19 / 174
二部 過去編
遡る過去2
しおりを挟む
よくはわからないが、柊稀は二人になら話してもいい気がした。だから事情を話そうとしたが、止められてしまう。
「言っただろ。飛狛が来るんだ。二度手間になるから、来てから事情は聞く」
「あ、はい」
魔法槍士、そんなすごい人物に会うと考えれば、酷く緊張した。それも過去の魔法槍士だ。
火竜族にも名前が知られているほどの強者。どれだけたくましい人物なのか、などと想像も膨らむ。
「あ、名前聞いてねぇし、名乗ってねぇや。俺は秋星だ」
「僕は夜秋。魔法槍士の補佐官です」
「補佐官!? だから……」
知っているような気がしたのは、家にある魔法槍士についての本が原因。中に補佐官という表記があり、人物の特徴もそこに書かれていたのだ。
おそらくその中に、二人のことも書かれていたのだろう。うろ覚えであったが、目が特徴的だったことから、なんとなくだが覚えていたのだ。
「僕は柊稀。この子は柏羅です」
少し考え込んでしまったが、ハッとしたように名乗り、腕の中で眠る少女を見た。
眠っている少女へ視線を向ける夜秋。
「その子は部屋で寝かせておこうか」
「はい」
夜秋や秋星にはどれほど離れた時代からきたかわからないが、幼い少女だ。身体に負担がかかっているのだろうと推測することはできる。
しばらくは目を覚まさないかもしれないと思えば、こんなところではなく、ちゃんとした部屋で寝かせておくのがいいだろう。
「秋星、頼みましたよ」
「はぁ? 俺かよ」
「当然でしょ」
視線だけで語り掛ければ、意味を理解した秋星が肩を竦める。
「しょうがねぇな」
少し待ってろと言葉を残し、塔の上へ姿を消す秋星。普段あまり使わないため、掃除をしないと部屋を使えなかった。
そのため、まずは清掃してくると向かったのだが、その傍らでのんびりしている夜秋に二人の関係性が伺えた瞬間でもある。
もっと本を読んでおけばよかったと、くつろぐ二人を見ながら思う。
誰だって、自分が過去に行くなど予測できないことではあるが、読んでいれば二人のことがわかったかもしれない。
「飛狛、いつ頃来るか言ってたか?」
「聞いてないです。いつも通りなら夜でしょうね」
それも遅い時間になるだろうと夜秋は言う。
「なら、ちょっと付き合え柊稀。火竜なら、戦えるよな」
運動がしたいと、不敵な笑みを浮かべる秋星。
「僕、弱いですよ」
どう見ても目の前の人物は強そうだ。自分なんかでは相手にならないかもしれない。
大会で本選すら通過したことがないと言えば、二人は笑った。
「そんなこと気にしねぇよ」
「なんなら、秋星が稽古でもしてあげたらどうですか?」
「おっ、やるか!?」
稽古という言葉に柊稀は反応した。なぜ過去に来たかはわからないが、強くなるためにはいいチャンスかもしれない。
幸いにも、目の前にいるのは魔法槍士の補佐官だ。
「お願いします!」
彼らから盗めるものを盗みたい。柊稀は剣を握り締めた。
塔を出てすぐの広場。二人は中庭だと教えたが、そこで稽古をつけてもらうことにした。
剣を抜いた瞬間、二人は酷く驚いた表情を見せる。剣に見覚えがあったからだ。
「柊稀、あなたどこの出ですか?」
「ピナスですが」
それがどうしたのかと見れば、夜秋は納得したように頷く。
「同郷でしたか」
「なるほどなぁ。だからその剣か」
今度は柊稀が驚く番。同郷ということも驚いたが、自分が持つ剣のことを知っているのにも驚いた。
「この剣、知ってるんですか?」
「まぁな。俺から一本でもとれたら、教えてやってもいいぜ!」
(速い!)
