巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監

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第三章 ホブランド第八日目以降の出来事

3-10 王都滞在中の出来事 その六(バイフェルン邸訪問)

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 午後一の時も半ばすぎたころ、王宮から騎士団五十騎が到着した。
 王家には近衛騎士団のほかに騎士団二つがあるようだ。

 黒騎士団と青騎士団の二つであり、内青騎士団は王都外の治安維持を主とし、黒騎士団は王都の治安維持を主任務としている。
 今回派遣されてきたのは黒騎士団副団長以下50名の猛者もさたちである。

 本来は午後二の時のお茶会まで過ごしてから、王宮に王女を送り届ける予定であったのだけれど、ジェスタ王国の浮沈にも関わる大事と言うことで、黒騎士団到着と同時に王宮へ引き返すことになった。
 因みに馬車に乗って宝冠の入った木箱を膝に抱えているのはシレーヌ嬢だ。

 コレット王女に持たせるわけにも行かず、さりとて離宮の女官や騎士を連れて行くわけにも行かない。
 俺が持つのもまずいので、結局王女の護衛でもあるシレーヌ嬢が馬車に乗って王宮まで直接警護に当たることになった。

 こうなるとシレーヌ嬢は、例え命を捨てても宝冠を守らねばならない立場になる。
 まぁ、警護対象がコレット王女から宝冠に移っただけなのだけれど、コレット王女と宝冠とどちらが重いかと言うと、実は対外的には宝冠なのだ。

 物よりも命が軽いというのは至極問題なのだけれど、この世界の封建社会では往々にしてそういうこともあるようだ。
 江戸時代、拝領品を破損したり、無くしたりした場合に当主が詰め腹を切るのと同じ感覚の様なんですねぇ。

 俺がその考えに染まることはないだろうけれど、当人達がそう思うことを妨げたり、阻止したりすることは事実上難しい。
 この世界は魔法も魔物もある特殊な封建社会なのだから、平成に生まれた平和ボケの日本男児の考えなんぞ通用しなくても当たり前なのでしょう。

 できるだけ俺の信条に反しないよう努力はするけれど、出来ないことも多いのだろうとつくづく思う俺である。

 ◇◇◇◇

 ワブ(午後)三の時、コレット王女と黒瑠璃の宝冠を載せた馬車は、王宮へと到着した。
 本来であれば王宮に参内せず、王都の門をくぐったところで俺はお役御免になるはずが、今回の宝冠騒ぎで王宮内の王妃の元へ宝冠を運び終わるまで警護役を命じられた。

 命じたのは最初に、王太后、次いでコレット王女、更に追い打ちをかけて、黒騎士団の副団長が国王命令を携えてやってきたのだ。
 これはもう、どうやっても逃げられない。

 で、俺は今、国王陛下と妃殿下の御前にあって、コレット王女の右後方に控え、同じく左後方に控えているシレーヌ嬢と並んでひざまづいているところである。
 シレーヌ嬢はうやうやしく両手で木箱を抱えているから動きが大変だ。

 コレット王女が簡単な経緯を説明した後、シレーヌ嬢が前に進み出て、妃殿下の側近に木箱を引き渡した。
 それが妃殿下の前にある小机の前に置かれ、すぐに御開帳となり、中身を両陛下が確認されてから俺に声がかけられた。

「リューマ卿、此度の宝冠の探索、誠に大儀であった。
 ジェスタ王国では長年の懸案であった宝冠の行方が分かったのみならず、滞っていたアレシボ皇国との国交改善に大いに役立つことになろう。
 この功、誠に時宜じぎを得たものであると同時に極めて大なる功績じゃ。
 よって、リューマ卿の功に値する賞を別途与える故、今少し王都に滞在せよ。
 これは王命じゃ。」

 と言うことで、翌日に予定していた王都からの旅立ちは急遽延期になってしまいました。
 両陛下と面会した後で、こそっと宰相殿が耳打ちしてくれた情報によると、褒章の類を決定するには最低でも7日程度はかかるとのこと。

 国王が決定すればよいというものではなく、内部の官僚的な事務手続きが色々とあるらしい。
 尤も「信賞必罰」のうち、罰の方は国王の決定であればほとんど遅滞なく実行されるらしいのだが、・・・。

