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前編
顔合わせ3
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六枚羽根なんて珍しいな、と思いながら見ていれば、案内として付き添っていた天使が咳払いをする。
「僕、ラピエール」
名乗れという意味だと理解すると、仕方ないなというようにラピエールは名乗った。
「ウィリディスだ。よろしくな」
挨拶をすれば、三人ともが驚いたように二人を見る。
誰もが無機質で考えを読むこともできない。二人が男のように振る舞っても、まったく気にしていなかった。
けれど彼らは違う。言葉遣い、振る舞いを見ながら目を丸くして驚いている。主の子を産むためにいる天使が、女の子らしくないことがびっくりなのだろう。
新鮮な反応を見ていると、彼らなら楽しませてくれそうだと思えてくる。
「住まいは? 遠いならここに住んじゃってもいいんだよ」
楽しませてくれるなら、屋敷にずっといてもいいかもしれない。そんな気持ちになったのだ。
「ウィリディスも構わないだろ」
「構わないぜ。あの屋敷、広いしな」
どうするかというようにラピエールは三人を見た。
思ってもみない提案に、真っ先に食いついたのはアルトゥスだ。
「おっ、いいのか?」
「アルトゥス、一番遠いもんな」
自宅から楽園まで、一番遠いのがアルトゥスだった。毎日早起きか、とぼやいていたのを思いだしてストゥルティが笑う。
早起きが好きではないと知っているからだ。
「お前が一番近いだろ」
「いいだろ」
羨ましいだろ、と言いながらストゥルティが見れば、お前なぁと言いながら凄んでみせる。
けれど、慣れているストゥルティはまったく気にしていない。凄む彼は中々に迫力があるのにだ。
「くそっ、ストゥルティのくせに」
「へっへー!」
賑やかに騒ぐ二人。その中、リュツィフェールだけが無言でいた。
無言だが、話す気がないというわけではなく、おそらくこれが三人の日常なのだろうとわかる。いつもこんな感じで騒いでいるのだと。
(楽しい)
期待していなかった警護。だけど、この三人ならいいかもしれないと思う。楽しい日々が過ごせそうに思えたから。
あまりにも見すぎていたのかもしれない。リュツィフェールがラピエールを見て笑いかけた。
その瞬間、胸がドキッと高鳴る。突然のことに、どうしたのかわからないラピエール。
とにかくドキドキしてきて、こんなことは初めてだった。
「ラピエール、一目惚れ?」
その様子に気付いたウィリディスが、耳元で囁くように言う。
けれどラピエールには、よくわからない。恋などしたことがないからだ。今感じているのが恋なのか、判断できないのだ。
「かっこいいもんなぁ」
「うん…」
それは認めると思う。確かに彼はかっこいい。ここで暮らしていて、あまり他の天使と関わっていないが、それでもわかることもあるのだ。
すらっとしていて、キリッとした青年。細身だが、だからといってガリガリというわけでもない。
「ねぇ、好きってなんだろ」
わからないと小さく呟けば、ウィリディスも困ったような表情を浮かべる。
どう説明したらいいのかわからないのだ。正確には伝え方がわからない。
そんなことより、とラピエールは話を変える。彼じゃないのかと。
ウィリディスの好きだった天使。赤い翼など珍しいのだから、他に何人もいるわけないと言えば、頬を赤らめて視線を逸らす。
わかりやすいな、と内心笑った。
「よさそうな人じゃん。僕は気に入ったよ」
「やらねぇよ」
なに言ってるんだというように見れば、ラピエールはクスクスと笑っている。わかっていて言っているのだ。
「まったく」
自分で遊ぶなというように見れば、にこにこ笑うだけ。いつものことだけに、諦めたようにため息をつく。
そのまま視線はアルトゥスに戻される。
「だけどよ、俺達はここから出られないんだぜ」
どうやっても出られないだろう。せめての抵抗で男になろうとしているが、それだって思い通りになるとは限らない。
相手が主となれば、それも不可能かもしれないのだ。
「……そうだね」
