始まりの竜

朱璃 翼

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六部 最終決戦編

それぞれの道2

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 魔竜族の長であり、ベル・ロードの統治者である虚空。彼は帰るなり、すぐに二つのことを行った。

 言うまでもなく、ひとつは蒼翔のこと。間違いなく、彼女は問題を起こすと思ったのだ。

 その考えに間違いはなく。後日、楓斗から来た知らせにため息をつく。

「やると思ったんだ」

「苦労するな」

「慣れだ。蒼翔とやっていく上で、慣れしかない」

 苦笑いを浮かべる姿を見て、琅悸も笑う。

「よく笑うようになったな」

「……そんな、笑ってなかったか?」

「作り笑いぐらいわかる。誰かが愚痴りに来るからな」

 ユフィだとすぐにわかった。たまに出掛けているのは知っていたが、まさか虚空相手に愚痴っていようとは思わない。

「まぁ、これからは愚痴りにこないことを願う。蒼翔が来るからな」

 蒼翔とユフィの相手はごめんだと、虚空はため息をついた。これが何度目かわからないため息を。

 彼がやったもうひとつのこと。それは氷鬼の問題に手を出すことだった。

「よく覚えてたな」

「忘れちゃいけないと思っていたからな」

 話してくれるかという思いはあったが、問いかければ彼は隠すことなく答えた。

 むしろすべてを聞き出せば感心したほどだ。彼は殺した相手すべてを、しっかりと覚えていたのだ。

 その記憶力はさすがだと思ったほどに。

「目撃者がいないのはありがたいか」

 目撃者も殺していただけだが、あえてそれには触れない。

「まっ、なんとかするか」

「別に、俺を隠さなくていいけど」

 すべてを公開するつもりでいただけに、名前を伏せるつもりもなかった。ただ、虚空が任せろと言うから任せているだけ。

「お前の評価は高い」

 巫女護衛としてではなく、オルド自体でも彼は評価が高かった。それを落とすのは、街にも影響が出るかもしれない。

 しかも、そうなってしまえば思うつぼだ。

「それに、霜月に影響が出るかもしれないぞ」

「うっ…まずいな」

 その考えはなかったのだが、霜月も琅悸の家がやっていることに変わりはないのだ。妹に迷惑をかけるわけにはいかない。

 おそらくすべてを気付かれているのだろが、妹はなにも言わずにいてくれる。なにも言わず、それでいて助けてくれているだけに、これ以上は迷惑をかけられないのだ。

 名前はださず処理はすると虚空は言った。代わりに楓斗のいない間、必要があれば虚空の手助けをすることを頼まれれば、琅悸は仕方ないと了承した。

 こればかりは助けてもらうだけに、断れない。

 協力体制を作り上げ、虚空は昔の姿を取り戻した。世界統合直後にあった、天竜王や魔法槍士、仲間達との協力関係を。




 双子の天竜王、陽霜と星霜。二人は頃合いだと、一気に体制を変えにいった。

 今回の戦いで、聖なる王に仕えていた魔法槍士の影響は大きい。それに、と思う。

 自分達を信じついてきた魔法槍士のために、そろそろ本気になろうと思ったのだ。短命である彼を、これ以上は待たせられないと。

「あー! どっかにいい人材いねぇのかよ! やっぱ、琅悸引き込めばよかったぜ」

 虚空に取られたと知っているだけに、出遅れたと愚痴る。

「苛々しない。するだけ時間の無駄。まぁ、進まなきゃ莱緋を迎えに行けないだけだね」

「うっ……」

 一番痛いとこを突かれ、星霜は言葉に詰まる。

 彼が早く終わらせたいのは、裏に莱緋を迎えに行きたいという気持ちがあるから。その点に関しては、誤魔化しようもない事実だ。

「これだけ放置すれば、簡単には終わらないよ。わかっててやったんだし、諦めるしかない」

「ちっ、わかってるよ」

 女遊びと見せかけ、調べはすべてついている。魔法槍士にも見せかけの業務をしてもらった。陽霜は操り人形のふりまでしたのだ。

 ここから聖なる王に負けない治世へと変えてみせる。二人の意気込みは凄まじかった。

 医療も治世も、誰にも負けない。そう思えたのは、過去の魔法槍士と話せたから。

「憧れているだけじゃ、ダメ」

「あぁ、勝つ気でやらねぇとな!」

 かつて、飛狛も母や祖父に憧れていた。けれど、追いかけるのではなく追い越すのだと言われて、二人もハッとしたのだ。

 同じ道を歩むのでは意味がない。憧れとそれは別物なのだ。

「歴史を塗り替えてやるぜ!」

「気合いだけは十分なんだから」

「うるせぇな。お前だって同じだろうが」

「否定はしないよ」

 歴史上初の双子の天竜王。即位からしばらくは悪政であったが、やがて素晴らしい治世を行う。

 女遊びの噂はすぐさま消え、実は情報収集のためだったと民にはバレた。同時に弱く見えた操り人形が、とてつもなく曲者だったと知られることに。

 なによりも話題を呼んだのは、弟が聖なる力を持つ天使族の嫁をもらい、兄が始祖竜の嫁をもらったこと。

 婚姻は同時に行われ、街から溢れるほどの民が集まったと歴史には書かれていた。





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