お嬢様たちは、過激に世界を回していく。

ラディ

文字の大きさ
128 / 132
終・女神さまは、ただ誰かに愛されたいだけ。【全7話】

04それでも。

しおりを挟む
 最初に竜がほろんだ。

 しかし、最後の最後で竜の女王ニィラが放った竜の息吹で人類のほとんどが死滅しめつしました。

 そこで力を使いたした竜の女王を、探求者と研究者は封印をしました。

 次に勇者が魔王との戦いの中で時空の壁を壊して、二千年後の未来に飛び消えてしまいました。

 勇者との戦いで消耗しょうもうしていたルカは、探求者の単純な腕力で押さえ込まれ研究者により封印された。

 こうして、魔王ルカと勇者ダグラスはこの星から消えて人類の繁栄はんえいが始まる。

 そう思っていたのですが、違いました。

 人類は私が望むような繁栄はんえいはしなかった。

 簡単にいえば、こちらの人類は皆さんの世界の人類と違って全体的に怠惰たいだで愚かだったのです。

 竜が居なくなっても根本的に愚かなこの星の人類は、文明の発展に積極的せっきょくにはならなかった。

 特異点である研究者シェリー・ラスゴーランや探求者マリク・ノアは高い知性や知恵を有していながらも人類をみちびくようなことはしませんでした。

 少なくなった人類はコミュニティを形成しましたが文化水準はむしろ下がり、竜からの危機感と知恵という恩恵おんけいを失い完全に停滞ていたいしました。

 ゆえに研究者と探求者をのぞいた現存する人類の中で最もかしこく人望のある者に、神託を与えました。

 これはダグラスに行った干渉かんしょうに近いものですが、今回は力を与える必要はなく過剰かじょうな書き換えは行わなかったのでかなり世界の減少はおさえられました。

 この神託しんたくあたえた者こそが初代メルバリア王国が国王となり長い時間をかけて文明と信仰を発展はってんさせました。

 そしてこのメルバリア王のコミュニティ形成を模倣もはんして、各地にコミュニティが作られていきました。

 人類は徐々に数を増やしていきましたが、思うように私への信仰は増えていきませんでした。

 なので私は再び、自身の存在を切り離してこの星に落とすことにしました。

 それも、ルカのように完成体ではなく赤子の状態で神の代行者として人類をみちびく聖女を降臨こうりんさせたかったのです。

 完成体ではなく赤子の状態にしたのは、人類に触れて育ち、自らの意思で能動的のうどうてきに人類をみちびくようになってもらうためです。

 ルカのように人類からの影響えいきょうにより使命から外れることを懸念けねんした対策たいさくでした。

 当初はメルバリア王の元に届ける予定でしたが、丁度その時に研究者シェリー・ラスゴーランが研究の末私の存在領域りょういきである世界の最果さいなて、私のいる外側にれられるところに辿たどり着いた。

 私はそれが、ただ嬉しくて。
 私から干渉かんしょうするのではなく、世界の中から私に手を伸ばしてくれたのが嬉しくて。

 研究者シェリーに聖女として育てるように伝えて赤子をたくしました。

 シェリーは世界のことわりから外れた特異点であり最も高い知性を有した者なので、世界のことわりから外れた個体である聖女を育て上げるには適任でもあると考えたのもあります。

 ですが研究者シェリーは探求者マリクと共に赤子を聖女ではなく、魔女として育てました。

 彼女たちはどうやらルカやダグラスという存在を生み出した私の行動に懐疑的かいぎてきだったようです。

 正直、理解は出来ます。
 私のような本来ただの現象でしかないものが思考して意思と意志をもちいて干渉かんしょうしてくるというのを快くは思えないでしょう。

 でも、私は、それでも。

 聖女ではなく魔女となった赤子、サム・ラスゴーラン・ノアは自身の幸せの為だけに行動をし続けました。

 ですが人類と共に生き続ける魔女の知恵や力は人類に影響えいきょうを与え、それが人類の繁栄はんえいつながりました。

 信仰においても少しずつ広がっていったのです。

 この星に人類を死滅しめつさせる程度ていどの隕石が丁度メルバリア王国に落下するのを魔女のサムがふせいだことにより、教会で私に祈りを続けていたスーザン・ロックハートが神に祈りを届けて民を救ったとして聖女と呼ばれることになりました。

 実際の私は時間の概念がいねんがないのでこの星が滅んだら、また新たに次の知的生命体による文明が出るまで待てば良いと思いながらながめているだけでしたが魔女のサムは私がこの星に放った個体ですので祈りが通じていたとしても良いのでしょう。私には未来も過去もないので。