 と言うことで最低でも7日間の王都滞在が強制された訳である。
 まぁ、王都から離れてはならないという訳ではないが、少なくとも王宮からの連絡がすぐに届く場所であって必要に応じてすぐにでも参内できる場所に居なければならないようだ。
 
 この件は、別途宰相の側近であるピエール・ダルカン殿からも内々に教えられた。
 遠出で許容できる範囲は、王都から半日の行程内の範囲であって、王都を出る場合には行く先を事前に届け出ていなければならないようだ。

 まぁ、仕方が無いので宿を起点にして王都散策をして過ごすことにした。
 冒険者ギルド、錬金術・薬師ギルド、商業ギルドを訪ねてみるのもその一興だし、王都の店を色々と覗いて魔術書や錬金術・薬師に関わる書物を探すのも良いだろう。

 時間もあるので宿の部屋でできる錬金術を試行錯誤してみるのもいいと思っている。
 薬師の鍛錬はちょっと難しいかもしれない。

 薬師の仕事は、モノによって、かなりの芳香や臭気を放つから、王家御用達の宿屋でそんなことしたら間違いなく他所からクレームがついて追い出される。
 錬金術も失敗こいて破裂するような恐れのあるモノはできないな。

 幸いと言うか、一日だけはシレーヌ嬢が付き合ってくれることになっている。
 コレット王女もしきりにシレーヌ嬢を羨ましがっていたようだが、王女と言う公的立場があるから勝手に街中を歩いたりはできないようだ。

 その代わりにお茶会に一度だけ招かれた。
 当然のことだけれど、俺に拒否権など無いですよ。

 迎えが来たならドナドナされて行くだけの立場なんだよねぇ。
 そんなこんなで待機中は宿屋で色々錬金術を試し、高級街からスラム街まで街中のお店を訪ねまわって色々と商品を見て回った。

 有意義だったのは香辛料と調味料を色々見つけられたことかな。
 鑑定の力を借りて色々確認してみると、俺が知っている香辛料の内、7割ほどが見つかったし、醤油に近い魚醤や味噌に近い豆類の発酵製品が見つかったんですよ。

 俺は、あまり料理はしないのだが、全くできないわけじゃない。
 緊急の場合は自前で獲物を狩ったり、その獲物を調理できるだけのノウハウだけは入手しているし、野っ原でのキャンプで自炊もできるようにしている。

 まぁ、余り味については保証できないが、その辺も或いは魔法創造で何とかなるような気がしている。
 で、魚醤と味噌擬きについては樽で購入した。

 そのほか前の爆買いの際には、時間が無くて見逃していた素材や書籍も今回はじっくりと漁ることができた。
 この待機期間中に変わったことと言えば王都の教会を訪れ、例によって孤児院に寄付をしてきたことだろうか。

 フレゴルドと違って王家のお膝元である所為か、孤児院の経営は左程苦しいわけではないようだ。
 但し、地方と異なって物価が高いのでオーク肉の提供はここでも喜ばれた。

 ついでに金貨二十枚ほどを喜捨したら教会のシスター達にすっかり拝まれてしまった。
 まぁ、また王都に来る機会があれば教会への寄付も忘れずにしておこうと思う俺だった。

 因みに、教会で幼女神様に祈りを奉げたのだが、アルノス幼女神からは、「悪い、今は対応できない。」と思念での返事があっただけだった。
 天界も何か忙しい時があるのかねぇと思った俺だった。

 ◇◇◇◇

 シレーヌ嬢とのデートは彼女が休みの時だったのでそれこそ延長6日目になる日だった。
 今のところ王宮からの知らせは届いていない。

 最低7日とは一体何日になることやらと不安になる俺だった。
 一方、例のマクレガー・コルドレンというストーカー紛いの子爵家次男坊についての話をシレーヌ嬢から聞いた。

 俺とシレーヌ嬢のデートの最後を邪魔したあれから四日目に何やらシレーヌ嬢の拉致襲撃計画を立てて、市内巡回という公務中の彼女の分隊を襲ったらしい。
 シレーヌ嬢の分隊だけではちょっと人数的に分が悪かったようだが、そこに同じく巡回中の黒騎士団がたまたま居合わせて、すぐに襲撃者は全員が捕縛されたようだ。

