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第八章 新型宇宙船
8-7 エピローグ
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シムズは7つの恒星系からなる星系地区であり、その内5つには至近にワームホールが有るが、二つの星系はカッサンドと同様にワームホールからかなり距離のある植民星系である。
シムズ着陸に際しては名誉公使としての特権が大いにものを言い、即座に着陸許可が与えられた。
シムズに着陸して新型の通信装置を政庁に渡し、同様にバッカニア、アルタミル、マサゴを訪れて通信装置を渡したのである。
シンビック号は、シムズ、バッカニア、アルタミル及びマサゴではそれぞれ一泊して1週間ぶりにメィビスに戻ったのである。
残念ながらクロベニアの訪問は取り敢えず中止された。
クロベニア分の通信装置はカッサンドに渡したからである。
クロベニアについては別途訪問する予定である。
その三日後にはカッサンド星系からの医療関係者の引き揚げ輸送でシンビック号が8往復した。
救急医療隊は所期の目的を達したが、残念なことにカッサンド星系では30万を超える住民がライムル病で命を失っていた。
仮にシンビック号が現れなかったならば数百万の人命が損なわれ、なおかつ伝染病は惑星全土に拡大していたはずであった。
そうした中で、いよいよ同盟、連邦、帝国の工作員などと共に産業スパイが活動を始めていた。
メィビス宇宙海軍情報部は、既に潜入中の11名の工作員の動静をマークし、シンビック号が医療関係者の引き揚げ作業に従事中、一斉摘発を行ったのである。
PLXガスを使用して工作員の身柄を確保すべく迅速な摘発を行ったが、その際の不手際で二人の工作員が自殺し、一か所のアジトが爆破され、付近住民にも若干の被害を引き起こす騒ぎとなった。
一方で通信装置の関係ではネット業界が動き出し、遷移駆動機関の関係では各星系宇宙海軍と航宙産業が動き始めていた。
その下請けとなって動いたのは、メィビス宇宙海軍であり、メィビスに支店を置く各航宙運送会社とメィビスの三大ネットワークであった。
シンビック号がカッサンドへの搬送業務を行っているときから、これらの関係者が再三にわたりバームルトンの事業所に面談を求めに来て、その対応は専ら留守番の私が受け持つことになったのである。
私は何の言質も与えずに彼らの要望を聞き置くだけにとどめた。
マイクとは通信装置で常時相談できる体制にはあるのだが、事業所の拡大と生産体制の拡充を図らねば当面の需要に追い付けないからであった。
シンビック号が帰還してから幹部会議でその方針を決定することにしたのである。
シンビック号が帰還して翌日から調査室の半数を使って、臨時の採用試験を開始したのである。
一方で、通信機器装置の生産を再開した。
製作所の工廠部では、シンビック号と同型船二隻の建造を開始し、一隻は完全に輸送船に特化したのである。
改シュワルツ駆動推進器、遷移駆動機関、重力減殺装置、質量減殺装置、シールド装置、動力炉等の生産を開始したが、無理な生産は行わずに、慎重な生産に心掛けた。
一方で当面の策として、メィビス海軍工廠で船体の建造をするようにさせた。
海軍艦艇の場合どうしても武器の製造搭載が必要となるが、製作所ではその建造をするつもりはない。
従って、各装置の主要寸法と設置場所を概ね定めた上で設計をし、船体がほぼ出来上がってから各種装置を搭載設置する方式としたのである。
そのための艤装は製作所から職員を派遣して海軍工廠で行うことにした。
航宙輸送産業の要望も同様にすることを提案した。
改造による場合は非常に時間がかかるので度外視している。
あくまで新造船に限って民間造船所で建造した船体に各種装置を装備するのである。
そのための基本設計についてはプランニングの段階から製作所が参画した。
航宙産業界も大規模な船体建造は廃棄した。
一つの星系から他の星系への移動に二か月もかかる場合には一度に沢山の旅客と貨物を運ぶ利点はあるが、僅かに数時間で星系間をつなげられるのであればシンビック号の二倍程度の大きさでも十分に輸送量を確保できるのである。
一度に大量の人員や大量の貨物を運ぶのは、むしろ乗下船や搭載作業に時間を取られて無駄なのである。
予測される流通量から最も効率的な型として選ばれたのが、シンビック号の倍の大きさの旅客船であり、三倍の大きさの貨物船であった。
その間にPMA航空宇宙研究製作所は新たに400名ほどの人員を採用し、各種装置の増産体制に入ったのである。
今回の臨時採用は非常に大規模な応募になった。
一つは知名度の問題と将来性を見込んで現在職に就いている者が大量に応募してきたからである。
