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「イリアーナ!!知らせが届いたんだね!一次試験合格おめでとう!」


お父様とお母様から順にハグを受ける

……?
2人の様子に違和感を覚えて疑問でいっぱいになるイリアーナの頭を、お父様は微笑みながら優しく撫でた


「ごめんね、私達はサンクスト国から事前に知らされていたんだ、色々必要な準備があるからね」


何と……
秘密にされてただけで2人とも知っていたの?
そんな素振り全然なかったのに…
さすがお貴族様だわ、肝心な時に感情が隠せるなんて


「一次試験合格おめでとうイリアーナ、今日の夜は激励会ね」


「お母様…」


「では今夜はご馳走ですか!?それは楽しみですね!!」

「わっ!」

「あら?貴方は、アオバね?」


「お母様!?青葉の事ご存知なのですか?」



「ご主人様にお仕えするために、お父様、お母様には事前にご挨拶に伺いましたので!!」


「いくら魔法の盛んなサンクスト国に仕える者でも
この屋敷にかかっている防護魔法を簡単に無断で破れはしないよ」



「それにいくら私でも1度も道を作っていない所には魔法でポンと現れることもできませんよー」





お父様もお母様も、結果を知っていただけじゃなくて
青葉と面識があったのね…




そしてお屋敷に防護魔法がかかっている事を何気に初めて知ったわ…





夜イリアーナの激励会を兼ねた夕食は陽気な性格の青葉が
天井を星の煌めく夜空に変えたり、雪を降らせたり、花を降らせて踊り始めたりやりたい放題



今まで見た事のない美しい光景に
家族だけではなく屋敷中の皆んな驚いたり、笑顔になったり
とても楽しい時間を過ごした






次の日、夜には出ると言われているので
サンクスト国に向かう為の身の回りの用意をしていた


「こちらから何か持ってこられる必要は無いですよー?」



ふわふわ部屋内を飛びながら青葉は用意をしていた侍女のマーガレットに声をかけた


「そんなわけには参りません!全てイリアーナ様には必要なものです!」



「必要なものは揃っているし、イリアーナ様には僕も居るのに……」



そのとは言葉を聞いた瞬間
ギッ!!っとマーガレットが青葉を睨みつけた


「青葉様の魔法とても素晴らしいものでした!
きっと魔法でイリアーナ様に必要な色々な事を解決してくださるでしょう
でもそれとイリアーナ様に心からお仕えするのとは別の問題でございます!
青葉様が居られようとも、私はイリアーナ様の侍女としてお側を離れるつもりはございません!
私もイリアーナ様と共にサンクスト国へ参ります!
イリアーナ様!」



「はぃぃぃ!」
余りのマーガレットの気迫に押されて声が裏返ってしまった


「宜しいですか?」


「えっと……」


「私の主はどなたですか?」


「………私です」



マーガレットはニッコリ微笑んでその顔には
主人から離れる気はございませんと書いてある
気がする…
表情で青葉を見た



何やらバチバチとしたものを感じるけれど
青葉はやれやれと言わんばかりに溜息まじりに首を横に振り




「移動が大変になりそうですが、仕方ないですねぇ
とりあえず同行者について今から報告して来ます
ついでにその荷物も先に持っていきましょう
こちらに戻り次第、サンクスト国に向かいますよ!」



そう言ってくるっと一回転したと思ったら青葉と纏めていた荷物は消えた




「魔法って凄い…」


「……さようでございますね…」



「…マーガレット」


「はい」


「良かったの?国を離れて一緒に行くだなんて」



「勿論です!私はいつもイリアーナ様の側でお支えするのが務めでございます
試験を受けられ入学が決まりましたらその時も勿論ご一緒するつもりです」




そう得意そうに言うマーガレットを見つめ
イリアーナは目を細めて微笑んだ



「マーガレットが側に居てくれたら私も心強いわ、お願い致します」




お仕事へ向かうお父様とは朝の時間にご挨拶をして
お母様と、学園が休暇期間の為に自宅に居る
お兄様とロイの4人で青葉が来るまでの時間少しの別れを惜しむかのように
色々な話をして過ごした




夕方頃になり、突然天井から花弁が舞い落ち


「お待たせしましたー!!」



ぽんっと青葉が現れた




「それではサンクスト国に参りますよー!ご家族の方とご挨拶はお済みですか?」



そう言われて


ぱっと
家族の方を振り返りお母様に抱きついた


「イリアーナ頑張ってらっしゃい」


「お母様…」


「貴方が今まで頑張ってきているのを見てきたもの、きっと上手くいくわ」


お母様の温かい手が、優しく頬を包んでキスを落とした



お兄様、ロイにも順にハグを交わして
青葉をみた



「では参りましょう!それでは失礼いたします!」




クルッと青葉が一回転すると同時に
イリアーナとマーガレットもその場から姿を消した





「行ってしまいましたね…」


「えぇ…」






一瞬で当たりが暗くなったと思ったら、何も感じるまもなく気づけば
イリアーナとマーガレットは個室のベッドの上にボフン!と落とされ
目を丸くした



「お二人とも着きましたよー!」



「えっ!?もう!?」




辺りを見回すと、いつもの自宅の部屋とは違う雰囲気の家具が並び
個室にしては狭過ぎない空間の部屋だった




「こちらが今日から使っていただくお部屋になります!
あっマーガレット様はこちらの扉を開けると別の部屋がございますので、こちらをご利用下さい!」



「私のお部屋まで…ありがとうございます」



イリアーナは、自室から突然変わった雰囲気に押され辺りを、キョロキョロ見渡した



青葉が先に運んだ荷物も全て片付けられ
暖炉には火が灯り部屋の中はとても温かい



窓から景色を覗くと遠くに海が見え
辺りは建物が並び、商店、飲食店なども見えた


???

こんなに沢山の建物が並んでいるのに人の気配が余りしない…


とても綺麗な街並みなのに
道に人がいないことに気がつき


「青葉、外に人の気配がないようだけど…」



「はい!まだ入学前ですので!」



「入学前ですのでって…それと街に人が居ないのと関係あるの?」


と不思議に思って聞くと


何を言ってんだ?と言いたそうな顔で


「?はい、そうですよ?
ここから見えている風景一面、学校内施設ですので」



「ここ全部学校の中なの!?」



規模の大きな過ぎる学校施設にイリアーナもマーガレットも
驚きを隠せなかった
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