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第十二章 異世界探訪
12ー15 クィンテス その一
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クアルタスに足掛かりを残したまま、俺は別の異界を訪問した。
五番目の世界なので「クィンテス」と俺が勝手に名付けたが、実はこの世界にはちゃんと「パルヴェオス」という呼称がある。
魔法やモンスターは存在しないようだが、地球の19世紀末から20世紀初頭にかけての文明に相当する科学文明が育っている。
地球と同様に魔素が少ないので魔法が発達しなかったのかもしれない。
パルヴェオスは、この世界で古代からある宗教により伝えられている地上の名前だ。
流石に地動説は天動説に変わったが、いまだに宗教の教えの影響は大きいようだ。
因みに宗教は、ヴェルタ神を唯一神とする一神教がほぼ他を圧倒している状況だが、この一神教はご多分に漏れず多数の宗派に分かれており、時折宗教観の違いにより聖戦を引き起こしているから、あまり平和な世界とは言えないようだ。
特に、銃砲火薬などの大量殺戮兵器が発明されてから、戦死者が急増している世界でもある。
地球で言えば開発途上国とでも言うのか文明の遅れた地域では、自然を崇拝する多神教も存在するが地域によりバラバラであり、統一性は無いうえに、信教者の人口も少ない傾向にある。
従って、地球のように三大宗教のようなものはない。
ヴェルタ神教には、原理主義派、懐古派、浪漫派、改革派、進歩派、超文明派等々多くの派閥があるけれど中でも原理主義派、浪漫派、進歩派の勢力が大きいようだ。
この宗派の勢力図は、そのまま国家または連合国家群の勢力の縮図でもある。
つまりはこのクィンテスでは、政教分離どころか政治と宗教が強固に結びついている中世のような社会構造だ。
その意味では俺のような異界人は何となく住みにくい世界ではあるな。
人種はヒト族一択で亜人は存在しないが、「紅」、「白」、「黄」、「青」、「黒」の肌が混在し、混血も進んでいる様だ。
その意味では人種は多様化しているけれど、いわゆる未開の地のほとんどは紅色人が占めているようだ。
大陸は五つ。
極地では、北がウルビロスと呼ばれ、南にホルビロス大陸があるが、ウルビロスは大地がない氷の世界だ。
南のホルビロス大陸にも極冠があるが、その北側にはツンドラに近い寒帯地域が存在し、紅色人が散発的に居住している地域がある。
文明がもっとも発達しているのは、南セレヴァント大陸、次いでセデル大内洋を挟んで北方にある北セレヴァント大陸がある。
クィンテス世界の最近の考古学では、南セレヴァント大陸の南部が文明発祥の地とされており、そこから人類の文明圏が広がって行ったようだ。
言語は地域により多少の方言はあるが、概ねマラバ語で統一されている。
言語統一はヴェルタ神教の普及によるところが大きいようだ。
この南北のセレヴァント大陸は、ほぼ赤道を挟んで対になっており、ザルバ地峡を通じて陸地がつながっている。
両大陸とも衛星写真からの解析ではユーラシア大陸の三分の二程度の面積がある。
南北セレヴァント大陸の東側にブレンベル大洋があってその東にイラゴラス大陸とクレボナス大陸が存在する。
イラゴラス大陸が北半球にクレボナス大陸が南半球に存在するが、両大陸間には結構な距離がある。
イラゴラス大陸とクレボナス大陸は、略北アメリカ大陸ほどの面積を有している。
この両大陸の東側にはグーレンゲル大洋が存在し、その東にセレヴァント両大陸につながっているのだが、クーレンゲル大洋は広大でしかも途中に島嶼が無いので、二百年ほど前までは沿岸域を除いて海上交通が無かった海域である。
地軸は10度ほど傾いているので四季が存在するが、地球と異なって赤色巨星(地球の太陽の三倍ほどの直径を有するが、視直径は地球の太陽に比べるとわずかに小さい)を太陽としていることと、同恒星系のハビタブルゾーンの遠方域に軌道があるために、赤道周辺でも左程暑くならない不思議な特徴を持っている。
全体的には地球と比べると概ね寒冷な気候と言えるかもしれない。
惑星の直径は地球よりも大きくて16600キロほどあり、重力は地球よりも8%ほど大きいので、嫁s達には少し住みにくいかもしれないな。
子供達は、多少運動能力は落ちるかもしれないが、まぁ、大丈夫だろうと思われる。
