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六部 最終決戦編
眠れる獅子の目覚め3
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意図的に身体の一部を竜化することも可能とする飛狛。それだけ、魔力を操ることに長けている証だ。
「飛狛さんは、どこを強化してるの?」
きれいに竜化できるということは、そのままどこを強化しているかもわからないということ。それ以前に、彼が強化するほどのことなど、そうないのではないかと思う。
――飛狛殿は、強化はされていません。その、膨大な魔力を使うだけです――
純粋に魔力として使うのだと言われれば、それはそれで恐ろしいのではないか、と誰もが思っていた。なにせ、彼本来の魔力性質は破壊だと知ったばかりだ。
それが無限に使われるようなもの。
「さっき……魔力を使わせちまったから……補うために竜化したんだ」
必要があったのかとすら思えたが、秋星の言葉に全員がハッとした。
飛狛は夜秋の魔眼を止めるために、自分の魔力を秋星に流れるよう仕向けたばかり。それにどれだけの魔力を使ったかはわからないが、補う必要が出たということ。
「どこまでも、クソッたれだ……」
秋星には、飛狛を攻撃した蒼い炎の持ち主がわかっていた。可愛い甥が魔力を補う行為にでたということは、魔法を使う必要があるということ。
これまでの流れからして、相手は一人しかいない。
炎を放った誰かは現れなかったが、代わりというように現れた大量の邪教集団。残されていたすべての人員が送り込まれたような状態に、飛狛は鋭い視線を向ける。
別段、これぐらいなら問題ないと思ってはいるが、油断するということもない。なぜなら、飛狛も炎を放った人物が誰かわかっているからだ。
これらすべてを蹴散らし、そちらの相手をしなくてはいけない。
(……本当に、不愉快だ。やってくれるな)
再び怒りが込み上げてくるのを感じながら、チラリと後ろを見る。
(夜秋、やばそうだな……)
秋星に抱えられ、表情はまるで見えない。それでもわかるのは、彼の目がすべてを見渡せるからだ。
「聖舞……いけ」
「みゅ」
肩に乗る聖舞へ呼びかければ、主の望みを確認するように見る。
「使っていいから、あの二人を死なせるな」
「みゅ、みゅ」
敵へ向けて動く飛狛の肩から飛び降りると、聖舞の身体は大きな獣の姿に変わった。
巫女殿で聖舞を知っている氷穂と琅悸ですら、さすがに知らないことで驚く。
腕に抱える片割れ。荒い呼吸を繰り返し、時折呻く声が漏れる。力は抑えられたが、不安定になってしまい本人を苦しめていた。
(夜秋……)
落ち着く気配がないどころか、徐々に悪化していく姿に抱く力が強くなる。
「わりぃ…俺らには魔眼の知識がねぇ。これ以上はどうもしてやれねぇ」
原因が魔眼である以上、どうしたらいいのかわからないと星霜が言えば、どことなく悔しげに陽霜が表情を歪めた。
双子の天竜王は、聖なる王へ憧れていた影響がとにかく強い。医療に関しても同じで、可能な限りの知識を身に着けてきた。
しかし、魔眼などという知識は存在しない。魔眼持ち自体が珍しく、一般的に広まっていないのが一番の原因だ。
どうにかしたい気持ちと、どうにもできない歯痒さ。拳を握り締め、歯を食いしばる二人に秋星は首を振る。
(この二人以上に、俺はなにもできねぇ。なぁ、夜秋……お前もこんな気持ちだったのか?)
