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0.3%未満の悪評
3:原点回帰的
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料理人によって様々な料理人としての思想や目標があると思う。
最高の料理を作り上げることだったり。
地位や名誉だったり。
店の利益だったり。
自身の納得や満足だったり。
自分だけが出来る再現性のない一品を生み出すことをだったり。
正直どれも理解できる、否定するつもりはないが。
俺は、美味いもんは誰でも食えるようになることを理想としている。
つまり再現性。
誰でも簡単に……なんてことは言わないが頑張ってレシピ通りの材料と分量と時間と温度を守れば作れるようになる。
再現性さえ持たせておけば、味は残り続ける。
その中で時勢に合わせてやる気のあるやつが味にバリエーションを持たせていきゃあいい。
多岐に渡る選択肢さえあれば、きっと誰かの好みや気分に刺さるものが出来上がる。
飯を食うってのは三大欲求の一つで、生存にも必須だ。
セックスはまあそりゃあしてえしできるに越したことはねえが、しなくても死にはしねえ。たまーに夜のお店に行きゃあいいし上手く引っ掛けた行きずりの女と遊べりゃあいい、これでもそこそこ金はある。
睡眠もどんだけ不足しても身体はどっかで気絶して強制的に睡眠を取らせる。身体には悪いが、死ぬ前に勝手になんとかしてくれる。
だが飯だけは死に直結する。
人は必ず飯を食わなきゃ飢えて死ぬ。
どんなやつも生きている限りは食い続けなくちゃならねえ。
食うには飯が必要で、どうせ食うなら美味いに越したことはねえ。
生きるとは食うこと、食うために働くのなら働きたくなるくらいに美味いもんがあった方がいいだろ。
そういうのはたくさんあった方がいい、生きる理由なんてはいくつあったっていいんだ。
それは……良いことではある。
そして今、俺の理想とする世の中は出来上がりつつあるんだ。
だから俺の仕事はおしまいなんだ。
「いやまだ全然やりようあるっすよ。絶対に料理は人類の暮らしから根絶されることはないし、その技能を持つ人間を要求する職として残り続けます。スペアエデンでも、料理人は必要です」
俺の思いは届かず、ロメオはあっさり返す。
こいつ……、まあ流石に大人からとやかく言われたくらいで諦められるんなら最初からこんな道歩かねぇわな。
「むしろより根源的な、アナログな料理が必要になってくるのではと俺は考えています」
ロメオは続けて、俺とは正反対の意見を述べる。
「スペアエデン到着後の文明レベルが落ち込むとか、開拓した地域差によってオートマトンの配置が間に合わないとかなら……まあなくはないとは思うが……どっちにしろ一時的なものだと思うぞ」
俺はロメオの意見を完全には否定せずに受け入れつつ返す。
これは…………まああったとしても一時的だろう。
スペアエデン到着後はこのブロッサム・ノアは外装から亜光速エンジンやら何までテラフォーミングに利用される。
アン・ドゥ・メタルを散布して土壌や大気の調整をしたりだとか、植林やら生態系の再現やら整地やインフラ整備を行い。
五十二機のブロッサム・ノアに搭載されたこの都市階層はそのまま都市として利用される。
都市をや中心に開拓や開発を行い、さらに街を広げていく。
もちろん五十二機に搭載された縮退炉もそのままエネルギー源として利用するし、マザーも都市ごとに設置されてシステムの演算処理を行う。
つまりここでの暮らしはスペアエデンでの暮らしとほぼ同じってことだ。
オートマトンの増産が間に合わないとか、末端の居住区画までエネルギーが届かないとか、ネットワーク管理がうまくいかないとかのトラブルやら計画の遅れとかは出ることもあるかもしれないが。
なんにせよ一時的なものだろう……。
このマザーの確定予測演算とアン・ドゥ・メタルによって二千五百光年も飛んでけるほど超科学時代に。
料理人がついていけるわけがない、亜光速で振り切られたのさ。
「何言ってんすか、人類はマザーの確定予測演算を覆してここまで来たんすよ? 人は機械の予測を超える。だから俺は師匠の弟子になったんですよ」
呆れるようにロメオは俺にむけて言う。
うーん……まあそれも事実ではあるか。
実際、人類は二百年で生存確率を塗り替えてここまで来た。
でも、それは……。
「……確かに俺はその実例であり前例だが、再現性はねえぞこんなもん。たまたまだ、狙ったわけじゃあない」
