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5.校外学習の夜
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1日目のイベントが全て終了し、風呂も入って後は寝るだけとなったところで、ようやく回収されていたスマホが戻ってきた。
しかし、バンガローの中はギリギリ圏外ではない程度の微弱電波のため、俺は電波を求めてキャンプ場の中を歩き回っていた。
「うーん、先生たちのコテージの近く行けば繋がるかな⋯」
好き好んで近付きたいわけではないが、まだ消灯時間前だし、別に悪いことをしているわけではないので問題ないだろう。
薄暗い夜道を歩いていると、ふと人影が見えた。
「あれって⋯」
2人組のそれが大和と芳賀であることに気付いた俺は、さっと物陰に隠れた。
大和のやつ、バンガローにいないと思ったら、こんなところで芳賀と会っていたとは。
芳賀には、例の漫画を貸して以来、大和に貸そうとしているBL漫画は、先に自分に貸すようにと言われた。なんなんだ?内容チェックしてるのか?大和が変態チックなエロ知識を得ないように。
若干巻き込まれている感はあるが、今のところ俺に実害はないので良しとしよう。
大和と芳賀は、ただ話をしているだけのように見えた。時々芳賀が甘えるように大和にくっついている。暗くて表情までは見えないし、会話の内容も聞こえないが、楽しそうな雰囲気が伝わってくる。
覗き見は良くないとは思いつつ、腐男子としての好奇心の方が勝り、俺はこっそりと2人の様子を眺めた。
そういえば、暎一はどうしているだろう。こういう時こそ例の好きな奴との距離を詰めるべきだと、何か知恵を授けておくべきだったか。いや、そんな知恵俺にもないんだけど。
そんなことを考えながら、2人の様子を見るのに夢中になっていた俺は、背後から近付いてくる人影に気付かなかった。
「深智?」
「っ!?」
ぽん、と肩に手を乗せられ、大声を上げそうになるくらい驚いた。慌てて両手で口を覆う。
「びっ、くりした⋯。なんだ、暎一か⋯」
「驚きすぎ。何してんの?」
「え? えっと⋯」
覗き見してましたとは言えずに口籠ると、暎一にも大和たちの姿が見えたようで、呆れた顔をされる。
「お前な⋯」
「や、たまたま! スマホの電波通るとこ探してたら見かけて、ちょっと様子窺ってただけだって」
必死に弁解すると、暎一は、あーはいはい、と適当に相槌を打った。
「それに俺は、大和から相談を受けた身として、2人がうまくいってるか確認する権利があると思う」
「⋯確認する権利?」
若干不自然な日本語に暎一は首を傾げているが、そんなことはどうでもいい。大和に俺が腐男子であることを話したのは暎一だろうと言うと、暎一は悪びれもせずに頷いた。
「言っちゃまずかったか?」
「⋯まあ、いいけど。今更だけど、そもそもなんで知ってたんだよ?」
「深智が漫画買ってるところを見かけたりとか」
「やっぱりか」
それ以外にバレるところがないはずなので、大方そんなところだろうと思っていた。
暎一だって、今の俺と似たようなことしてるじゃないか。
とにかく場所を移動しようと言われ、こっそりとその場を離れる。
「スマホなら、バス降りた駐車場の方行けば繋がるってさ」
「そうなんだ。じゃあ俺そっち行ってくる」
「俺も一緒に行く」
「1人で平気だって」
すぐ近くだし、駐車場の方なら道もわかっているのでそう言ったのだが、暎一はスタスタと歩き出してしまう。
「別についてきてくれなくてもいいのに」
「どうせ暇だしな」
「暎一も、例の好きな奴のとこ喋りに行けばいいじゃん。こんな機会あんまないだろ」
「あー、まあ⋯、そうかもな」
歯切れの悪い返事に何かあったのかと首を傾げると、暎一は軽く肩を竦めた。
「いいよ。もうすぐ消灯時間だし。さっきバンガロー見たらいなかったから」
「⋯そっか」