 その際にマクレガーはその一味の中には居なかったが、襲撃を命じたのがマクレガーと分かって、貴族街でちょっとした大捕物があったようだ。
 いずれにせよ犯行の首謀者が子爵家の次男坊と判明した時点で、コルドレン家は子爵家からマクレガーを即座に勘当した。

 同時に貴族院に対しては爵位の進退伺まで出したようだ。
 貴族院で衆議の結果、既にコルドレン家で内々の養子縁組と廃嫡の手続きが進んでいたことから、今回に限りお咎めなしとの評定が下ったそうだ。

 このため、マクレガーは、貴族子弟ではなく平民として裁かれ、王都擾乱の罪と貴族令嬢を狙った誘拐事件の首謀者として有罪が確定、犯罪奴隷として鉱山送りが決定されている。
 死罪ではないだけましなようだが、実のところ犯罪奴隷として鉱山送りになる方が実際には厳しいようだ。

 因みに犯罪奴隷として鉱山送りになった者で5年以上生き延びた者はこれまでにいないと言う。
 つまりは死ぬまで働かされるということだ。

 俺の脳内マップから見てマクレガーの動きが最近ほとんどなかったのはどうやら収監されていた所為のようだ。
 また、今回襲撃に関わった連中は、前回使った連中が使えないとしてマクレガーが人員を総入れ替えして襲撃チームを雇ったために俺の警戒網に引っかからなかったようだ。

 今後、警護対象を守る場合はそうしたことも考慮しなければならないようだなぁ。
 因みにシレーヌ嬢の動静監視は可能だったが、彼女に襲撃があった場合の察知ができるような体制にはなっていなかったんだ。

 今後、警備システムを考える際にはこの辺も留意しなければならないようだ。
 シレーヌ嬢は、デートがてら俺をオルレーヌ・バイフェルン伯爵の王都別邸に連れて行ってくれた。

 どうやら俺を伯爵ご夫妻に紹介したかったようだ。
 但し、俺とシレーヌ嬢は明らかに身分違いだぞ。

 国王から准男爵を賜ったとはいえ、未だ平民には違いない。
 まぁ、今度陸爵すると何になるのかわからないが、仮に上位の男爵位を貰えば法衣貴族であっても正式な貴族の仲間入りになってしまう。

 男爵になってしまったのでは流石に平民ですとは言えないようなのだ。
 だから王太后に辞退できませんかと申し上げたのだが・・・。

 この辺のにわか知識は、執事のトレバロンやメイドのラーナから得た知識だし、礼儀指導のバンター・ヘンデル氏、舞踏指導のツィンメルマンご夫妻との雑談で裏付けられた知識でもある。
 正直言って、貴族は面倒めんどいよ。

 それに、国王の覚えめでたき新進気鋭の若い貴族って、絶対にねたまれる役柄じゃん。
 ただでさえ平民上がりってバカにされるだろうし、良いことなんてあるわけがない。
 そう考えただけで意気が下がるよねぇ。

 まぁ、結局はその時その時で一番良い道を選ぶしかないんだけどね。
 取り敢えず今日の使命は、オルレーヌ・バイフェルン伯爵ご夫妻との面会を無事果たすことかな?

 今、そのバイフェルン伯爵邸の玄関ホールの扉のところで、俺の目の前には、立派な衣装を身につけた結構ガタイの良いカイゼル髭を生やした大男のおっさんが俺をにらみつけている。
 その隣にはニコニコと笑みを浮かべた夫人と思しき人物がいる。

 その背後には、シレーヌ嬢よりも年下でありそうな男女三人が見え隠れしている状態。
 さらにその脇には執事とメイドと呼ばれそうな人が複数居るのだけれど、ここでは一家揃って客を出迎えって風習があるのかな?

 貴族の屋敷って、普通は執事かメイドが玄関で出迎え、主の待つ居間や応接間に案内するもんじゃなかったけか?
 でも、そんな状況にびっくりしてるのは俺だけじゃないみたい。

 シレーヌ嬢が言った。

「お父様、お母様、玄関先で来客を待ち受けるなんて礼儀作法に反するのではありませんか?」

「ふむ、シレーヌの口上、もっともなれど、当主として家に入れても良い人物か否かを、まず確認すべきであろう。
 儂の眼鏡にかなう人物ならばよし。
 さもなくば、当家の敷居をまたがせること相成あいならん。」

 そう宣言した伯爵さん。
 うーん、屋敷に入る前に当主の試練がありそうなんだけれど、一体何をすればよいのかな?
 