最初の募集の際には海の者とも山の者とも判らない企業に応募することを避けた優秀な人材が、こぞって募集に応じたのである。
その中でふるいにかけて絞った採用者は非常に優秀な者が多い。
各装置とも月産で二台程度はコンスタントに生産できる体制が整ったのである。
更には10月からの新卒者を対象に入社試験を4月から開始した。
ハイスクール卒業見込みの者、大学卒業見込みの者が対象である。
カッサンドのような孤立的な惑星系が連合圏内には23個あるのだが、そうした惑星系での人材獲得と輸送効率促進のため、PMA航空宇宙研究製作所とは別にPMA航宙輸送会社を設立し、23個の惑星系に事務所を置いたのである。
投入するのはシンディック号とほぼ同じ大きさの貨客船であり、旅客定員は80名、凡そ1000立方トランの貨物を積載できる。
運行要員はパイロットを含めて5名であり、基本的に現地採用の職員を搭乗させることにしている。
いずれの惑星系もかろうじて各地区主星等とつながってはいるが、最も近い孤立惑星はビッグローで、最寄りのワームホールから660億セトランであるから、1Gの加速度で主星から片道65日間程度なので、これまでは他のワームホールに至近の星系の二倍ほど移動に時間を要する距離であった。
一方で、拠点星系主星から最も遠い孤立惑星は、ラストホープの1950億セトランで、直行便があったとしても片道3カ月以上も掛かってしまう上に間には何の補給箇所もない。
また、ラストホープの場合は、ワームホールのある主星コーマックからシーランド、ブリスを経て、ラストホープがあるので、コーマックから53日かけてシーランド、シーランドから75日かけてブリスへ、更にブリスから102日かけてラストホープまで交易船が運航している状況である。
コーマからラストホープへは通常の場合9か月掛かって物資も人も輸送されるのである。
これでは流通も中々はかどらないことになる。
そうした孤立惑星系の交通路を確保するためにPMA航宙輸送会社を設立したのである。
PMA 航空宇宙研究製作所が製造する航宙船の実用機第一船は、カッサンドとデンサルとの航路に投入された。
午前と午後に各2回の定期便として運航を開始したのである。
運賃は抑制され、従来に比べるとかなり安くなっている筈であり、物流の需要増加により船体の大型化も将来的に見据えて計画している。
海軍関係者との駆け引きや、ディフィビア連合以外の政治形態の帝国、同盟からのスパイ潜入なども続く中、PMA航空宇宙研究製作所は安定した成長を続け、五年後にはディフィビア連合の中でも最大の優良企業として認識されるようになっていた。
単体の企業で従業員総数5万を抱える企業はディフィビア連合圏内にもさほど多くは無いのである。
私は、マイクとの間に二人の子をもうけ、今一人がおなかの中にいる。
ケルヴィスを使ったアクセサリー、ケルヴィスを触媒として用いた薬品や土地改良剤の開発など、この五年の間に上げた成果も中々のものと自負している。
夫のマイクは、更なる宇宙船の開発を始めている。
無論一族の掟で、世界に急激な進化を及ぼすことは避けなければならないのだけれど、理論的にも未完のものであっても実現可能なモノ、或いは複数の英知が寄り添えば開発可能なモノは、それを進展させることができるのである。
従って、マイクは秀才、天才と呼ばれる若手研究員を集めて特訓中である。
彼が目指しているのは、恒星エネルギーを遠距離から取り入れて動力に変換する装置や、銀河間航行が可能な高速巡航の可能な新型エンジンなどの開発のようだ。
もちろん、すぐに目途が立つようなものではない。
でも、私が伴侶に選んだ男。
きっと、その目標を達成してくれると信じている。
因みに私とマイクの子である第一子の長女エルザと第二子で長男ケントはいずれも超能力を有している。
そのために出産後半年で、マイクの一族の中でも所謂女神様と言われる長命種族のレオナイヤが子守として派遣されてきました。
一族の子にはそのほとんどに子守として女神様が派遣されるようです。
マルスのところにも無論派遣されていると聞いています。
お腹の子を含めて、この子たちが成長したならきっとまた色々なことを成し遂げるのではないかと思いますが、場合によっては私たちの世界を離れて異世界へ旅立って行くのかもしれません。
私や子達もマイクの一族の慣行によって、登録され、一定の年齢になったら若返り措置を受けて不老になることがほぼ決まっています。
精々が百年の寿命と思っていたのに、それが伸びるとなると、何をすればいいのかと悩むこともありますが、少なくとも30年近くは将来を考える時間がありますので、のんびりと参りましょう。
私の物語は取り敢えずこの辺でおしまいとさせていただきます。
また別の機会にお目にかかることが有れば幸いです。
------------------------------------------------------------------------