まあそういうことなら仕方がないか。
暎一も一応行動を起こそうとしていたようで何よりだ。一応デートの練習にも付き合ってやったんだから、やっぱりうまくいって欲しい。
「あれから、なんか進展あった?」
「⋯いや」
「ないのかよ」
「いいんだって。別にそんな焦る必要ないし」
「そうなの?」
焦らなくて大丈夫ということは、すぐに誰かと付き合ったりしそうな雰囲気ではないということだろうか。でもそんなの、何が起きるかわからないじゃないか。ある日突然告白してきた誰かと付き合い始めてしまうかもしれないし。
それとも、実はすでに割といい感じなのだろうか。
というか、暎一の好きな相手は俺も知ってる奴だとしか聞いてなかったのに、すっかり同じ学校の奴だと思い込んでいた。カマをかけたつもりはなかったのだけれど、暎一も否定しなかったことで、同じ学年の誰かだということまでわかってしまった。
スマホの電波が通るところまで来ると、俺はルーティンになっているサイトのチェックをして、元来た道を戻る。
ふと、もし暎一がその相手とうまくいったら、こういう時間もなくなるのだろうかという思いが、胸を過ぎった。
やっぱり、恋人が出来ればそっちを優先するだろう。
普段は別にいいんだ。俺だって他に友達がいないわけじゃないし、暎一と友達でなくなるわけでもない。休みの日は家で漫画を読んでいられれば満足なので、暎一が恋人優先になったところで、俺にとっては大して変化はないだろう。
ただ、こういう行事の時は話が別だ。暎一が恋人といるようになったら、俺は? 大和だって芳賀と一緒にいたいだろうし。他の奴とつるめばいいだけなんだけど、やっぱり1番仲が良いのは暎一と大和なので、ちょっと寂しいと思ってしまう。
「深智?」
「え、なに?」
「大丈夫か? 疲れた?」
考え事をしていたせいで、いつの間にか歩くペースが落ちていた俺に、暎一が心配して声をかけてくれる。
「や、平気。ごめん」
小走りで追いつくと、暎一はふっと笑って、さっきよりゆっくり歩き始める。
俺はモヤモヤを隠すように、どうでもいいような話をしながら、バンガローまでの道を歩いた。
しかし、バンガローの中はギリギリ圏外ではない程度の微弱電波のため、俺は電波を求めてキャンプ場の中を歩き回っていた。
「うーん、先生たちのコテージの近く行けば繋がるかな⋯」
好き好んで近付きたいわけではないが、まだ消灯時間前だし、別に悪いことをしているわけではないので問題ないだろう。
薄暗い夜道を歩いていると、ふと人影が見えた。
「あれって⋯」
2人組のそれが大和と芳賀であることに気付いた俺は、さっと物陰に隠れた。
大和のやつ、バンガローにいないと思ったら、こんなところで芳賀と会っていたとは。
芳賀には、例の漫画を貸して以来、大和に貸そうとしているBL漫画は、先に自分に貸すようにと言われた。なんなんだ?内容チェックしてるのか?大和が変態チックなエロ知識を得ないように。
若干巻き込まれている感はあるが、今のところ俺に実害はないので良しとしよう。
大和と芳賀は、ただ話をしているだけのように見えた。時々芳賀が甘えるように大和にくっついている。暗くて表情までは見えないし、会話の内容も聞こえないが、楽しそうな雰囲気が伝わってくる。
覗き見は良くないとは思いつつ、腐男子としての好奇心の方が勝り、俺はこっそりと2人の様子を眺めた。
そういえば、暎一はどうしているだろう。こういう時こそ例の好きな奴との距離を詰めるべきだと、何か知恵を授けておくべきだったか。いや、そんな知恵俺にもないんだけど。
そんなことを考えながら、2人の様子を見るのに夢中になっていた俺は、背後から近付いてくる人影に気付かなかった。
「深智?」
「っ!?」
ぽん、と肩に手を乗せられ、大声を上げそうになるくらい驚いた。慌てて両手で口を覆う。
「びっ、くりした⋯。なんだ、暎一か⋯」
「驚きすぎ。何してんの?」
「え? えっと⋯」
