親王様は元大魔法師~明治の宮様に転生した男の物語~戦は避けられるのか?

サクラ近衛将監

文字の大きさ
44 / 112
第三章 新たなる展開

3-17 大陸への干渉と軍制改革

しおりを挟む
 米国留学から帰って、私が真っ先に手を付けたのは中国政策と軍制改革でした。
 放置すると多数の命が脅かされることになるので早めにけりをつける必要があったからです。

 後々の展開を色々と考慮した上で、第一に満州帝国の成立を早めました。
 満州事変は、昭和16年9月の柳条湖事件に端を発すると言われますが、これが日本軍の中国東北部への進出を始めたきっかけでもあります。

 そうして後にチョウ作霖サクリン爆殺事件を起こして、混迷を深めることになるのですが、その前に先手を打ってしまうことにしました。
 満州帝国の成立には群雄割拠している中国東北部の軍閥の統合、コミンテルンの影響を受けている中国共産党もどき(1921年7月23日、第1回中国共産党全国代表大会(党大会)が開催されるまで明確な組織ではない。)の解体、ソ連の干渉排除などすべきことは多いのですが、手持ちの忍び(私のゴーレム部隊)を多用して、徐々に切り崩しを図りました。

 中国東北部に一大勢力を張っていた軍閥である張作霖を説き伏せ、毛沢東、周恩来など後に中国共産党の核と成り得る若手人物を徐々に取り込むこととし、1917年7月に一旦は宣統帝に復帰してその12日後には退位した愛新覚羅溥儀を再度擁立して、1919年6月に満州国政府を打ち立てさせたのです。
 今回は、帝国の陸軍軍人は殆ど関わってはいません。

 石原何某なにがしを含め、陸軍の準備がまだ進んでいなかったので、介入ができなかったのです。
 と言うよりも、私が実質的に動けなくさせたのですがね。
 一方で北伐を企てる辛亥革命の幹部たちには、南部の平定のみで終わらせるようにさせました。

 中国の歴史と言うのは歴代、南部を平定して北伐をするという繰り返しが多いようなので、中国をまとめたいと願う人物で南部出身者は誰でも北伐を夢見るようです。
 それを諦めさせるというのは結構大変なのですが、そこはそれ、闇魔法の精神操作を発動し、そうした野望を止めさせたのです。

 更には中国国内における外国人排斥運動を盛り上げつつも、同じアジア人である日本人にはその矛先が向かないよう扇動し、調整を行いました。
 このすべてはヒュプノによる精神操作なのですが、主要人物を統制することでその波及効果は中国全土に広まりました。

 このために中国国内では共産党員が激減し、コミンテルンはほぼ壊滅しました。
 当初は満州帝国の成立をめぐって中国内部での内乱も結構ありましたが、1920年にはほぼ収まり、1924年には南部の広州を中心とした中華民国と北部満州を中心とした満州帝国とに中国が完全に二分された状態になったのです。

 満州帝国の縄張りは万里の長城以北とされ、中華民国と満州帝国の間でお互いの建国に関する承認と国境に関する議定書が1925年に交わされました。

 因みに日本軍は中華民国に対しては、租借地以外に軍隊は派遣していません。
 また、史実と異なり、満州帝国には満鉄警護のための帝国軍隊は存在しましたが、関東軍も総督府も置かれていない状態です。

 その代わりに1925年に満州帝国とは相互安全保障条約を締結し、総勢で2万五千の兵力を満洲国内に駐屯させるとともに、外敵からの侵害に対しては相互にその排除のために全面協力することになりました。
 欧米列強からは帝国の中国への介入度に若干の非難もありましたが、帝国軍が武力を行使したわけでもなく、中国国内の二大勢力が最終的に講和を結んでしまったことから、大いに不満があっても正式な形での抗弁は難しかったのです。

 ある意味で欧米列強を出し抜いた形となりますね。
 ついで帝国陸海軍の軍制改革ですが、強硬な言動で周囲を乱す者は、友人たちも知らぬ間に左遷されて閑職に就くことになり、往々にして自暴自棄となって自滅していった者が増えました。

 その代表格は、盧溝橋事件にも若干関与した牟田口何某なにがしであり、1918年以降彼の昇進の道は閉ざされました。
 何れにしろ1918年から1920年にかけての刷新では、かなり多くの陸海軍軍人が予備役に回されました。

 さしたる理由も無く、また、左程の年齢になっていないのにもかかわらず予備役とされて当人たちは周囲に不満をぶちまけていましたが、そんな彼らのうちでも強硬派が決まって反乱を起こそうとすると不思議と事前に鎮圧され、そうした不満分子の半数は監獄行き若しくは処刑台に送られていました。

 また将来軍人となって災いをもたらしそうな人物も、本人が知らないうちにその将来を奪われていたのです。
 その代表的な人物には、辻何某なにがしという少年も居ました。

 あ、右翼と呼ばれる組織も何故か突然死で早死にする者が多く、某新聞では右翼ポックリ病と名付けたほどです。
 日本刀を携えて憂国の志士を気取りながら要人を襲撃する右翼テロがそれまでは結構多かったのですが、急激に鳴りを潜めたのもこの時期です。

 このようにして1920年代半ばには陸海軍軍人の刷新が終わり、元帥府が機能し始めていました。
 初代陸軍元帥は関院宮規仁親王が、初代海軍元帥は東富士野宮頼仁親王が、それぞれ選出されました。

