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32・恋人に棄てられたお嬢様は、凍える聖夜に暖かさを求める。【全6話】
03管理不足。
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「貴族なんかいねーだろ、日本に……。まあお嬢様は普通に言うし茶も淹れるっつーか、多分なんか偉くお洒落なもん想像してると思うけど基本家事代行サービスだからちょっと裕福なくらいの家が殆どだし、月に四日とか五日とか多くても二週間くらいの依頼が殆どだ。在宅の仕事の人が忙しい時に一日だけ頼むとかもある」
彼は淡々と執事を語る。
へー、イメージとは違ったけど一日だけとかも出来るんだ。頼もうかしら、お嬢様と呼ばれたいだけなんだけども。
とはいえ大きな謎が解けていない。
「いや、それでなんでその執事さんがサンタさんの格好してんのさ。乗せすぎよそれ、属性」
私は当然の疑問を呈して、ワインを煽って肉まんを齧る。うーん美味しい。
「今日の依頼はクリスマスパーティーの準備や、主のお嬢様方へのプレゼントを配ったりしてパーティーの後片付けをして今だ。その場で着替えてしまったらお嬢様方の夢を壊してしまうからこの格好のまま家を出て、会社の迎えを待ってるけど渋滞に捕まって遅れるから公園のベンチに座っていたら厚着をした酔っ払い女に絡まれ出したんだよ」
執事くんは気だるそうに私へ丁寧に説明してくれる。
へー、大変なのね執事も。
ここは私がしっかり労っておこう。
「へー! プレゼント! 私にはないの? ねえー、サンタさーん」
私は労う気持ちを一秒で忘れてダル絡みを続ける。
「だああ、めんどくせえ。サンタ扱いしてえのか執事に食いつきてえのかはっきりしろ」
私を片手であしらいながら執事くんは言う。
なにさなにさ、やたらに無愛想じゃない。
個人的に無愛想な執事はかなりツボだけども。
「なんなのよー……、優しくしなさいよぉ……うう……私だって心はお嬢様なのにぃ……」
私は素っ気ない執事くんに対して、急に悲しくなって涙を浮かべながら絡む。
「うっわぁ泣くなよ……………………、……はあぁぁぁぁ……」
執事くんは私の様子に大きくため息をついて。
「どうなされたのでしょうか、お嬢様」
と、こちらを向いて穏やかに丁寧な口調でそう言った。
見事に私は、彼から『何があったの?』と聞かせるという心配のカツアゲに成功したのであった。いえーい。
そこから私は語りに語った。
クリスマス直前に彼に振られたこととか。
クリスマス当日にエアコンが壊れて寒いこととか。
彼が独立に乗り出したこと。
私がそれを受け入れられなかったこと。
応援するべきだったのか、いっそついて行くべきだったのか。
私との将来を考えてもう少しだけ慎重になって欲しいみたいなことを面倒臭いと思われても伝えるべきだったのか。
もっと冷静にそれは難しいと、ロジカルにデータや前例を元に説得すれば良かったのか。
大家さんに悪態の一つでもついてやれば良かったのか。
部屋のお洒落さを優先してストーブとかこたつとかを用意してなかったのも悪いとか。
彼はここで煮え切らない反応をしたことで今までの私がしてきた評価が、恋人ということでの贔屓のように感じてショックを受けたんだろうとか。
それでも、彼はそれをおくびにも出さないで私を困らせてしまったことを謝り続けたこととか。
私はぐちゃぐちゃに、ただただ吐き出し続けた。
そんな私に執事は、適度に相槌を打って丁寧な傾聴姿勢を崩さずに真摯に、紳士に聞いてくれた。
やがて、私があらかた吐き出し終えたところで。
「…………そいつは、大変だったな。そりゃ飲むしかねえか」
意外にも執事くんは、そんな共感するようなことをしみじみと漏らす。