このクィンテス世界に目を付けた一番の理由は、この世界に住む人たちが長寿であるためだ。
クィンテス人(便宜的にそう呼ぶ)の平均年齢は100歳を超える。
左程長寿に思えないかもしれないが、クィンテスの自転周期は26時間余り(26.3時間)。
太陽である恒星との平均距離が4億3700万キロほどあって、公転周期は1063日余りになる。
このためにクィンテス人の一年は、地球時間で換算すると1156日を超える。
単純計算で3.2倍ほどの長さになるので、平均寿命は地球時間に直すと300歳を超えることになる。
長寿の所為かもしれないが、彼らの外見は非常に若い状態が長く続く。
未開の僻地では多少事情も異なるが、7歳(クィンテス時間)で成人となり、その姿形が余り変わらずに70歳(クィンテス時間)前後まで維持できるようだ。
但し、繁殖率は左程多くはない。
人口増加率は年間で0.5%程度に過ぎないが、それでも百年もたてば人口は1.6倍程度には増える。
また、この世界は病気があまり無いようだ。
このために死亡するのは事故若しくは戦闘によるものが多い。
大規模な戦闘が起きると大量の死者が生じ、地域の共同体が維持できなくなる場合も往々にしてあるようだ。
長寿の秘密はいまだ判明していないのだが、彼らの体質や食事によるものではないかと推測している。
嫁s達のために、この世界で出来れば不老薬若しくは延命薬を見出したいと思っているところだ。
敢えて俺がクィンテス世界に出向かなくても、ゴーレムを配置して必要な試料採取をして、別途分析すればよいような気もするが、その辺はまぁ、俺の趣味趣向という奴だな。
俺の趣味趣向で、ホブランドでの生活が左程に影響されないからできることでもある。
◇◇◇◇
そんな訳で、今俺が居るのは、北半球に位置するイラゴラス大陸の国であるロバーナ連邦だ。
ロバーナ連邦はイラゴラス大陸の南半分を占める連邦国家であり、イラゴラスでは最も強大な軍事国家でもある。
建国は150年ほど前であり、南北セレヴァント大陸からの移住者により建国された。
28州からなる連邦制の国家であり、連邦法と州法により統治されている。
この地域では進歩派のヴェルタ神教が大勢を占めている様だ。
ロバーナ連邦の人口は1億5千万人ほどであり、クィンテス世界では7番目に人口の多い国家である。
クィンテス世界では約20億人ほどの人口が存在する。
人口が多いのは新興国家からは旧世界と呼ばれる南北セレヴァント大陸であって、特に南セレヴァント大陸に全世界の約4割が集中している。
北セレヴァント大陸に約3割、イラゴラス大陸とクレボナス大陸がそれぞれ14%程度、残り1%余りがホロビロス大陸に住んでいる。
ロバーナ連邦の首都は内陸部にあるんだが、俺が今いるのは西海岸に位置する貿易港のジャコダルだ。
ここはロバーナ連邦でも有数の商港であり、世界中の産物が集まる流通の拠点でもある。
俺の今の身分は、ロバーナ連邦内陸部の都市カストラット出身の医療・薬剤師バスティアーノ・ルバーシュだ。
ちゃんとカストラットの役場には戸籍が作られている。
年齢は23歳、若輩ではあるものの幼い年齢とはみなされない年齢ではある。
容姿の方は少し変えている。
この大陸では混血が多いので、俺のような比較的白い肌はいないわけではないが目立ちやすい。
そのために褐色に近い肌にしている。
混血が進むと全体的に褐色肌が多くなるようなんだ。
皮膚の内部にあるメラニン色素をいじってそれらしく見せかけているわけだ。
医療薬剤師という職業はこの世界でもなりてが少ない。
この世界の人間は、地球やホブランドと比べると病気になりにくいからな。
それでも事故等で怪我をした時に必要なのが外傷薬であり医療師なのだ。
一応、外科医術が発達しているので、医療師のところに行けば概ね直してもらえるんだが、そこで役立つのが医療薬品なわけだ。
医薬品の製造会社もあるんだが、正直なところあまり良い医薬品は出回っていないな。
工業技術は進んでいるんだが、ケミカル技術は兵器開発に向けられて、医薬品の開発は二の次になっているみたいだ。
従って先進の地球の医療技術と医薬品精製技術を有する俺が活躍する場もあるわけだ。
医療・薬剤師は、医療も施せるし、薬剤の提供もできる職業だ。
但し、医療や傷病薬の製造にかかりっきりになると俺の自由時間が無くなるので適度に手を抜くつもりではいる。