「二つの異世界物語」は、これで一旦終了とさせていただきます。
お読みいただきありがとうございました。
By サクラ近衛将監
シムズ着陸に際しては名誉公使としての特権が大いにものを言い、即座に着陸許可が与えられた。
シムズに着陸して新型の通信装置を政庁に渡し、同様にバッカニア、アルタミル、マサゴを訪れて通信装置を渡したのである。
シンビック号は、シムズ、バッカニア、アルタミル及びマサゴではそれぞれ一泊して1週間ぶりにメィビスに戻ったのである。
残念ながらクロベニアの訪問は取り敢えず中止された。
クロベニア分の通信装置はカッサンドに渡したからである。
クロベニアについては別途訪問する予定である。
その三日後にはカッサンド星系からの医療関係者の引き揚げ輸送でシンビック号が8往復した。
救急医療隊は所期の目的を達したが、残念なことにカッサンド星系では30万を超える住民がライムル病で命を失っていた。
仮にシンビック号が現れなかったならば数百万の人命が損なわれ、なおかつ伝染病は惑星全土に拡大していたはずであった。
そうした中で、いよいよ同盟、連邦、帝国の工作員などと共に産業スパイが活動を始めていた。
メィビス宇宙海軍情報部は、既に潜入中の11名の工作員の動静をマークし、シンビック号が医療関係者の引き揚げ作業に従事中、一斉摘発を行ったのである。
PLXガスを使用して工作員の身柄を確保すべく迅速な摘発を行ったが、その際の不手際で二人の工作員が自殺し、一か所のアジトが爆破され、付近住民にも若干の被害を引き起こす騒ぎとなった。
一方で通信装置の関係ではネット業界が動き出し、遷移駆動機関の関係では各星系宇宙海軍と航宙産業が動き始めていた。
その下請けとなって動いたのは、メィビス宇宙海軍であり、メィビスに支店を置く各航宙運送会社とメィビスの三大ネットワークであった。
シンビック号がカッサンドへの搬送業務を行っているときから、これらの関係者が再三にわたりバームルトンの事業所に面談を求めに来て、その対応は専ら留守番の私が受け持つことになったのである。
私は何の言質も与えずに彼らの要望を聞き置くだけにとどめた。
マイクとは通信装置で常時相談できる体制にはあるのだが、事業所の拡大と生産体制の拡充を図らねば当面の需要に追い付けないからであった。
シンビック号が帰還してから幹部会議でその方針を決定することにしたのである。
シンビック号が帰還して翌日から調査室の半数を使って、臨時の採用試験を開始したのである。
一方で、通信機器装置の生産を再開した。
製作所の工廠部では、シンビック号と同型船二隻の建造を開始し、一隻は完全に輸送船に特化したのである。
改シュワルツ駆動推進器、遷移駆動機関、重力減殺装置、質量減殺装置、シールド装置、動力炉等の生産を開始したが、無理な生産は行わずに、慎重な生産に心掛けた。
一方で当面の策として、メィビス海軍工廠で船体の建造をするようにさせた。
海軍艦艇の場合どうしても武器の製造搭載が必要となるが、製作所ではその建造をするつもりはない。
従って、各装置の主要寸法と設置場所を概ね定めた上で設計をし、船体がほぼ出来上がってから各種装置を搭載設置する方式としたのである。
そのための艤装は製作所から職員を派遣して海軍工廠で行うことにした。
航宙輸送産業の要望も同様にすることを提案した。
改造による場合は非常に時間がかかるので度外視している。
あくまで新造船に限って民間造船所で建造した船体に各種装置を装備するのである。
そのための基本設計についてはプランニングの段階から製作所が参画した。
航宙産業界も大規模な船体建造は廃棄した。
一つの星系から他の星系への移動に二か月もかかる場合には一度に沢山の旅客と貨物を運ぶ利点はあるが、僅かに数時間で星系間をつなげられるのであればシンビック号の二倍程度の大きさでも十分に輸送量を確保できるのである。
一度に大量の人員や大量の貨物を運ぶのは、むしろ乗下船や搭載作業に時間を取られて無駄なのである。
予測される流通量から最も効率的な型として選ばれたのが、シンビック号の倍の大きさの旅客船であり、三倍の大きさの貨物船であった。
その間にPMA航空宇宙研究製作所は新たに400名ほどの人員を採用し、各種装置の増産体制に入ったのである。
今回の臨時採用は非常に大規模な応募になった。
一つは知名度の問題と将来性を見込んで現在職に就いている者が大量に応募してきたからである。
最初の募集の際には海の者とも山の者とも判らない企業に応募することを避けた優秀な人材が、こぞって募集に応じたのである。
その中でふるいにかけて絞った採用者は非常に優秀な者が多い。
各装置とも月産で二台程度はコンスタントに生産できる体制が整ったのである。
更には10月からの新卒者を対象に入社試験を4月から開始した。
