巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監

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第三章 ホブランド第八日目以降の出来事

3-5 王都滞在中の出来事 その一(報償)

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 シレーヌ嬢に色々聞いてみたのだが、やっぱり五日後に王宮に上がって国王陛下の拝謁を賜った後で褒章の授与式典があるようだ。
 心配していた服装はやはり格式があるようで、明日にも王宮御用達の衣装師が宿を訪れ、俺の式典出席時の服装を決めるらしい。

 何でもその翌日の六日目に晩餐会、更に七日目に舞踏会もあるらしく、その出席と参加も合わせて準備されているようだ。
 因みに、拝謁と褒章授与式典は同じ服装なのだが、晩餐会と舞踏会はそれぞれまた違った衣装になるらしい。

 当日は着付けのために衣装師の付け人がわざわざ宿まで派遣されると聞いて俺はがっくりと来たよ。
 俺って、そう言う格式張った奴が一番苦手なのよ。

 本当は何とか避けたいのだが無理そうだ。
 五日後に国王拝謁と言うのは、衣装が出来上がるまでの日程を勘案したものらしい。

 まぁ、ここまで来たら俎板(まないた)の鯉で、なるようにしかならんだろう。
 明日は、衣装師が採寸して衣装を決めた後、午後にシレーヌが王都を色々案内してくれるらしい。
 明日以降の予定については、明日、また知らせると言っていた。

◇ 王都二日目

 翌日朝食が終わると待ちかねたように衣装師たちの一群が現れた。
 あちらこちらと採寸され、ようやく解放されたのは昼飯時に近かった。
 
 昼飯はシレーヌに連れ出され、外食である。
 宿でも昼食は頼めるのだが、最初からキャンセルされていたようだ。
 
 食事をしながら色々と今後の予定を話してくれたが、やっぱり面倒事が待っていた。
 明日から三日間で礼式と舞踏を教わらねばならないようなのだ。
 
 そのための指導者が既に用意されており、午前中は礼式、午後は舞踏と振り分けされているらしい。
 場所は宿であるハイリリアの披露宴会場が充てられている。
 
 三日目にはシレーヌが仕上げのために立ち会うと言う。
 俺がそんな付け焼刃じゃ無理だろうと言うと、できないのは仕方がないが、それでもやれるだけはやってもらうと言われてしまった。

 どうやら第二王女コレットの体面も大いにかかっているそうなので、庶民と言えど余り大きな無礼や失態はできないらしい。
 まぁ、しゃぁないな。できるだけのことはやってやろうと思った俺である。

 王都第二夜、俺は宿で礼式や舞踏に関連して魔法が役立たないかと種々考えた。
 で、思いついたのがスキルコピーである。

 魔法創生で対象人物が持っているスキルをコピーしてしまおうという魔法を作ってみたのだ。
 儀礼に体力はまぁ不要だろうし、舞踏なら体力は相応に必要かもしれないが、俺のかさ上げされた筋力ならば、まぁ、そこいらの貴族子女には多分負けないと思う。

 ならば後は知識と、タイミングを誤らせないスキルの有無だけなのだ。
 俺はその魔法を発動して翌日からの特訓に対応することにした。

◇ 王都三日目

 翌朝朝食を終えた俺は、王都参詣のために準備していた衣装を着て、披露宴会場に居た。
 目の前には第二王女が住む離宮の執事が居る。

 50代かと思われる立派な髭を蓄えた人物で、俺の衣装の着こなしを見て、頷いた。

「フレゴルドの冒険者と聞いていましたので、もっと荒々しい人物かと思いましたが、意外に中々の御器量の持ち主、良家子息にも負けぬ風情がございますな。
 これは中々に重畳ちょうじょう
 姫様の御推薦にもかなう人物と拝見しました。
 今日から三日間、リューマ殿に王宮礼式をお教えします。
 バンター・ヘンデルと申します。
 どうぞ良しなに。」


 そう言って始まったバンターさんの指導だが、姿勢や表情から始まるなどかなり厳しいものがあった。
 最初の彼の発言と同時に彼のスキルをコピーしたから、礼式のほとんどで知識はある。