過去に二度、秋星は死にかけていた。そのとき、片割れも同じような気持ちだったのだろうか。そう思わずにはいられない。
飛狛と同じ道を歩むと決めたとき、すべてを覚悟したはずだった。死ぬかもしれない覚悟だってしていた。そこに、片割れが先に死ぬかもという覚悟がなかったのだと気付く。
どうしようもない気持ちが膨れ上がり、夜秋を抱きしめることしかできない。
周囲は二人に痛々しい視線を送りながら、飛狛の戦いを見守る。現状をどうにかする術を、誰も持ち合わせてはいないから。
「聖舞…」
驚きの声が上がると同時に、秋星の身体に寄り添う真っ白な獣。ハッとしたように見上げた先に、飛狛の魔道生物がいる。
「なっ…なんで……」
彼はすべてを知っていた。当然、聖舞が飛狛にとってどのような存在かもだ。
「みゅー」
なにかを言われているが、残念ながらからこの鳴き声を理解できるのは飛狛のみ。自分ではわからないのだ。
「主が望んだから、だそうだ。飛狛が決めたなら、覆せないな」
ただし、同じ魔道生物である李黄には鳴き声だけでもわかる。
「本気で言ってるのか。聖舞はあいつの切り札だぞ」
それを自分達に使おうというのか。そう思う反面で、そうでもしなければ、片割れは救われないともわかっている。
だから飛狛は決断した。聖舞の力を夜秋に使うと。
使えば最後、聖舞の力はすぐに回復しない。なにかあった際に使うことはできないということだ。
「感謝……するべき、なんだよな」
解き放たれていく聖舞の力と、落ち着いていく片割れの様子。それらを見れば、飛狛の判断に感謝するべきなのだろうということはわかる。
わかるのだが、これは可愛い甥のために使わなければいけない力。その思いが素直に受け入れさせなかった。
「しゅ…せい……」
弱々しく見上げてきた片割れが、視線だけで問いかけてくる。意味は言わなくもわかる。
「寝てろ……」
今はなにも考えずに休めと言えば、夜秋の身体から力が抜けた。
(なにやってんだ……飛狛の切り札を使わせて、竜化までさせちまった……)
最初から、意地など張らずに父親を全員で相手するべきだったと後悔する。そうすれば、このような事態にはならなかったはず。
常に後悔などせず、前だけを見てきた秋星が初めて悔いた瞬間だ。
「秋星さん!」
夜秋が落ち着いたことで、気が抜けてしまったのかもしれない。身体が後ろへ倒れたのを見て、慌てて受け止めたのは柊稀だ。
「大丈夫。気を失っただけだよ」
安心させるように陽霜が言えば、あとはあちらだけというように、全員の視線は飛狛へ向けられた。
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「飛狛さんは、どこを強化してるの?」
きれいに竜化できるということは、そのままどこを強化しているかもわからないということ。それ以前に、彼が強化するほどのことなど、そうないのではないかと思う。
――飛狛殿は、強化はされていません。その、膨大な魔力を使うだけです――
純粋に魔力として使うのだと言われれば、それはそれで恐ろしいのではないか、と誰もが思っていた。なにせ、彼本来の魔力性質は破壊だと知ったばかりだ。
それが無限に使われるようなもの。
「さっき……魔力を使わせちまったから……補うために竜化したんだ」
必要があったのかとすら思えたが、秋星の言葉に全員がハッとした。
飛狛は夜秋の魔眼を止めるために、自分の魔力を秋星に流れるよう仕向けたばかり。それにどれだけの魔力を使ったかはわからないが、補う必要が出たということ。
「どこまでも、クソッたれだ……」
秋星には、飛狛を攻撃した蒼い炎の持ち主がわかっていた。可愛い甥が魔力を補う行為にでたということは、魔法を使う必要があるということ。
これまでの流れからして、相手は一人しかいない。
炎を放った誰かは現れなかったが、代わりというように現れた大量の邪教集団。残されていたすべての人員が送り込まれたような状態に、飛狛は鋭い視線を向ける。
別段、これぐらいなら問題ないと思ってはいるが、油断するということもない。なぜなら、飛狛も炎を放った人物が誰かわかっているからだ。
