始まりの竜

朱璃 翼

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六部 最終決戦編

孤独の記憶

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 さすがに待ち伏せは、今までとは違う強さを見せていたが、二人は苦戦することもない。

 蒼翔と莱緋の援護も必要ないぐらい、楽な戦いだったと言えるだろう。

「いやぁ、さすがだなぁ」

「そうですね。僕達は見ているだけでいけそうですよ」

 にこやかに笑う双子だが、なにかあれば動くとわかっているからこそ誰も文句を言わないのだ。

 過去も未来も関係ない。琅悸の一件が終わったとき、三人はそう言った。今からは肩書きを捨てて動くと。

 それは手を貸すという意味であり、断言した以上、二人はそのつもりでここへいる。

 三人の決断に対して、天竜王である陽霜と星霜はなにも言わなかった。協力を受け入れたのだ。

「中庭はもうすぐです。行きましょう」

「ですね。飛狛達が正面広場で待ち伏せを受けない限り、僕達の方が時間はかかります」

 二階へ回った分、遠回りになってしまった。待たせないためにも、ここからはふざけている場合ではない。

「待ち伏せの可能性は、高そうな広場だったな」

「あぁ、見た目に異変がないのが不気味だった」

 星霜と虚空はなにもないのが逆に気になっていた。通路には待ち伏せがいて、広場になにもない現状に。

「とにかく、いこうよ。いかなきゃ始まらないよ」

 蒼翔が言う通りだと、一同頷く。あちらには魔法槍士が二人もいて、精霊眼の使い手が三人もいる。

 見えない仕掛けがあっても、対処可能なメンバーなのだ。

「夜秋!」

 一歩を踏み出した瞬間、秋星の表情が一転。先程までふざけていたのが嘘のような険しい表情になる。

 さすがに琅悸達にも緊張が走った。自分達が気付く前に彼が気付いたということが、やばさを物語っている気がしたのだ。

「……まさか」

 同じものを察した夜秋が、驚いたように片割れを見た。

「間違いねぇ」

 間違えるはずがない。これを自分達が間違えるなど、万にひとつとしてあり得ない。

 互いの意見を確認すれば、二人は同時に走り出す。周りが驚くのも気にせず。

「なにがあったんだ? ユフィ」

 お前なら知っているだろうと言うように問いかけられれば、ユフィも困ったように琅悸を見た。

「わかんねぇよ。俺、あの二人とそんな関わり……」

 そこまで言って、なにか心当たりがあったのか口ごもる。まさかと小さく呟き、しかしと否定。

 けれど二人があのような行動に出るのは、これしかないとも思えてしまう。

「とにかく行きましょう! 二人が危険かもしれません!」

 なにかを察知したのは間違いないだろう。それなら、迷うぐらいなら追った方がいい。なにかあってからでは遅いのだ。

 全員が頷くと、走り出した。

 そして、中庭へ出るのと同時に、双子の身体が吹き飛ばされるのを見た。

「うそ…だろ……」

 立ちはだかる敵を見て、ユフィが絶望の声を漏らす。相手が、あまりにもやばすぎて。




 一階の入り組んだ一本道を歩く柊稀達。特に変わったことはなく、待ち伏せは数回あっただけ。そのすべてを飛狛が運動だと片付けてしまったのだから、誰もが苦笑いを浮かべていた。

「不気味すぎるよなぁ」

 思わず漏らした言葉に、朱華も同意する。

「絶対に、侵入に気付いてるはずなんだよね。私はここに来たことないけど、噂で聞いたことがあるよ。マスターは建物の内部を把握しているんだって」

「マスター?」

 聞き返せば、そう呼ばれているのだと答えた。邪教集団を束ねる者のことだと。

 名前も顔も知らない。ただ一言、マスターに従えとだけ教え込まれたのだとも。

「あの少女については?」

 これまで、朱華に問うことは避けてきた黒燿。彼女が末端より少し上という立場であっても、情報を知っているようには思えなかったからだ。

 華朱の代わりとして過ごすこと、それだけが役目だった朱華へ、詳細を与えるような真似はしていないのは当然のこと。

 華朱や琅悸の一件に絡む謎の少女。邪教集団の一員なのは間違いがない。ダメ元で聞いてみようと思った。

「わからない。マスター以外の情報は与えられなかったから」

「側近というより、片腕的な存在かもしれないな。ただの幹部ではないだろ」

 琅悸の一件があったとき、マスターが琅悸だけいればいいと言った、という胸を少女は言っていたのだ。

 マスターが望むままに動く特別な存在。そのような気がしていた。

 どのような立場だったとしても、敵として現れる可能性は高い。気を付けろと黒耀は言う。

 どこで誰が見ているかわからない。ここは敵地に変わりないと警戒しながら歩いていれば、妙な気配を察知する。

(しまった。罠にはまった!)

 誰よりも早く気付いたのは飛狛であった。一気に精霊眼を発動させ、周囲を吹き飛ばす。

 発動の余波がまとわりつくなにかを吹き飛ばし、その力は仲間の身体すら弾くほどだ。

「飛狛さん!」

 黒くうねるなにかは、飛狛だけでも逃さないというように絡み付く。

 仲間を助けることを優先したことから、反応は遅れてしまったのだ。

「飛狛殿!」

 助けようと差し出された柊稀と黒耀の手は、黒い塊に弾かれた。そのまま身体を呑み込む光景に一同息を呑む。

「これ、私覚えてる……助けないと! 私や琅悸みたいになっちゃう!」

「つまり、はじめからみんなを狙うと見せかけて、彼が目的だったんだね。琅悸を抑えることができるだけの力の持ち主だから」

 陽霜の言葉に全員がまずいと思った。琅悸はここにいない。彼と深い繋がりを持つ双子も。

 取り込まれたら、助けることも止めることもできない。むしろ、自分達がやられてしまうだろう。

 琅悸との一戦を見ていたからこそ、自分達では彼とやり合えないと、誰もがわかっていた。

 その前に助け出すのだと、全員が視線を合わせて頷く。





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