幼馴染と義弟と元カレ〜誰も私を放してくれない〜

けんゆう

文字の大きさ
6 / 9

第六話 リオの告白

しおりを挟む
 夕食を終えた後、私は自室で宿題をしていた。静かな夜の空気の中、コツコツと扉をノックする音が響く。

「お姉ちゃん、ちょっといい?」

 リオの声だった。

 「どうぞ」と返すと、リオが部屋に入ってきた。
 彼はどこか落ち着きのない様子で、ドアの前に立ったまま私を見つめている。

「どうしたの? 何かあった?」

 リオは少し口ごもったあと、ベッドの端に腰掛けた。

「うん、ちょっと話したいことがあって……」

 しばらくの沈黙。私はそんな彼の様子に違和感を覚えた。

「リオ、何か悩んでるの?」

「悩んでるっていうか……ううん、悩んでるのはお姉ちゃんのほうかもしれないね。」

 突然の言葉に、私は一瞬戸惑った。

「私が? 何のこと?」

「お姉ちゃん、ずっと迷ってるでしょ? ミチルさんとか、貴翔さんとか……誰のことを大切に思ってるのか。」

 リオの言葉が、胸を鋭く突いた。
 確かに私は、ミチルや貴翔との関係の中で揺れていた。
 誰が一番大切なのか、自分でも分からないままだった。

「まあ……正直、そうかもしれない。でも、それがどうしたの?」

 私が苦笑しながら答えると、リオはまっすぐな目で私を見つめた。

「だから、僕も言わなきゃいけないと思ったの。お姉ちゃんに、自分の気持ちをちゃんと伝えなきゃって。」

 ◆◇◆◇
 
 リオの言葉に驚き、私は彼の表情をじっと見つめた。
 普段は穏やかで優しい笑顔を浮かべている彼が、今は真剣な顔をしている。

「お姉ちゃん……僕、ずっと前からお姉ちゃんのことが好きだった。」

 時間が止まったように感じた。

 リオの言葉が、私の心に深く響く。
 まるで世界の音がすべて消え去ったみたいに、何も聞こえなくなる。

「最初は、家族だからこんな気持ちを持っちゃいけないって思ってた。でも、お姉ちゃんが他の男の人と話してるのを見るたびに、胸が苦しくなって……」

 リオの声が震えている。

「僕は、お姉ちゃんが笑ってるのを見るのが一番幸せ。でも、同時に誰かに取られるのが怖いの。ずっと僕だけを見ててほしいって思っちゃう。」

 私は何も言えなかった。
 彼がこんな強い思いを抱いていたなんて、想像もしていなかったから。

 ◆◇◆◇
 
「リオ……それ、本気で言ってるの?」

 ようやく声を絞り出すと、リオは少しだけ目を伏せ、静かに頷いた。

「うん、本気だよ。」

「でも……私たち、家族だよ?」

 私は思わず言ってしまった。
 リオのことを大切に思っている。でも、それが“恋愛”なのかどうか、分からない。

「お姉ちゃんはどう思ってるの?」

 リオの問いに、私は言葉に詰まる。
 彼の気持ちを否定することもできないし、すぐに応えることもできない。

「正直、今は何て言えばいいか分からない。でも……」

「でも?」

「リオが私を大切に思ってくれてるのはすごく伝わった。それがどれだけ嬉しいかも分かる。でも、だからこそ簡単に答えを出せないんだ。」

 リオは私の言葉を聞いて、少しだけ微笑んだ。

「そっか、お姉ちゃんらしいね。すぐに答えを求めてるわけじゃない。ただ、僕の気持ちを知ってほしかっただけ。」

 ◆◇◆◇
 
 二人の間に、少しの沈黙が流れた。
 リオは自分の感情を整理するように深呼吸し、静かに続けた。

「これからも、僕はお姉ちゃんのそばにいたい。その気持ちは変わらないよ。でも、もしお姉ちゃんが僕を選ばなくても……」

「選ばなくても?」

「それでも、お姉ちゃんの幸せを一番に願うから。」

 私は胸が締め付けられるような思いを感じた。
 彼の気持ちを受け止めながらも、自分がどうするべきなのか分からない。

 ただ、今は――

「ありがとう、リオ。」

 それだけしか言えなかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜

紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。 しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。 私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。 近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。 泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。 私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た

しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。 学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。 彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。 そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。

さようなら、初恋

芙月みひろ
恋愛
彼が選んだのは姉だった *表紙写真はガーリードロップ様からお借りしています

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

お義父さん、好き。

うみ
恋愛
お義父さんの子を孕みたい……。義理の父を好きになって、愛してしまった。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

処理中です...