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第六章 異変
6ー10 流行り病の調査 その一
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ハーイ、シルヴィですよぉ。
ワルドレン峡谷の近隣で、何だか死に至る流行り病が発生したとかで、瘴気との関連性が疑われているようです。
仮に原因が違うところにあったにしても、間が悪いですよね。
私達がクロマルド王国から帰還してまだ半月も経っていませんもの。
峡谷内にもう瘴気は残っていなかったとは思うのですけれど、あるいは消滅する前の瘴気の影響で突然変異を起こした病原菌が少し遅れて活動を始めたということはあり得るのです。
いずれにしろ現地で確認をする必要がありますけれど、その前に一つ確認をしておかねばならないことがありますね。
それはアスレオール世界の八神様の一柱であるケルティ様に、この病気についての情報を頂くことです。
従来からあった病気の類であれば、治癒の女神であるケルティ様が治療方法を知っておられるはず。
幸いにして、私はケルティ様の加護もいただいていますから、死の流行り病についてお尋ねしても差し支えないと思うのです。
ギルド本部に教会はありませんが、一応祈祷所はあるのです。
ギルド構成員は数多くの国々の出身者から成り立っていますので、数ある宗教のすべての教会を用意することはできません。
それゆえ、何でもOKの祈祷所を設けて、敬虔な信者である会員が祈ることのできる場所を作ってあるのです。
この祈祷所は、いずれの教会にも属していない代わりに、いかなる教義を信じている者であっても利用可能な場所なのです。
その代わりに聖職者とされる神官も巫女もいない場所ではあるのですけれど・・・・。
そうして危険と背中合わせの仕事をしている採掘師の祈祷所の利用頻度は比較的高いのです。
祈祷所はキリスト教の教会の懺悔室のように小さな個室になっており、通路を挟んで左右に8室、全部で16の防音構造の小部屋があるんです。
私はいつもですと銀曜日の夕刻に元気でいますという神様への報告のつもりでお祈りだけしていますが、今日はそうも言っていられませんので、朝一番に祈祷所に入りました。
私は個室に入って直ぐに、八神様の一柱ケルティ様にお会いするべく祈りを捧げました。
私の祈りに応えてすぐにケルティ様が目の前に顕現されました。
狭い部屋ですからね、私とほぼ同じぐらいの体躯をお持ちのケルティ様が実際に生身で現れることができるほどのスペースはありません。
でもやはり神様です。
実体のない幻なのか、あるいは私が神界に招かれたのか、私は広い空間に居て、ケルティ様と対面していました。
ご無沙汰のご挨拶をしてすぐに用件に入り、カロス首長国とクロマルド王国の境界付近で死に至る流行り病が発生していることをお伝えし、そうした流行り病の原因について情報を頂けないかどうかについてお尋ねしました。
女神様の回答は至って簡単なものでした。
「シルヴィの言う病の発生は我ら神界でも承知しておるが、生憎とこれまで我らが承知している病とは異なるようじゃ。
ありていに申せば現時点では原因もわからず、治療の仕方もわからぬ。
かような出来事は稀ではあるが過去にも起きておる。
原因もわからず、治療方法もわからないままにやがて沈静化するのじゃが・・・。
最近起きたのは百年以上も前のことじゃったが、その前は300年ほど前かのう。
此度は瘴気との因果関係が疑われているようじゃが、少なくとも前二回の死病は瘴気とは無縁であったし、症状は全く異なるものじゃった。
百年前の流行り病は激しい下痢症状をひき起こし、脱水症状を呈して衰弱死した。