医薬品で、最初に作り出したのは抗生物質だな。
外傷から菌が侵入するのを防止するために、消毒薬を用いるのがこの世界の主流だったようだが、実は消毒薬というのは抗菌作用もあるんだけれど、肉体そのものを痛め、場合によっては傷を悪化させる場合もある。
従って、俺の場合はできるだけ湿潤療法を使うとともに、患者に負担をかけない手法を取ることにしている。
必要な場合には治癒魔法も使うつもりだ。
医療と薬剤の提供をするために、ジャコダル市内の一角にルバーシュ医療・薬剤所を創設した。
借り受けたのは、大通りに面した中古の三階建ての建物で、一階に薬局と、施療所を設け、二回は入院加療が必要なもののための病室、三階が俺のためのプライベート空間だ。
従業員は三名。
女性アンドロイドのドロテアとエルマは看護師、同じく男性アンドロイドのローデヴェイクは検査技師としている。
いずれも俺の家に住み込みという設定にしているんだ。
一応市役所にも開業の届け出をしているし、看板も出しているけれど、客は左程には来ないな。
そうそう怪我人が出るわけでもないので暇なわけだが、俺にとっては好都合だ。
たまには常備薬を求めて一人、二人の客が訪れる場合もあるが、そちらの相手は看護師の二人でも対応できる。
まぁ、それでも怪我人は出るわけで、近所の子供が刃物で遊んでいて怪我をして、親に連れられて来たのが最初の客だな。
命に関わるような怪我ではないんだが、結構深い切創で、出血もかなりあったので親も慌てたんだろう。
最寄りの俺の医療・薬剤所に運んできたわけだ。
傷口を清浄水で洗浄し、局部麻酔をかけて縫合、ついでに魔法を使ってめぼしい血管をつないでおいた。
縫合した後は湿潤性の粘着カットバンで覆って三日ほど待ってもらうだけ。
その間風呂は入れないな。
子供にはできるだけおとなしくするように言い聞かせて、治療はおしまいだ。
三日後にまた来るように母親には言っておいた。
抜糸はしなくても良い糸を使っているし、特段の薬も不要だ。
============================
5月27日、クィンテス世界の人口を「約10億」から「約20億」へ修正しました。
8月10日、「イラゴラス大陸」に「イラゴナス大陸」の誤記がありましたので修正しました。
By サクラ近衛将監
五番目の世界なので「クィンテス」と俺が勝手に名付けたが、実はこの世界にはちゃんと「パルヴェオス」という呼称がある。
魔法やモンスターは存在しないようだが、地球の19世紀末から20世紀初頭にかけての文明に相当する科学文明が育っている。
地球と同様に魔素が少ないので魔法が発達しなかったのかもしれない。
パルヴェオスは、この世界で古代からある宗教により伝えられている地上の名前だ。
流石に地動説は天動説に変わったが、いまだに宗教の教えの影響は大きいようだ。
因みに宗教は、ヴェルタ神を唯一神とする一神教がほぼ他を圧倒している状況だが、この一神教はご多分に漏れず多数の宗派に分かれており、時折宗教観の違いにより聖戦を引き起こしているから、あまり平和な世界とは言えないようだ。
特に、銃砲火薬などの大量殺戮兵器が発明されてから、戦死者が急増している世界でもある。
地球で言えば開発途上国とでも言うのか文明の遅れた地域では、自然を崇拝する多神教も存在するが地域によりバラバラであり、統一性は無いうえに、信教者の人口も少ない傾向にある。
従って、地球のように三大宗教のようなものはない。
ヴェルタ神教には、原理主義派、懐古派、浪漫派、改革派、進歩派、超文明派等々多くの派閥があるけれど中でも原理主義派、浪漫派、進歩派の勢力が大きいようだ。
この宗派の勢力図は、そのまま国家または連合国家群の勢力の縮図でもある。
つまりはこのクィンテスでは、政教分離どころか政治と宗教が強固に結びついている中世のような社会構造だ。
その意味では俺のような異界人は何となく住みにくい世界ではあるな。
人種はヒト族一択で亜人は存在しないが、「紅」、「白」、「黄」、「青」、「黒」の肌が混在し、混血も進んでいる様だ。
その意味では人種は多様化しているけれど、いわゆる未開の地のほとんどは紅色人が占めているようだ。
大陸は五つ。
極地では、北がウルビロスと呼ばれ、南にホルビロス大陸があるが、ウルビロスは大地がない氷の世界だ。