 物凄くたくさんのハテナマークを頭の上に浮かべている俺に向かって、ひたすらにらみを利かしているのだけれど、これってひょっとしてにらめっこ?
 吹き出した方が負けとか?

 そんなわけないよね?
 じゃぁ、何だろう。

 俺の目を見ている様なので、俺も伯爵の目を見ることにした。
 にらめっこじゃないよ。

 でも視線をそらしちゃいけないような気がして・・・。
 そのまましばらくお見合いが続きましたが、根負けしたのが伯爵ご当主の様でした。

「お主、儂の威嚇いかくに動じぬようだな。」

 あれ?
 これって威嚇だったの?

 睨むのが威嚇じゃないよね。
 威嚇って殺気を放つんじゃなかったっけ?

「すみません、どちらかと言うと鈍感な性質たちですので・・・。
 まさか威嚇されているとは思っていませんでした。」

「武芸は、何ができる?」

「武芸というほどのものではありませんが、剣術、体術、弓術を少々たしなんでおります。
 あと、魔法が多少使えます。」

「ほう、魔法とな?
 どのようなモノか見せてみよ?
 背後の門脇にある立ち木を的にして何かを成してみよ。」

 って、随分漠然としているけれど・・・。
 何となく武闘派に見えるから、枯れ木に花を咲かせましょうはなさかじいさんというのじゃお気に召さないでしょうねぇ。

「あの・・・。
 立ち木が損傷してもよろしいのでしょうか?」

「構わぬ、やってみせい。」

 隣にいるシレーヌ嬢に視線を向けるとシレーヌ嬢が頷いた。
 これはやってもいいということだろうけれど、さて何を見せればいいのか?

 まぁ、何となくシレーヌ嬢はわかっていそうな銃擬きを使うことにした。
 目標は精々30メートル足らず、絶対に外すような距離ではないが、仮に直径30センチほどの立ち木をぶち抜いてしまうと背後の土塀の壁を損傷するかもしれない。

 で、それを避けるために、門柱の石垣と重なっている僅かな部分を狙うようにするため、自分の立ち位置を少し変えた。
 その上で構えて撃った。

 構えてから発射まで1秒内外、詠唱もなしに空間から銃を取り出し、発射したことに伯爵は随分と驚いたようだが、俺は銃を余り人目にさらさないようにすぐにインベントリに収納して隠した。
 俺が長い筒状のものをいきなり出してボスっと低い音の後に何かが飛び出し、的に当たって立ち木が揺れたのを確認したはずだが、いきなり表れて、いきなり消えた筒状の何かの細部を見ることはできなかったと思う。

 そうして俺の狙い通り、土塊つちくれの弾丸が立ち木の中心部に当たり貫通していた。
 オークを退治した弾なら貫通は難しかったかも知れないが、土塊も圧縮すると鋼以上の強度を持つ。

 威力を見せるのがこの試練の様だから、あえて圧縮弾を用いたのだ。
 そのために、石垣の一部が欠けていたが、土壁に穴が開くよりはましだろう。
 
 伯爵は唸りながら言った。

「ムムム、一体何をした?
 何故に斯様に離れた距離で生木に穴を開けられるのだ?」

「申し訳ありません。
 私のスキルの一つであり、明かすことはできませんのでご了承ください。」

「スキルか・・・。
 スキルの秘匿ならば・・・、止むを得んな。
 取り敢えずは、そなたの力量を認めて、屋敷に立ち入ることを許そう。
 俺は、オルレーヌ・バイフェルン、伯爵家当主であり、シレーヌの父親だ。」

「あ、私は、リューマ・アグティ准男爵にございます。
 よろしくお願い申します。」

 伯爵は俺の挨拶を受けるすぐに踵を返して屋敷の中に入って行く。
 傍にいた夫人が愛想よく言った。

「すみませんね。
 主人がつっけんどんで。
 私はミシェル・バイフェルン、シレーヌの母です。
 さ、どうぞ、中にお入りになって、ほかの子供たちも居間でご紹介しますので。」

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