確か一つの国が壊滅寸前にまでなったのう。
三百年前の死病は、身体のいたるところに紫の皮下出血が発生し、重篤になるとその皮膚が溶解して出血が止められず、最後は失血のために衰弱死しておる。
この時は大陸の西岸沖合にある島嶼国でヒト型種族の9割が死滅した。
此度の症状は明らかにそれらとは異なるもののようじゃ。
高熱が続くことによって身体の代謝機能が弱まり、呼吸困難に陥って死に至るようじゃ。
其方がギルドの者と話していた目に見えぬ毒のようなものという説明は私にも得心が行く。
なれど、そのようなものが果たしてあるかどうかすら確認できぬが、其方の前世ではそうしたものが確認できていたのか?」
あれまぁ、この世界はやっぱり魔法が主力なんですね。
良くわからないままでも治癒できるということなのかなぁ。
でも治癒師ギルドの人がどうにもならなかったと言うし・・・。
やっぱり、明確なイメージが無いと病原菌の根絶は難しいのじゃないかなぁ。
インフルエンザとペスト菌じゃ、対処の仕方がそもそも違うしね、
「はい、私の前世では、特殊な器具を用いて少なくとも微小なものを見分けることができました。
それを利用すれば、仮に髪の毛の先ほどの広さの中に、この世界に住むすべての人の顔を描いても一人一人の顔の見分けがつくはずです。
但し、その器具をもってしても、小さな病原菌を見分けるのはなかなか難しいようでした。
しかしながら、一方で、この世にはそうした極めて微小な生命体に近い存在があるのは間違いのないことです。
例えば私の身体も、小さな細胞という生物の基本が無数に集まってできていますけれど、それを更に細分化すると、いくつかな生命要素からなっています。
それらの要素が個々に様々な機能を果たすことで私は生きていられるのです。
神様の存在は生身のお身体があるかどうかすら判然としませんので、そうした微細な生命要素があるかどうかはわかりません。」
「ふむ、なるほど、そのような道具があるのか・・・。
其方の疑問については、私達神が下界に住む生き物とは異なる次元に生きており、そこでは異なる理で万物が動いているでな。
其方たち人とは異なるとだけ言うておこう。」
「できれば、お教えください。
治癒師が使う治癒魔法で病気が癒されるのはなぜでしょうか。
少なくとも、病の元となる病原体のようなものを承知の上で魔法をかけているとは思えません。」
「フム、治癒魔法はのう、生き物自体が持っている自己復元能力や免疫能力を補助しているだけなのじゃ。
例えば血液が不足していれば血液を生み出す身体の組織に働きかけ、肺の機能が弱まっていれば肺の機能を強化することで呼吸を助ける。
治癒師は血液を介してのガス交換の仕組みなど知らずとも、呼吸困難とみれば適切な対処方法を山勘で見出すのじゃ。
そこに理屈は無い。
呼吸困難に陥っていたなら肺の部分にヒールを掛けることで呼吸機能が強化され人を助けることができると知っているだけじゃ。
高熱を発していたなら身体から熱を奪うようにして、ひとまず体熱を下げる。
そうして弱っている新陳代謝機能を上げるために内臓等にヒールを掛ける。
それで重篤な症状は持ち直し、生命体が持つ自己免疫で治ることが多いのじゃ。
尤もそれで治らぬ場合もある。
今回もそうじゃのう。
熱を一時的に下げることはできても、永続性がない。
此度のように次々と体内から湧き出る熱波のような病魔の動きには、有限な治癒師の魔力がいずれ不足してしまうのじゃ。
そうしているうちに治癒師そのものが罹患して命を失って居るようじゃな。
シルヴィの魔力ならあるいは持つかも知れぬが、大多数を相手に治癒魔法を使うとなれば其方でも難しいじゃろう。」
「今一つ、この世界ではポーションはございますが、病に聞くお薬は無いのでしょうか?