覗き見してましたとは言えずに口籠ると、暎一にも大和たちの姿が見えたようで、呆れた顔をされる。
「お前な⋯」
「や、たまたま! スマホの電波通るとこ探してたら見かけて、ちょっと様子窺ってただけだって」
必死に弁解すると、暎一は、あーはいはい、と適当に相槌を打った。
「それに俺は、大和から相談を受けた身として、2人がうまくいってるか確認する権利があると思う」
「⋯確認する権利?」
若干不自然な日本語に暎一は首を傾げているが、そんなことはどうでもいい。大和に俺が腐男子であることを話したのは暎一だろうと言うと、暎一は悪びれもせずに頷いた。
「言っちゃまずかったか?」
「⋯まあ、いいけど。今更だけど、そもそもなんで知ってたんだよ?」
「深智が漫画買ってるところを見かけたりとか」
「やっぱりか」
それ以外にバレるところがないはずなので、大方そんなところだろうと思っていた。
暎一だって、今の俺と似たようなことしてるじゃないか。
とにかく場所を移動しようと言われ、こっそりとその場を離れる。
「スマホなら、バス降りた駐車場の方行けば繋がるってさ」
「そうなんだ。じゃあ俺そっち行ってくる」
「俺も一緒に行く」
「1人で平気だって」
すぐ近くだし、駐車場の方なら道もわかっているのでそう言ったのだが、暎一はスタスタと歩き出してしまう。
「別についてきてくれなくてもいいのに」
「どうせ暇だしな」
「暎一も、例の好きな奴のとこ喋りに行けばいいじゃん。こんな機会あんまないだろ」
「あー、まあ⋯、そうかもな」
歯切れの悪い返事に何かあったのかと首を傾げると、暎一は軽く肩を竦めた。
「いいよ。もうすぐ消灯時間だし。さっきバンガロー見たらいなかったから」
「⋯そっか」
まあそういうことなら仕方がないか。
暎一も一応行動を起こそうとしていたようで何よりだ。一応デートの練習にも付き合ってやったんだから、やっぱりうまくいって欲しい。
「あれから、なんか進展あった?」
「⋯いや」
「ないのかよ」
「いいんだって。別にそんな焦る必要ないし」
「そうなの?」
焦らなくて大丈夫ということは、すぐに誰かと付き合ったりしそうな雰囲気ではないということだろうか。でもそんなの、何が起きるかわからないじゃないか。ある日突然告白してきた誰かと付き合い始めてしまうかもしれないし。
それとも、実はすでに割といい感じなのだろうか。
というか、暎一の好きな相手は俺も知ってる奴だとしか聞いてなかったのに、すっかり同じ学校の奴だと思い込んでいた。カマをかけたつもりはなかったのだけれど、暎一も否定しなかったことで、同じ学年の誰かだということまでわかってしまった。
スマホの電波が通るところまで来ると、俺はルーティンになっているサイトのチェックをして、元来た道を戻る。
ふと、もし暎一がその相手とうまくいったら、こういう時間もなくなるのだろうかという思いが、胸を過ぎった。
やっぱり、恋人が出来ればそっちを優先するだろう。
普段は別にいいんだ。俺だって他に友達がいないわけじゃないし、暎一と友達でなくなるわけでもない。休みの日は家で漫画を読んでいられれば満足なので、暎一が恋人優先になったところで、俺にとっては大して変化はないだろう。
ただ、こういう行事の時は話が別だ。暎一が恋人といるようになったら、俺は? 大和だって芳賀と一緒にいたいだろうし。他の奴とつるめばいいだけなんだけど、やっぱり1番仲が良いのは暎一と大和なので、ちょっと寂しいと思ってしまう。
「深智?」
「え、なに?」
「大丈夫か? 疲れた?」
考え事をしていたせいで、いつの間にか歩くペースが落ちていた俺に、暎一が心配して声をかけてくれる。
「や、平気。ごめん」
小走りで追いつくと、暎一はふっと笑って、さっきよりゆっくり歩き始める。
俺はモヤモヤを隠すように、どうでもいいような話をしながら、バンガローまでの道を歩いた。
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