俺はロメオに現実を突きつける。
確かに実例で前例はある。
俺自身がそうだ。
でも再現性はない、俺自身その後何度も作って登録してを繰り返したが生存確率を上げる料理は作れなかった。
たまたま、偶発的な奇跡でしかない。
「はいはいおっさんの天才アピは置いといて」
「リスペクトが大さじで足りてねえぞ」
師匠の言葉をあしらう弟子に慄いて返す。
こいつ尊敬してるのか舐めてるのかわからねえ……。
「具体的に俺は、根源的……原点回帰的に今の環境にない料理の提供が有用なんじゃないかって考えてるんすよ」
慄く俺をよそに、ロメオは端末を開いて淡々と語りを続け。
「そこで、炭火コンロと石窯オーブンを購入して店に設置しました。もう工事も終わってます」
ロメオは端末で俺に店の厨房の画像を見せながらそう言った。
「…………ん? 購入……買ったぁ⁉ 買ったの⁉ え、おまえそれ店の経費で入れたの⁉」
「はい。必要なもん揃えるために一部決済権もらってるんで」
驚愕する俺に対してロメオはあっけらかんと認める。
マジかこいつ……いや確かにロメオが使う食材や道具を揃えるために決済ができるようにしてある。
最初はいちいち確認されていたが、面倒くさいから好き勝手できるように権限を与えたが……想像以上に好き勝手やりやがった……。
嘘だろ……高いだろこんな骨董品みてえな設備……工事費とかも結構……つーか確実に建物にも手入れてるだろ……。まさかこんな大規模なもんを……侮っていた。
「マジかよてめー…………まあいい……好きにしろって言ったの俺だからな……」
俺は驚愕しつつも落ち着いて返す。
実際俺は好きにしろって言ったし、俺は実際結構裕福だ。
家で酒飲んでるだけでも、オートマトンが勝手に俺の味を再現して稼いでくれる。不労所得の泡銭だ、別に惜しくはない。
原点回帰的な料理、炭火に石窯か…………ふむ。
「しかし……悪くない考えだが…………。あのな、料理は科学でもあるんだ。その手の設備でなんで美味いもんが出来るかってのは解析が終わっているし今の遠赤外線電熱オーブンやなんやらで狙い通りの焼きが出来る」
俺は冷静に、料理人として弟子へ現代調理技術について語る。
「炭の煙なんかの匂いも同時に染み込ませることも出来る。無駄に火を使うのはダメだ、やめとけ。さっさと返してこい」
さらに続けて返品を促す。
オートマトンも困るだろ、ナンセンス過ぎてシンギュラリティ起こすんじゃねえか。
最高の料理を作り上げることだったり。
地位や名誉だったり。
店の利益だったり。
自身の納得や満足だったり。
自分だけが出来る再現性のない一品を生み出すことをだったり。
正直どれも理解できる、否定するつもりはないが。
俺は、美味いもんは誰でも食えるようになることを理想としている。
つまり再現性。
誰でも簡単に……なんてことは言わないが頑張ってレシピ通りの材料と分量と時間と温度を守れば作れるようになる。
再現性さえ持たせておけば、味は残り続ける。
その中で時勢に合わせてやる気のあるやつが味にバリエーションを持たせていきゃあいい。
多岐に渡る選択肢さえあれば、きっと誰かの好みや気分に刺さるものが出来上がる。
飯を食うってのは三大欲求の一つで、生存にも必須だ。
セックスはまあそりゃあしてえしできるに越したことはねえが、しなくても死にはしねえ。たまーに夜のお店に行きゃあいいし上手く引っ掛けた行きずりの女と遊べりゃあいい、これでもそこそこ金はある。
睡眠もどんだけ不足しても身体はどっかで気絶して強制的に睡眠を取らせる。身体には悪いが、死ぬ前に勝手になんとかしてくれる。
だが飯だけは死に直結する。
人は必ず飯を食わなきゃ飢えて死ぬ。
どんなやつも生きている限りは食い続けなくちゃならねえ。
食うには飯が必要で、どうせ食うなら美味いに越したことはねえ。
生きるとは食うこと、食うために働くのなら働きたくなるくらいに美味いもんがあった方がいいだろ。
そういうのはたくさんあった方がいい、生きる理由なんてはいくつあったっていいんだ。
それは……良いことではある。
そして今、俺の理想とする世の中は出来上がりつつあるんだ。
だから俺の仕事はおしまいなんだ。
「いやまだ全然やりようあるっすよ。絶対に料理は人類の暮らしから根絶されることはないし、その技能を持つ人間を要求する職として残り続けます。スペアエデンでも、料理人は必要です」
俺の思いは届かず、ロメオはあっさり返す。
こいつ……、まあ流石に大人からとやかく言われたくらいで諦められるんなら最初からこんな道歩かねぇわな。
