巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監

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第十二章 異世界探訪

12ー6 ベレスタにて その三

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 δ型ゴーレムでサルディア帝国の内情を探ったが、新兵器とやらはどうやら攻城兵器としての大砲のようだ。
 魔法が左程進展していないこの世界では、魔導砲を作る方向には動かなかったようで、サルディア帝国が秘密裏に開発しているそれは火薬を使った文字通りの大砲だった。

 砲弾には、徹甲弾以外に榴弾もあって、かなり完成度の高い危険なものと言える。
 これまで強度の高い砲身の製造で苦労していたようだが、砲身に帯を巻くことで砲身の強化を行い、雷管(信管)、撃針、尾栓の開発で、一線を画す近代的な大砲が出来上がったようだ。

 今現在は、戦列艦と呼ばれそうな四層甲板を有する大型帆船に如何にすればこの大砲を載せられるかを試行錯誤している様だ。
 今まで火薬など余り知られていなかった世界にもたらされた新技術は、今後の戦争の在り方を変えることになる恐れが多分にある。

 因みに余程錬金術に詳しい奴が居るのかもしれないが、黒色粉末火薬ではなくって黒色粒状火薬と褐色火薬にまで進化しており、装薬の中央には穴をあけるなどの工夫がされているほか、炸薬にもアルミと鉄粉を混入させてテルミット反応を促進させるようにしているのが凄まじい。
 20世紀後半若しくは21世紀の地球世界の砲弾などと比べると見劣りするが、大砲としてはかなり威力が高い代物である。

 普通であれば大砲が生まれた黎明れいめい期であれば、精々鉄の球や鉄くずを飛ばす程度のものであるはずが、一気に炸裂弾まで到達しているのが驚きである。
 誰か転生者でもいるのではないかと疑いたくもなるが、調べてみるとこれらを造り上げたのはサルディア帝国の王宮お抱えの錬金術師団であり、個人プレーならここまで進化しなかっただろうが、集団で知恵を出し合い切磋琢磨した結果、この新兵器が生まれたようだ。

 試作した最も大きな大砲は、直径20センチ程度の炸薬砲弾を4キロ近くも飛ばす能力がある。
 仰角38度近くで発射したなら、砲弾の最高到達高度は優に700mを超えることになるだろう。

 ベレスタの海岸砲台とでもいうべき高さが100mの高台にある火炎弾投射機や大型弩弓は、その構造材のほとんどが木製であるから、これらに向けてこの大砲を連射されると一気に破壊されてしまうだろう。
 何しろ爆発で着弾点周辺がまず吹き飛ばされる上に、テルミット反応で2500度程度の高温を発して燃えあがり、少々の水を掛けたぐらいでは消火できない焼夷弾になる。

 城壁であっても余程の厚みがない限りは、徹甲弾で破壊される恐れもあり、特に城門は簡単に炸薬弾で破壊される恐れが高いだろう。
 もう一つの使い方は、大阪城を攻めた徳川軍ではないけれど、この大砲を使えば城壁を飛び越えて一気に城塞の内部破壊をもたらす「国崩し」になるだろうな。

 俺ならこの兵器にだって撃ち勝てるだろうけれど、一旦生まれた知識技術は中々止められないよな。
 今現在は、サルディア帝国がこの大砲を陸路で戦地に運ぶ方法を模索しているのと、軍船に搭載する方法を試行錯誤している様だ。

 実は、発砲時の反動が大きいので船の甲板に固定すると船の方が壊れてしまうのだ。
 従って実戦配備には今少し時間がかかりそうだが、島嶼国に襲い掛かって来るのは時間の問題だな。

 この危険な武器をどうすべぇか・・・。
 仮にベレスタに向けてこうした大砲を複数備えた戦列艦が数隻押し寄せて来たなら、間違いなくベレスタは征服されていますだろう。

 放置すべきか、介入すべきかそれが問題だな。

 ◇◇◇◇

 私は、アーデレイド・ファンダンテ。
 あの誘拐騒ぎの事件から半年ほどが経ちました。

 モルデンさんは、一月半に一度ほどダート号でこのベレスタに現れます。
 船商人の常で、多分、他の都市も回って化粧品を売りさばいているのでしょうね。

 三回目までは、大道での化粧をしながら化粧品の販売をしていましたが、既にベレスタでは誰もが知る有名人になりました。
 そうして、ベレスタにある商人との提携で、化粧品を卸す方向に切り替えたようです。

