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一部 旅立ち編
神を暴く者達
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遥か昔、至高の王がいた。歴史上、最高の王と呼ばれた王だ。
その治世は六百年と、歴代の平均を下回る長さ。若くして王となり、世界統合を成し、消し去られた歴史を戻した王。
統治していた東の大陸シェサーラのみならず、中央の大陸ベル・ロードの復興へ手を貸し、西の大陸エルゼートの統治にまで手を貸す。世界は安定した平和に包まれ、光り溢れていた。
種族の壁すら打ち砕き、長年交流が絶たれていた天使族とも関係を築く。
至高の王は亡き父親の跡を継ぐように医者としても働き、時間を作っては病人を診る。街の片隅で診療所を開いていたが、お金は一切取らず、流行り病の噂を聞けば直接診に行っていた。
そんな王を民達は、聖なる王と称えた。王の中の王であると。これほどの王は、過去にも未来にも二度と現れないだろう。
そう民に言わせるだけの支持率を得た。
良き王には、良き魔法槍士がつく。絶対の監視者とも呼ばれる、王の補佐官。王に絶対の忠誠を誓い、裏切らない存在。
故に、王が間違った指示を出せば、恐怖の存在となる恐ろしい存在だ。
薄暗い部屋の中、黒いローブを被った者達が集まっている。全身をローブで包み、わかるのは体格のみ。
誰かが明かりを灯す。部屋の中を照らす光と照らされた部屋の中。壁一面に書かれている謎の文字。
文字は精霊の古代文字であった。世界の始まりから存在すると言われている文字でもある。
喜びの声が上がった。探し求めていたものがみつかり、顔を見合わせて頷く。
「さぁ、出番だ。これを読め」
声からして、おそらく男性であろう。一人の人物が振り返り言う。
「嫌だ、と言ったら?」
ローブを着た者達に、両側から拘束された男性が答える。拘束されているにも関わらず、その瞳には獣のようなギラつきがあった。
相手が油断すれば、すぐさま襲いかかるつもりでいるのだ。わかっているから、ローブの集団も警戒しながら見ている。
「お前を殺して、お前の妻に読ませる。と言いたいが、妻では読めないのだろ」
精霊の古代文字を読めるのは高位の精霊か、それともその力を持つ者。精霊眼と呼ばれる力を持つ者だ。
だからこそ彼らは男性を捕らえた。この家系に精霊眼が継がれていると知ったから。
強気な男性に、ローブを着た男性が嫌な笑い声を上げた。他に選択肢がないとわかりながら、それでもなお抗う男性がおかしくて仕方がないのだ。
「お前が断ればガキに読ませる。精霊眼を発動させるために、目の前で母親の死でも見せればいいだろ」
ローブを着た一人が幼い子供を抱えていた。子供はぐったりしているが、気を失っているだけのようだ。
「さぁ、どうする? 読んでくれるならガキと女は帰してやる。ちょっとだけ我らのことを忘れてもらうがね」
読めば妻子は助ける。つまり、自分は助けるつもりがないということ。読まなければ皆殺し。
初めから、男性の答えはひとつしかなかった。そのために、家族だけでいる瞬間を狙っていたのだ。
精霊眼は一歩間違えれば危険な力。自分達が被害に遭わないためには、人質をとるのが一番。
「……わかった。読もう。だから、必ず帰すと約束しろ」
「無論だ。そこまで酷なことはしないさ」
フードで隠れた表情は、ニヤリと笑っていた。
ついに待ち望んだものが手に入る。そう思えば、笑いをこらえることができなかったのだ。
聖なる王が統治する世、精霊眼を持つ魔法槍士がいた。魔法槍士はひとつの文献を見つける。
文献は精霊の古代文字で書かれていた。内容を知った魔法槍士は、危険と判断し封印したのだ。
見つけた彼らは、これが精霊眼ならば読むことができると知り、ずっと狙っていた。
「これですべてか」
「そうだ」
「つれていけ」
命じると同時に部屋からローブの集団がいなくなる。残されたのは一人の男性と小柄な人物。
二人きりになれば、男性はフードをとる。長く黒い髪が背中に流れ落ち、黒い瞳が小柄な人物を見た。
「準備は出来ているか?」
「はい。必要な物はすべて集まっています」
小柄な人物は無機質に答える。声は高くもなく、低くもない。子供であれば、女の子とも男の子とも言えるような印象だ。
「よし、ならばすぐに取りかかろう」
「はい」
暗闇の中、彼らはひっそりと動き出した。誰にも存在を認知されていない集団が。
その目的など誰も知らない。ただ言えるのは、彼らのやったことにより、過去すら巻き込んだということ。
過去を巻き込み、すべてを巻き込んだ者。それは――――――。
.
