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32・恋人に棄てられたお嬢様は、凍える聖夜に暖かさを求める。【全6話】
01ワグナー侯爵家。
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私、サリィ・ワグナーはワグナー侯爵家のいわゆる侯爵令嬢です。
紅茶と少しのお菓子。
優雅なひとときをこよなく愛し。
貴族の子息令嬢が集う学園に通う。
切れ長の目でスラリと足の長い執事を従えるお嬢様でございます。
なーんちゃって、嘘ぴょーん。いえーい。
普通に漢字二文字の苗字と漢字二文字の名前を有する、神奈川県は大和市に住む、ただの日本人だ。
そして酔っ払いだ。いえーい。
紅茶じゃなくて芋焼酎をお湯で割りお菓子じゃなく一昨日に駅で買った真空パックの焼売をチンしてドカ食いしながら飲んでいる。
鹿児島と横浜のマリアージュを優雅に感じる、心はお嬢様なのだ。いやうっめーこれ。
先月に二十九歳なり、二十代最後のクリスマス。
その直前、つまりはクリスマス・イブに私は彼に振られた。
まあ正確には二十三日の夜から話し合い、結論が出たのが二十四日の未明だった。
理由はまあ……、うーん。まあ私が悪い……かなぁ?
彼は三つ下の後輩というか、会社の部下にあたる。
私も彼もわりと安定していたし、おそらく彼はこのまま順当に出世するだろうし、このまま結婚すんのかなーとか考えてもいたけど。
彼はどうにも独立を考えていたらしい。
自分で会社を起こしたいとのことで、それを私に打ち明けたのだ。
私はそれに対して難色を示してしまった。
実際彼は優秀だ。
これは恋人だからとかじゃなくて、上司としての正当な評価だ。
でも、それでも独立は今の出世コースを外れてまで選ぶものではないとも思う。これは先輩としてその選択をした先人たちを見てきたからこその意見。
でもやってみなきゃわからないし、やれる可能性も高いとも思う、これは同じ仕事をする仲間としての思い。
でも二十九歳になった彼女としては、不安が大きすぎた。これは結婚を視野に入れていた歳上彼女の本音。
素直には応援することは出来なかった。
理知的にやんわりと否定することも出来なかった。
しっかりと相談を受けて協力することも出来なかった。
彼は少し寂しそうに、何度も謝って別れを告げた。
困らしてごめん、君だけを選べなくてごめん。
私が言うべきことを、申し訳なさそうに言った。
なんてことを思い出して、お湯割りを流し込む。
あー、身体の真ん中が焼ける。
普段はあまり飲まないけど、飲まずにはいられない。
父方の田舎である鹿児島から送られてくる芋焼酎が有難い。
彼氏に振られて見事なヤケ酒ではあるが、実はヤケ酒目的に芋を流し込んでいるというわけでもない。
今日、エアコンが壊れたのだ。
いやもう、びっくりした。
なんか凄い異音がしたと思ったら温風が冷風というか送風だけを行う機械に変貌を遂げた。
マンション備え付けのエアコンなので急いで大家さんに連絡したけど、修理は最短でも明日の午前中だと言う。
「いやぁ……クリスマスなのに災難でしたね……、申し訳ないですが一日だけ辛抱してください」
なんて大家さんは言っていた。
いや本当に……、なんなんだろう……、もはや笑けてくる。
つまり超寒い。
この年末にエアコン無しは辛すぎる。
なので、暖を取る為に芋焼酎をお湯で割っているのだ。
それが結果的にヤケ酒になっている。いえーい。
まさかこんなことになるとは思わずに、有給使ってお盆休みを伸ばして仕事納めを終えていて。
クリスマスに予約していたホテルとレストランはキャンセル。
友人もみんな予定がある。
故に私は一人、息が白くなるような寒さの部屋で芋焼酎を流し込む。
あー。
私はどうすれば良かったのだろう。
多分、彼としては信頼して信用して尊敬していた私に信じて貰えなくて、今まで評価してくれていたはずなのに、煮え切らない反応をされてショックだったんだろう。
自分の能力をちゃんとわかってくれている私なら、わかってくれると、応援して協力してくれると思っていたんだと思う。
「………………ごめんねは私の方だよ……」
私はぐるぐると回る、色んな考えに俯いてそう呟く。
漏れ出た言葉は白い息と共に、寒い部屋に溶ける。
寒い部屋に。
いや本当に寒い。
彼の件は私のあれだけどエアコンの件は私のせいじゃないでしょ。こまめに清掃もしてたしここ築八年だし住んで一年くらいでエアコンが壊れるってなんなの? 二回目の冬シーズンで壊れるって許されるの?
「あああ――――っ! 寒いっ‼」
私は声を荒げて芋焼酎を煽る。
いや、もう凍えてしまう。
外と変わらないんじゃないの? いや下手したら外の方が寒くないまであるんじゃないか?