 しかしながら知識と実践はまた異なるものだ。
 一挙手一投足どころか指の動きまで統制するとなると、にわかには身体の制御ができないのだ。

 そこでニヒルに笑えとか、左目のまなじりだけを上げてみろとか言われても慣れていない動作はそう簡単にはできるものではない。
 それでもバンター執事さん、俺のモノ覚えがいいと判断してか、上機嫌で昼少し前には戻って行った。
 逆に俺の方はスパルタ教育の詰め込みですっかり意気が下がってしまったけどね。

 午後からは、カール・ツィンメルマン氏とそのご夫人であるサマンサ・ツィンメルマンさんが教師、更にそのお弟子さんであるフィレリア・デンゼル嬢が俺の相手役として手ぐすね引いて待っておりました。
 ここでも挨拶を交わしている間にご夫妻のスキルをコピーさせていただきました。

 ついでにフィレリア嬢のスキルもコピー、サマンサさんとの違いなども確認させてもらいました。
 すんなり頭に入ったスキルだが、やっぱり知識と実践は違う。

 脚が華麗なステップを踏めるまでには結構な時間がかかった。
 それでもご夫妻からは大変すばらしい素質を持っていると褒められた。

 確かにワルツに似たステップだけなら夕刻終わりころにはフィレリア嬢をしっかりとリードできる程には足捌きができるようになっていた。
 明日は更に基本の二つのステップを覚え、最終日の三日目には四つ目のステップを覚えた上で、初見の相手と踊る実践訓練だそうだ。

 初見の相手とはシレーヌ嬢である。
 因みにシレーヌ・バイフェルン嬢は、ジェスタ王国東部に領地を有するオルレーヌ・バイフェルン伯爵の次女なのだそうだ。

 従ってシレーヌ嬢は幼いころから礼式や舞踏にも携わっており、舞踏の腕前も上の下ほどの腕前で、貴族の子女としては中々の力量であると言う。
 うん、てっきりバーサーカーの称号を持つ脳筋女性かと思っていたが、これは少し上方修正をかけねばならない様だ。

◇ 王都五日目

 それやこれやで特訓三日目午前中に礼式の仕上げにはシレーヌ嬢が立ち合い、バンター執事さんとシレーヌ嬢のお墨付きを得られて無事卒業の運びとなりました。
 バンターさん曰く、礼式の稽古もかなりの人に試みたが、これほど優秀な生徒は初めてですなと褒めちぎってくれた。

 お昼は、宿のレストランで会食をいたしました。
 あ、これも実は稽古の一環なのですよ。

 何しろ晩餐会が予定されていますからね。
 そうして午後からは、舞踏。

 サデナ、カリオット、エブロの三つのステップは覚え、最後のベレックが残っていた。
 一の時から三の時まで稽古に励み、最後に総仕上げとして、シレーヌ嬢と四つのステップを連続で踊ってみた。

 ツィンメルマンご夫妻から過分のお褒めの言葉を頂いたし、お相手のシレーヌ嬢も頬を若干ピンク色に染めながら俺の踊りを褒めていた。
 因みにシレーヌ嬢は朝から見事なドレス姿になっており、近衛騎士の装束からは見違えるようなご令嬢姿になっていた。

 うん、彼女は本当に美人だね、近衛騎士の扮装でも際立っていたけれど、こうして淑女らしいドレスを着ると本当によく似合っていて、彼女の美しさが映えている。

◇ 王都六日目

 そうしていよいよ王宮参内の日がやってきました。
 午前の三の時過ぎに王宮から迎えの馬車が来ました。

 その一時間半前から衣装師たちの手で着替えを行っており、出立の準備は整っています。
 この衣装師さん達、明日の晩餐会、明後日の舞踏会でも、出発前には着付けのお世話になることになっています。

 衣装代を含めそれらの費用は全て王宮持ちなのです。
 その日、俺は金のかかった衣装を身に着け、にわか貴族のごとく礼式に合わせてきっちりと行動した。

 国王陛下は40代後半、頭が少し薄くなりかけているお人でしたが、中々に覇気を伴った方で威厳があったのは間違いないです。
 あらかじめ決められたとおりに儀式が進み、国王陛下との拝謁も無事に済みました。

