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2・女はただ、騎士として生きたかっただけなのに。
2.私の考えは一発で打ち砕かれる。
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私の弓の腕前は狩りにはかなり重宝され、懇切丁寧に竜の魔物避けが届いている狩猟範囲や罠の仕掛け方を教えてもらった。
魔物避けをすり抜ける魔物もいるにはいるが、竜の魔力を感じられないような低級の魔物か、竜の魔力にも怯まないような高レベルで危険等級がかなり高い魔物しかいない。
私は幸い狩り場では前者にしか出会わず、追放されたとはいえ私も騎士の端くれ、低級の魔物相手に遅れを取ることもなかった。
半年もすれば私は完全に村に馴染み、受け入れて貰えた。
この村は確かに豊かではないかもしれないが、人々は足るを知り満ちている。
山という強大な自然との共存共栄で生きる村の人々は、協力することの強さを知っているのだ。
どんなものでも巻き込んで、力に変える。
騎士団に見捨てられた私のような者でも、例外ではないのだ。
ある日。
村の子供、パウルの家の末っ子が酷い熱を出した。
元々は風土病らしいのだが、ほぼ根絶されていたとされ、村の人間は風土病に対する耐性をスキルとして遺伝継承されているが稀に漏れることがある。
根絶されていたはずの風土病が、たまたま耐性スキルを持たない幼子に発症するという悪い出来事が悪いタイミングで重なった。
風土病を治せる薬草の貯蓄が切れており、すぐに治療には移れないのだ。
薬草は山の中に自生している。
狩猟範囲外の、山の中だ。
前回は数十年前に竜が山に降り立ち、竜が山の魔物を食いつくして飛び立った後に採取したらしいのだが、竜はまだ当分来ない。
つまり。
危険等級が超級以上の高レベルな魔物たちが蔓延る山から、薬草を採ってくる他にない。
ならそれは私の仕事だ。
村を、村人を危機から守るのが騎士としての私の役目だ。
心配と諦めと淡い期待が混じる村の者たちからの制止を振り切り私は山へと踏み入れた。
狩猟範囲……いや、安全地帯から一歩踏み入れると凄まじい圧力を感じる。
肌がピリつく、やはりこの山は異常だ。
空気が重いし、様々な魔力が渦巻いている。
感知系のスキルが役に立たない、私のレベルではこの森では目視からの速射くらいしか有効な戦闘手段はないだろう。
魔法もある程度なら使えるが、この魔力が渦巻く空間で散らないほど圧縮された魔法を撃てる技量は今の私にはない。
だが私は弓使いだ。
不足はあるが問題は無い。
なんて、思考の中で自身を鼓舞しながら警戒を怠らずに山を進むと。
「…………! 見つけた」
私は薬草を見つけて、つい呟いてしまう。
良かった。思ったより深く山に潜ることなく見つけることが出来た。
うん、量も問題はない。
採取した薬草をストレージに仕舞い、足早に戻ろうと立ち上がった。
その時。
「ぐ……っ⁉」
左肩に鈍痛が走り声が出る。
同時にこぶし大の石が地面に落ちた。
投擲された……? まるで気配を感じなかった。
即座に投擲された方向に意識を向け弓を引くが、目視出来ない。
昼間なのに木々によってやや暗い、遮蔽物も多い。
それでも私は目視さえ出来れば必中させる自身はあるのだが……。
一旦木に背中をつけて、五感を研ぎ澄ます。
微かに音がした方向を向くと、再び石が飛んでくるのが見えたので咄嗟に躱す。
駄目だ、ここは視界が悪い。
このままだと狙い撃ちされ続ける。
視界が開ける場所まで……、走る!