「俺には何が正しかったのかとか、どうすりゃ良かったかもわからないし、あんたが間違ってたとも思わないし、彼氏も悪いとは思えねえ。ただ――」
執事くんはつけ眉毛の隙間から真摯な眼差しで、こちらを見て続けて言う。
「エアコンは大家の管理不足」
「でしょおうっ⁉」
私は執事くんの言葉に激しく同意した。
彼は淡々と執事を語る。
へー、イメージとは違ったけど一日だけとかも出来るんだ。頼もうかしら、お嬢様と呼ばれたいだけなんだけども。
とはいえ大きな謎が解けていない。
「いや、それでなんでその執事さんがサンタさんの格好してんのさ。乗せすぎよそれ、属性」
私は当然の疑問を呈して、ワインを煽って肉まんを齧る。うーん美味しい。
「今日の依頼はクリスマスパーティーの準備や、主のお嬢様方へのプレゼントを配ったりしてパーティーの後片付けをして今だ。その場で着替えてしまったらお嬢様方の夢を壊してしまうからこの格好のまま家を出て、会社の迎えを待ってるけど渋滞に捕まって遅れるから公園のベンチに座っていたら厚着をした酔っ払い女に絡まれ出したんだよ」
執事くんは気だるそうに私へ丁寧に説明してくれる。
へー、大変なのね執事も。
ここは私がしっかり労っておこう。
「へー! プレゼント! 私にはないの? ねえー、サンタさーん」
私は労う気持ちを一秒で忘れてダル絡みを続ける。
「だああ、めんどくせえ。サンタ扱いしてえのか執事に食いつきてえのかはっきりしろ」
私を片手であしらいながら執事くんは言う。
なにさなにさ、やたらに無愛想じゃない。
個人的に無愛想な執事はかなりツボだけども。
「なんなのよー……、優しくしなさいよぉ……うう……私だって心はお嬢様なのにぃ……」
私は素っ気ない執事くんに対して、急に悲しくなって涙を浮かべながら絡む。
「うっわぁ泣くなよ……………………、……はあぁぁぁぁ……」
執事くんは私の様子に大きくため息をついて。
「どうなされたのでしょうか、お嬢様」
と、こちらを向いて穏やかに丁寧な口調でそう言った。
見事に私は、彼から『何があったの?』と聞かせるという心配のカツアゲに成功したのであった。いえーい。
そこから私は語りに語った。
クリスマス直前に彼に振られたこととか。
クリスマス当日にエアコンが壊れて寒いこととか。
彼が独立に乗り出したこと。
私がそれを受け入れられなかったこと。
応援するべきだったのか、いっそついて行くべきだったのか。
私との将来を考えてもう少しだけ慎重になって欲しいみたいなことを面倒臭いと思われても伝えるべきだったのか。
もっと冷静にそれは難しいと、ロジカルにデータや前例を元に説得すれば良かったのか。
大家さんに悪態の一つでもついてやれば良かったのか。
部屋のお洒落さを優先してストーブとかこたつとかを用意してなかったのも悪いとか。
彼はここで煮え切らない反応をしたことで今までの私がしてきた評価が、恋人ということでの贔屓のように感じてショックを受けたんだろうとか。
それでも、彼はそれをおくびにも出さないで私を困らせてしまったことを謝り続けたこととか。
私はぐちゃぐちゃに、ただただ吐き出し続けた。
そんな私に執事は、適度に相槌を打って丁寧な傾聴姿勢を崩さずに真摯に、紳士に聞いてくれた。
やがて、私があらかた吐き出し終えたところで。
「…………そいつは、大変だったな。そりゃ飲むしかねえか」
意外にも執事くんは、そんな共感するようなことをしみじみと漏らす。
「俺には何が正しかったのかとか、どうすりゃ良かったかもわからないし、あんたが間違ってたとも思わないし、彼氏も悪いとは思えねえ。ただ――」
執事くんはつけ眉毛の隙間から真摯な眼差しで、こちらを見て続けて言う。
「エアコンは大家の管理不足」
「でしょおうっ⁉」
私は執事くんの言葉に激しく同意した。
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