 以前は十日ほどの間、常設市場で化粧品を売っていましたが、前回、お知らせを店に貼りつつ営業していました。
 お知らせには、次回からはアンジェリカさんの家であるメディヴァル家で売り出すことになった旨が記載されていました。

 文字の読めない方には、口頭でお知らせしていましたね。
 メディヴァル家でのお値段は、これまでと変わらないと書いてありましたので、メディヴァル家が欲張らない限りは、これまでと同じ値段で売られることになるでしょう。

 メディヴァル家のお店は市場ではなくって目抜き通りに一軒、港に近いところに一軒、そうして住宅街にも一軒ありますけれど、どうやら三軒全てでモルデンさんの化粧品を取り扱うようになるという噂です。
 どうやら今後はモルデンさんとお会いできる機会が少なくなるようです。

 なんだか寂しい限りですね。
 お付き合いと呼べるものはほとんどしていません。

 私はいつでも余裕がありますけれど、モルデンさんの方は時間が取れないのです。
 市場で店を開いている時は、化粧で忙しく、今回、メディヴァル家で売り出す様になれば暇になるかと思いましたら、港に入ってくると大量の荷物をメディヴァルのお店に運び込むのに忙しく、それが済むとすぐに出て行ってしまうのです。

 ベレスタに滞在するのは精々一泊だけ、それもずっと働きどおしのようですから、私からお声を掛けるいとまもございません。
 私の「白馬の騎士」は、遠くから憧れるだけの存在なのかしら・・・。

 今日もモルデンさんのお船であるダーナ号が来ております。
 恐らく今日はベレスタで泊まって、明日には出て行くのでしょう。

 翌早朝に目覚めると、いつものように私の部屋のベランダから見える海を眺めるのが私の日課なのですけれど、沖合に多数の戦船の姿が見えました。
 帆布の図柄から見て、薄い青地に二本十字の紋章は、サルディア帝国のものに間違いありません。

 そうしてすぐに街の半鐘も鳴り始め、連打によって敵軍の襲来を継げています。
 私は、サルディア帝国の新兵器の話を知っているだけに不安が募ってきます。

 以前と同じであれば攻撃はしてこないはずなので、攻めて来たということは新兵器が完成し、攻撃に自信があるということなのではないでしょうか。
 お父様たちも開発中の新兵器が何であるのかわからないなりにも対策を検討していたようですけれど、結局は入り江に現在配備中の防護兵器に頼らざるを得ないようです。

 私が何かお手伝いができればいいのですけれど、生憎と戦争では女たちが為せるのは後方支援のみなのです。
 それでも動きやすいような服装に変えて、どんな作業でもできるように準備しておきましょう。

 私は鈴を鳴らして、メイドのハイジを呼びました。
 少なくとも何時でも動けるように着替えだけはしておかねばなりません。

 ◇◇◇◇

 儂は、サルディア帝国海軍大将のヘルブラント・バスティニュアンス海洋伯だ。
 三年余り前の雪辱を晴らす日がついにやって来た。

 我がサルディニア帝国の第一艦隊をもってしても落ちなかったベレスタの城塞都市を今日こそは瓦解させ、征服して見せる。
 我らが皇帝配下の兵器廠の技術者たちは、恐るべき兵器を生み出したのだった。

 トーパと呼ばれる大筒は、錬金術師が生み出す火薬を使って、徹甲弾や炸裂弾を遠く離れた場所に撃ち込めるのだ。
 二年前に出来上がった当初は、ただの鉄の塊を遠くへ飛ばすだけの代物であり、手軽さから言えば大型投石機の方が移動もたやすく、同じような射程が得られるので便利であったかもしれぬ。