踏み込んだと思えば、一瞬にして目の前まで間合いが詰まる。
なんとか受け止めたが、重みを感じないと思ったときには、すでに二発目が迫っていた。
これが魔法槍士の補佐官なのか。実力の違いに驚いたほどだ。
何回か繰り返すと、秋星の唐突に動きは止まる。そのまま考える素振りを見せるので、柊稀は不思議そうに見た。
「どう思う?」
「剣術に関してはなんとも。僕は槍ですから」
「そうじゃねぇよ」
よくわからない違和感。彼の中に膜を感じるような、そんな感覚を秋星は感じていた。
「魔力の方なら、あとで飛狛に聞いた方が早いですよ」
「あー、だよな。あいつの目ならわかるか」
魔力の会話に、柊稀はさらにわからなくなる。魔法はほとんど使えないため、自分には魔力がないと思っているからだ。
もちろん、誰かに聞いたことがあるわけではない。人によっては、街に行ったときに素質があるかないか聞くが、無関心だったためだ。
「わかんねぇこと考えても仕方ねぇ。こっからは指導にしてやるから、こいよ」
今までは柊稀の実力を測るためのもの。打ち込んでこいという秋星に、柊稀は剣を構え直す。
.
「言っただろ。飛狛が来るんだ。二度手間になるから、来てから事情は聞く」
「あ、はい」
魔法槍士、そんなすごい人物に会うと考えれば、酷く緊張した。それも過去の魔法槍士だ。
火竜族にも名前が知られているほどの強者。どれだけたくましい人物なのか、などと想像も膨らむ。
「あ、名前聞いてねぇし、名乗ってねぇや。俺は秋星だ」
「僕は夜秋。魔法槍士の補佐官です」
「補佐官!? だから……」
知っているような気がしたのは、家にある魔法槍士についての本が原因。中に補佐官という表記があり、人物の特徴もそこに書かれていたのだ。
おそらくその中に、二人のことも書かれていたのだろう。うろ覚えであったが、目が特徴的だったことから、なんとなくだが覚えていたのだ。
「僕は柊稀。この子は柏羅です」
少し考え込んでしまったが、ハッとしたように名乗り、腕の中で眠る少女を見た。
眠っている少女へ視線を向ける夜秋。
「その子は部屋で寝かせておこうか」
「はい」
夜秋や秋星にはどれほど離れた時代からきたかわからないが、幼い少女だ。身体に負担がかかっているのだろうと推測することはできる。
しばらくは目を覚まさないかもしれないと思えば、こんなところではなく、ちゃんとした部屋で寝かせておくのがいいだろう。
「秋星、頼みましたよ」
「はぁ? 俺かよ」
「当然でしょ」
視線だけで語り掛ければ、意味を理解した秋星が肩を竦める。
「しょうがねぇな」
少し待ってろと言葉を残し、塔の上へ姿を消す秋星。普段あまり使わないため、掃除をしないと部屋を使えなかった。
そのため、まずは清掃してくると向かったのだが、その傍らでのんびりしている夜秋に二人の関係性が伺えた瞬間でもある。
もっと本を読んでおけばよかったと、くつろぐ二人を見ながら思う。
誰だって、自分が過去に行くなど予測できないことではあるが、読んでいれば二人のことがわかったかもしれない。
「飛狛、いつ頃来るか言ってたか?」
「聞いてないです。いつも通りなら夜でしょうね」
それも遅い時間になるだろうと夜秋は言う。
「なら、ちょっと付き合え柊稀。火竜なら、戦えるよな」
運動がしたいと、不敵な笑みを浮かべる秋星。
「僕、弱いですよ」
どう見ても目の前の人物は強そうだ。自分なんかでは相手にならないかもしれない。
大会で本選すら通過したことがないと言えば、二人は笑った。
「そんなこと気にしねぇよ」
「なんなら、秋星が稽古でもしてあげたらどうですか?」
「おっ、やるか!?」
稽古という言葉に柊稀は反応した。なぜ過去に来たかはわからないが、強くなるためにはいいチャンスかもしれない。
幸いにも、目の前にいるのは魔法槍士の補佐官だ。
「お願いします!」
彼らから盗めるものを盗みたい。柊稀は剣を握り締めた。
塔を出てすぐの広場。二人は中庭だと教えたが、そこで稽古をつけてもらうことにした。
剣を抜いた瞬間、二人は酷く驚いた表情を見せる。剣に見覚えがあったからだ。
「柊稀、あなたどこの出ですか?」
「ピナスですが」
それがどうしたのかと見れば、夜秋は納得したように頷く。
「同郷でしたか」
「なるほどなぁ。だからその剣か」
今度は柊稀が驚く番。同郷ということも驚いたが、自分が持つ剣のことを知っているのにも驚いた。
「この剣、知ってるんですか?」
「まぁな。俺から一本でもとれたら、教えてやってもいいぜ!」
(速い!)
