幼馴染と義弟と元カレ〜誰も私を放してくれない〜

けんゆう

文字の大きさ
9 / 9

第九話 未来への絆

しおりを挟む
 夏の終わりのある日、私はリオ、ミチル、貴翔の三人と一緒に遊園地へ向かっていた。
 数ヶ月前までは考えられなかったことだ。
 彼らと過ごす時間を楽しいと感じるようになるなんて。

「お姉ちゃん、早く行こうよ!」

 リオが元気よく先を歩き、私を振り返る。
 その無邪気な笑顔に、私は少しだけ微笑んだ。

「分かってるよ。そんなに急がなくても遊園地は逃げないから。」

「ねえ、西原さん、遊園地に来たの初めて?」

 貴翔が横に並びながら尋ねる。

「いや、中学の時に一度だけ。でも、こんな大勢で来たのは初めてだな。」

「そっか。じゃあ、今日は思いっきり楽しもうね。」

 貴翔は楽しそうに笑った。その後ろを歩いていたミチルが、少し拗ねたように言う。

「大勢っていうけど、どうせ六花にとっては俺が特別なんだろ?」

「おいおい、ミチル。またそんなことを……」

 ◆◇◆◇
 
 遊園地に到着し、最初に向かったのはジェットコースターだった。

「怖くないよね、お姉ちゃん?」

 リオが挑発的に笑う。

「大丈夫だ。これくらい余裕……」

 と言いかけたが、内心ではすでにドキドキしていた。

 乗り込んだ直後、ミチルが不安そうに私の袖を掴む。

「六花、これって結構高くね? やっぱ降りようかな……」

「今さら無理だよ、ミチル。安全バーもう下がってるし。」

 私が苦笑いすると、貴翔が後ろからからかうように言った。

「大丈夫だよ、安原くん。六花が守ってくれるんでしょ?」

「な、何だよ、それ!」

 ミチルが顔を赤くして反論する間もなく、ジェットコースターは急上昇し、絶叫の中で私たちは空を舞った。

 ◆◇◆◇
 
 ジェットコースターを降りた後、四人はお化け屋敷に挑戦することにした。
 薄暗い館に足を踏み入れた途端、リオが私の腕をぎゅっと掴む。

「お姉ちゃん、なんか変な音がする……怖い……」

「だから入る前に言ったでしょ? 怖がりならやめとけって。」

「だって……お姉ちゃんと一緒なら平気だと思ったんだもん!」

 その後ろで、貴翔が笑いをこらえながら言った。

「六花、モテモテだね。でも、ここで頼られるのはお姉ちゃんだから仕方ないか。」

「もう勘弁してよ……」

 そんな会話をしていると、突然脇からお化けが飛び出してきた。

「ぎゃああっ!」

 思わず叫んだ私を見て、貴翔とミチルが大笑いする。

「六花、意外と怖がりなんじゃない?」

 貴翔がからかうと、私はむっとした顔で言い返した。

「違う! ちょっと不意打ちを食らっただけ!」

「六花、可愛いところあるじゃん。」

 ミチルも笑顔でそう言い、私の肩を軽く叩いた。

 ◆◇◆◇
 
 遊園地をひと通り楽しみ、最後に観覧車に乗ることにした。
 四人で一緒に乗るには少し狭いスペースだったが、その分、自然と笑顔が溢れた。

「今日は本当に楽しかったな。」

 私がふと呟くと、三人が私の言葉に頷いた。

「僕も楽しかったよ、お姉ちゃん!」

 リオが嬉しそうに言う。

「俺も。六花、こういうのもっと早く誘ってくれても良かったのに。」

 ミチルが冗談交じりに言う。

「まあ、これからもあるじゃない。今日だけが特別じゃないんだし。」

 貴翔が微笑みながら答えた。

 観覧車が頂上に差し掛かり、窓の外には広がる街の夜景が見えた。
 その景色を眺めながら、私はしみじみと思った。

「私、こんなに楽しい時間を過ごせるなんて、思ってもみなかったよ。みんなのおかげだな。」

 その言葉に、三人は少しだけ驚いた表情を見せた後、優しく微笑んだ。

 ◆◇◆◇
 
 観覧車を降りた後、帰り道を歩きながら、貴翔がふと私に話しかけた。

「ねえ、六花。昔よりずっと変わったよね。最初会った頃は、なんか暗くて内向的だったけど。」

「そうかもしれないな。でも、みんなのおかげだよ。」

「ふーん、それにしては成長したなって思うけど?」

 貴翔がからかうように笑う。

「お姉ちゃん、私たちがいなかったら、まだ一人で悩んでたかもね!」

 リオが嬉しそうに付け加える。

「ミチルも何か言ってよ。」

 私がミチルに振ると、彼は少し照れくさそうに笑った。

「うん……六花が成長したのは分かる。でも、それって俺のおかげじゃね?」

「いや、みんなのおかげだろ。」

 四人は顔を見合わせて笑い合った。
 いつの間にか、私たちの間には確かな絆が生まれていた。

 ◆◇◆◇
 
 家に帰り、私はベッドに横になりながら今日の出来事を思い返していた。
 ミチル、貴翔、リオとの時間を通して、自分自身が少しずつ変わっていることを実感する。

「私も変われるんだな……」

 そう呟きながら、私は目を閉じた。
 胸には、これからの新しい日々への期待が静かに広がっていた。

 ── これは、私が自分自身を受け入れ、未来へと歩み出す物語の始まり。
 そして、四人の絆が、これからも続いていくことを確信していた。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

ゆんゆん
2025.02.09 ゆんゆん

結末気になる

解除

あなたにおすすめの小説

偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜

紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。 しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。 私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。 近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。 泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。 私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あんなにわかりやすく魅了にかかってる人初めて見た

しがついつか
恋愛
ミクシー・ラヴィ―が学園に入学してからたった一か月で、彼女の周囲には常に男子生徒が侍るようになっていた。 学年問わず、多くの男子生徒が彼女の虜となっていた。 彼女の周りを男子生徒が侍ることも、女子生徒達が冷ややかな目で遠巻きに見ていることも、最近では日常の風景となっていた。 そんな中、ナンシーの恋人であるレオナルドが、2か月の短期留学を終えて帰ってきた。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

お義父さん、好き。

うみ
恋愛
お義父さんの子を孕みたい……。義理の父を好きになって、愛してしまった。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。