私は意を決して駆け抜け、崖下の岩場、木々が少ない地点までたどり着く。
崖を背にして、集中する。
敵の気配の消し方は凄まじい、山に溶けている。
投擲を行うところから恐らく人型、ゴブリンの類いだと思われる。
オークやオーガの類いなら中遠距離勝負ではなく、迫撃で攻めてきたはずだ。
そして恐らく単独。
超級で高レベルとは言え、ゴブリンの類いが一体であれば私でもなんとかなる。
弓を引いて、何が飛んでこようと撃ち落とし、速射で投げた先を射る。
集中は出来た、さあどこからでも――。
なんて、私の考えは一発で打ち砕かれる。
魔物避けをすり抜ける魔物もいるにはいるが、竜の魔力を感じられないような低級の魔物か、竜の魔力にも怯まないような高レベルで危険等級がかなり高い魔物しかいない。
私は幸い狩り場では前者にしか出会わず、追放されたとはいえ私も騎士の端くれ、低級の魔物相手に遅れを取ることもなかった。
半年もすれば私は完全に村に馴染み、受け入れて貰えた。
この村は確かに豊かではないかもしれないが、人々は足るを知り満ちている。
山という強大な自然との共存共栄で生きる村の人々は、協力することの強さを知っているのだ。
どんなものでも巻き込んで、力に変える。
騎士団に見捨てられた私のような者でも、例外ではないのだ。
ある日。
村の子供、パウルの家の末っ子が酷い熱を出した。
元々は風土病らしいのだが、ほぼ根絶されていたとされ、村の人間は風土病に対する耐性をスキルとして遺伝継承されているが稀に漏れることがある。
根絶されていたはずの風土病が、たまたま耐性スキルを持たない幼子に発症するという悪い出来事が悪いタイミングで重なった。
風土病を治せる薬草の貯蓄が切れており、すぐに治療には移れないのだ。
薬草は山の中に自生している。
狩猟範囲外の、山の中だ。
前回は数十年前に竜が山に降り立ち、竜が山の魔物を食いつくして飛び立った後に採取したらしいのだが、竜はまだ当分来ない。
つまり。
危険等級が超級以上の高レベルな魔物たちが蔓延る山から、薬草を採ってくる他にない。
ならそれは私の仕事だ。
村を、村人を危機から守るのが騎士としての私の役目だ。
心配と諦めと淡い期待が混じる村の者たちからの制止を振り切り私は山へと踏み入れた。
狩猟範囲……いや、安全地帯から一歩踏み入れると凄まじい圧力を感じる。
肌がピリつく、やはりこの山は異常だ。
空気が重いし、様々な魔力が渦巻いている。
感知系のスキルが役に立たない、私のレベルではこの森では目視からの速射くらいしか有効な戦闘手段はないだろう。
魔法もある程度なら使えるが、この魔力が渦巻く空間で散らないほど圧縮された魔法を撃てる技量は今の私にはない。
だが私は弓使いだ。
不足はあるが問題は無い。
なんて、思考の中で自身を鼓舞しながら警戒を怠らずに山を進むと。
「…………! 見つけた」
私は薬草を見つけて、つい呟いてしまう。
良かった。思ったより深く山に潜ることなく見つけることが出来た。
うん、量も問題はない。
採取した薬草をストレージに仕舞い、足早に戻ろうと立ち上がった。
その時。
「ぐ……っ⁉」
左肩に鈍痛が走り声が出る。
同時にこぶし大の石が地面に落ちた。
投擲された……? まるで気配を感じなかった。
即座に投擲された方向に意識を向け弓を引くが、目視出来ない。
昼間なのに木々によってやや暗い、遮蔽物も多い。
それでも私は目視さえ出来れば必中させる自身はあるのだが……。
一旦木に背中をつけて、五感を研ぎ澄ます。
微かに音がした方向を向くと、再び石が飛んでくるのが見えたので咄嗟に躱す。
駄目だ、ここは視界が悪い。
このままだと狙い撃ちされ続ける。
視界が開ける場所まで……、走る!
私は意を決して駆け抜け、崖下の岩場、木々が少ない地点までたどり着く。
崖を背にして、集中する。
敵の気配の消し方は凄まじい、山に溶けている。
投擲を行うところから恐らく人型、ゴブリンの類いだと思われる。
オークやオーガの類いなら中遠距離勝負ではなく、迫撃で攻めてきたはずだ。
そして恐らく単独。
超級で高レベルとは言え、ゴブリンの類いが一体であれば私でもなんとかなる。
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なんて、私の考えは一発で打ち砕かれる。
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