 しかしそれでも、皆さんの住まう世界のような文明の発展は進みませんでした。

 これはやはり、死にづらくなったことにより生存に対する危機感がうす能動的のうどうてきな活動をしなくなったことに由来ゆらいする為です。

 私への信仰が高まったところで、私を受け入れられるほどの教養きょうようや知性が育たなければ意味がありません。

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです

星名柚花
恋愛
聖女アンジェリカは平民ながら聖王国の王妃候補に選ばれた。 しかし他の王妃候補の妨害工作に遭い、冤罪で国外追放されてしまう。 契約精霊と共に向かった亜人の国で、過去に自分を助けてくれたシャノンと再会を果たすアンジェリカ。 亜人は人間に迫害されているためアンジェリカを快く思わない者もいたが、アンジェリカは少しずつ彼らの心を開いていく。 たとえ問題が起きても解決します! だって私、四大精霊を従える大聖女なので! 気づけばアンジェリカは亜人たちに愛され始める。 そしてアンジェリカはシャノンの『運命の番』であることが発覚し――?

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

捨てられた元聖女ですが、なぜか蘇生聖術【リザレクション】が使えます ~婚約破棄のち追放のち力を奪われ『愚醜王』に嫁がされましたが幸せです~

鏑木カヅキ
恋愛
 十年ものあいだ人々を癒し続けていた聖女シリカは、ある日、婚約者のユリアン第一王子から婚約破棄を告げられる。さらには信頼していた枢機卿バルトルトに裏切られ、伯爵令嬢ドーリスに聖女の力と王子との婚約さえ奪われてしまう。  元聖女となったシリカは、バルトルトたちの謀略により、貧困国ロンダリアの『愚醜王ヴィルヘルム』のもとへと強制的に嫁ぐことになってしまう。無知蒙昧で不遜、それだけでなく容姿も醜いと噂の王である。  そんな不幸な境遇でありながらも彼女は前向きだった。 「陛下と国家に尽くします!」  シリカの行動により国民も国も、そして王ヴィルヘルムでさえも変わっていく。  そしてある事件を機に、シリカは奪われたはずの聖女の力に再び目覚める。失われたはずの蘇生聖術『リザレクション』を使ったことで、国情は一変。ロンダリアでは新たな聖女体制が敷かれ、国家再興の兆しを見せていた。  一方、聖女ドーリスの力がシリカに遠く及ばないことが判明する中、シリカの噂を聞きつけた枢機卿バルトルトは、シリカに帰還を要請してくる。しかし、すでに何もかもが手遅れだった。

【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?

恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。 しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。 追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。 フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。 ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。 記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。 一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた── ※小説家になろうにも投稿しています いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!

追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜

三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。 「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」 ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。 「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」 メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。 そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。 「頑張りますね、魔王さま!」 「……」(かわいい……) 一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。 「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」 国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……? 即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。 ※小説家になろうさんにも掲載

【完結】薬学はお遊びだと言われたので、疫病の地でその価値を証明します!

きまま
恋愛
薄暗い部屋の隅、背の高い本棚に囲まれて一人。エリシアは読書に耽っていた。 周囲の貴族令嬢たちは舞踏会で盛り上がっている時刻。そんな中、彼女は埃の匂いに包まれて、分厚い薬草学の本に指先を滑らせていた。文字を追う彼女の姿は繊細で、金の髪を揺らし、酷くここには場違いのように見える。 「――その薬草は、熱病にも効くとされている」 低い声が突然、彼女の背後から降ってくる。 振り返った先に立っていたのは、辺境の領主の紋章をつけた青年、エルンだった。 不躾な言葉に眉をひそめかけたが、その瞳は真剣で、嘲りの色はなかった。 「ご存じなのですか?」 思わず彼女は問い返す。 「私の方では大事な薬草だから。けれど、君ほど薬草に詳しくはないみたいだ。——私は君のその花飾りの名前を知らない」 彼は本を覗き込み、素直にそう言った。 胸の奥がかすかに震える。 ――馬鹿にされなかった。 初めての感覚に、彼女は言葉を失い、本を閉じる手が少しだけ震え、戸惑った笑みを見せた。 ※拙い文章です。読みにくい文章があるかもしれません。 ※自分都合の解釈や設定などがあります。ご容赦ください。 ※本作品は別サイトにも掲載中です。

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

処理中です...