その治世は六百年と、歴代の平均を下回る長さ。若くして王となり、世界統合を成し、消し去られた歴史を戻した王。
統治していた東の大陸シェサーラのみならず、中央の大陸ベル・ロードの復興へ手を貸し、西の大陸エルゼートの統治にまで手を貸す。世界は安定した平和に包まれ、光り溢れていた。
種族の壁すら打ち砕き、長年交流が絶たれていた天使族とも関係を築く。
至高の王は亡き父親の跡を継ぐように医者としても働き、時間を作っては病人を診る。街の片隅で診療所を開いていたが、お金は一切取らず、流行り病の噂を聞けば直接診に行っていた。
そんな王を民達は、聖なる王と称えた。王の中の王であると。これほどの王は、過去にも未来にも二度と現れないだろう。
そう民に言わせるだけの支持率を得た。
良き王には、良き魔法槍士がつく。絶対の監視者とも呼ばれる、王の補佐官。王に絶対の忠誠を誓い、裏切らない存在。
故に、王が間違った指示を出せば、恐怖の存在となる恐ろしい存在だ。
薄暗い部屋の中、黒いローブを被った者達が集まっている。全身をローブで包み、わかるのは体格のみ。
誰かが明かりを灯す。部屋の中を照らす光と照らされた部屋の中。壁一面に書かれている謎の文字。
文字は精霊の古代文字であった。世界の始まりから存在すると言われている文字でもある。
喜びの声が上がった。探し求めていたものがみつかり、顔を見合わせて頷く。
「さぁ、出番だ。これを読め」
声からして、おそらく男性であろう。一人の人物が振り返り言う。
「嫌だ、と言ったら?」
ローブを着た者達に、両側から拘束された男性が答える。拘束されているにも関わらず、その瞳には獣のようなギラつきがあった。
相手が油断すれば、すぐさま襲いかかるつもりでいるのだ。わかっているから、ローブの集団も警戒しながら見ている。
「お前を殺して、お前の妻に読ませる。と言いたいが、妻では読めないのだろ」
精霊の古代文字を読めるのは高位の精霊か、それともその力を持つ者。精霊眼と呼ばれる力を持つ者だ。
だからこそ彼らは男性を捕らえた。この家系に精霊眼が継がれていると知ったから。
強気な男性に、ローブを着た男性が嫌な笑い声を上げた。他に選択肢がないとわかりながら、それでもなお抗う男性がおかしくて仕方がないのだ。
「お前が断ればガキに読ませる。精霊眼を発動させるために、目の前で母親の死でも見せればいいだろ」
ローブを着た一人が幼い子供を抱えていた。子供はぐったりしているが、気を失っているだけのようだ。
「さぁ、どうする? 読んでくれるならガキと女は帰してやる。ちょっとだけ我らのことを忘れてもらうがね」
読めば妻子は助ける。つまり、自分は助けるつもりがないということ。読まなければ皆殺し。
初めから、男性の答えはひとつしかなかった。そのために、家族だけでいる瞬間を狙っていたのだ。
精霊眼は一歩間違えれば危険な力。自分達が被害に遭わないためには、人質をとるのが一番。
「……わかった。読もう。だから、必ず帰すと約束しろ」
「無論だ。そこまで酷なことはしないさ」
フードで隠れた表情は、ニヤリと笑っていた。
ついに待ち望んだものが手に入る。そう思えば、笑いをこらえることができなかったのだ。
聖なる王が統治する世、精霊眼を持つ魔法槍士がいた。魔法槍士はひとつの文献を見つける。
文献は精霊の古代文字で書かれていた。内容を知った魔法槍士は、危険と判断し封印したのだ。
見つけた彼らは、これが精霊眼ならば読むことができると知り、ずっと狙っていた。
「これですべてか」
「そうだ」
「つれていけ」
命じると同時に部屋からローブの集団がいなくなる。残されたのは一人の男性と小柄な人物。
二人きりになれば、男性はフードをとる。長く黒い髪が背中に流れ落ち、黒い瞳が小柄な人物を見た。
「準備は出来ているか?」
「はい。必要な物はすべて集まっています」
小柄な人物は無機質に答える。声は高くもなく、低くもない。子供であれば、女の子とも男の子とも言えるような印象だ。
「よし、ならばすぐに取りかかろう」
「はい」
暗闇の中、彼らはひっそりと動き出した。誰にも存在を認知されていない集団が。
その目的など誰も知らない。ただ言えるのは、彼らのやったことにより、過去すら巻き込んだということ。
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