貴方の私。〜おいでませ、番さま。〜

水無月琉架

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2 オレの話をしようか。

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オレの話をしようか。

オレの名前はイツキ。冒険者になってはや十数年。気がつけは歳も三十路を超えていた。

元々冒険なんかには縁の無い生活を送っていたんだ。勉強、勉強、勉強。もう少して卒業、って時に転機は訪れた、というか。起こった。

学費は親が払ってくれたが生活費は自分で稼いでいたんだ。卒論にバイト。忙しかったし、実際とても大変だった。でもすごく充実した毎日でもあった。

そんな毎日を過ごしていたんだ。

でもあの日。

それは一変した。

「危ない!」

思わずそう叫んで咄嗟に動いた自分。ドンっ、という鈍い音と身体に走る衝撃。誰かの悲鳴に、救急車、と叫ぶ声。ママ~お兄ちゃんがぁ、と言う涙声だけど可愛らしい声も聞こえた。

お兄さん大丈夫か、子供は無事だ、アンタもがんばれ、救急車来るからな、と声がかけられていたけれど…

指先から冷えていく感覚、掛けられる声はどんどん遠くなり視界も周りから暗くなって…あぁもうダメなんだ、父さん、母さん、ゴメン。美月、大樹、出かける約束守れなくてごめんな…兄ちゃん帰れないわ…

そうして意識は完全に途絶えた。

うん、死んだと思っていたんだ。というか間違いなく一回死んだはず。だけど。

「貴方の死は予定外でした。なので別世界で残りの人生謳歌して下さいね。ある程度のお役立ち能力はつけてあげます。では良い人生を。」

ってあまりにも無責任な声と共に何処かに放り出された感覚がして。

えっ?って思った時には洋服はボロボロのまま、そして見知らぬ場所に放り出されていたんだよな…

それからあまりの出来事に訳もわからず、どうしていいものやらボーゼンとしていた処にたまたま通りかかった商人のキャラバンに拾われて。次の町に着くまで色々と教えてもらったんだ。

「へぇ~お兄さんは別の世界から来たって事かい?だからそんな不思議な服着てるのか。」

商人の一人、オレの世話をしてくれたおっちゃんがいやー、稀人って本当にいるんだ、って。稀人?って聞けば。

どうやらこの世界はオレの様に時々他の世界から"稀人"が現れるそうで冒険者ギルドに行けば色々手当てが貰えるらしく。ギルドのある町まで同行させてくれる事になったんだ。

道すがらこの世界の話をおっちゃんが色々教えてくれた。まず自分達人族の他にも色々な種族がいる事。人族の次に多いのは獣人と呼ばれる種族で様々な動物の特徴を持ち比較的人族と友好的であるとか。滅多にお目にかかれないのが精霊族や魔族であちら側が気に入れば交流できるとか。

拾われたのが商人のキャラバンだったのは幸運で当面の生活に必要な物を用立ててくれたんだ。何でも稀人を保護した場合はその保護した人にも報償が貰えるらしくオレにかかった費用は返してもらえるって事。

だから気にしないで受け取りなさい、って。

なんだか申し訳なくて何か出来ること、って探したら食事の用意は当番制との事だった。ギルドのある町まで数日間オレが当番を買って出る事にした。

で、この世界の材料で料理に挑戦する事になったんだけどさ。元の世界と同じモノもあればお初なモノもあったワケで。悪戦苦闘しながらもなんとか料理し振る舞った。

一番人気は予想通りと言うか、唐揚げだった。なんだか油で揚げると言う発想がなかった様で、商人のおっちゃん達、興味深々でこのレシピを売ってもいいか、ってさ。

もちろんオッケーしたさ。そしたら売れたらいくばくかマージンくれるって。商品を売って商売するなら売り上げの一部も入る様にしてくれるって。

マジでいい人達に拾われたかも。

んで、道すがらお金の単位やら物価やら、コレからの生活に必要になりそうな知識を得たワケ。
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