 元帥府が最初に作った律令は、軍人勅諭を大幅に改定した軍人勅令であり、その代表的条文に

「第十二条 陸軍軍人及ビ海軍軍人トナリシ者ハ、ソノ現役中総理大臣並ビニ各省庁ノ長ト為ルヲ能ワズ。
 二 陸軍軍人及ビ海軍軍人トナリシ者ハ、ソノ退役後十五年ヲ経ズシテ入閣シ、或イハ国会議員ト為ルヲ能ワズ」

というものがあり、現役軍人は首相を含む各大臣になれないこと、退役軍人は退役してから15年経たねば国会議員にもなれないことが明記されました。

 但し、県知事、県議会、市議会などについては制限が無いので退役後はそれらの地位に就くことは許されていました。
 無論、皇族等例外を除き職業軍人(尉官以上の任官者)は兼業禁止ですので、現役で議員などにはなれないのは当然のことですね。

「省庁の長」とは大臣をさしますので、例えば陸軍次官や海軍次官、参謀総長、教育総監などはその中には含まれません。
 また、元帥府の元帥も軍の役職に過ぎないことからも同様に適用除外となりました。

 一方、華族である軍人であって皇族以外の者は、この時期以降には貴族院議員から外されることになりました。
 但し、勅令の施行時において既に退役軍人であって、なおかつ、貴族院議員となっていた者については除外とされています。

 この大規模な変革の何れにも富士野宮宏禎王の名は出ては来ません。
 完全にフィクサーとしてすべてを制御しているからなのです。

 満州帝国は、史実よりも十数年も早く成立し、尚且つ中華民国からも承認されたので欧米列強もその存在を渋々ながらも認めざるを得ず、同時に満州地域から帝国以外の外国勢力は殆ど駆逐されました。
 仮に外国商社が入ったにしても欧米に対する反西洋思想による不買運動の所為で商業活動がほとんどできないことが主な理由なのです。

 欧米列強の商社などが満州に介入しようとした場合は、必ず帝国の商社を間に立てなければならず、それとて、不買運動の所為で製品の販売などは、政府調達物品を除いて非常に難しい状況にあったのです。
 従って、どうしても貿易収支では輸入超過になることから、列強は余程のメリットがない限りは満州地域の市場から手を引いたのです。

 ソ連は、東ロシア共和国の成立で、満蒙地域へ直接介入ができなくなっていました。
 一方で、反共産主義を掲げる東ロシア共和国には、帝国政府も積極的な支援を行い、旧式となった軍備を安価に提供するようになりました。

 実際のところ陸軍及び海軍は、私が実質支配する軍需工廠から供給される軍備で十分賄われており、それまでの陸軍工廠や海軍工廠での軍備を必要としなくなっていたのです。
 一方でそれら陸海軍工廠の生産に傾注していた財閥系の重工は、陸海軍への納品ができなくなってそのままでは大きな損失を抱えることになります。

 その救済のために作られたのが、元帥府によって新たに作られた「武器供与法」なのです。
 外国政府若しくは外国の武装組織に対する武器供与は、政府及び元帥府が承認を与えた場合に限るとし、輸出を行う場合の武器性能についても政令で細かく規定しているものなのです。

 この立法により、*菱、*島などの財閥系重工は、何とか倒産の危機から免れることができたのです。
 飛鳥造船や飛鳥航空機などで生み出す製品には明らかに劣る品質であっても、政府の承認を得られれば海外には輸出できるのです。

 輸出先は、東ロシア共和国、満州帝国、中華民国、タイ王国などですね。
 残念ながらこの時期、東南アジア地域の独立国はタイ王国ぐらいしかなかったのす。

 また、この時期、八八艦隊構想の走りで長門型戦艦の建造が始まっていたのですが、これも完全に列強諸国の目を欺くためのダミーなのです。
 見栄えは良いのですが、非常に装甲の薄い船(無駄な費用を掛けないため)であり、排水量を見かけ上増すために大量のバラストタンクを備えているハリボテ戦艦なのです。

 ある意味で張子の虎ではあるのですが、列強の目をそらすには十分です。
 主砲は史実と異なり、軽量合金を使った二連装の36センチ砲四基であり、旧式の金剛型戦艦と同じ装備となっています。

 このため、この後に起こるはずの軍縮には引っかからなくなったのです。
 そもそも軍縮の問題は各国の建艦競争が発端であり、日本の新造艦である長門型の41センチ砲が大きな問題となったのは事実なのです。

 帝国は、長門型戦艦よりもはるかに強力な新型海防艦を実際に擁しているのですから、軍縮については左程に関心がないのです。
 排水量だけで言えば、4万トン近い長門の代わりに、1万トンに満たない海防艦(長月型駆逐艦:イージス艦)を4隻から5隻も擁することができることになり、大型戦闘艦に関する軍縮はむしろ帝国にとって喜ばしいことでさえあるのです。
各国の動向次第では、そうした無駄な軍縮条約など無視する構えではおりますけれどね。

 アジア、就中なかんづく中国の植民地支配を狙う列強諸国が、新興の帝国を目の上のたん瘤と見ているのは間違いないことですから、その台頭を抑えようとするのは理解できないわけではありませんが、理不尽な扱いは退けなければならないこともあるのです。
 大正初期における帝国政府と言うのは、陸海軍に対する文民統制も結構できていましたので、外交的には列強諸国の顔色をうかがいながらそろりそろりと慎重にやっていたのが史実なのです。

 そのうちに自信を持ち過ぎてのさばり始めた軍人を抑えきれなくなりましたけれどね。
 軍人を私の陰の力で抑制し、政府を望ましい方向に導けば戦争は或いは避けられるかもしれないと、はかない望みを持っているのですが、果たしてどうなるのでしょうねェ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...