 王妃殿下は中々の美人でしたね。
 国王陛下拝謁に際して臨席したのは他に数人の偉そうな臣下の人達だけでした。

 拝謁は、俺の名を呼ぶ人の合図で拝謁の間の端から進み出て、国王の前に片膝ついて頭を下げる俺に向かって国王が言う。

おもてを上げい。
 余がジェスタ王国国王のアルフレッド・ヴァン・フルスロット・ベンジャミンじゃ、見知りおけ。」

 それに対して俺が顔を上げて答礼する。

「麗しき国王陛下のご尊顔を拝しまして、これに過ぎたる我の名誉なし。
 以後子々孫々に至るまで我が家の誉れといたします。」

 そう言って再び顔を伏せるのである。
 国王陛下並びに王妃殿下が退室され、側近の人たちも退去して拝謁の儀式は終了なのだが、俺は立ち上がってから王座に向かって会釈してから回れ右をして部屋の隅へ移動、入って来た扉をくぐって全ての儀式終了である。

 その後いったん時間があるので宿へ戻り、昼食後また王宮へ参内する。
 そうして報償授与の式典が似たような形で行われた。

 但し、午前中の拝謁の間ではなく、ホールの様に大きな部屋で多数の参列者を交えて行われた。
 参列者だけでも数十人ほども居たと思われる。

 正面には王家の一族が揃っていた。
 国王陛下に王妃殿下、第一王子に第一王女、第二王女に第二王子の順で並んでおり、王太后殿下も臨席されていたようだ。

 俺の役割は国王一族の前まで進んで片膝ついて臣下の礼を取り、宰相が読み上げる俺の功績を面映ゆく感じながら聞いて、宰相から褒章のしるしである勲章を首から下げてもらうだけである。
 その儀式の終わり直前に国王陛下が言った。

「王女コレット達の命を救ったこと誠に大義であった。
 親として其方に感謝しておる。」

 これは本来の儀式典礼に無いハプニングであったが、宰相は一瞬ピクリと表情を変えながらも堂々と言った。

「これにて報償授与の式典を終了する。」

 因みに俺が貰った勲章は、紅白宝珠勲章という上から三番目の勲章であり、ここ二十年ほどは授与のなかった勲章であるらしい。
 特に武勲に優れた者に送られるものであって、所謂貴族ではない庶民に与えられるのは初めてのことだったらしい。

 そのために俺は領地の無い法衣貴族の一つでもある准男爵の爵位まで授与され、副賞として紅白金貨二枚を授与されたのである。
 金貨の上の貨幣には三種類ある。

 白輪金貨、白金貨、紅白金貨の三種であり、一番高いのが紅白金貨であり、あくまで推測ではあるが紅白金貨一枚で約2億円の価値があると思われるのだ。
 つまり俺は、4億円相当の報奨金を貰ったことになる訳である。
 虹色に輝く金貨は俺の手のひら大の大きさでかなり重かった。

 そうして翌日は隣国エシュラックのハイラル王子一行が表敬訪問で来ていることもあって、歓迎のための晩餐会に俺も招かれていた。
 本来であれば王家一家との軽い宴で予定が組まれていたらしいのだが、その予定を組んでいる内にハイラル王子の来訪通知があったので急遽晩餐会へ変更されたらしい。

 舞踏会も同様である。
 冒険者風情を晩餐会やら舞踏会に招くこと自体、少々おかしいのだが、シレーヌ曰く、コレット王女殿下の強い推薦があったという。

 面倒なことをしないでよ。コレットちゃん。
 俺って、元の世界でもしがない商社員の一年生、こっちの世界ではほとんど名の売れていないEクラスの冒険者だよ。

 Aクラス以上の冒険者なら王宮に招かれるのもおかしくはないけれど、それでも多分、正式の晩餐会や舞踏会には招かれないと思うんだよなぁ。
 俺には見当もつかないけれど、何かひょっとして俺に期待していることがあるのかな?


 ***********

 タイトルの一部を変更しました。

    By サクラ近衛将監

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