薬師はおりますけれど、病に即効性のあるお薬は作っていないようなので・・・。」
「フム、先ほども言うたが、治癒師は自らの山勘で病を癒して居る。
そこには身体を癒すような薬草を取り入れるという発想は無いな。
体力を回復し、魔力を回復するポーションならばある。
また治癒師のいない集落では、口述伝承により薬草の類を煎じて飲ます程度のものならばあるが、病を癒し、軽減するような体系的な薬剤という明確な知識が無いな。
必要があれば其方が作れば良い。
其方には薬師の能力があろう。
この世界の薬師は、薬草から抽出した効能を利用できるだけのものを生み出すだけなので、作ったものに即効性は乏しい。
少なくとも高熱を発している患者に熱さましを与えたとしても、じわじわと効くだけのものじゃ。
それよりは治癒師が魔法で熱を下げ、ヒールを掛ける方がよほど効く。
其方の「薬師」の職は、おそらくは前世にあった職が、この世に転生した際にあちらの神から付与されたものであろう。
従って、こちらの薬師と違って即効性のある薬剤を生み出すことも可能ではないのかな。
事実、魔晶石ギルド特有の病気に効く薬剤を其方が生み出しておろう。
あのようなものはこれまでこの世界で生み出されたことがない。
其方は薬師として全く新たな手法で薬剤を生み出しているのじゃ。
従って、あるいは此度の死病についても、新たな薬剤を生み出すことができるやもしれぬ。
その知識は其方独自のものゆえ、私が教えられることはほとんどない。
むしろ其方の召喚したサルスの方が余程役に立つじゃろう。
サルスはどちらかというと、前世の世界の薬剤知識に詳しい特殊な精霊じゃ。
新たなものを生み出す能力は其方のほうが高いように見ゆるが、既存の薬であればサルスが相当の知識を持っていよう。
其方とサルスの活躍を祈っておるぞ。」
ケルティ様の激励を貰って祈祷所を後にしました。
傍で見ている者がいたなら、左程長くはない時間、祈祷所の一室で私が合掌して瞑目しつつ無言で祈っていたのが見られたことでしょう。
さてさて、一応の準備もできましたので、事務局をせっつきましょうか。
私が出向くことにはかなりの抵抗がありそうですが、このまま放置するわけに行きません。
防護服があっても、他の者が面倒な調査と解析を行えるはずもないのです。
治癒師ギルドの職員に教え込んでいたなら、感染防護や衛生維持の基礎だけで一月ぐらいはすぐに経ってしまいます。
感染症対策はスピードが大事なんです。
特に伝染性の高い病原体の場合は、放置すれば世界中に蔓延しかねません。
事務局や幹部を説得するのに、それから丸二日もかかってしまいました。
特に幹部クラスが頑迷でしたね。
年を取るとみんな頑固で融通が利かなくなるのかな?
いずれにしろ、魔晶石ギルドに要請と言うか依頼と言うか、連絡があってから十日目にして私は飛空船に乗って再びクロマルド王国へ向かっています。
カロス王国の飛行場よりも、クロマルド王国の飛行場の方が問題の感染現場に近かったのです。
一応決死の覚悟で事務局のモリソン副部長さんが私に付いてきていますけれど、感染現場に連れて行く気はありません。
彼にはクロマルド王国やカロス首長国との折衝をお願いするだけなのです。
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6月20日、一部の字句修正をしました。
By サクラ近衛将監
ワルドレン峡谷の近隣で、何だか死に至る流行り病が発生したとかで、瘴気との関連性が疑われているようです。
仮に原因が違うところにあったにしても、間が悪いですよね。
私達がクロマルド王国から帰還してまだ半月も経っていませんもの。
峡谷内にもう瘴気は残っていなかったとは思うのですけれど、あるいは消滅する前の瘴気の影響で突然変異を起こした病原菌が少し遅れて活動を始めたということはあり得るのです。
いずれにしろ現地で確認をする必要がありますけれど、その前に一つ確認をしておかねばならないことがありますね。
それはアスレオール世界の八神様の一柱であるケルティ様に、この病気についての情報を頂くことです。
従来からあった病気の類であれば、治癒の女神であるケルティ様が治療方法を知っておられるはず。
幸いにして、私はケルティ様の加護もいただいていますから、死の流行り病についてお尋ねしても差し支えないと思うのです。
ギルド本部に教会はありませんが、一応祈祷所はあるのです。
ギルド構成員は数多くの国々の出身者から成り立っていますので、数ある宗教のすべての教会を用意することはできません。
それゆえ、何でもOKの祈祷所を設けて、敬虔な信者である会員が祈ることのできる場所を作ってあるのです。
この祈祷所は、いずれの教会にも属していない代わりに、いかなる教義を信じている者であっても利用可能な場所なのです。
その代わりに聖職者とされる神官も巫女もいない場所ではあるのですけれど・・・・。
そうして危険と背中合わせの仕事をしている採掘師の祈祷所の利用頻度は比較的高いのです。
祈祷所はキリスト教の教会の懺悔室のように小さな個室になっており、通路を挟んで左右に8室、全部で16の防音構造の小部屋があるんです。
私はいつもですと銀曜日の夕刻に元気でいますという神様への報告のつもりでお祈りだけしていますが、今日はそうも言っていられませんので、朝一番に祈祷所に入りました。
