0.3%未満の悪魔~Why are you here?~

ラディ

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0.3%未満の悪女

3:反移住過激派組織

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 なるほどね……。

 反移住思想の根源的なものは宗教観の相違と言われていた。
 その土地に対する信仰によっ地球から離れられないとか、人類も地球環境の一部とするなら地球環境の変化で淘汰されるのもまた自然の摂理と考える人たちとか。
 実際、地球に残ったラストエデンの人々の中にはこういった人たちも少数ながら存在している。
 スペアエデンが観測された当初は本気で地球が平らだと思っている人とかもまだいたとかで宇宙空間の存在にすら懐疑的だった人もいたらしい。

 さらにそういった思想を持つ人々とは別枠で、単純に移住計画が成功しないことを前提として残り時間を過ごそうとする派閥も生まれた。

 これは仕方ないことではある。
 実際二千五百光年も離れた惑星に人類全体を移すなんて不可能だと考えてもおかしくない。あらゆる奇跡が奇跡的に重なった結果、私たちはここにいるわけだしね。

 でもこの派閥の根っこにあったのは。

『そもそも人類滅亡は二百年は先のこと。自分の世代には関係がない、知らない世代のために無茶する道理はない。だから今まで通り好き勝手に生きて死ぬ』

 という、利己主義。
 これ自体も否定されることではない、仕方ないことだ。
 孫の代以降に来る人類滅亡に当事者意識はなかなか持てるわけがない。

 しかしスペアエデンの観測や移住計画の発案、アン・ドゥ・メタルの登場だったり、縮退炉や亜光速エンジンの開発によってマザーの確定予測演算結果は修正されていき時間が経てば経つほど地球環境は激化して人類に当事者意識が芽生えてきた。

 この頃には多く人がスペアエデンへの移住に前向きなっていたが、それでも利己主義で居続けた集まりは存在したが次第に支持はされなくなっていった。

 そして加速度的に世界は競争社会へと突入。

 椅子取りゲームを制するためにこぞって専門職や技術者を目指し、飛躍的に文明レベルを上げていき超人世代へと繋がっていく流れができた。

 反移住思想を持つ人間は完全に、その競争社会に置いていかれた。

 なんか生き残る術があるみたいだけど、なんの準備もしてないしどうしようもできない。アリとキリギリスのような状態だった。

 自業自得とか因果応報とかいうのは簡単だし、残酷だけどもう仕方ない。生き残りたい、家族をなんとでも新天地へという思いをもって活動していた人々と差ができるのは然りだ。

 でも反移住思想者たちの中には、自分たちの思想が間違っていたことを認めたくなかった。

 そこから移住計画そのものを邪魔しようとする過激派が現れた。
 デモや座り込みや政府への抗議文を送ったり……まあそのくらいは問題にすらならなかったけど。

 人類生存確率を上げた偉人のお墓を荒らしたり、ご家族の家に危害を加えたり……器物損壊や不法侵入と刑事罰に抵触するような方向へエスカレートしていき。

 ついにアン・ドゥ・メタル研究チームの技術者が襲われて、死者が出た。

 そこから移住計画に携わる施設へテロ行為を行うようになった。
 移住計画に悪影響を及ぼすために、移住計画を台無しにするために活動を始めた。
 自分たちの思想を成立させるために、移住計画の邪魔をする。
 もう論理や理屈じゃあないところにある、ただ迷惑な犯罪組織。

 それが反移住過激派組織。

 政府は完全に反移住過激派組織を警戒し、治安維持部隊まで設立を余儀なくされた。
 そういう意味では人的リソースを割かれたといってもいいが、皮肉にも治安維持という移住計画内における新たな椅子が生まれたともいえてしまうことになった。

「……馬鹿だよね。そんな奴らとつるんでたら余計にブロッサム・ノアには乗れなくなるし迫害もされるのに。まあ賢かったら前科なんか作らないしもう少しまともに生きられたんだろうけど」

 冷たく、リンダは母について語る。

 馬鹿だと切り捨てるほど私は非情にはなれないけれど……確かについていく人間を間違えてしまっているとは思う。

 もし何かしらの罪を犯し前科がついたとしても、罪を償って社会に復帰できていればブロッサム・ノアβへの搭乗は叶っただろう。

 でもそれはブロッサム・ノアβが五十二機建造された今だから言えること。結果論でしかない。

「そのうち私の母親は反移住派の誰かの子供を妊娠して、私が産まれた」

 平らな声でリンダの語りは続く。

「でも私が育つ前に死んだんだけどね。大人は移住計画派のやつらに殺されたって言ってたけど……まあ信じてはなかったかな。移住計画が人類存亡を目的としてるのに人類減らすわけねーじゃんって思ってた」

 渇いた笑みで、語り。
 
「親のいない私がご飯を食べるためには、反移住派の仕事をするしかなかった」

 自身について語り始める。

「爆弾みたいなの運んだり、ものを盗んだり、古い武器を組み立てたりとか」

 つらつらとリンダが行ってきた役割を語る。

 子供にそんな犯罪行為を……、狂っているとしか思えない。

「教えてもらえるのは反移住派に都合がいいことだけ、疑問を持ったら叩かれる。でも普通に考えて叩くやつなんか新天地に連れて行きたくなくない? だから置いてかれるのに、こいつら馬鹿なんだなーって思ってた。子供も騙せない子供騙しに本気になっちゃってる馬鹿な大人たちしかいなかった」

 呆れたように、当時の環境を語る。

「ちょっと大きくなってきたら性的な仕事もやらされた。めっちゃキモかったけど上手くやると報酬良かったからね、しかもこれがあったから上手いこと看守を誘えたわけだし」

 あっけらかんと壮絶なことを言う。

 これはカルテにもあったことだ。
 性病などの検査結果も行われていた。

「私は死にたくなかった、生きていたかった。こんなゴミみたいなまま死にたくはなかったの。だから銃を向けられた時、私は先に撃つしか出来なかった……でも私は馬鹿だった。あそこの人たちの銃ってテーザーガンとか拘束弾とかだったみたいだね。本当に……これに関しては申し訳ないことをしたと思う」

 眉をひそめて、少し辛そうにリンダは語る。

 これも共有されているデータで把握している。
 彼女と暮らす前に映像でも確認した。

 死亡した二名の施設防衛担当者のボディカムには、大泣きで嗚咽と共に「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返し謝り続けながら旧式のライフルを構える少女の姿。

 対人訓練を積んで、武装オートマトン相手にも戦闘をこなせるプロである担当者が思わず躊躇ってしまうほどの悲痛さだった。

 躊躇いの中で炸裂する発砲音と共に、映像は途切れていた。
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