「……………………………………、うん」
私は酔って回らない頭で少し考えて結論を出す。
出ちゃうか、外。
紅茶と少しのお菓子。
優雅なひとときをこよなく愛し。
貴族の子息令嬢が集う学園に通う。
切れ長の目でスラリと足の長い執事を従えるお嬢様でございます。
なーんちゃって、嘘ぴょーん。いえーい。
普通に漢字二文字の苗字と漢字二文字の名前を有する、神奈川県は大和市に住む、ただの日本人だ。
そして酔っ払いだ。いえーい。
紅茶じゃなくて芋焼酎をお湯で割りお菓子じゃなく一昨日に駅で買った真空パックの焼売をチンしてドカ食いしながら飲んでいる。
鹿児島と横浜のマリアージュを優雅に感じる、心はお嬢様なのだ。いやうっめーこれ。
先月に二十九歳なり、二十代最後のクリスマス。
その直前、つまりはクリスマス・イブに私は彼に振られた。
まあ正確には二十三日の夜から話し合い、結論が出たのが二十四日の未明だった。
理由はまあ……、うーん。まあ私が悪い……かなぁ?
彼は三つ下の後輩というか、会社の部下にあたる。
私も彼もわりと安定していたし、おそらく彼はこのまま順当に出世するだろうし、このまま結婚すんのかなーとか考えてもいたけど。
彼はどうにも独立を考えていたらしい。
自分で会社を起こしたいとのことで、それを私に打ち明けたのだ。
私はそれに対して難色を示してしまった。
実際彼は優秀だ。
これは恋人だからとかじゃなくて、上司としての正当な評価だ。
でも、それでも独立は今の出世コースを外れてまで選ぶものではないとも思う。これは先輩としてその選択をした先人たちを見てきたからこその意見。
でもやってみなきゃわからないし、やれる可能性も高いとも思う、これは同じ仕事をする仲間としての思い。
でも二十九歳になった彼女としては、不安が大きすぎた。これは結婚を視野に入れていた歳上彼女の本音。
素直には応援することは出来なかった。
理知的にやんわりと否定することも出来なかった。
しっかりと相談を受けて協力することも出来なかった。
彼は少し寂しそうに、何度も謝って別れを告げた。
困らしてごめん、君だけを選べなくてごめん。
私が言うべきことを、申し訳なさそうに言った。
なんてことを思い出して、お湯割りを流し込む。
あー、身体の真ん中が焼ける。
普段はあまり飲まないけど、飲まずにはいられない。
父方の田舎である鹿児島から送られてくる芋焼酎が有難い。
彼氏に振られて見事なヤケ酒ではあるが、実はヤケ酒目的に芋を流し込んでいるというわけでもない。
今日、エアコンが壊れたのだ。
いやもう、びっくりした。
なんか凄い異音がしたと思ったら温風が冷風というか送風だけを行う機械に変貌を遂げた。
マンション備え付けのエアコンなので急いで大家さんに連絡したけど、修理は最短でも明日の午前中だと言う。
「いやぁ……クリスマスなのに災難でしたね……、申し訳ないですが一日だけ辛抱してください」
なんて大家さんは言っていた。
いや本当に……、なんなんだろう……、もはや笑けてくる。
つまり超寒い。
この年末にエアコン無しは辛すぎる。
なので、暖を取る為に芋焼酎をお湯で割っているのだ。
それが結果的にヤケ酒になっている。いえーい。
まさかこんなことになるとは思わずに、有給使ってお盆休みを伸ばして仕事納めを終えていて。
クリスマスに予約していたホテルとレストランはキャンセル。
友人もみんな予定がある。
故に私は一人、息が白くなるような寒さの部屋で芋焼酎を流し込む。
あー。
私はどうすれば良かったのだろう。
多分、彼としては信頼して信用して尊敬していた私に信じて貰えなくて、今まで評価してくれていたはずなのに、煮え切らない反応をされてショックだったんだろう。
自分の能力をちゃんとわかってくれている私なら、わかってくれると、応援して協力してくれると思っていたんだと思う。
「………………ごめんねは私の方だよ……」
私はぐるぐると回る、色んな考えに俯いてそう呟く。
漏れ出た言葉は白い息と共に、寒い部屋に溶ける。
寒い部屋に。
いや本当に寒い。
彼の件は私のあれだけどエアコンの件は私のせいじゃないでしょ。こまめに清掃もしてたしここ築八年だし住んで一年くらいでエアコンが壊れるってなんなの? 二回目の冬シーズンで壊れるって許されるの?
「あああ――――っ! 寒いっ‼」
私は声を荒げて芋焼酎を煽る。
いや、もう凍えてしまう。
外と変わらないんじゃないの? いや下手したら外の方が寒くないまであるんじゃないか?
「……………………………………、うん」
私は酔って回らない頭で少し考えて結論を出す。
出ちゃうか、外。
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