私は個室に入って直ぐに、八神様の一柱ケルティ様にお会いするべく祈りを捧げました。
私の祈りに応えてすぐにケルティ様が目の前に顕現されました。
狭い部屋ですからね、私とほぼ同じぐらいの体躯をお持ちのケルティ様が実際に生身で現れることができるほどのスペースはありません。
でもやはり神様です。
実体のない幻なのか、あるいは私が神界に招かれたのか、私は広い空間に居て、ケルティ様と対面していました。
ご無沙汰のご挨拶をしてすぐに用件に入り、カロス首長国とクロマルド王国の境界付近で死に至る流行り病が発生していることをお伝えし、そうした流行り病の原因について情報を頂けないかどうかについてお尋ねしました。
女神様の回答は至って簡単なものでした。
「シルヴィの言う病の発生は我ら神界でも承知しておるが、生憎とこれまで我らが承知している病とは異なるようじゃ。
ありていに申せば現時点では原因もわからず、治療の仕方もわからぬ。
かような出来事は稀ではあるが過去にも起きておる。
原因もわからず、治療方法もわからないままにやがて沈静化するのじゃが・・・。
最近起きたのは百年以上も前のことじゃったが、その前は300年ほど前かのう。
此度は瘴気との因果関係が疑われているようじゃが、少なくとも前二回の死病は瘴気とは無縁であったし、症状は全く異なるものじゃった。
百年前の流行り病は激しい下痢症状をひき起こし、脱水症状を呈して衰弱死した。
確か一つの国が壊滅寸前にまでなったのう。
三百年前の死病は、身体のいたるところに紫の皮下出血が発生し、重篤になるとその皮膚が溶解して出血が止められず、最後は失血のために衰弱死しておる。
この時は大陸の西岸沖合にある島嶼国でヒト型種族の9割が死滅した。
此度の症状は明らかにそれらとは異なるもののようじゃ。
高熱が続くことによって身体の代謝機能が弱まり、呼吸困難に陥って死に至るようじゃ。
其方がギルドの者と話していた目に見えぬ毒のようなものという説明は私にも得心が行く。
なれど、そのようなものが果たしてあるかどうかすら確認できぬが、其方の前世ではそうしたものが確認できていたのか?」
あれまぁ、この世界はやっぱり魔法が主力なんですね。
良くわからないままでも治癒できるということなのかなぁ。
でも治癒師ギルドの人がどうにもならなかったと言うし・・・。
やっぱり、明確なイメージが無いと病原菌の根絶は難しいのじゃないかなぁ。
インフルエンザとペスト菌じゃ、対処の仕方がそもそも違うしね、
「はい、私の前世では、特殊な器具を用いて少なくとも微小なものを見分けることができました。
それを利用すれば、仮に髪の毛の先ほどの広さの中に、この世界に住むすべての人の顔を描いても一人一人の顔の見分けがつくはずです。
但し、その器具をもってしても、小さな病原菌を見分けるのはなかなか難しいようでした。
しかしながら、一方で、この世にはそうした極めて微小な生命体に近い存在があるのは間違いのないことです。
例えば私の身体も、小さな細胞という生物の基本が無数に集まってできていますけれど、それを更に細分化すると、いくつかな生命要素からなっています。
それらの要素が個々に様々な機能を果たすことで私は生きていられるのです。
神様の存在は生身のお身体があるかどうかすら判然としませんので、そうした微細な生命要素があるかどうかはわかりません。」
「ふむ、なるほど、そのような道具があるのか・・・。
其方の疑問については、私達神が下界に住む生き物とは異なる次元に生きており、そこでは異なる理で万物が動いているでな。
其方たち人とは異なるとだけ言うておこう。」
「できれば、お教えください。
治癒師が使う治癒魔法で病気が癒されるのはなぜでしょうか。
少なくとも、病の元となる病原体のようなものを承知の上で魔法をかけているとは思えません。」
「フム、治癒魔法はのう、生き物自体が持っている自己復元能力や免疫能力を補助しているだけなのじゃ。
例えば血液が不足していれば血液を生み出す身体の組織に働きかけ、肺の機能が弱まっていれば肺の機能を強化することで呼吸を助ける。
治癒師は血液を介してのガス交換の仕組みなど知らずとも、呼吸困難とみれば適切な対処方法を山勘で見出すのじゃ。
そこに理屈は無い。
呼吸困難に陥っていたなら肺の部分にヒールを掛けることで呼吸機能が強化され人を助けることができると知っているだけじゃ。
高熱を発していたなら身体から熱を奪うようにして、ひとまず体熱を下げる。
そうして弱っている新陳代謝機能を上げるために内臓等にヒールを掛ける。
それで重篤な症状は持ち直し、生命体が持つ自己免疫で治ることが多いのじゃ。
尤もそれで治らぬ場合もある。
今回もそうじゃのう。
熱を一時的に下げることはできても、永続性がない。
此度のように次々と体内から湧き出る熱波のような病魔の動きには、有限な治癒師の魔力がいずれ不足してしまうのじゃ。
そうしているうちに治癒師そのものが罹患して命を失って居るようじゃな。
シルヴィの魔力ならあるいは持つかも知れぬが、大多数を相手に治癒魔法を使うとなれば其方でも難しいじゃろう。」
「今一つ、この世界ではポーションはございますが、病に聞くお薬は無いのでしょうか?