南のホルビロス大陸にも極冠があるが、その北側にはツンドラに近い寒帯地域が存在し、紅色人が散発的に居住している地域がある。
文明がもっとも発達しているのは、南セレヴァント大陸、次いでセデル大内洋を挟んで北方にある北セレヴァント大陸がある。
クィンテス世界の最近の考古学では、南セレヴァント大陸の南部が文明発祥の地とされており、そこから人類の文明圏が広がって行ったようだ。
言語は地域により多少の方言はあるが、概ねマラバ語で統一されている。
言語統一はヴェルタ神教の普及によるところが大きいようだ。
この南北のセレヴァント大陸は、ほぼ赤道を挟んで対になっており、ザルバ地峡を通じて陸地がつながっている。
両大陸とも衛星写真からの解析ではユーラシア大陸の三分の二程度の面積がある。
南北セレヴァント大陸の東側にブレンベル大洋があってその東にイラゴラス大陸とクレボナス大陸が存在する。
イラゴラス大陸が北半球にクレボナス大陸が南半球に存在するが、両大陸間には結構な距離がある。
イラゴラス大陸とクレボナス大陸は、略北アメリカ大陸ほどの面積を有している。
この両大陸の東側にはグーレンゲル大洋が存在し、その東にセレヴァント両大陸につながっているのだが、クーレンゲル大洋は広大でしかも途中に島嶼が無いので、二百年ほど前までは沿岸域を除いて海上交通が無かった海域である。
地軸は10度ほど傾いているので四季が存在するが、地球と異なって赤色巨星(地球の太陽の三倍ほどの直径を有するが、視直径は地球の太陽に比べるとわずかに小さい)を太陽としていることと、同恒星系のハビタブルゾーンの遠方域に軌道があるために、赤道周辺でも左程暑くならない不思議な特徴を持っている。
全体的には地球と比べると概ね寒冷な気候と言えるかもしれない。
惑星の直径は地球よりも大きくて16600キロほどあり、重力は地球よりも8%ほど大きいので、嫁s達には少し住みにくいかもしれないな。
子供達は、多少運動能力は落ちるかもしれないが、まぁ、大丈夫だろうと思われる。
このクィンテス世界に目を付けた一番の理由は、この世界に住む人たちが長寿であるためだ。
クィンテス人(便宜的にそう呼ぶ)の平均年齢は100歳を超える。
左程長寿に思えないかもしれないが、クィンテスの自転周期は26時間余り(26.3時間)。
太陽である恒星との平均距離が4億3700万キロほどあって、公転周期は1063日余りになる。
このためにクィンテス人の一年は、地球時間で換算すると1156日を超える。
単純計算で3.2倍ほどの長さになるので、平均寿命は地球時間に直すと300歳を超えることになる。
長寿の所為かもしれないが、彼らの外見は非常に若い状態が長く続く。
未開の僻地では多少事情も異なるが、7歳(クィンテス時間)で成人となり、その姿形が余り変わらずに70歳(クィンテス時間)前後まで維持できるようだ。
但し、繁殖率は左程多くはない。
人口増加率は年間で0.5%程度に過ぎないが、それでも百年もたてば人口は1.6倍程度には増える。
また、この世界は病気があまり無いようだ。
このために死亡するのは事故若しくは戦闘によるものが多い。
大規模な戦闘が起きると大量の死者が生じ、地域の共同体が維持できなくなる場合も往々にしてあるようだ。
長寿の秘密はいまだ判明していないのだが、彼らの体質や食事によるものではないかと推測している。
嫁s達のために、この世界で出来れば不老薬若しくは延命薬を見出したいと思っているところだ。
敢えて俺がクィンテス世界に出向かなくても、ゴーレムを配置して必要な試料採取をして、別途分析すればよいような気もするが、その辺はまぁ、俺の趣味趣向という奴だな。
俺の趣味趣向で、ホブランドでの生活が左程に影響されないからできることでもある。
◇◇◇◇
そんな訳で、今俺が居るのは、北半球に位置するイラゴラス大陸の国であるロバーナ連邦だ。
ロバーナ連邦はイラゴラス大陸の南半分を占める連邦国家であり、イラゴラスでは最も強大な軍事国家でもある。
建国は150年ほど前であり、南北セレヴァント大陸からの移住者により建国された。
28州からなる連邦制の国家であり、連邦法と州法により統治されている。
この地域では進歩派のヴェルタ神教が大勢を占めている様だ。
ロバーナ連邦の人口は1億5千万人ほどであり、クィンテス世界では7番目に人口の多い国家である。
クィンテス世界では約20億人ほどの人口が存在する。
