巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監

文字の大きさ
158 / 205
第十一章 ファンデンダルク侯爵

11ー2 ガランディア帝国との紛争 その一

しおりを挟む
 私はδ2041号、船舶監視用ゴーレムである。
 ジェスタ国ファンデンダルク家の碧地みどりぢに黄色で描かれた双頭の鷲の商船旗を掲げる大型交易船アーレマイン号に配置されている。

 交易船アーレマイン号は、全長64.7イード(107m)、10.3イード(17m)、深さ3.87イード(6.4m)で、約7000レボレム(1ボレム≒0.7Kg、1レボレムは千ボレム)程度の貨物が搭載可能な大型商船である。
 本来は、1万5000レボレムクラスの大型船の就航を検討していたのだが、海外のいずれの港においても水深が浅いことから、吃水制限でこの程度の大型船になったと承知している。

 私は、百分の一秒遅れの亜空間である「ディアトラゾ空間」に常時潜んでいるから常人には見えない。
 そうして私が配置されていることを知る者は、ファンデンダルク卿とその身内だけに限られている。

 我らδ型ゴーレムの生みの親であるファンデンダルク卿のお子達が我らの存在を知り、未だ幼いお子達が我らの監視場所を特定してしまうので、やむを得ず、ファンデンダルク卿が奥方様達にも警護等の目的でδ型ゴーレムが要所、要所に張り付けられていることを打ち明けられたのだ。
 我らにはわからぬが、母親というものは幼子の異常な振る舞いに敏感であり、いずれはその存在を何らかの形で推察するものと判断して、お子たちの持っている常人には在るはずの無い能力の存在と共に、我らの存在を打ち明けられたようだ。

 打ち明けられたにしても奥方様が我らを感知できるわけではない。
 ただ、目に見えぬ我らの仲間が奥方様やお子達を常に守護していることは承知されている。

 ファンデンダルク卿とそのお身内や大事な知人等の警護と異なり、アーレマイン号に配置された私は、主としてアーレマイン号の動静監視が主任務である。
 乗組員の健康状態、積み荷の状況、船体及び魔導機関の状況等を監視し、異常があれば主に知らせるのが主要な任務だが、必要に応じて船外の情報収集も行っている。

 私の指揮下にはドローン型ゴーレム8機、インセクトアイ24体が存在するので、必要に応じて、いつでも船外監視と情報収集が可能なのだ。
 アーレマイン号は、母港であるウィルマリティモが存在するアルバンド大陸を離れて、アルバンド大陸の西、北エオール海の対岸にあるファランド北大陸の貿易港バルマラードに寄港している。

 ファランド北大陸はアルバンド大陸の三分の二ほども有る大陸であるが、貿易港バルマラードはガランディア帝国の主要貿易港である。
 ガランディア帝国はファランド北大陸でもっとも大きな勢力を持つ大国であり、ファランド北大陸のその他の国々である十二か国と拮抗する軍事力を有している。

 晩秋(月)半ばに北エオール海を横断してアルバンド大陸から到来した交易船は、アーレマイン号が初めてであり、ある意味でガランディア帝国を揺るがした。
 従来からアルバンド大陸随一の強国と見做されているオルテンシュタイン帝国とは少なからず交易もあったが、ジェスタ国とはアルバンド大陸でも内陸の小国としてしか認識していなかったのだが、その国の交易船がそもそもこの時期に荒れる北エオール海を横断してやってくること自体が驚きなのである。

 また、彼らは帆船ではない船を始めて見たし、同時に長さだけでも帝国の大型交易船の3倍ほどもある巨大な交易船を見て驚愕した。
 折しも、帝国は北ファランド大陸南部の連合国と戦端を開いていた。

 北ファランド大陸南部の国家群は強大なガランティア帝国の侵攻に対して大同団結して連合軍を編成し、ガランティア南部のアルロジア山脈の分水嶺で帝国の侵略を食い止めていた。
 このため、ガランティア帝国は、ファランド南北大陸をつなぐベルカ回廊付近のアルミディ半島に海路侵攻して橋頭保を築き、南から侵攻しようとしたのだが、これもまた頑強な抵抗に遭い、南北両方向からの侵攻が止まっていたのである。

 ファランド北大陸東部にあるサプランという港からのアルミディ半島への補給は、海路で3日から4日かかるのだが、風向きや海象模様でさらに遅れることもあり、特に秋季から冬季にかけては海が荒れることが多く武器・食料の補給が非常に困難になってきていたのだった。
 そこへ巨大な異国の貨物船が到来したので、帝国の宰相等為政者はこれを接収しようと目論んだのだった。

 巨大な貨物船を摂取することができれば、荒れる時期でも補給は可能となるからである。
 従って二回の交易までは無事に済んだのだが、アーレマイン号が三度目にバルマラード港を訪れた際には一切の通告無しに拿捕されたのだった。

 そうして何の罪も無いのに乗員は捕縛されて牢に入れられた。
 ジェスタ国とガランティア帝国との間に通商条約など無いので交易を拒否するのは特段の問題も無いが、拿捕ともなれば間違いなく国家同士の国際問題になるし、まして全く罪のない船を拿捕したとなればこれはもう戦犯モノである。