薬師はおりますけれど、病に即効性のあるお薬は作っていないようなので・・・。」
「フム、先ほども言うたが、治癒師は自らの山勘で病を癒して居る。
そこには身体を癒すような薬草を取り入れるという発想は無いな。
体力を回復し、魔力を回復するポーションならばある。
また治癒師のいない集落では、口述伝承により薬草の類を煎じて飲ます程度のものならばあるが、病を癒し、軽減するような体系的な薬剤という明確な知識が無いな。
必要があれば其方が作れば良い。
其方には薬師の能力があろう。
この世界の薬師は、薬草から抽出した効能を利用できるだけのものを生み出すだけなので、作ったものに即効性は乏しい。
少なくとも高熱を発している患者に熱さましを与えたとしても、じわじわと効くだけのものじゃ。
それよりは治癒師が魔法で熱を下げ、ヒールを掛ける方がよほど効く。
其方の「薬師」の職は、おそらくは前世にあった職が、この世に転生した際にあちらの神から付与されたものであろう。
従って、こちらの薬師と違って即効性のある薬剤を生み出すことも可能ではないのかな。
事実、魔晶石ギルド特有の病気に効く薬剤を其方が生み出しておろう。
あのようなものはこれまでこの世界で生み出されたことがない。
其方は薬師として全く新たな手法で薬剤を生み出しているのじゃ。
従って、あるいは此度の死病についても、新たな薬剤を生み出すことができるやもしれぬ。
その知識は其方独自のものゆえ、私が教えられることはほとんどない。
むしろ其方の召喚したサルスの方が余程役に立つじゃろう。
サルスはどちらかというと、前世の世界の薬剤知識に詳しい特殊な精霊じゃ。
新たなものを生み出す能力は其方のほうが高いように見ゆるが、既存の薬であればサルスが相当の知識を持っていよう。
其方とサルスの活躍を祈っておるぞ。」
ケルティ様の激励を貰って祈祷所を後にしました。
傍で見ている者がいたなら、左程長くはない時間、祈祷所の一室で私が合掌して瞑目しつつ無言で祈っていたのが見られたことでしょう。
さてさて、一応の準備もできましたので、事務局をせっつきましょうか。
私が出向くことにはかなりの抵抗がありそうですが、このまま放置するわけに行きません。
防護服があっても、他の者が面倒な調査と解析を行えるはずもないのです。
治癒師ギルドの職員に教え込んでいたなら、感染防護や衛生維持の基礎だけで一月ぐらいはすぐに経ってしまいます。
感染症対策はスピードが大事なんです。
特に伝染性の高い病原体の場合は、放置すれば世界中に蔓延しかねません。
事務局や幹部を説得するのに、それから丸二日もかかってしまいました。
特に幹部クラスが頑迷でしたね。
年を取るとみんな頑固で融通が利かなくなるのかな?
いずれにしろ、魔晶石ギルドに要請と言うか依頼と言うか、連絡があってから十日目にして私は飛空船に乗って再びクロマルド王国へ向かっています。
カロス王国の飛行場よりも、クロマルド王国の飛行場の方が問題の感染現場に近かったのです。
一応決死の覚悟で事務局のモリソン副部長さんが私に付いてきていますけれど、感染現場に連れて行く気はありません。
彼にはクロマルド王国やカロス首長国との折衝をお願いするだけなのです。
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6月20日、一部の字句修正をしました。
By サクラ近衛将監
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