踏み込んだと思えば、一瞬にして目の前まで間合いが詰まる。
なんとか受け止めたが、重みを感じないと思ったときには、すでに二発目が迫っていた。
これが魔法槍士の補佐官なのか。実力の違いに驚いたほどだ。
何回か繰り返すと、秋星の唐突に動きは止まる。そのまま考える素振りを見せるので、柊稀は不思議そうに見た。
「どう思う?」
「剣術に関してはなんとも。僕は槍ですから」
「そうじゃねぇよ」
よくわからない違和感。彼の中に膜を感じるような、そんな感覚を秋星は感じていた。
「魔力の方なら、あとで飛狛に聞いた方が早いですよ」
「あー、だよな。あいつの目ならわかるか」
魔力の会話に、柊稀はさらにわからなくなる。魔法はほとんど使えないため、自分には魔力がないと思っているからだ。
もちろん、誰かに聞いたことがあるわけではない。人によっては、街に行ったときに素質があるかないか聞くが、無関心だったためだ。
「わかんねぇこと考えても仕方ねぇ。こっからは指導にしてやるから、こいよ」
今までは柊稀の実力を測るためのもの。打ち込んでこいという秋星に、柊稀は剣を構え直す。
.
0
あなたにおすすめの小説
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―
酒の飲めない飲んだくれ
ファンタジー
俺は一度、終わりを迎えた。
でも――もう一度だけ、生きてみようと思った。
女神に導かれ、空の海を旅する青年。
特別な船と、「影」の船員たちと共に、無限の空を渡る。
絶望の果てに与えられた“過剰な恩恵”。
それは、ひとりの女神の「願い」から生まれたものだった。
彼の旅路はやがて、女神の望みそのものを問い直す。
――絶望の果て、その先から始まる、再生のハイファンタジー戦記。
その歩みが世界を、そして自分自身を変えていく。
これは、ただの俺の旅の物語。
『祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―』
その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?
行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。
貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。
元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。
これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。
※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑)
※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。
※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。
慈愛と復讐の間
レクフル
ファンタジー
とある国に二人の赤子が生まれた。
一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。
慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。
これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。
だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。
大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。
そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。
そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。
慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。
想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……
異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~
タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。
時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま!
「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」
ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは――
公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!?
おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。
「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」
精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
僕らの10パーセントは無限大
華子
青春
10%の確率でしか未来を生きられない少女と
過去に辛い経験をしたことがある幼ななじみと
やたらとポジティブなホームレス
「あり得ない今を生きてるんだったら、あり得ない未来だってあるんじゃねえの?」
「そうやって、信じたいものを信じて生きる人生って、楽しいもんだよ」
もし、あたなら。
10パーセントの確率で訪れる幸せな未来と
90パーセントの確率で訪れる悲惨な未来。
そのどちらを信じますか。
***
心臓に病を患う和子(わこ)は、医者からアメリカでの手術を勧められるが、成功率10パーセントというあまりにも酷な現実に打ちひしがれ、渡米する勇気が出ずにいる。しかしこのまま日本にいても、死を待つだけ。
追い詰められた和子は、誰に何をされても気に食わない日々が続くが、そんな時出逢ったやたらとポジティブなホームレスに、段々と影響を受けていく。
幼ななじみの裕一にも支えられながら、彼女が前を向くまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる