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三部 神具編
失われたもの3
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――朱華殿も族長夫妻も、邪教集団が造り上げた存在です。造られた生き物です――
「そんなこと……」
あるのか。あるのだろう。だから朱華と華朱は同じ顔をしているのだ。
「原理で言えば、黒欧と同じか?」
――いいえ。私とは少し違うようです。実在した人物の一部を使って造り、同じ能力を持つみたいです。ですから、華朱殿と朱華殿は同じ存在といってもいいでしょう――
「同じ存在……」
違う、と彼は思う。同じではない。
「同じなんかじゃない。朱華は朱華。華朱は華朱だよ」
――言うと思っていました。それでいいんです。それを彼女にも教えてあげてください――
満足そうに微笑む黒欧に、柊稀は頷く。
彼女が気にしていることは、このことなのだ。造られた存在だから、華朱がいるから。
だから、もう傍にいられないと言うなら、柊稀の気持ちも定まった。なにがなんでも連れ戻そうと。
朱華と襲撃者であった華朱。その事実を知った直後、地面が激しく揺れだした。
「始まりの力が…失われた……」
「柏羅!」
気絶していた少女は、力強く輝く瞳で見上げてくる。可愛らしい少女ではなく、始祖竜として。
「取り戻せ…我が力が失われれば…やがて…世界も消滅する……」
――やはり、こうなりましたか――
黒欧の言葉は、過去での推測が当たったことを示す。過去で飛狛と白秋が辿り着いた答えに。
(あの人と、戦う……)
それは柊稀にとって、強い敵が現れたということ。
そこまではわかったが。それだけしかわからない。詳しくは聞き出さなければ。
「あれ…お兄ちゃん?」
「帰ってきたよ」
いつもの少女に戻ったのを知り、笑いかける。もとの世界だと教えてあげれば、わかりましたと頷く。
幼いが賢い子かもしれない。少なくとも、自分の置かれている状況はしっかりと把握できる。
少女に黒耀を紹介し、話を戻す。おそらくこの事態についても、黒欧がなにかを知っている。
――皆さんが揃ってから話すのが、一番かと思います――
けれど、彼はそう告げた。これから琅悸達と合流をするのだからと。
「確かに、二度手間になるな」
――はい。それに、場所的にもこれ以上は不味いかと――
世界がどうとか話すには、誰からも聞かれない場所で話すのが一番だ。不本意に民を不安がらせることになる。
「なら、ベリヤードに行くか。氷穂に虚空と合流するよう告げてある」
合流して詳しい話をしよう。提案されれば柊稀に異論はない。
琅悸や氷穂にも話さなければいけないし、ここでは不安がらせることもわかる。
なによりも、突然いなくなってしまった。二人に心配かけているかもしれないし、あのあとの状況も気になる。
柊稀自身も早く会いたかったのだ。
――ベリヤードへ行く前に、立ち寄りたい場所があります。これを確認できれば、過去で立てられた推測が正しいかわかります――
「過去で立てられた推測……」
確認したい。あの二人が立てた推測なら、間違いはないと柊稀は思う。
だからこそ、間違いがないことを確認し、自分の中でも覚悟を決めたかったのだ。あの人と戦うという覚悟を。
「僕は行くことに賛成だ」
「……なら、行ってみよう。場所はどこだ」
――黒蒼殿。正しければ、激しい戦いになると思われます――
常に穏やかな黒欧が、このときだけは厳しい表情を浮かべていた。
とても珍しいことだけに、黒耀も怪訝そうに相棒を見る。
「どうした」
――すみません。考えただけで不愉快だったもので――
「そう、か」
何事にも表情を変えず、ただ魔法槍士の家系を見守っている魔道生物。
歴史のすべてを見ていた彼が、不愉快に感じることが起きる。それはとてもよくないことだろうと思えば、黒耀は気を引き締めた。
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「そんなこと……」
あるのか。あるのだろう。だから朱華と華朱は同じ顔をしているのだ。
「原理で言えば、黒欧と同じか?」
――いいえ。私とは少し違うようです。実在した人物の一部を使って造り、同じ能力を持つみたいです。ですから、華朱殿と朱華殿は同じ存在といってもいいでしょう――
「同じ存在……」
違う、と彼は思う。同じではない。
「同じなんかじゃない。朱華は朱華。華朱は華朱だよ」
――言うと思っていました。それでいいんです。それを彼女にも教えてあげてください――
満足そうに微笑む黒欧に、柊稀は頷く。
彼女が気にしていることは、このことなのだ。造られた存在だから、華朱がいるから。
だから、もう傍にいられないと言うなら、柊稀の気持ちも定まった。なにがなんでも連れ戻そうと。
朱華と襲撃者であった華朱。その事実を知った直後、地面が激しく揺れだした。
「始まりの力が…失われた……」
「柏羅!」
気絶していた少女は、力強く輝く瞳で見上げてくる。可愛らしい少女ではなく、始祖竜として。
「取り戻せ…我が力が失われれば…やがて…世界も消滅する……」
――やはり、こうなりましたか――
黒欧の言葉は、過去での推測が当たったことを示す。過去で飛狛と白秋が辿り着いた答えに。
(あの人と、戦う……)
それは柊稀にとって、強い敵が現れたということ。
そこまではわかったが。それだけしかわからない。詳しくは聞き出さなければ。
「あれ…お兄ちゃん?」
「帰ってきたよ」
いつもの少女に戻ったのを知り、笑いかける。もとの世界だと教えてあげれば、わかりましたと頷く。
幼いが賢い子かもしれない。少なくとも、自分の置かれている状況はしっかりと把握できる。
少女に黒耀を紹介し、話を戻す。おそらくこの事態についても、黒欧がなにかを知っている。
――皆さんが揃ってから話すのが、一番かと思います――
けれど、彼はそう告げた。これから琅悸達と合流をするのだからと。
「確かに、二度手間になるな」
――はい。それに、場所的にもこれ以上は不味いかと――
世界がどうとか話すには、誰からも聞かれない場所で話すのが一番だ。不本意に民を不安がらせることになる。
「なら、ベリヤードに行くか。氷穂に虚空と合流するよう告げてある」
合流して詳しい話をしよう。提案されれば柊稀に異論はない。
琅悸や氷穂にも話さなければいけないし、ここでは不安がらせることもわかる。
なによりも、突然いなくなってしまった。二人に心配かけているかもしれないし、あのあとの状況も気になる。
柊稀自身も早く会いたかったのだ。
――ベリヤードへ行く前に、立ち寄りたい場所があります。これを確認できれば、過去で立てられた推測が正しいかわかります――
「過去で立てられた推測……」
確認したい。あの二人が立てた推測なら、間違いはないと柊稀は思う。
だからこそ、間違いがないことを確認し、自分の中でも覚悟を決めたかったのだ。あの人と戦うという覚悟を。
「僕は行くことに賛成だ」
「……なら、行ってみよう。場所はどこだ」
――黒蒼殿。正しければ、激しい戦いになると思われます――
常に穏やかな黒欧が、このときだけは厳しい表情を浮かべていた。
とても珍しいことだけに、黒耀も怪訝そうに相棒を見る。
「どうした」
――すみません。考えただけで不愉快だったもので――
「そう、か」
何事にも表情を変えず、ただ魔法槍士の家系を見守っている魔道生物。
歴史のすべてを見ていた彼が、不愉快に感じることが起きる。それはとてもよくないことだろうと思えば、黒耀は気を引き締めた。
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