 だが、徐々に大筒トーパの射程が伸び、大型投石器の五倍以上になるに及んで、多少の移動の不便さは有っても、戦争における主役に代わるものと信じられるようになったのだ。
 発射装薬の改良、飛んで行く弾丸の改良が成され、また、砲身も改良され続けた。

 今や重量は単体で馬八頭分ほどもある兵器であり、運搬する馬車も特別性のものを使わねば戦地まで運べない。
 十五頭曳きの馬車で人の歩く速さよりも遅い速力しか出せず、しかも時々車輪が壊れたりするのだからその手間暇の苦労は言葉で言いつくせない。

 しかしながら、それでも大きな破壊力は得がたい魅力なのだ。
 儂が兵器廠の技術者の頭ヨーゼフ・デ・ブレーケレと歓談した時に彼は言っていた。

「この大筒トーパなれば、恐れ多きことながら、皇居を囲う大城壁でさえも打ち砕くでありましょう。
 そのような徹甲弾と炸裂弾を造り上げ、それらを発射できる頑丈な大筒トーパを作り出したのです。
 しかしながら、万が一、この大筒トーパが敵の手に渡り、その秘密が知られると、次には帝国そのものが同じ兵器で攻められるやも知れませぬ。
 バスティニュアンス海洋伯殿、ご希望通り軍船にも搭載できるよう改良し、新たに建造されたデ・ラーブ型戦列艦には32基もの大筒トーパを設置して戦闘に使えるようにしておりますが、くれぐれもこの大筒トーパを敵に奪われぬようにお願い申します。
 大筒トーパの製造精度、発射装薬の秘密、炸裂弾の秘密等々簡単には真似ができるようなものではございませぬが、時間を掛ければいずれは敵方においても作れるものでございます。
 それが1年先であるのか、30年先であるのかにより、我が帝国の優位が変わるのです。
 この兵器を搭載した最新鋭のデ・ラーブ型戦列艦が破れることなど絶対にありえないとは信じておりますが、船の場合海洋自体も敵となります。
 嵐に遭遇して沈んでも帝国にとっては大いなる損失にございます。
 如何に帝国と雖も4隻分128基の大筒を揃えるのは、予算的に大変な苦労がございましたので・・・。」

「フム、重々承知しておる。
 其方らの活躍のお陰で、新鋭艦一隻でもって、いかなる城塞都市であっても攻略可能と見込まれておる。
 この一年の間に南方海域に広がる島嶼の都市国家群を軒並み我が帝国の軍門にひざまずかせて見せようぞ。」

 そうして現在、儂は、100隻のダロカス型軍船に1万余の海兵隊将兵を乗せ、四隻の新鋭デ・ラーブ型戦列艦と共に、ベレスタの湾口入り江を封鎖しているところだ。
 デ・ラーブ型戦列艦の四層甲板の第二層左舷に八門、同じく第三層左舷にも八門で合計16門の砲列は、既にベレスタ入り江の崖の上にある防衛陣地に向けられている。

 如何ながら仰角を30度以上には取れないことから、攻撃位置で射程を考えねばならぬのが少々もどかしい。
 海戦であれば面倒なことは考えずに、目の前に見える敵艦に向けて砲を発射するだけなのだが、地上目標を狙う場合、その位置により仰角を替え、また射撃位置も変えねばならないのが本当に面倒だ。

 これが陸用の大筒トーパならば仰角を大きく取れるので、位置を変えずにある程度の射程距離調整は可能なのだが、船に搭載する場合はそこが難しい。
 実のところ、野天甲板に大筒トーパを設置する案も有ったが、秘密保持の観点から、内部甲板に隠されることになったのだ。

 そのため大筒トーパで狙えるのは、両舷方向の水平角度で最大10度まで、仰角で最大30度までとなっている。
 砲門は普段は閉められており、使用時にのみ取り外されて射撃するようになる。

 今や四隻の新鋭船は、予定の位置取りを終えて、私の射撃開始命令を待っているだけなのだ

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 次回は海戦なのでしょうか??
  By サクラ近衛将監
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