人口が多いのは新興国家からは旧世界と呼ばれる南北セレヴァント大陸であって、特に南セレヴァント大陸に全世界の約4割が集中している。
北セレヴァント大陸に約3割、イラゴラス大陸とクレボナス大陸がそれぞれ14%程度、残り1%余りがホロビロス大陸に住んでいる。
ロバーナ連邦の首都は内陸部にあるんだが、俺が今いるのは西海岸に位置する貿易港のジャコダルだ。
ここはロバーナ連邦でも有数の商港であり、世界中の産物が集まる流通の拠点でもある。
俺の今の身分は、ロバーナ連邦内陸部の都市カストラット出身の医療・薬剤師バスティアーノ・ルバーシュだ。
ちゃんとカストラットの役場には戸籍が作られている。
年齢は23歳、若輩ではあるものの幼い年齢とはみなされない年齢ではある。
容姿の方は少し変えている。
この大陸では混血が多いので、俺のような比較的白い肌はいないわけではないが目立ちやすい。
そのために褐色に近い肌にしている。
混血が進むと全体的に褐色肌が多くなるようなんだ。
皮膚の内部にあるメラニン色素をいじってそれらしく見せかけているわけだ。
医療薬剤師という職業はこの世界でもなりてが少ない。
この世界の人間は、地球やホブランドと比べると病気になりにくいからな。
それでも事故等で怪我をした時に必要なのが外傷薬であり医療師なのだ。
一応、外科医術が発達しているので、医療師のところに行けば概ね直してもらえるんだが、そこで役立つのが医療薬品なわけだ。
医薬品の製造会社もあるんだが、正直なところあまり良い医薬品は出回っていないな。
工業技術は進んでいるんだが、ケミカル技術は兵器開発に向けられて、医薬品の開発は二の次になっているみたいだ。
従って先進の地球の医療技術と医薬品精製技術を有する俺が活躍する場もあるわけだ。
医療・薬剤師は、医療も施せるし、薬剤の提供もできる職業だ。
但し、医療や傷病薬の製造にかかりっきりになると俺の自由時間が無くなるので適度に手を抜くつもりではいる。
医薬品で、最初に作り出したのは抗生物質だな。
外傷から菌が侵入するのを防止するために、消毒薬を用いるのがこの世界の主流だったようだが、実は消毒薬というのは抗菌作用もあるんだけれど、肉体そのものを痛め、場合によっては傷を悪化させる場合もある。
従って、俺の場合はできるだけ湿潤療法を使うとともに、患者に負担をかけない手法を取ることにしている。
必要な場合には治癒魔法も使うつもりだ。
医療と薬剤の提供をするために、ジャコダル市内の一角にルバーシュ医療・薬剤所を創設した。
借り受けたのは、大通りに面した中古の三階建ての建物で、一階に薬局と、施療所を設け、二回は入院加療が必要なもののための病室、三階が俺のためのプライベート空間だ。
従業員は三名。
女性アンドロイドのドロテアとエルマは看護師、同じく男性アンドロイドのローデヴェイクは検査技師としている。
いずれも俺の家に住み込みという設定にしているんだ。
一応市役所にも開業の届け出をしているし、看板も出しているけれど、客は左程には来ないな。
そうそう怪我人が出るわけでもないので暇なわけだが、俺にとっては好都合だ。
たまには常備薬を求めて一人、二人の客が訪れる場合もあるが、そちらの相手は看護師の二人でも対応できる。
まぁ、それでも怪我人は出るわけで、近所の子供が刃物で遊んでいて怪我をして、親に連れられて来たのが最初の客だな。
命に関わるような怪我ではないんだが、結構深い切創で、出血もかなりあったので親も慌てたんだろう。
最寄りの俺の医療・薬剤所に運んできたわけだ。
傷口を清浄水で洗浄し、局部麻酔をかけて縫合、ついでに魔法を使ってめぼしい血管をつないでおいた。
縫合した後は湿潤性の粘着カットバンで覆って三日ほど待ってもらうだけ。
その間風呂は入れないな。
子供にはできるだけおとなしくするように言い聞かせて、治療はおしまいだ。
三日後にまた来るように母親には言っておいた。
抜糸はしなくても良い糸を使っているし、特段の薬も不要だ。
============================
5月27日、クィンテス世界の人口を「約10億」から「約20億」へ修正しました。
8月10日、「イラゴラス大陸」に「イラゴナス大陸」の誤記がありましたので修正しました。
By サクラ近衛将監
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