自分達は籠の鳥。ここへ入ってしまった時点で、抜け出すことなど許されないのだ。
理解したくないが、理解していた。
・
「僕、ラピエール」
名乗れという意味だと理解すると、仕方ないなというようにラピエールは名乗った。
「ウィリディスだ。よろしくな」
挨拶をすれば、三人ともが驚いたように二人を見る。
誰もが無機質で考えを読むこともできない。二人が男のように振る舞っても、まったく気にしていなかった。
けれど彼らは違う。言葉遣い、振る舞いを見ながら目を丸くして驚いている。主の子を産むためにいる天使が、女の子らしくないことがびっくりなのだろう。
新鮮な反応を見ていると、彼らなら楽しませてくれそうだと思えてくる。
「住まいは? 遠いならここに住んじゃってもいいんだよ」
楽しませてくれるなら、屋敷にずっといてもいいかもしれない。そんな気持ちになったのだ。
「ウィリディスも構わないだろ」
「構わないぜ。あの屋敷、広いしな」
どうするかというようにラピエールは三人を見た。
思ってもみない提案に、真っ先に食いついたのはアルトゥスだ。
「おっ、いいのか?」
「アルトゥス、一番遠いもんな」
自宅から楽園まで、一番遠いのがアルトゥスだった。毎日早起きか、とぼやいていたのを思いだしてストゥルティが笑う。
早起きが好きではないと知っているからだ。
「お前が一番近いだろ」
「いいだろ」
羨ましいだろ、と言いながらストゥルティが見れば、お前なぁと言いながら凄んでみせる。
けれど、慣れているストゥルティはまったく気にしていない。凄む彼は中々に迫力があるのにだ。
「くそっ、ストゥルティのくせに」
「へっへー!」
賑やかに騒ぐ二人。その中、リュツィフェールだけが無言でいた。
無言だが、話す気がないというわけではなく、おそらくこれが三人の日常なのだろうとわかる。いつもこんな感じで騒いでいるのだと。
(楽しい)
期待していなかった警護。だけど、この三人ならいいかもしれないと思う。楽しい日々が過ごせそうに思えたから。
あまりにも見すぎていたのかもしれない。リュツィフェールがラピエールを見て笑いかけた。
その瞬間、胸がドキッと高鳴る。突然のことに、どうしたのかわからないラピエール。
とにかくドキドキしてきて、こんなことは初めてだった。
「ラピエール、一目惚れ?」
その様子に気付いたウィリディスが、耳元で囁くように言う。
けれどラピエールには、よくわからない。恋などしたことがないからだ。今感じているのが恋なのか、判断できないのだ。
「かっこいいもんなぁ」
「うん…」
それは認めると思う。確かに彼はかっこいい。ここで暮らしていて、あまり他の天使と関わっていないが、それでもわかることもあるのだ。
すらっとしていて、キリッとした青年。細身だが、だからといってガリガリというわけでもない。
「ねぇ、好きってなんだろ」
わからないと小さく呟けば、ウィリディスも困ったような表情を浮かべる。
どう説明したらいいのかわからないのだ。正確には伝え方がわからない。
そんなことより、とラピエールは話を変える。彼じゃないのかと。
ウィリディスの好きだった天使。赤い翼など珍しいのだから、他に何人もいるわけないと言えば、頬を赤らめて視線を逸らす。
わかりやすいな、と内心笑った。
「よさそうな人じゃん。僕は気に入ったよ」
「やらねぇよ」
なに言ってるんだというように見れば、ラピエールはクスクスと笑っている。わかっていて言っているのだ。
「まったく」
自分で遊ぶなというように見れば、にこにこ笑うだけ。いつものことだけに、諦めたようにため息をつく。
そのまま視線はアルトゥスに戻される。
「だけどよ、俺達はここから出られないんだぜ」
どうやっても出られないだろう。せめての抵抗で男になろうとしているが、それだって思い通りになるとは限らない。
相手が主となれば、それも不可能かもしれないのだ。
「……そうだね」
自分達は籠の鳥。ここへ入ってしまった時点で、抜け出すことなど許されないのだ。
理解したくないが、理解していた。
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