これらすべてを蹴散らし、そちらの相手をしなくてはいけない。
(……本当に、不愉快だ。やってくれるな)
再び怒りが込み上げてくるのを感じながら、チラリと後ろを見る。
(夜秋、やばそうだな……)
秋星に抱えられ、表情はまるで見えない。それでもわかるのは、彼の目がすべてを見渡せるからだ。
「聖舞……いけ」
「みゅ」
肩に乗る聖舞へ呼びかければ、主の望みを確認するように見る。
「使っていいから、あの二人を死なせるな」
「みゅ、みゅ」
敵へ向けて動く飛狛の肩から飛び降りると、聖舞の身体は大きな獣の姿に変わった。
巫女殿で聖舞を知っている氷穂と琅悸ですら、さすがに知らないことで驚く。
腕に抱える片割れ。荒い呼吸を繰り返し、時折呻く声が漏れる。力は抑えられたが、不安定になってしまい本人を苦しめていた。
(夜秋……)
落ち着く気配がないどころか、徐々に悪化していく姿に抱く力が強くなる。
「わりぃ…俺らには魔眼の知識がねぇ。これ以上はどうもしてやれねぇ」
原因が魔眼である以上、どうしたらいいのかわからないと星霜が言えば、どことなく悔しげに陽霜が表情を歪めた。
双子の天竜王は、聖なる王へ憧れていた影響がとにかく強い。医療に関しても同じで、可能な限りの知識を身に着けてきた。
しかし、魔眼などという知識は存在しない。魔眼持ち自体が珍しく、一般的に広まっていないのが一番の原因だ。
どうにかしたい気持ちと、どうにもできない歯痒さ。拳を握り締め、歯を食いしばる二人に秋星は首を振る。
(この二人以上に、俺はなにもできねぇ。なぁ、夜秋……お前もこんな気持ちだったのか?)
過去に二度、秋星は死にかけていた。そのとき、片割れも同じような気持ちだったのだろうか。そう思わずにはいられない。
飛狛と同じ道を歩むと決めたとき、すべてを覚悟したはずだった。死ぬかもしれない覚悟だってしていた。そこに、片割れが先に死ぬかもという覚悟がなかったのだと気付く。
どうしようもない気持ちが膨れ上がり、夜秋を抱きしめることしかできない。
周囲は二人に痛々しい視線を送りながら、飛狛の戦いを見守る。現状をどうにかする術を、誰も持ち合わせてはいないから。
「聖舞…」
驚きの声が上がると同時に、秋星の身体に寄り添う真っ白な獣。ハッとしたように見上げた先に、飛狛の魔道生物がいる。
「なっ…なんで……」
彼はすべてを知っていた。当然、聖舞が飛狛にとってどのような存在かもだ。
「みゅー」
なにかを言われているが、残念ながらからこの鳴き声を理解できるのは飛狛のみ。自分ではわからないのだ。
「主が望んだから、だそうだ。飛狛が決めたなら、覆せないな」
ただし、同じ魔道生物である李黄には鳴き声だけでもわかる。
「本気で言ってるのか。聖舞はあいつの切り札だぞ」
それを自分達に使おうというのか。そう思う反面で、そうでもしなければ、片割れは救われないともわかっている。
だから飛狛は決断した。聖舞の力を夜秋に使うと。
使えば最後、聖舞の力はすぐに回復しない。なにかあった際に使うことはできないということだ。
「感謝……するべき、なんだよな」
解き放たれていく聖舞の力と、落ち着いていく片割れの様子。それらを見れば、飛狛の判断に感謝するべきなのだろうということはわかる。
わかるのだが、これは可愛い甥のために使わなければいけない力。その思いが素直に受け入れさせなかった。
「しゅ…せい……」
弱々しく見上げてきた片割れが、視線だけで問いかけてくる。意味は言わなくもわかる。
「寝てろ……」
今はなにも考えずに休めと言えば、夜秋の身体から力が抜けた。
(なにやってんだ……飛狛の切り札を使わせて、竜化までさせちまった……)
最初から、意地など張らずに父親を全員で相手するべきだったと後悔する。そうすれば、このような事態にはならなかったはず。
常に後悔などせず、前だけを見てきた秋星が初めて悔いた瞬間だ。
「秋星さん!」
夜秋が落ち着いたことで、気が抜けてしまったのかもしれない。身体が後ろへ倒れたのを見て、慌てて受け止めたのは柊稀だ。
「大丈夫。気を失っただけだよ」
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