「むしろより根源的な、アナログな料理が必要になってくるのではと俺は考えています」
ロメオは続けて、俺とは正反対の意見を述べる。
「スペアエデン到着後の文明レベルが落ち込むとか、開拓した地域差によってオートマトンの配置が間に合わないとかなら……まあなくはないとは思うが……どっちにしろ一時的なものだと思うぞ」
俺はロメオの意見を完全には否定せずに受け入れつつ返す。
これは…………まああったとしても一時的だろう。
スペアエデン到着後はこのブロッサム・ノアは外装から亜光速エンジンやら何までテラフォーミングに利用される。
アン・ドゥ・メタルを散布して土壌や大気の調整をしたりだとか、植林やら生態系の再現やら整地やインフラ整備を行い。
五十二機のブロッサム・ノアに搭載されたこの都市階層はそのまま都市として利用される。
都市をや中心に開拓や開発を行い、さらに街を広げていく。
もちろん五十二機に搭載された縮退炉もそのままエネルギー源として利用するし、マザーも都市ごとに設置されてシステムの演算処理を行う。
つまりここでの暮らしはスペアエデンでの暮らしとほぼ同じってことだ。
オートマトンの増産が間に合わないとか、末端の居住区画までエネルギーが届かないとか、ネットワーク管理がうまくいかないとかのトラブルやら計画の遅れとかは出ることもあるかもしれないが。
なんにせよ一時的なものだろう……。
このマザーの確定予測演算とアン・ドゥ・メタルによって二千五百光年も飛んでけるほど超科学時代に。
料理人がついていけるわけがない、亜光速で振り切られたのさ。
「何言ってんすか、人類はマザーの確定予測演算を覆してここまで来たんすよ? 人は機械の予測を超える。だから俺は師匠の弟子になったんですよ」
呆れるようにロメオは俺にむけて言う。
うーん……まあそれも事実ではあるか。
実際、人類は二百年で生存確率を塗り替えてここまで来た。
でも、それは……。
「……確かに俺はその実例であり前例だが、再現性はねえぞこんなもん。たまたまだ、狙ったわけじゃあない」
俺はロメオに現実を突きつける。
確かに実例で前例はある。
俺自身がそうだ。
でも再現性はない、俺自身その後何度も作って登録してを繰り返したが生存確率を上げる料理は作れなかった。
たまたま、偶発的な奇跡でしかない。
「はいはいおっさんの天才アピは置いといて」
「リスペクトが大さじで足りてねえぞ」
師匠の言葉をあしらう弟子に慄いて返す。
こいつ尊敬してるのか舐めてるのかわからねえ……。
「具体的に俺は、根源的……原点回帰的に今の環境にない料理の提供が有用なんじゃないかって考えてるんすよ」
慄く俺をよそに、ロメオは端末を開いて淡々と語りを続け。
「そこで、炭火コンロと石窯オーブンを購入して店に設置しました。もう工事も終わってます」
ロメオは端末で俺に店の厨房の画像を見せながらそう言った。
「…………ん? 購入……買ったぁ⁉ 買ったの⁉ え、おまえそれ店の経費で入れたの⁉」
「はい。必要なもん揃えるために一部決済権もらってるんで」
驚愕する俺に対してロメオはあっけらかんと認める。
マジかこいつ……いや確かにロメオが使う食材や道具を揃えるために決済ができるようにしてある。
最初はいちいち確認されていたが、面倒くさいから好き勝手できるように権限を与えたが……想像以上に好き勝手やりやがった……。
嘘だろ……高いだろこんな骨董品みてえな設備……工事費とかも結構……つーか確実に建物にも手入れてるだろ……。まさかこんな大規模なもんを……侮っていた。
「マジかよてめー…………まあいい……好きにしろって言ったの俺だからな……」
俺は驚愕しつつも落ち着いて返す。
実際俺は好きにしろって言ったし、俺は実際結構裕福だ。
家で酒飲んでるだけでも、オートマトンが勝手に俺の味を再現して稼いでくれる。不労所得の泡銭だ、別に惜しくはない。
原点回帰的な料理、炭火に石窯か…………ふむ。
「しかし……悪くない考えだが…………。あのな、料理は科学でもあるんだ。その手の設備でなんで美味いもんが出来るかってのは解析が終わっているし今の遠赤外線電熱オーブンやなんやらで狙い通りの焼きが出来る」
俺は冷静に、料理人として弟子へ現代調理技術について語る。
「炭の煙なんかの匂いも同時に染み込ませることも出来る。無駄に火を使うのはダメだ、やめとけ。さっさと返してこい」
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