパッド返してください。『ナルシスト』を書き加えなくちゃ」
「この野郎!」
俺は飄々と話す渡辺を睨む。
「テメェ、勝手に俺ら使いやがって!俺らにプライバシーはねえのか!」
「確かに最初は、橘って名前使おうとしたっすけど、本人だってわかんないように、ちゃんと白森にしたじゃないっすか」
「橘って名前使おうとしたって言ったな?お前小説家の才能ねえだろ!」
「ファンがあんなに来るくらいは人気あるっすけど」
「人気あるからって才能があるとは限らねえぞ!」
「あるでしょ。実際先輩だってそうじゃないっすか」
「は?」
渡辺は眉根にしわを寄せたまま、立つ俺を見上げる。
「先輩だっていつも努力してたの知ってます。勉強も運動も。才能あるからあんなにモテるんすよ」
俺は渡辺をじっと眺める。
「、、、まさか、ずっと観察してたのか?」
「はい」
なんでもないことのように頷く渡辺。
俺は頬をひくつかせる。
「知ってるだろうけど、白森は一番人気のないキャラなんすよ。だから、なんかこう、、、いい部分を探してあげようかと」
「は?俺はいい部分ばっかじゃねえか」
俺の言葉に、渡辺が呆れたようにため息をつく。
「ほら、第五巻で白森振られたじゃないっすか」
「、、、」
「あれは、白森が何でもかんでも完璧にこなす、ロボットみたいなやつで、なんだかつまらないって言う意見が多かったからなんすよ」
ロボット、、、?
「最初は、先輩観察してたら、もうあのまま二人でハッピーエンドにしようと思ったんすけど、沢北先輩の反応見てやめたんです」
「え?」
俺はぽかんと渡辺を眺める。
「真琴の反応って、、、?」
そう聞くと、渡辺は肩を上下させて言う。
「なんと言うか、つまんなさそうな顔っすかね」
急に足から力が抜けたように、俺は地面にヘタリ込んだ。
「つまんなそう、、、」
「はい」
一生懸命、真琴に好かれようと努力した。
運動でも勉学でもトップを取って、自分を磨いた。
今までは苦手だった愛想笑いも練習した。
話し方も変えた。
でも、それが全部逆効果だったってこと?
でも、今元に戻れって言われたら、絶対できない、、。
俺はズボンを両手で握りしめる。
渡辺は、ベンチから立ち上がると俺の隣にしゃがみんこんだ。
「んな顔しないでください。また俺にネタくれるつもりっすか」
そんなことを言われても怒鳴らない俺。
「っ」
髪で隠れた瞳から、生暖かいものがこぼれ落ちる。
「くそぉ、、、こんないい男振るとか、、、どうなってんだよ、、、」
そう言うと、頭を撫でる柔かい感触がした。
渡辺は、何も言わずにいつもの飄々とした表情で俺の頭を撫でている。
俺はその手を振り払わずに、涙をこぼした。
「俺、、、超ダセェ」
サイン会からの帰り道。
夕日の中、並んだ二人の影が伸びている。
俺はぐぐっと腕を伸ばして背伸びをした。
「いやぁ、でも驚いたわ。まさか男があんな小説書いてるって思わねえもんなぁ」
「まぁ、今日来てくれたファンの人たちも俺見て、びっくりしてたっすからね」
俺と渡辺は二人して駅に向かっている。
「お前、学校では相当ヤベェやつって思われてるらしいじゃねえか」
「さすが学園の王子様っすね。俺のこと知ってたんすか。やっぱそう言うの、友達と言う名の情報網がいるからっすか?」
「、、、おうよ」
「今のはなんの間っすか」
そう言いながら、無表情のまま詰め寄ってくる渡辺。
こわっ。
「あ、もしかして友達いないんすか」
「い、いるし!」
「河村先輩だけ?」
「君はエスパーですか?」
「あ、認めましたね」
俺はバツが悪くなり首に手をかける。
「学校の奴らはすげえ構ってくんだけどよ、なんか一方的なんだ。俊は昔の俺も知ってるし腐れ縁みたいなもんだから仲いいんだけどさ、あいつ以外の男には嫌われてる気がしてさ」
そんなことをぶちまける俺。
なんで俺こんなベラベラ喋ってんだ、、、。
渡辺は空を見上げた。
「まあ、あんなモテたら、恨まれたりもしますよ」
「でも、白森は友達めっちゃいたじゃねえか」
「あれは、美化してるんで」
そこまで行った渡辺は、視線を背ける。
「先輩の言った通り、俺も友達いないんすよね。なんでかわかんないっすけど」
「そりゃ怖えからだろ」
即座にそういう俺。
「怖い?」
「だってさ、いっつもかっつも無表情でさ、なんか暗いし、学校遅れてくるし、頭悪ぃし」
「まじすか」
結構ひどいことをズケズケ言ったはずなのに、表情の変わらない渡辺。
すると、急にポケットから携帯を取り出した。
反応する前にパシャっと携帯から音が聞こえると、渡辺はすごい勢いで、携帯に文字を打ち出した。
「、、、おい、今写真撮った?」
「なんのことっすか」
俺は渡辺の携帯を覗き込んだ。
そこには俺の写真に合わせて、一言。
『振られたイケメンの末路』
「てめえええ!」
俺は渡辺の携帯を奪い取って、文字と写真を消す。
「ああ、、、さっきも人のもん勝手に破ったっすよね。バチ当たるっすよ。あ、もう当たったか」
「うるせえ!急に何してんだ!」
俺がそう叫ぶと、渡辺は俺の手にあるスマホに手を伸ばした。
「ちょっとイラっときたんで、学校の掲示板に目真っ赤になってる先輩の写真でも載せてやろうかと」
「はぁ?!怒ってたのかよ!お前やっぱ怖いわ!」
スマホをポケットに突っ込み、また歩き出す渡辺。
「冗談っすよ。そんなことしたら、設定が台無しになっちゃいますし」
「、、、お前スピンオフやめるよな?」
「、、、」
「いや、まじで」
俺がギャーギャー一方的に騒ぐ姿が、影を作る。
渡辺はそんな俺を、横目でじっと眺めていた。
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