ハイスクール卒業見込みの者、大学卒業見込みの者が対象である。
カッサンドのような孤立的な惑星系が連合圏内には23個あるのだが、そうした惑星系での人材獲得と輸送効率促進のため、PMA航空宇宙研究製作所とは別にPMA航宙輸送会社を設立し、23個の惑星系に事務所を置いたのである。
投入するのはシンディック号とほぼ同じ大きさの貨客船であり、旅客定員は80名、凡そ1000立方トランの貨物を積載できる。
運行要員はパイロットを含めて5名であり、基本的に現地採用の職員を搭乗させることにしている。
いずれの惑星系もかろうじて各地区主星等とつながってはいるが、最も近い孤立惑星はビッグローで、最寄りのワームホールから660億セトランであるから、1Gの加速度で主星から片道65日間程度なので、これまでは他のワームホールに至近の星系の二倍ほど移動に時間を要する距離であった。
一方で、拠点星系主星から最も遠い孤立惑星は、ラストホープの1950億セトランで、直行便があったとしても片道3カ月以上も掛かってしまう上に間には何の補給箇所もない。
また、ラストホープの場合は、ワームホールのある主星コーマックからシーランド、ブリスを経て、ラストホープがあるので、コーマックから53日かけてシーランド、シーランドから75日かけてブリスへ、更にブリスから102日かけてラストホープまで交易船が運航している状況である。
コーマからラストホープへは通常の場合9か月掛かって物資も人も輸送されるのである。
これでは流通も中々はかどらないことになる。
そうした孤立惑星系の交通路を確保するためにPMA航宙輸送会社を設立したのである。
PMA 航空宇宙研究製作所が製造する航宙船の実用機第一船は、カッサンドとデンサルとの航路に投入された。
午前と午後に各2回の定期便として運航を開始したのである。
運賃は抑制され、従来に比べるとかなり安くなっている筈であり、物流の需要増加により船体の大型化も将来的に見据えて計画している。
海軍関係者との駆け引きや、ディフィビア連合以外の政治形態の帝国、同盟からのスパイ潜入なども続く中、PMA航空宇宙研究製作所は安定した成長を続け、五年後にはディフィビア連合の中でも最大の優良企業として認識されるようになっていた。
単体の企業で従業員総数5万を抱える企業はディフィビア連合圏内にもさほど多くは無いのである。
私は、マイクとの間に二人の子をもうけ、今一人がおなかの中にいる。
ケルヴィスを使ったアクセサリー、ケルヴィスを触媒として用いた薬品や土地改良剤の開発など、この五年の間に上げた成果も中々のものと自負している。
夫のマイクは、更なる宇宙船の開発を始めている。
無論一族の掟で、世界に急激な進化を及ぼすことは避けなければならないのだけれど、理論的にも未完のものであっても実現可能なモノ、或いは複数の英知が寄り添えば開発可能なモノは、それを進展させることができるのである。
従って、マイクは秀才、天才と呼ばれる若手研究員を集めて特訓中である。
彼が目指しているのは、恒星エネルギーを遠距離から取り入れて動力に変換する装置や、銀河間航行が可能な高速巡航の可能な新型エンジンなどの開発のようだ。
もちろん、すぐに目途が立つようなものではない。
でも、私が伴侶に選んだ男。
きっと、その目標を達成してくれると信じている。
因みに私とマイクの子である第一子の長女エルザと第二子で長男ケントはいずれも超能力を有している。
そのために出産後半年で、マイクの一族の中でも所謂女神様と言われる長命種族のレオナイヤが子守として派遣されてきました。
一族の子にはそのほとんどに子守として女神様が派遣されるようです。
マルスのところにも無論派遣されていると聞いています。
お腹の子を含めて、この子たちが成長したならきっとまた色々なことを成し遂げるのではないかと思いますが、場合によっては私たちの世界を離れて異世界へ旅立って行くのかもしれません。
私や子達もマイクの一族の慣行によって、登録され、一定の年齢になったら若返り措置を受けて不老になることがほぼ決まっています。
精々が百年の寿命と思っていたのに、それが伸びるとなると、何をすればいいのかと悩むこともありますが、少なくとも30年近くは将来を考える時間がありますので、のんびりと参りましょう。
私の物語は取り敢えずこの辺でおしまいとさせていただきます。
また別の機会にお目にかかることが有れば幸いです。
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「二つの異世界物語」は、これで一旦終了とさせていただきます。
お読みいただきありがとうございました。
By サクラ近衛将監
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