 いずれにせよ、昔から在る国際商慣習を無視してガランディア帝国海軍の将兵が無理やりアーレマイン号に乗り込んできたわけだが、私(δ2041号)はかねてよりの計画に従って、アーレマイン号の動力を全て切断した。
 錨も下ろしたままであるので、アーレマイン号が動くことは無い。

 このまま艀や倉庫には使えるかもしれないが、巨大なアーレマイン号を曳(ひ)ける船などないから、船は港のある湾内に停泊したままになるだろう。
 一応、無人のままウィルマリティモに戻ることができるようなプログラムも有るのだが、今回は発動しない。

 主に報せ、私はひたすら待機するのみである。
 無論全てのドローンとインセクトアイを作動させ、入念な情報収集を行っている。

 乗員の居場所は全て把握しているし、彼らが受けている拷問の類もすべて把握している。
 主からは、私だけでは漏れがあるかもしれないとして、既に三体のδ型ゴーレムと付属のドローンやインセクトアイも転移で送られてきている。

 主からの連絡によれば、遠征艦隊として大型フリゲート艦6隻が既にウィルマリティモを出港しているようだ。
 大型フリゲート艦の速度からすると、おそらく到着はウィルマリティモを出港後三日後ぐらいになるだろう。

 ◇◇◇◇

 ベルム歴730年中春(月)の5日、船舶監視用ゴーレムδ2041号からアーレマイン号が拿捕された旨の連絡を受けてすぐに、俺(リューマ)は王都に向かい、国王陛下と宰相に今回の一件について詳細に報告した上で、開戦まで含めた全面的な交渉権限を頂いた。
 本来の国際交渉は宰相の権限であるかもしれないが、相手のガランディア帝国はファランド北大陸の半ばを掌握している大国であり、そもそもアルバンド大陸でも中の中程度の国土しか持たないジェスタ王国など歯牙にもかけないだろう。

 何しろオルテンシュタイン帝国と同等の領域を占めており、人口もジェスタ王国の15倍に近い超大国である。
 このような驕れる超大国を相手取って交渉するには、最初にガツンと叩いておかねば交渉にすらならないのである。

 俺はとんぼ返りでウィルマリティモに向かい、大型フリゲート艦301に乗艦した。
 302から306までのフリゲート艦5隻を率いてウィルマリティモを出港したのはベルム歴730年中春(月)の6日の夕刻だった。

 魔境湾入り口からファランド北大陸の貿易港バルマラードまでは2500ケール(≒4000キロ)ほどの距離があり、大型フリゲート艦の巡航速力の「強速」では毎時(ホブランド時間)45ケールほどなので、概ね56時間(1日は20時間)ほどで到着できる。
 そうしてベルム歴730年中春(月)の9日早朝には、バルマラード港のあるファーブランド湾口に到着、304から306までの三隻を湾口に残して湾を封鎖、301を先頭に湾内に侵入した。

 大型フリゲート艦は、全長100イード(165m)、幅13.4イード(22.1m)、深さ7.2イード(11.9m)、吃水3.5イード(5.7m)、排水量約6千トンの戦闘艦である。
 特殊軽量金属を用いて作られているので全体に軽いのだが、強靭である。

 おそらくは誤って座礁しても、船体に破損は生じないとは思うのだがこれまで試したことはない。
 ファーブランド湾はフィヨルドに似た地形であり、湾口で2ケール幅、湾中央部で0.8ケールと若干絞られるが、湾奥部は再度広がって2.5ケールほどの幅と奥行きがあり、水深が深く、三方を山に囲まれているためにバルマラード港は大陸でも一、二を争う良港なのだ。

 事前に水中ドローンを使って海底地形を調査の上で海図も既に作成している。
 高々度監視ドローンも一機バルマラード上空に配置しており、周囲100ケール四方の情勢はいつでも把握できるようにしている。

 因みにガランディア帝国の帝都は、バルナラード港から40ケールほど内陸に位置している。
 俺の乗るフリゲート艦301号は毎時12ケールほどの速力で一列縦隊で湾奥に侵攻した。

 水深5イード線まで港に接近すると、港を形作る城塞が見える。
 アーレマイン号はすぐそばに停泊しているが、どうやらガランディア帝国軍の将兵が占拠している様だ。

 こいつらは船内のどこに潜んでいようともいつでも叩き出せる。
 俺は船外用の魔導スピーカーを作動させ、バルマラードに向けて勧告した。

「私は、ジェスタ国海軍元帥リューマ・フルト・アグティ・ファンデンダルク侯爵である。
 我が国に属するアーレマイン号を不法にも拿捕した責任者は直ちに我が艦隊に出頭し、その理由及び現在の状況を説明せよ。
 さもなくば我が国に対する敵対行為と取り、場合によってはガランディア帝国に対して宣戦布告も辞さず。
 責任者の出頭期限は明日日没までとする。
 その間に我が艦隊に対する不法行為若しくは攻撃があれば直ちに応戦する。
 その場合、このバルマラードの市街地は全て破壊されるおそれがあるものと心得よ。
 期限は明日夕刻までである。」

 俺は最後通牒に近いこの周知放送を二度繰り返した。
 明日の正午にも同じ趣旨の放送をするつもりだ。

 さてさて意気軒高なガランディア帝国がどう出て来るかだ。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

処理中です...